南アルプスの旅 (田代〜大無間〜大根沢〜信濃俣〜光〜聖〜赤石〜荒川〜千枚〜二軒〜蝙蝠〜塩見〜仙丈〜甲斐駒〜早川〜広河原峠〜広河原〜白鳳峠〜鳳凰〜広河原〜北岳〜間ノ岳〜農鳥〜広河内〜白河内〜伝付〜笊〜青薙〜山伏〜笹山〜井川峠〜井川大橋〜田代)
コースタイム
8/12 大無間山頂 停滞
8/13 大無間4:45→6:15三方嶺6:30→7:50アザミ沢コル下(水汲み)8:30→9:45大根沢山10:15→11:25ブナ沢コル11:50→13:15樺沢ノ頭手前の手前のピーク13:50→樺沢ノ頭手前のピーク→14:35樺沢ノ頭
8/14 樺沢ノ頭4:45→6:00椹沢ノ頭6:20→7:40信濃俣と百俣のコル8:00→9:20百俣沢ノ頭9:50→11:00光岳→光石→光岳11:40→11:50小屋12:20→静高平(水汲み)→14:30易老岳
8/15 易老岳5:30→7:05仁田岳→希望峰7:35→茶臼岳→茶臼小屋8:55→上河内岳→12:30聖平CS
8/16 聖平 停滞
8/17 聖平5:00→7:00聖岳7:30→8:50兎岳9:20→10:55大沢岳11:55→12:30百間洞CS
8/18 百間洞5:30→7:30赤石小屋8:20→赤石岳8:45→大聖寺平で休憩→荒川小屋10:55→12:05荒川前岳12:10→分岐12:30→13:35悪沢岳13:50→千枚岳→15:00千枚小屋CS
8/19 千枚小屋4:25→7:30大井川岸辺→二軒小屋→岸辺8:30→徳右衛門岳下部(水汲み)→13:30徳右衛門岳
8/20 徳右衛門5:00→6:30蝙蝠岳7:00→8:50塩見岳9:20→10:55北荒川岳11:20→14:00熊の平CS
8/21 熊の平2:50→4:10三峰岳4:40→6:20野呂川越→7:40高望池8:10→10:05大仙丈岳10:30→10:55仙丈ヶ岳11:30→13:30駒仙小屋CS
8/22 駒仙小屋3:35→仙水峠4:55→6:15甲斐駒ヶ岳7:10→摩利支天→8:40仙水峠9:00→10:50浅夜峰12:00→13:20早川尾根小屋13:40→14:00広河原峠→15:10広河原山荘CS
8/23 広河原4:30→6:20白鳳峠6:35→7:55地蔵岳→8:45観音岳9:00→9:15薬師岳9:45→11:00高嶺11:20→13:10広河原山荘CS
8/24 広河原4:20→6:15二俣6:35→8:55北岳9:15→11:30間ノ岳12:00→12:40農鳥小屋CS (泊) →水汲み
8/25 農鳥5:20→10:55黒河内岳南峰11:30→14:15奈良田越14:40→西別当代山手前の広場
8/26 広場4:40→6:00伝付峠の下(水汲み)6:40→(立ち話)7:00→9:00天上小屋山9:20→12:05笊ヶ岳12:30→13:30布引山
8/27 布引山5:30→6:50所の沢越の下(水汲み)7:20→8:35稲又山8:45→9:55青薙山10:10→13:35青笹山→15:00三ノ沢山
8/28 三ノ沢山5:30→6:50小河内山→8:00大笹峠→8:20山伏→山伏小屋→11:00笹山11:20→12:00井川峠→(迷う)→14:15井川大橋14:30→15:00田代集落
天候 | 8/11 雨 8/12 雨 8/13 曇り時々雨 8/14 雨 8/15 曇りのち風雨 8/16 雨 8/17 曇り時々雨 8/18 雨のち晴れ 8/19 晴れ 8/20 晴れ 8/21 晴れ 8/22 晴れのち雨 8/23 曇り一時風雨 8/24 曇りのち雨 8/25 風雨のち曇り 8/26 曇りのち雨 8/27 雨 8/28 雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2014年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
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コース状況/ 危険箇所等 |
・田代〜大無間 P1と小無間の間のコルが、両側切れ落ちている上に急斜面。崩壊が進行している。トラロープが2本掛けてあったが、万全とは言えない。また、コルの先の登り着いた先も悪い場所がある。P4までに、ヒル1匹に食われた。上の方まで、ずっとアブにたかられた。 ・大無間と前無間のコル下の水場(関の沢川源頭) 2000年頃のガイドに載っているより、厳しくなっていると思われる。崩壊地をかなり下降しないと水が取れない。崩落に巻き込まれる危険性と、足元の崩れやすさにロープが欲しくなった。 ・大無間〜光 まず大無間から三方嶺までがルート不明瞭。三隈池辺りから明瞭。大根沢の下りがまた不明瞭。その後も明瞭だったり不明瞭だったり。百俣からは完全に明瞭。大根沢の下り途中に大岩の登り返しがあり、段差大きく困難。アザミ沢コル下の水場は分かりやすく、比較的短時間で汲める。基本尾根通しで巻かないので、非常にアップダウンが激しい。道程荒々しい。 ・二軒〜蝙蝠〜北俣岳ピーク 徳右衛門まで問題なし。上になるにつれ弱冠ボサる。稜線はマーキング少なく、ガスの時は分かりにくいかもしれない。徳右衛門下の水場、比較的明瞭で汲みやすい。 ・仙塩、早川両尾根 弱冠ボサっている。三峰から野呂川越がやや長く感じる。(ニセ峠と体感する所が続く) 早川尾根は、割かし岩がちで険しい。広河原峠と白鳳峠の間が崩壊で通行止めになっている。 ・大樺沢左俣 雪は踏まず。上部八本歯コル周辺、木梯子多数あり疲れる。 ・農鳥水場 遠いが非常に歩きやすい。 ・広河内〜奈良田越 踏み跡・マーキング等不明瞭で、ボサっている部分もある。ガスや荒天時の難易度は高い。また、奈良田越から林道に乗る所が分かりにくい。 ・奈良田越〜林道終わり ダートの林道。林道とは名ばかりで、樹苗が生い茂る。ほぼバリルート風のボサり具合。伝付峠下の水場、下草が弱冠ボサっているが、汲みやすい。 ・林道終わり〜布引 ボサっているが、道は明瞭。ハイマツ尾周辺は分かりにくく、かなりボサっている。ハイマツ尾への道?は、バリケードがしてあった。悪天である事と、近年崩壊でもしたのかと思い、パスしたので、ピーク付近のことはわからない。 ・布引〜所の沢越 道は明瞭。崩壊地は巻いているので特に問題なし。所の沢越下の水場、比較的明瞭で汲みやすい。 ・所の沢越〜青薙 稲又・青薙とも、やや分かりにくい。青薙の天辺周辺は、二重山稜で特に分かりにくい。 ・青薙〜小笹平 マーキングなし。非常に急な下降で険しい。青薙崩れ縁のナイフリッジが危険。自分の持っている本では、ロープ確保を薦めている。 ・小笹平〜山伏 イタドリ山以南より、急にマーキングが増える。雨畑寄りに寄って歩いていれば、ある程度ルーファイに慣れていれば、そんなに難しくないと思われる。ただ、三重山稜の所など、道読みが難しい場所もある。小河内・山伏の登りが急。2000年頃のガイドによると、背丈を越す猛藪地帯(三ノ沢〜水無峠)があると情報が載っているが、今年はなのか?、せいぜい腰丈くらいで、藪漕ぎで困るという事はなかった。行った事のある藪山と比較するなら、中央アルプスの安平路〜南越百間の方が、藪漕ぎが大変だった。あちらは、背丈を越す所もあり、密集していてガシガシ漕ぐ(藪目を読み掻き分けて進む)感じだった。 ・山伏〜井川峠 山伏小屋はとても豪華な感じ。中は確認していない。水は、塵芥が混じり、そんなに美味しいと思わなかった。この区間、コースタイムがやや辛め。笹山筆頭にアップダウンが激しい。ルートやや不明瞭で、マーキングが少ない。しかし、ハイキングルートには違いない。 ・井川峠〜井川大橋 ルート荒廃、不明瞭。木枝や石クズが纏わり着き、崩れやすい足場。一部、散策路や林業路なども入り混じる。下部は、椎茸の圃場や茶畑、人様の庭のすぐ横(中?)を通過する、変わったルート?(とは最早言えない荒廃具合。ぼろぼろ。特に下の方。) |
その他周辺情報 | 田代集落内に、田代温泉(井川オートキャンプ場内)がある。 |
装備
個人装備 |
Tシャツ
ズボン
靴下
防寒着
雨具
着替え
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
サブザック
行動食
非常食
調理用食材
飲料
ガスバーナー
ガスカートリッジ
コッヘル
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
針金
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
タオル
ストック
ナイフ
カメラ
ポール
テント
シュラフ
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備考 | 上+ 腰バッグ、ビバークシート、断熱マット、ビニール袋(ザック内で防水、特にシュラフを。ゴミ袋としても)、ラジオ、ガムテープ、マメや擦れ・負傷時の手当て用具、ガイド本、手ぬぐい(帽子やタオル代わりに)、箸、スプーン、歯ブラシ、天然塩、黒砂糖、味噌、茶葉(淹れた後食べる)、登攀具(ロープ・ハーネスなど)、ソーラー充電器(携帯・ヘッドランプ・ラジオ等に)、高度計、マッチ、ロウソク、軍手(使わず)、麻ひも・新聞紙(使わず)、熊鈴(使わず)、手記用のメモ帳、停滞時用の文庫本(読まず)、コーヒー(飲まず)、お守り ・タオルは必携。 ・トイレ紙は、1ロールでもった。 ・ガス缶は、小さい缶で充分だった。(大を持って行った) ・着替え、ダウンなど一切しようせず。濡れ物は搾ったり、タオルで拭いたりして対応した。この時期ならば、着替えは必要ないかもしれない。ただ、寒いし惨めな気持ちになる。本当にびしょ濡れの日は、上は速乾の半袖シャツ、下はパンツ一丁、裸足でシュラフに入ったが、上はフリースを着れば良いが、下は短パンでも欲しいところ。ましてや、他に人の居るキャンプ地では、着替えがあった方が良い。 ・青薙崩れの下りで、ロープを出さなかったが、万全を期すなら使用した方が良いのだろう。 ・白峰南嶺の高山帯は、悪天候の時は非常に厳しい場所なので、ビバーク用具は必携。 ・辺りにはきのこがたくさん生えていたので、きのこの本を持っていれば、食事が充実する。 ・バリルートは体力勝負なので(倒木を跨いだり潜ったり、藪を漕いだり、足場の悪い段差の大きい急斜面を登ったり)、荷を軽くして小回りが効く状態で望めば、より愉しいものになると思う。 ・登山用具も消耗するので、大きな山行の前には、状態をチェックすると良い。自分の道具類は、山始めてからの初代がほとんどなので、ことごとくボロボロになってきており、靴のソールの減りによるスリップには手を焼いた。また、ザックの腰バックルが壊れ、またザックの骨が曲がったので、疲れが溜まりやすく背中に当たったり擦れたりして痛かった。重荷で濡れると、肩や腰などザックと擦れて痛むので、当て布(タオルなど)をすると軽減できる。 道具類は、金を積めばより快適で小綺麗な(本当の綺麗ではない)装備で歩けるけど、普段のカッコに毛が生えたような装備でも、充分山の中を歩き回れる。 昔の行者や山人、旅人はそうして歩いていた。 仙塩尾根を、木の棒を突いて作務衣で歩いているおじさんに逢ったが、素敵だなと思った。道具類が壊れたら、もう最新装備は買わない。より簡素な装備にして、昔の山人や旅人、人間以外の生きものの体感している境地に近づけたらと思う。 |
感想
6年前に思い浮かんだ、念願のルートを歩いた。時には不安があったり、タイミングが合わなかったり、結局は己の力が足りなかったからなのか、今まで実行を出来ていなかった、そういう憧れのルート。
今の自分ならできる、だから実行したのだろうと思う。
結果として、雨ばかりで、半ば修行のような日々で、下山したのちには痩せこけていたが、時間が経つにつれ、実感と共に充足感が出てきた。万感の思いというやつかもしれない。
私の体には未だ、南アルプスの光景が馴染み過ぎていて、しばらくは山の続きをしているような気がしているのだろう。
緑にまみれて、雨にまみれて、歩きに歩きまくった、楽園と地獄の記憶。人生の縮図。
こんなに大変だった山旅は、過去に経験はない。故に、得たものも大きい。
一片の悔い無しと言って良い、素晴らしい縦走が出来たと思う。
私は南アルプスを愛してやまない。北も好きだけど。どっちが好きかなんて言えない。別ジャンルと言うか。それぞれの個性。どちらも日本アルプス固有の、魅了される幻想を湛えている。
食料は、半月分持った。当初は、熊の平から間ノを巻いて農鳥に入る予定(~15日)だった。
しかし、赤石避難小屋で、恒例?のお客さんデポ食料を頂けたので(5日分)、甲斐駒・鳳凰まで行けた。
雨ばかりで、本来だったら停滞するような天気でも、行かざるを得ない(歩かないと帰る事もできない)日もままあった。
スタート時は、チューハイ・ビールなど10本・ウイスキー1.5ℓなど、阿呆みたいな荷を担いでいたので(35kg以上)、ザックの腰バックルが壊れてしまった。
序盤で壊れてしまったので、めちゃめちゃ重大な事であったが、だましだまし歩き続けた。腰が決まらないので、肩と背中での背負いが増える。普段より疲れが溜まりやすく、ペースが最後まで上がらなかった。昔でいう、キスリングみたいな感じなんだろうか。だとしたら、昔の山屋は、凄いきつかっただろうし、体力・気力を擁していたのだろう。
好きな頂(イザル・聖・笊など)では、ことごとくガスや雨に泣かされ、大根沢・白峰南嶺の高峰群・青薙などの未知の大峰では、荒天やバリルートをゆく不安などでゆっくり堪能とまでは出来なかったが、その神秘的な光景が脳裏に焼き付いている。ゆっくりできなかったと思っていたが、しっかりと感じていたらしい。
小無間までの地獄のような過酷な道程後の、楽園のような頂稜漫歩の大無間山塊。
茫洋とした山頂に、神秘的な大森林が広がる大根沢山。だいこんたくさん。
松虫草・丸畑蕗など、見事な花園のある千枚周辺。荒川は南北主稜線だけじゃないと思った、悪沢岳東の尾根筋の光景。
大井川の、蒼く光るように美しい水。
蝙蝠尾根の緑深々い原生林、最高の展望台でありスカイトレイルの蝙蝠岳周辺。
北荒川周辺の大崩壊地、丸畑蕗の大群落の上に浮かぶ、厳かな間ノ岳。
三峰から野呂川越への、快適な痩せ尾根。
仙丈からの伊那谷の眺め。
甲斐駒からの360°、北は白馬や剱まで見える眺め。
白鳳峠下の、地獄を思わせる広大なゴーロ帯。
オベリスクの下の砂地に佇む地蔵群の見つめる甲府盆地。
茫洋とした間ノ岳の山体から見下ろす、本場アルプスのような農鳥小屋周辺の風景。
晴れていたら、きっと天国のような、白河内周辺の茫洋とした大地。
晴れていたら、景色百名山筆頭の笊。
静かで薄暗い、所の沢の昔の峠道。
楽園のような青薙の頂稜の草原。
半分死を賭して、果敢に挑戦した青薙の刃渡り。
青薙以南の、笹が生い茂る鹿たちの楽園。
ルートファインディングが愉しく、わくわくしながら歩いていた水無峠山周辺。神秘的な水無峠山周辺の森では、狐やムジナが跳んでゆく姿を何度も見た。
2回目にして、大縦走後に辿り着けた山伏。しかし、何も見えず寒い。
山伏以降井川峠まで、コースタイム書いた奴誰だよと心の中で愚痴ていたあの時。(いつもだったら50分の所なら30,35分なのに、45分とか掛かった)
井川峠からの荒廃しまくった道で迷い、苦渋の決断でGPSを使い、訳はわからないのだがなんとか民家の横に下り着いたあの時。最後の最後まで試練を与え続けられた山旅。
その試練の対価に得たものはなんだっただろう。
必死に感じまくった。必死に考えまくった。必死に歩きまくった。貪欲に愉しみまくった。
この意味を識るのは、この道の先ゆっくりとだろう。
その刹那、全力を尽くして、生きていたから、それでよかったのだろうと今は思っている。
追記
旅で得たご厚意。
まず、大雨の中光小屋に寄った時、何も買っていないのに温かいお茶を頂いた。小屋のご主人と色々お話した。
聖平小屋では、恒例のフルーツポンチを頂き、停滞の日は食堂で濡れ物を乾かさせて頂いた。
百間洞では、家人への連絡をして頂いた。
赤石岳避難小屋では、ご主人とお兄さんと色々お話し、お客さんのデポ食料を頂いた。実は、去年の縦走時も頂いたのでした。南米産のかわいい鍋つかみをみやげに買う。
熊の平小屋では、去年の台風直撃時に3日滞在した事もあり、ご主人が覚えていてくれて、私物の焼酎をくれた。その後の酒が助かった。
早川尾根小屋では、道先の崩壊通行止め箇所の事や周辺ルートの事を教えてもらい、おいしい水で淹れた麦茶を頂いた。
広河原山荘の売店のお姉さんには、この日でバイトが終わりとの事で、金麦を2本も頂いてしまった。広河原の夜の酒は、彼女のビールに助けられた。
農鳥おやじさんには、雷注意報が出ているから気をつけるようにという事と、今後の天気の見事な観天望を披露して頂いた。これが、夕方の雨を見事に予見したものであり感心してしまった。また、白峰南嶺・農鳥以南も標高が高いからなと指摘頂き、警戒心をさらに高められ、慢心を生まず集中して歩けた。
登山口の田代集落の人たちには、長いこと車を停車していたので、ご心配・ご迷惑をお掛けし、下山後には、てしゃまんくの里の掃除をされているご婦人に、おいしいお弁当を差し入れして頂いてしまった。温泉に入った後、感動しながら喰らった。うま過ぎて体が貪欲に吸収し、染み込んでゆくのがわかった。
地元井川の方々は、温かかった。旅人に優しい、今もなお山里に暮らす現代の山人(やまうど)たち。
下山翌日の早朝、帰り道、富士見峠の駐車場でカモシカと30分くらい交感しあう。その間にヒルに食われ、派手に足甲から流血。富士見峠では、山中なかなか見えなかった、大無間・上河内・聖・赤石・荒川・青薙・小河内などの山々が、美しく山端を際立たせ、懐かしくも、威厳を漂わせ、眼前に存在していた。
空の彼方、神々しく見えるその場所に、自分は確かに在ったと思うと、どうにも夢心地で、その光景からしばらく目を離すことが出来なかった。
思ったこと
人(特に野生力を失いつつある現代人)の踏み入ることが少なければ少ない場所は、無為自然のままの、純度の高い光気に満ちていて、神聖な雰囲気が漂っているように感じられた。
光るように鮮やかな若草緑の地上に、黄色いような光が交錯したりしている世界。
それが、大昔は全地上が楽園だった頃の名残を、薄ら呆けた自分の野生・本能が、懐かしい・愛おしいと感応して、不思議な温かさ・幸福感に浸る所以だったのかもしれない。
その感覚が顕著だったのは、水無峠山周辺の大森林を歩いている時だった。
ある意味では、今まで自分は本当の森の姿というものを知らなかったのかもしれない。もしかしたら、水無峠もまだ序の口なのかもしれない。
兎に角、生命界・山野の奥深さを改めて思い識った。
これが、新たな境地への入り口になったりして。ならなかったりして。
貴兄の記事を読んでいて、うれしくなった。プロフィールも実にいい。私はジジイで、もはや貴兄のような山歩きはできないが、読んでいて自分のことのように楽しかった。20年ほど前まで、私は南ア山域ばかりを歩いていた(ただし、早川・鳳凰あたりと、青薙山から山伏はつながっていない)。大根沢山の下りなど、確かに苦労した。冷たい雨の中をひとり歩いたこと。誰も来ない山中で、気ままに幕営したこと。聞こえてくるけだものの声。磁石と地図を頼りに、とにかく歩いた。実に愉快だった。かつての南アは、一般コースに入ってからも、変人や汚い山男の世界だった。最近、南アですら娑婆の人があふれていると聞く。山は養老院だとも聞く。貴兄の気持ちがよく分かる。今でも、人を避けて、沢や道なし山に行くことがたまにある。ジジイの自己満足だが、少しだけ昔の山の世界に戻れた気になる。よい記事をありがとう。
時を越えて、南アルプスにおける喜びを、一人山ゆく男の心を、共有できる人に会えて私も嬉しいです。
願わくば、自分も、当時の今よりも原生的な日本山岳の只中を歩いてみたかったと思います。なので、諸先輩方の経験した世界が羨ましいです。
機会がありましたらば、その貴重な経験を、後世の人間に語り聞かせ下さい。
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