五色ヶ原周回
- GPS
- 13:12
- 距離
- 21.2km
- 登り
- 1,455m
- 下り
- 2,431m
コースタイム
- 山行
- 5:17
- 休憩
- 0:26
- 合計
- 5:43
天候 | 晴れ 若干風強い |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年09月の天気図 |
アクセス |
写真
感想
基本、単独行かつマイカーでの登山口アプローチの私の山行スタイルでは、選べるコース取りは周回・ピストン、頑張って馬蹄形しかありません。せっかく遠路遥々北アルプスまで来て、室堂〜五色ヶ原ピストンでは何だか勿体ない気がして、室堂〜五色ヶ原〜黒部ダム周回コースにしました。
1年2ヶ月振りの室堂は、前回同様、どピーカン。でも結構風が強く、寒ささえ感じるほど。それでも、登り始めるとすぐに身体が温まり気にならなくなりました。
浄土山中腹の展望台から望んだ五色ヶ原と山荘は思いの外近くに感じて、俄然モチベーションが上がりましたが、今思い返すとただの脳天気野郎としか言いようがありません。
浄土山から龍王岳、鬼岳を巻いて獅子岳にたどり着くまではテント泊装備のザックの重さに喘ぎながらも至って順調でした。しかし、登りより下りのほうが圧倒的に苦手な私は、獅子岳山頂からザラ峠への下りで一気に消耗してしまい、とどめに五色ヶ原山荘へ上る急な木道に心が折れてしまい、迷わず分岐を左にそれて小屋ではなく、キャンプ場へ直行しました。
10月2日が小屋締めの最後の週末なので、さぞかしキャンプ場も混んでるものとばかり思いましたが、到着してみると、あにはからんや10張程度のガラガラでした。おかげでテントの中からでも後立山連峰を正面に望める絶好の場所を確保できました。そのうち、続々とテントは増えていき最終的には30張ぐらいになりテン場らしくなりましたが。それと少し驚いたことは、10張前後のテントは女性のソロやペアだったことです。テントが張れたら次は、テン泊の受付とお待ちかねのコーラを買いに五色ヶ原山荘へ向かいます。山荘は、テン場から10分ほど木道をゆるく登った先にありました。私は下界では炭酸飲料など飲むことはまずありませんが、テン泊のときに山小屋で飲むコーラが何故だか異常に大好きです。山小屋でのコーラが飲みたいがために重いザックを我慢すると言ってもあながち外れてはいません。なのに、なのに、山荘にコーラはありませんでした。コーラだけでなく他の炭酸飲料さえもありませんでした。聞けば、もう小屋締めなので補充していないとのこと。ビールはあるのにコーラはないんかい!ヤケクソでアクエリアスとカルピスウォーターを立て続けに一気に飲みしましたが、やはり何だか満たされず虚しさだけを残して、寒くなってきたこともありテントに戻りました。
ところで私は1型糖尿病です(生活習慣病である2型ではないところを強調したい)。どこにいても食事の前などはインスリンを自分で打って血糖値コントロールをしなければなりません。しかし、夕飯のラーメンを食べ始める直前に、事もあろうに今回その大事なインスリンを携行するのを忘れてしまったことに気づきました。食事によって急上昇した血糖値をインスリンを打って下げなければならないのですが、インスリンを忘れたということは、血糖値は高止まりしたままになり様々な不調をもたらすことになるということです。しかし、何かしら腹に入れとかないと明日の行動に影響するのは間違いないので、高血糖になるのは百も承知で食べないわけにはいきませんので完食しました(要するに目の前の空腹に耐えられなかっただけの後先考えない刹那野郎ってことです)。
陽が落ちると、放射冷却のせいで五色ヶ原の気温は一気に下がり、夜中にはテントの結露が氷結するほど冷え込みました。辺りに光源がまったくないので、とんでもないほどの満天の星空でした。
高血糖による頻尿で夜中に何度もトイレに起きましたが、翌朝5時頃、ものすごい倦怠感と吐き気で目を覚ましました。このままずっと横になっていたかったのですが、インスリンがない以上、そうしていても症状は一層悪くなることはあっても改善することはなく、もとより山荘にインスリンなどあるわけもないことから、自力で下山するしか選択肢はありません。
緩慢な動作で出発の準備をようやく整え終わったのは、7時半。他の登山者のほとんどが既に出発したあとでした。昨日とは打って変わって、ザックだけでなく身体までとても重く感じ、脚を前に出すだけでも辛く、牛歩のようなゆっくりとしたペースでないと歩けません。さらに途中から目眩までしてくるようになりました。しかしだからといって休憩するわけにもいきません。疲労ではなく高血糖が原因の体調不良なので、休んだからといって回復することはないわけで、とにかく下山するしか楽になる道はないのです。幸いなことに下り一辺倒なので、平ノ小屋まで辿り着ければ、その後は、黒部湖畔の「平坦な道」をロッジくろよん、そして黒部ダムまで行けばいいだけ、と自分を奮い立たせて歩き続けました。
本当に身体が限界と思う頃にようやく平ノ小屋にたどり着きました。朝からまったく何も口に入れてないので、とにかく無理してでもカロリーとなるものを摂ろうと思い、缶コーラとパック牛乳を立て続けに飲みました。すると、私のあまりにも調子悪そうな様子を見かねたのか、小屋の女性がクッキーをくださいました。
この場を借りてお礼を申し上げます。20分ほど休んだのち、黒部ダムへ向けて出発しました。登山アプリのコースタイムを確認すると、何だかやけに時間がかかりそうでしたが、湖畔沿いの平坦な道だからそれほど大変ではないだろうと高を括っていたのですが、それは大きな間違いでした。ここからが本当に本当につらかった。確かに地形図上では大きなアップダウンのない平坦なコースにしか見えませんが、地形図では表すことのできない高さ10メートル未満のアップダウンがエンドレスに続き、時折、高さ30メートルぐらいのハシゴや鎖場がアクセントのようにあって弱り切った体力とメンタルを容赦なく削り続けます。途中、何度も何度も脚が止まりましたが、歩かないことにはゴールできない、下山できないという思いで歩き続けました。
朦朧としながら歩き続けるなか、いないはずの場所に人の姿が見えたり、あるはずのない場所に小屋らしい建物が見えたり、登山道横の倒木が動き出したりといった幻覚を見るまでになりました。もはやGPSや時計を見る余裕すらなくなり、ただただ目の前のハシゴを登り、丸木橋を渡り、岩を乗り越え続けていたら、いきなりロッジくろよんが目の前に現れました。
16:35黒部ダム発のトロリーバスで扇沢に着き、扇沢駅の売店前の階段で転倒したりして、フラフラになりながらたどり着いた駐車場の自分のクルマの中で、血糖値を測ったら何と590!(成人男性の正常値は70〜110)
危うく本当に死ぬところでした。自己責任という言葉の重さを強く感じた山行でした。
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