竜神峡 明山 北東尾根

天候 | 快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2015年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
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コース状況/ 危険箇所等 |
最近林道入り口に登山ポストができました。 コース状況については先回のヤマレコをご覧ください。 危険箇所だらけです。 リンク http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-566561.html |
その他周辺情報 | ダム駐車場近くにおそばやさん一軒あります。観光的なものは竜神吊橋のほうに集中している模様です。 |
写真
装備
備考 | 藪こぎで目を守るためにゴーグルがお勧めです。100円ショップのでも平気です。 肌を守るために雨具などの厚手のジャケットと、ゴム引きか革の手袋も必須です。 ゴム引き手袋(タフレッド)は登はんでも便利でした。 しかし一般論としては脱げる可能性を排除できないところが悩ましいです。 ヘルメットもかぶりましょう。 小さいホールドに立つので、底の固い登山靴がお勧めです。 簡単な懸垂下降ができるように登はん具一式を用意しましたが、今回も出番はありませんでした。 |
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感想
先回の奥久慈男体山に次いで、今回は竜神峡にはいり、明山の北東尾根に帰ってきた。
竜神峡は自分にとって、秋から冬にかけてはいる山だった。日照時間は短いし、霜が降りるのでどうしても地面は湿りがちになり、じめじめした陰気な場所という印象を持っていた。一方で、どこまでも続く紅葉、氷結した竜神ダム、薄氷に硬く覆われた岩壁、そして葉をすべて落として細く尖らせた鉛筆で描いたような冬の山といった圧倒的な美しさがあることも強調しておきたい。
今回はどうだったか。自分のこれまでもってきたイメージとはまるで異なる、柔らかで、さわやかな山行きとなった。日差しは高くて強く、空は憎らしいくらいに青い。しかし山々の新緑は空の青さに負けないほどの緑だ、それでいて夏山の緑のように深くはない優しい緑だ。
竜神ダムの駐車場に車を止めた。つり橋の駐車場は大型連休後も込んでいるかもしれない。ダムの駐車場も朝9時でほぼ満車状態だった。むしろスペースが残っていたことが幸運だったのかも知れない。登山靴に履き替えて、亀が淵に続くダム沿いのハイキングコースを歩いた。
多くの生き物たちに出迎えられた。カナヘビ、幾種類ものクロアゲハ、ごついけれどシャイなクマバチ、そして名前のわからない無数の鳥たちの鳴き声。トンボはアカトンボの一種ではないかと思われるが、春からアカトンボというのも面白い。
暖かい時期の登山は汗との戦いというのが自分の認識だった。ましてこれほどの晴天では搾れるほどの汗が出るかもしれないと思っていたが、予想に反して風は乾いていて涼しかった。藪に入るまでは薄着で十分と、半そでのTシャツ1枚で亀が淵まで歩いた。
途中お気に入りのスポットで撮影。今までは秋、冬の写真が中心だったが、今回は生命をたっぷり感じさせてくれる春の写真だ。これまでずっと支流を撮影していたと勘違いしていたが、竜神川そのものだった。
新緑の竜神峡にはしゃいでいるうちに、今回登る明山北東尾根が見えてきた。優しい新緑に覆われている竜神峡の中で、ここだけは岩が露出している。あそこを登るのだ。岩稜は歯車のようにいくつかのギャップを抱えて頂上へと続く。頂上は再び新緑に覆われている。
亀が淵に着き。藪こぎ用にゴーグルを用意する。初挑戦のときはゴーグルなしだったが、草が伸びている春にはゴーグルが必要だろうと判断したのだ。
亀が淵から腐りかけている橋を渡り、倒木を乗り越え、これまた腐りかけている階段を登り、笹藪の斜面に取り付いた。実はこれは無駄で、亀が淵に下りずに廃道となっている橋を渡っていくほうがいい。取り付きに手こずっている最中に、亀が淵に家族連れがやってきた。立ち入り禁止の柵を超えて、今にも落ちそうな足場を登っていくおじさんは、ルールを守らない最近のいけない大人の典型に写ったに違いない。
あとは笹薮をかきわけつつどんどん高度を上げていくだけだ。竜神峡の新緑の美しさから想像していたのとは異なり、笹薮はまだ冬の様子に近く、若干笹の新芽が伸びている程度であった。
笹薮を登りきると土つきの急斜面が出る。笹薮も急斜面だったが、草の生えていない土の急斜面は登りづらい。わずかな笹を探してつかみながら慎重に急斜面を登りきると、急に道が開けてくる。
この後、アップダウンを2、3度繰り返しながら高度を上げていく。沢をたどっていく一般ルートと異なり、尾根伝いに歩くこのコースは明るい。踏み跡は明瞭であったり途切れて藪こぎになったりするが、基本的には尾根筋をただただ忠実にたどればいい。下っているように見えてもそれほど大きな下りではないことは歩き出せばすぐにわかる。踏み跡は時々人には到底くぐれそうもない倒木の下を通る箇所もあったので、トレースといっても人間がつけたものではないのかもしれない。
程なくして最初の岩が登場した。ヘルメットをかぶった。高さは2mにも満たないが正面は垂直。手がかりがなかなかつかめない。先を急ぐのであれば巻くことも容易であるし、少し右から登れば難易度はいくらか下がる。正面の垂直壁もそばの立ち木を利用して登れば容易にこなせるが、ここは意地を張って試行錯誤の上に正面の垂直壁を登った。
一つ目の岩を超えてすぐに二つ目の岩が挑戦してきた。こちらも高さは2mにも満たないものであったが、最後に体を引っ張りあげていく手がかりが草つきで滑りやすかったり、ポロリと欠けたりしてどうしても落ちてしまう。また、足がかりを葉探しているうちに手の力が尽きてしまったり。最後のほうは岩をつかむ握力がなくなってしまった。ここで力を使い果たしてしまっては、核心部分を通過できなくなってしまう。今回は課題2は不合格ということで巻いて登ることにした。
だんだんと視界が開けてきた。そして核心部分の壁が立ちはだかった。こんなに急でこんなに高かったのか?途中でホールドが一つ崩れたら墜落ではないか?去年暮れに登ったときには感じなかった恐怖心にしり込みしたものの、よくコースを見てみると、さきほどのボルダリングの課題に比べれば、ホールドもはっきりしている。あとはすっぽ抜けるホールドと、そうでないホールドとが見極められるかどうかだ。それは奥久慈男体山のときと基本的にやることは一緒だからと自分に言い聞かせ、さっきの「課題」に比べればつかむところはたくさんあるじゃないかと励ましつつ、高度を稼いでいく。ここからは樹木や草はだんだんとまばらになる。
ひとしきり登ったところで平坦なルートが若干ある。そして先回来たときと同じ謎の熊手が放置してあった。熊手は藪の中に放り投げられるようにして放置されていた。これは自分の仕業か、嵐のせいかあるいはその後誰かが通過したのか。
熊手を過ぎると植物のほとんど生えていない岩壁を一気に攀じていく。ところどころ垂直の壁があることは、ここまでの登はんとは大して違いがなく、周囲に視界を遮ることのない開けた岩壁を登っていくのであるが、ここまで来ると恐怖心はほとんどなくなってしまった。好天のおかげでビブラムソールの食いつきがいいこともクライミングを後押ししてくれただろう。右も、左もスパッと切れ落ちて、竜神峡の山々が見える。武生山が見える、一枚岩、篭岩山が見える。
核心部分を登りきると、今回の山行きのお目当てである烏帽子岩(筆者が勝手に命名)が見えてくる。しかしまだ簡単には烏帽子岩にはたどり着かせてもらえないのだ。小さいギャップ、そして大きいギャップをまたがなければならない。両手でギャップの向こう側のホールドに手をつく。この段階で相当前のめりになっているので、もしもギャップを超えられなければ戻るのは一苦労である。片足をギャップの向こう側のホールドに置く。そしてこの両手で体をひきつけるように超えるのだが、その際にホールドがすっぽ抜けるのではないかという恐怖に駆られる。むろん、ひきつけるというよりも残していた足を蹴り出して、両手のひきつけは最低限にどとめればいいし、実際にそうするのだし、事前にホールドの利き具合は確かめているから絶対大丈夫なのだが、それでもということを考えるとためらわれてしまう。
そんな恐怖心を2度ばかり克服して烏帽子岩(筆者勝手に命名)に到着した。竜神峡側の谷では、さっきから小型の猛禽類がギャーギャーとやかましい鳴き声を上げながら空中をパトロールしている。獲物を探しているのであれば、黙って旋回して狙いをつけ、急降下すればいいのにと思う。獲物を探すというよりは獲物に避難を促しているのではないかとさえ感じられた。
この烏帽子岩はああいう猛禽類が獲物を解体し、胃袋に収めるところなのであろう。ふんや、鳥の羽などが散乱していた。天狗の腰掛とか天狗岩と呼んだ方が良かったかもしれない。岩の上では乾いた風が吹いていて、日差しは強いけれどもあまり暑くない。登はん中に見ていた竜神つり橋、竜神ふるさと村、武生山と宝剣洞展望台が見える。あの展望台からなら、もしかしたらこちらのヘルメットくらい識別できるだろうか?それともこんなところに人がいるとは思わないだろうか。
ひとしきり休んで新緑の奥久慈の山々を堪能してから、もうひと歩き。三つのギャップを超えていく。特に最も山頂側にあるギャップは筆者が松の木ギャップと呼んでいるギャップで、山頂からのアプローチを図っていたころには常に松の木ギャップで撤退していたのだ。ふもとからののぼりで通過する場合、ギャップに立っている松の木をうまく使って登ることが可能なのだが、山頂からこのギャップを通過する場合、松の枝のどこを使えば安全かを確かめることが難しいのだ。
ただ、今回は松の枝は使わず、なおかつギャップをまたがずに底まで降りてから登り返すやり方を選んだ。ふもとから進んでくると、山頂側の岩壁にはギャップの底からてっぺん近くまで割れ目が走っているのが見えて、その割れ目をうまく使うと登ることができそうだったのだ。
割れ目の底まで降りると、頂上側の岩稜の南東面が見える。表面に侵食でできたらしい1m程度のくぼみがいくつもあり、そこからオーバーハング気味になりながら岩稜につながっていく。そちらはとても登はんできそうには見えない。おとなしくギャップを岩の割れ目に沿って登ることにしよう。先回はここで少々難儀した。ギャップをまたぐのが少し恐ろしいからだったのだろう。ギャップの下から登り返すと手数は増えるものの、ホールドの利きを確かめながら登れるのだ。背中に松の木を背負うようになって、いつでもホールドのひとつとして使えるのであるが、またもや少しだけ意地を張って岩伝いに登っていった。ただし、先回同様、ゴールは頂上側の岩稜にある細い立ち木をつかんだ地点であるのだが。
さあ、これでもっとも危険な箇所は過ぎた。頂上までの岩稜を足元に注意しながら登り、いよいよ山頂直下の藪に突入した。山頂からは人の声がする。いきなり藪の中ががさごそいったら気味が悪いだろうと気にしながらやぶを掻き分けた。そして「こんにちはー」といいながら山頂に飛び出した。
山頂には男性のハイカー2名がいらした。ヘルメットやジャケットをしまいながら雑談をしているうちに、お二人のうちのおひとかたは筆者の先回の北東尾根のレコを読んでいらしたようだ。ありがたい。また記録を書かせていただきますと申し上げて下山した。
フィックスロープのある急斜面をくだり、標識のあるコルから沢筋へ下っていくとじめじめした沢筋をたどるということになっているのだが、前日土曜日の雨にもかかわらず沢は乾いていた。晴天で、空気も乾いていたので、新緑の中の明るい下山となった。
亀が淵へ続く最後の階段。今までのハイキングでは、ここは秋には濡れて滑りやすく、まして冬には凍結しているというちょっとした危険個所なのだが、今回は乾いていて、手すりにつかまる必要もなく自然に降りることができた。階段を下りる前、向かい側の斜面でごそごとと音がするので目を凝らしてみると、テンだかイタチだかが食物をあさっていた。筆者に気がつくとあわてて姿を消した。
かくして無事に亀が淵に到着。ここは小さいながらも渡渉がるのだが川に積み上げてある石が水にかぶらない程度の水量だったため、靴を濡らすこともなく対岸まで歩くことができた。さあ、あとは竜神峡の緑を眺めながら駐車場までひとあるきだ。
今回はボルダリングごっこで相当無駄に腕の筋力を使ってしまったため、帰宅後ずっと一の腕が筋肉痛である。まだ脚のほうも山歩き翌日までは疲労が残り、改めて冬場のサボりのつけを感じたのであった。
takahashisunさん、こんにちは。臨場感のあるレコを楽しく拝見いたしました
明山、小生とは一日違いでしたね。お会いできず残念
一枚岩、篭岩山、奥久慈男体山と明山とがほぼ一直線上にあるとは気が付きませんでした
Kilkennyさん、
コメントをありがとうございます。篭岩山は男体山からだと見つけにくいかも。
明山側からだと篭岩山山頂手前の岩壁が特徴的なのですが。
今回は1日違いでしたが、私も今年は奥久慈界隈にもっとたくさん行くと
思いますので、きっとお目にかかると思います。
この山域に似合わない大型70Lの赤いザックを背負って
頭に帽子代わりの手ぬぐいを巻いている人がいたらたぶん私です。
(ザックは小さいこともあります)
30日は奥久慈トレラン、好記録を祈ってます。
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