Mt. Shasta (Avalanche Gulch) 4317m カリフォルニア北部の成層火山
tanno1967
その他3人 - GPS
- 32:00
- 距離
- 16.7km
- 登り
- 2,176m
- 下り
- 2,162m
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標高グラフを拡大| 天候 | 晴れ |
|---|---|
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
|
| コース状況／ 危険箇所等 |
地図はGoogle Mapsでご覧になるとよくわかります。 シャスタ山（Mt. Shasta）はカリフォルニア州の北端近くに位置する火山で、標高は4317m。山脈で言えばアメリカ西岸北部に連なるカスケード山脈の南端近くに位置し、カスケード山脈の中ではシアトル近くのレーニア山(4392m)に次ぐ高峰です。ミネラルウォーターのクリスタル・ガイザーの水源の一つはこの山の麓にある湧水で、クリスタル・ガイザーのラベルには北側から見たこの山が描かれています。シャスタ山の周囲は標高1200m程度の高原地帯で、そこから3000m近くの標高差で立ち上がったシャスタ山は周囲の山々を圧し、はるか遠方からもその姿を見ることができます。 Bunny Flat(兎平、2120m)からAvalanche Gulch（雪崩窪）を通るルートはMt. Shastaに登るもっとも一般的なルートですが、長い雪渓を登るルートで、上部ではやや傾斜がきついのでアイゼン・ピッケルは必携です。私はガイドと、ガイドツアーに申し込んだ他の二人の登山者とともに登りました。 高度順応のため前泊したPanther Meadows (山猫原、2280m)から一旦Mt. Shastaの町に車で降り、登山用品店の前でツアーのため集合。ガイドによる装備チェックのあと、各自車に分乗してBunny Flatまで上がり、1時間弱上がった雪渓末端近くの、Horse Camp(駒止）と呼ばれる箇所にテントを設営。その日は基本的雪上訓練ということで、ピッケルの使用法を、滑落の際の制動を中心に訓練しました。足から落ちた場合、頭を下に落ちた場合、仰向けの場合とうつぶせの場合、四通りに分けてそれぞれピッケルによる滑落停止の訓練を繰り返しましたが、何度も何度も繰り返して身体で覚えこむべきことを短時間で教えられてもなかなかうまくいくものではありません。滑落に入る前にまずピッケルを刺して止まることを肝に銘じました。滑落停止訓練の感想としては、ピッケルなしで滑落した場合に備え、膝と肘のみで制動するという最後に行った訓練（急斜面では効果がなく、気休めにすぎないと思いますが）を最初に行えば、滑落停止の基本が最初に理解でき、更によかったのではないかということでした。 滑落停止訓練は2-3時間で終了し、早めの夕食をとり、深夜1時ころの行動開始に備えて早めに就寝しました。高度が高い場所での行動に備え、水分補給を十分にしておく必要があるとのことで、塩分の入ったシリアルを食べ、水分を4Lも摂りました。普段なら飲める量ではありませんが、塩分入りシリアルのせいかどうにか飲み切りました。 夕方から寝て、真夜中には起きだし、準備を整えて出発です。最初緩やかだった雪渓は次第に傾斜が出てきて、日の出頃には標高3170mの平坦地、Helen Lake に到着しました。雪が消えると小さな池ができる場所ですが、この時は雪ノ下でした。ここまでで私以外の二人の登山者は調子が今一つ、ということでリタイアすることとなり、そこに待機用のテントを張って二人を残し、そこからはガイドと私の二人で登りました。雪渓は次第に急になり、上部では35度くらいの傾斜になり、ジグザグを切って登って行きました。滑落の危険に備えてガイドとアンザイレンしましたが、今回の登山に備えて毎日20�垓瓩�の荷を担いで裏山に登って鍛えていたせいか快調に登りました。 雪渓を登りきると通称Misery Hill （バテバテ坂？）という尾根上の斜面に出て、標高差200mほどを登りきるとやや平坦な山頂部に出て、その一角に、釈迦の指が並んでいるような高まりが頂上でした。見通しはよくききましたが、シャスタ山は周囲から抜きんでた高峰なので、周囲の山が低すぎて、それほど景色がいいという感じはしませんでした。よく晴れた日で、私のガイドはすれ違った知り合いのガイドと「今日は最高の条件だね」などと話していましたが、やはり山頂部は風が冷たく、天候が変わればたちどころに厳しい条件になることが想像できました。シャスタ山は休火山ですが、山頂付近には一部地熱の高い箇所もありました。 下りはMisery Hillを降り、雪渓最上部の急傾斜を下ったところでグリセード（といってもいわゆるシリセードですが）の方法を習い、一気に下りました。雪渓上部は雪が固くてやや傾斜もきつく、レインパンツの尻に部分に穴が開きましたが、次第に雪もやわらかく、傾斜もちょうどよくなり、快適なシリセードを楽しみました。3170mの平坦地から先は残りの二人も加わってのシリセードで、ベースキャンプの近くまで、標高差にすれば山頂近くから1500m以上もシリセードで下り、キャンプを撤収して登山口から車でMt. Shastaの町の登山用品店に戻り、そこで解散となりました。ガイドからは雪渓を登る際の動きがよかったと褒められ、次はレーニア山でも登ったらどうか、と言われましたが、まだ果たしていません。 この後、車で次の目的地、Trinity Alpsに向かいました。その記録はこちらです。 http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-318213.html |
| その他周辺情報 | Mt.Shasta登山の基地は麓のMt.Shastaの町で、サンフランシスコから北に車で5時間くらい。街にはモーテルやスーパーのほか、登山用品店もいくつかあった。 |
写真
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Horse Camp 付近から見上げるシャスタ山。ルートは正面の雪渓Avalanch Gulch (雪崩窪)をひたすら詰めて、右手の稜線に上がる。
標高3000mを超えるHelen Lake (この時は雪の下）付近から見た雪崩窪ルート。奥の雪渓を右上に登りつめる。下山途中の写真。
北側から見上げるシャスタ山とシャスティーナ(右側）。両峰の間を手前に向けて流れ下るのがこの山最大の ホイットニー氷河。89年12月撮影。
感想
1989年の7月、大学院に入るため、初めてアメリカに向かった際のこと。夕方飛び立った日本航空002便があと1時間弱でサンフランシスコに到着する、という時分に、座っていた左側の席から窓の外に雪をかぶった美しい火山が見えました。隣にちょうど、シアトル近郊のマイクロソフトで働いているというアメリカ人女性が座っていたので、あれはレーニア山ですか、と尋ねたところ、「あれはシャスタよ」と教えてくれたのがこの山との初対面であり、また私にとってアメリカの、気高く幸福な第一印象でもありました。
その年の12月、入学して初めての冬休み、ホストファミリーから車を借りて、一人でカリフォルニア北部のロングドライブに出かけました。目標はシャスタ山麓。寒風吹きすさぶ麓の町からはシャスタの大きな山体を仰ぎ、複雑に分岐した林道に車で分け入っては、あちこちの方角からシャスタを飽かず眺め、山頂の雪煙や北へ流れ下る氷河の様子、茫漠と広がる灌木帯や草地を見て、なるほど英語（というよりも米語）でいう"wilderness"とはこういうものか、と感心しました。
その後も日本とカリフォルニアを往復するたびに、シャスタは私を見送り、また迎えてくれるまさにランドマークでした。そのシャスタに登る機会が巡ってきたのは1998年の夏。当時すでにあちこちの山に登ってはいましたが、雪山の経験は浅く、ピッケルを使った経験もなかったので、シャスタは敬遠していたのです。しかし、ガイド付きで登れるツアーがあると聞き、申し込んでみたのがこのときの登山でした。ガイド料金は当時一人200ドルくらいだったと思います。
当時はまだ大学院にいたので、時間が自由なのに任せて毎日この山行に備えて裏山に登って体を鍛え、万全の準備を整えて登りました。当時の自分の経験値からすれば、ガイドと一緒に登ったのは正解で、ガイドからは色々なことを学びました。しかしその一方、登っている最中、自分で登っているというよりは映画を見ているような感覚が抜けず、充実感という意味では今一つでした。山登りの本質は、自然の中で自らの判断で身を守りつつ目的を達成することにあり、みずからルートを選び、身の安全を自分で守りつつ登るのでなければ本当に自分の山歩きとは言えない、ということなのでしょう。
後になってから、日本山岳会の創設メンバーの一人である小島烏水が、1920年代にカリフォルニアの山を歩き、『氷河と万年雪の山』という優れた紀行文集をのこしていることを知りました。烏水はシエラネバダを日本アルプスと、シャスタを富士山と比較してその類似点について論じていますが、シャスタと富士の比較はなかなか秀逸です。小島は当時横浜正金銀行（のち東京銀行、現在は三菱東京UFJ銀行に統合）のロサンジェルス支店サンフランシスコ出張所長の地位にあり、10年近くもサンフランシスコに滞在したのを利用して、シエラネバダやカスケード山脈の山々を歩き、それを紀行文集にのこしたのでした。この小島烏水という人は、なかなかの趣味人で、日本アルプスをはじめとする日本の近代登山の黎明期に大きな足跡を残したほか、上に述べた日米山岳比較論、さらにはアメリカで浮世絵版画の収集にも努め、「浮世絵と風景画」という著書も残しています。
富国強兵で突っ走った明治が終わり、大正の時代になると、フランスで遊里に入り浸った永井荷風からアルプスを登りまくった槙有恒まで、海外で「遊び」にうつつをぬかす日本人が登場しましたが、小島烏水もその一環と考えていいのでしょう。ただ、小島の優れている点は、山登りでも絵画でも、日本と西洋の両方を大きな視点からとらえ、それを比較論としてまとめているところです。当時に比べれば日本人が海外に出る機会は格段に多くなりましたが、例えば「比較登山論」のような分野で、小島をしのぐ著作が出ているのかどうか、心もとないようにも思います。知識の専門化、細分化が進み、人々が忙しくなったのかもしれませんが、日本の登山文化について、外国と比較しつつエッセイ風に読みやすく、含蓄深く論じるような本がもっとあってもよさそうに思うのは私だけでしょうか。
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