【甲斐駒】大武川 桑の木沢遡行・シルタル沢下降


- GPS
- 19:28
- 距離
- 21.8km
- 登り
- 4,169m
- 下り
- 4,192m
コースタイム
天候 | 1日目 曇り、2日目 霧後晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2023年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
○桑の木沢 ・桑の木沢探勝路はかなり荒廃しており、もはやあまりあてにできない状態と思われる。 ・桑の木沢橋より下流も楽しめるので出合から遡行すると良い。 ・黒戸噴水滝、奥の大滝共に左岸から巻くのが良いと思われる。 ・多段100m滝は大高巻きせずに登ると厄介な所が数か所出てくるので、時間に余裕がなければ登り始めないほうが良い。 ・1780m付近の幕営適地はかなり快適である。 ・最後のゴルジュは登れないもしくは難しいCS滝が連続して出てくるため遡行困難である。高巻きも厄介であるため、安易に入らない方が良い。 ○汁垂沢 ・桑の木沢と比べると特に難所は無い ・大滝の巻きは右岸に古い残置ロープがある ・下部は堰堤が連続する。地理院地図に記載のある車道は荒廃しており渡渉も必要。 ・ヤマビルは下流の方で3個体程度見かけたのみで、少なかった。 |
その他周辺情報 | 【他の記録】 ○桑の木沢 ・登山大系:遡行図が不正確でよく分からないが、1800m台のどこかで左の枝沢へ入っていると思われる。原典は岳人307号らしいのでそれを読めば分かるかもしれない。 ・紫山岳会の大武川遡行記録集:3回分の記録が載っているが、いずれも本流を完遂できずに中退している。最も上流まで遡行している1975年の記録では、1820m左俣を遡行している。 ・グループ沢胡桃:1600mまで遡行して黒戸尾根へ詰めている http://sawagurumi.org/2015/10/03/%E5%8D%97%E3%82%A2%E5%A4%A7%E6%AD%A6%E5%B7%9D%E6%A1%91%E6%9C%A8%E6%B2%A2/ ・あかつきクライミングスクール:黒戸噴水滝の登攀 https://www.akatsuki-climbing.com/%E9%BB%92%E6%88%B8%E5%99%B4%E6%B0%B4%E6%BB%9D-%E7%99%BB%E6%94%80/ ○シルタル沢 ・登山大系:桑木沢の項で3行程度の言及がある他、大武川のその他の沢の項でも同内容の記述がある。 ・グループ沢胡桃:http://sawagurumi.org/2016/06/11/%E7%94%B2%E6%96%90%E9%A7%92%E3%80%8A%E6%B1%81%E5%9E%82%E6%B2%A2%EF%BD%9E%E5%B7%A6%E5%B2%B8%E5%B0%BE%E6%A0%B9%E4%B8%8B%E9%99%8D%E3%80%8B/ ・hinapiyo:http://hinapiyo.la.coocan.jp/diary/diary_yama.cgi?2019_05_sirutarusawa 【地名】 ・篠沢本流と桑の木沢の出合にある2つの滝のうち、篠沢の滝には「梯子滝」の名がある。(現代登山全集5) ・黒戸噴水滝は登山大系では大滝とされ、朝日滝〜くの字滝の名称も大系には記載がない。これらの名称は、昭和61年に桑の木沢探勝路が整備された時に付けられたのではないか。 ・シルタル沢の大滝:固有名があっても良さそうな立派な滝だが特になく大滝と呼ばれている模様。 |
写真
装備
備考 | ・ラバーソール推奨 ・ロープは50m1本 ・カム類7本 ・あぶみは持参したが使わなかったものの、使った方が楽なところはあった ・ブヨと思われる虫が多かったので、この時期行くなら虫除けがあると良い。 |
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感想
【計画の経緯】
大武川桑の木沢は、アクセスしやすい立地にあるのに近年のちゃんとした記録が見当たらず、登り応えもありそうだったので、近々訪れたいと思っていた。そろそろ雪も消えただろうという5月に、強力なパートナーを確保できたし、天気も何とか持ちそうなので、行ってみることに。
【山行】
○入渓まで
林道桑の木沢線のゲート前で出発準備をしていると、いきなりヤマビル発見。先が思いやられる(結局、杞憂だった)。
今回は桑の木沢を出合から遡行したいと思っていたので、降りやすいところで早めに篠沢に降りようと思っていたが、雑談しながら歩いているとつい進みすぎてしまい、急斜面を下って篠沢へ向かう羽目に。幸い、何とか歩いて降りられる斜面だった。初同行のharuka-がここで大丈夫そうだったので、この先も大丈夫そうだと安心する。
○桑の木沢遡行 1日目
篠沢に降りると水は濁っていて、やはり前日の雨の影響はある模様。少し遡ると二俣で、右が目指す桑の木沢。水量は同じくらいで、桑の木沢の方が明らかに流域が狭いのに、意外である。遠目には登れなさそうに見えた最初の14m滝も近づいて見ると登れそうで、tamoshimaがフリーソロで取りついてみたが、悪くなってきたのでロープを引き上げてリード。結局プロテクションは満足に取れず、慎重に登った。
すぐに出てくる次の11m滝も結構立派。左から激シャワーで登れそうにも見えたが朝からトライしたくもないので左岸巻き。ここもワンポイント悪く、一応ロープを出した。
その先で沢はゴルジュ状になり、小滝を2つほど越えると堰堤。いったん林道に上がり、堰堤工事用道路を再利用したような探勝路で凡流部をショートカット。と目論んでいたが、探勝路はもはや大荒れで、橋もボッキリ折れている。結局殆ど沢歩きで上流へ向かっていくと、左から濁った支流が入ってきて、その上流で水は澄んだ。
探勝路開設に伴って名付けられたのであろう、10m前後の滝を楽しく登っていくと黒戸噴水滝が見えてくる。一応登られている滝ということで、ラインを追ってみるが、どう見てもかなり厳しそうで、やってみたいとは思えない。少々滝見休憩をした後引き返し、左岸から巻き始めたが、結構悪い。所々残置ロープもあったがあまりあてにならず、適当に巻いていくと下部と上部の間に行けそうなバンドが見えてきたので、そこを進む。 見えてきた黒戸噴水滝上部のひょんぐりはこの上なく素晴らしいもので、大感動。尾白川噴水滝や七人滝等、これまで多くのひょんぐり滝を見てきたが、この滝には敵わない。浴びたり記念撮影したりして堪能した後、再度左岸へ戻って巻いていく。今度はさほど悪くはなく、うまく滝の落ち口に出た。
その先暫くはちょっとした小滝のみだったが、8mCS滝は曲者だった。下部はmaruが空荷で登った後お助け紐を使い、上部もtamoshimaが空荷で登ってからお助け紐を使った。3段42m滝は快適に登り、絶望的な奥の大滝の下で再度休憩。
奥の大滝はどちらから巻くか迷った末、左岸を選択。ここは大きく巻きすぎないのがポイントで、ちょうど落ち口にスムーズに巻けた。さらに遡行を続けると水は伏流し始め、残念な感じになるが、多段100m滝まで来ると、また水が出てきて一安心
この多段滝は最下段が絶望的なので全巻かとも思ったが、この最下段だけを左から巻くことも出来そうに見えたので、試してみることに。tamoshimaリードでおっかないトラバースをこなすとうまく最下段の落ち口に出ることができ、そこからは快適な登攀、かと思ったが徐々に悪くなってきてロープを出す。冷たい水に苦戦してリードすると、今度は垂直な段が出てくる。ここはmaruがリードし、さらに登っていくと、下からは見えなかった最上段が姿を現す。この下部は易しそうなのでフリーソロで登っていくが、途中から難しくなってきて、右に追いやられる。最上部は水線登攀不可のため左岸壁にmaruが活路を見出しリードしていったが、難しくなさそうな見た目なのに物凄く時間がかかっている。虫もたかってきて不快で、早く登ってくれないかとも思っていたが、フォローしてみたら極悪で、しかも枯れ木にホールドもプロテクションも求めざるを得ず、リードは非常に怖かっただろう。ここを登ったのは失敗で、右岸か、左岸にしてももっと大きく巻くべきだったのだろう。
100m多段滝が終わると急に平穏な沢になり、幕営地として良さそうだとあたりを付けていた1780mを見てみると、目論見通り、素晴らしい幕営適地があった。快適に鍋と焚火を楽しんだ後、就寝。夜に少し雨が降ったが、タープをしっかり張っていたので問題なかった。
○桑の木沢遡行 2日目
朝はのんびりしてしまい、完全に明るくなってからの出発。すぐに沢がゴルジュ状になったかと思うと、いきなり極めて困難そうな7mCS滝。maruが挑戦したそうな気配を出してはいるが、ここで時間を使うわけにはいかないので、さっさと諦めて巻きにかかる。しかし、もっとも小さく巻けそうな右岸枝沢にも多段50m滝があり、容易に巻けそうではない。が、本流の滝よりは容易そうなので突っ込んでいく。案の定、ロープを出してワンポイントでカムA1することにはなったが、それだけで済んだ。後半も念のため、先行していたharuka-にロープを引いてもらって、無事多段50m滝を抜ける。この滝さえ登ってしまえば、本流に戻るのは拍子抜けするほど楽だった。
しかし、本流に戻るとすぐに10mCS滝が立ち塞がる。ここはmaruが苦戦の後フリーで突破し、フォローはエイドして何とか突破。その後の2つのCS滝は比較的登りやすく、また左から枝沢が入るが、ゴルジュが続く右へと進む。14m樋状滝はmaruがリードして越えたが、その次の20mCS洞穴状は、奥まで見に行ってみてもどうにもならない。
左岸もずっと壁なので、右岸のスラブを登って巻いていくことにするが、ここも一応ロープ使用。しかし登れども登れども右側に壁があり、なかなか回り込ませてくれない。それでも、途中で切れそうなバンドをひやひやしながら登り続けると、最後には右の壁が終わり、回り込むことができた。今までの悪い地形が嘘のような穏やかな斜面を下っていくと本流に戻ったが、もはや水はなく、沢は終わり。僅かな詰めで黒戸尾根登山道に出た。
○シルタル沢下降
黒戸尾根の登山道は単調で飽きるが、この時期は躑躅の花が賑やかであった。1600m圏の鞍部より下降を開始すると、最初は穏やかで下りやすい。徐々に水が出てきて滝も出てくるが、簡単に巻き下れるか懸垂下降できる滝ばかりで、桑の木沢の厳しさに比べれば屁でもない。想像以上のペースで下降は進み、大滝の上に至ると、残置ロープも出てきて人臭くなってくる。
残置ロープに導かれて大滝を巻き、さらに下ると堰堤が出てきて、これで道路が出てきて沢下降は終わるかなと思ったが、地形図に載っている道路なんてものは実質的にはなく、何度も渡渉を繰り返して、林道桑の木沢線に戻った。
【総評】
桑の木沢は、アクセスが良く、景観も素晴らしく、登り応えもある良溪であった。巻くのも難しい場面が結構あり、上級者向け(4級上程度)のため、手応えのある遡行を求める方にお薦めである。 程よく増水していて雪もない、ちょうど良いタイミングで遡行できて非常に満足した。
シルタル沢は登れる滝が多く、困難な巻きもないと思われるため、初級者が日帰りで遡行するにはちょうど良いと思われる。篠沢や桑の木沢を遡行した場合の下降ルートとしてもちょうど良い。
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