鬼ヶ城の大雪渓 〜濁川より廃道の火打山登山道を辿って〜


- GPS
- --:--
- 距離
- 24.3km
- 登り
- 1,644m
- 下り
- 1,644m
コースタイム
- 山行
- 12:15
- 休憩
- 0:45
- 合計
- 13:00
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
日曹第三発電所から奥は現在関係者以外通行禁止になっているが、かつて火打山の登山道にも利用されていたことを尊重し、登山目的という立場で通行させてもらった。通過の際は工事の邪魔にならぬよう早朝の入山、夕方以降の下山とした。日曹第三発電所から濁俣川の取水口(標高900m)までは良く整備された管理道がついている。その先は人工物は一切なく、気を遣うことなく登山に集中できる。かつての火打山登山道は完全に自然に戻っており、その痕跡を確認することは不可能であった。取水口から先は沢登りとなるが、濁川はゴーロ状の優しい沢である(増水時は厳しい)。雄大な鬼ヶ城のゴルジュに囲まれた大雪渓は真夏でも残り、1750mの滝の落ちる壁で行き止まりとなる。突破はそれほど困難ではなく、ある程度の沢登り経験は必要と思われる。今回は鬼ヶ城の雪渓までの往復であるが、かつての登山道は雷菱の麓に広がるなだらかな兎平(上ノ平)を緩登しながら、天狗の庭を登り切った稜線で現在の登山道に合流していた。合流点には古い看板が残っていたことを記憶している。 なお、ヤマレコを検索すると火打山からバックカントリーで澄川または濁俣川を経由して日曹第三発電所へ下山する記録がいくつか見られた。 |
写真
感想
(感想ひと言)
火打山の矢代川登山道は変化に富む大自然を満喫できる魅力のあるコースであったのに廃道になってしまったのは残念である。現在はバックカントリーで濁俣川へ滑り込んで鬼ヶ城のゴルジュを通過し第三発電所へ下山する記録が僅かながら見られる程度である。
(山行状況)
日曹第一発電所のゲートから日曹第三発電所のゲートまでは標高差240mの舗装道路を4.4km歩く。道路の北側には立派な杉並木があり、矢代川との間には水源かん養林の杉林が広がっている。第三発電所のゲートからは一旦下り吊り橋で濁俣川を渡りツバクロ尾根末端にある日曹第三発電所の脇を通過する。取水口への管理道は階段を上がった施設の奥から澄川左岸から回り込むようにして尾根に取り付いている。その先、管理道は圧力水管に沿って上がっているが、730mの分岐点では左折しないと索道の施設で行き止まりとなる。左折して橋で水管を越えてしばらく登ると沈砂池のある水槽小屋(約900m)の広場に出る。道は尾根を直進する道と左前方への水平道の二股になっており、ここは左へ進む。所々湿地帯の通過があり脇には巨大な水芭蕉の葉やリュウキンカ、サンカヨウの花が見られる。濁川の音がしだいに大きくなってくると、まもなく取水口の施設に出て管理道はここで終わる。取水口にはかなり古そうなコンクリート製の建物や水路が残っており歴史の深さを感じる。
今回は時期が早いためか濁川の水量が多く遡行するには厳しい状況。以前訪れた時は6月末であったため飛び石伝いで遡行できる水量であった。ルートを変更し、かつての登山道があったとされるツバクロ沢(濁川の枝沢)を遡行した。小川のような沢のため途中から薮が多くなって障害物となりペースダウン、またツバクロ沢源流から濁川に移動する際の強烈な薮こぎでもかなり時間をロスした。標高1130mで降り立った濁川はまだ水量は多いがぎりぎり右岸水際沿いを遡行した。標高1230mあたりから雪渓が出現し始め、1250mの狭窄部から上は安定した雪渓が連続するようになった。しばらく雪渓の登行を続けると両岸が切り立ち鬼ヶ城のゴルジュ地帯となり鬼ヶ城の大雪渓が始まる。このあたりはガスが発生しやす地形で今回もガスが立ち込め幻想的な雰囲気に包まれた。雪渓の側壁を幾筋もの小沢が流れ落ち、湿地になった斜面には水芭蕉やリュウキンカの見事な花畑となっていた。花畑はごく普通にあちこちで見られた。鬼ヶ城の大岩壁から糸のように垂直に落ちる2本の無名滝は印象的であった。また頭上には大岩壁を住処としている岩燕が乱舞していた。標高1750m付近で雪渓の谷は滝の落ちる壁に三方を囲まれて行き止まりとなる。
今回は時間がなくここで往路を引き返した。以前は比較的緩やかな左俣から雪渓を詰めて兎平(上ノ平)に上がった。まだらに残雪の残る広い兎平は方向感覚がなくなるほどで小沢に沿って稜線を目指した。天狗の庭を登り切ったあたりの稜線で現在の火打山登山道に合流し火打山をピストンした。入山のアクセスが良かった当時は濁川の状態さえ良ければなんとか日帰り往復可能であった。
下山を始めるとますますガスが濃くなり、一時は夕方のような暗さになった。小沢に迂回しないで取水口まで濁川を遡行できれば片道1時間程度は短縮できると思われる。取水口からは管理道をありがたく通らせてもらい水槽小屋あたりまで下るとガスが晴れた。第三発電所ではまだ工事が行われているようだったので、邪魔にならないよう少々時間調整してから通過した。あとは長く単調な道路歩きで第一発電所のゲートへ下山した。
(参考情報)
矢代川には下流から日曹第一・第二・第三発電所があり日本曹達(株)二本木工場に電力を供給している。2008年3月にこれらの発電所は上越エネルギーサービス(株)(JES)に譲渡され、現在はJESが管理しているようである。以前(10年以上前)はそれほどセキュリティーは厳しくなく第三発電所の直前のゲートまで車で入れ、アクセスはかなり楽であった。日本曹達(株)二本木工場は1920年(大正9年)創業、日曹第一発電所は1927年竣工とかなり歴史が古い。
(参考資料)
「越後の山旅 〜矢代川・濁川・火打山〜」(藤島玄 著)
鬼ヶ城の雪渓のある沢をヤマレコの他の記録では「濁俣川右俣」としているが、ここでは「越後の山旅」に従い濁川とした。
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