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Yamareco

記録ID: 6802141
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ハイキング
御在所・鎌ヶ岳

1014m独標の森・七人山

2024年05月04日(土) [日帰り]
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過去天気図(気象庁) 2024年05月の天気図

感想

山行記録674 令和6年5月4日 (土)
  森を巡る 〜1014m独標の森・七人山
         単独 地図:御在所山

 連休も後半に入った。どうやら5日までは天気がいいらしい。1回ぐらいは山へ行きたいな。とは言え…連休。どこへ行っても人であふれているのではないか、などと思いつつ、久しぶりに郡界尾根から七人山の森を巡ってみようか。距離は少し長めでも標高差が小さいから、28日の入道に引き続き、足慣らしpart2としてちょうどいいだろう。
 4日だったら高気圧の中心が鈴鹿の山付近にデンと構える予報だし、上空に暖気が流入する予報もあるから、大気の状態も安定の方向である。
 そんなわけで、早朝の湯の山街道を西へ走る。それにしても連休…。一ノ谷の駐車場は朝5時前で満車に近い。「武平峠はどうなんやろ?」トンネルをくぐり、いつもの駐車場に入ってみる。とりあえず半分空いているからOKかな。
 5:18出発。雨乞岳へのルートに入る。植林の縁のなだらかな植林からトラバース道にさしかかるあたり、少し先の斜面で何かが動いた。ヤマドリ。サッサと斜面に消えて行くのを見届ける。またしばらく歩いて、ルートが付替えられた所を過ぎたあたりで、今度はニホンリス。立ち止まって眺めていると、ゆっくり森へ消えていった。朝が早いので、森の住人達はルートを行き交う人間どもを気にせずに活動しているようである。
 5:57沢谷峠到着。水を飲んで小休止。冷たい空気に包まれて静かな森。賑やかにならないうちに出発しよう。
 久しぶりの郡界尾根。今は郡の界ではなく東近江市と甲賀市との市界になってしまったが、郡界尾根の方が気分的に趣があっていい。
 2つ目のピークは迷い尾根。いつだったか北斜面に咲くミツバツツジに気を取られて、ルートを見逃がしたことがある。ここは南斜面にルートが下っている。見逃さないようにしないといけない。
 鞍部に下りて小ピークを越えると、目の前に967m独標の尾根が横たわり、ルートはその東斜面を斜めに登っている。その尾根の先の方にアオバトの声を聞きながら登っていくと、朝陽が射し込んだ尾根にイワカガミの花。まだ咲き始めのようで、鮮やかなピンクの装いで出迎えてくれたから、ついしゃがみ込んで道草。
 967m独標を過ぎて下りにかかる。この辺りが藪漕ぎだった頃は、シャクナゲの抵抗に遭って少々難儀した覚えがある。「シャクナゲこんに少なかったか?」。閑散としてしまった感もある。そんな中、シャクナゲの花が咲いている。10日ぐらい早くないか?。
 鞍部に下りると、今下った高度差分の急登が始まる。ただし、尾根を直登するのが急登で、南斜面には大きくジグザグを切ったルートが伸びている。入ってみたら、逆に緩すぎて、元のルートに戻る間に2人パーティーがいつの間にか抜いていった。
 小ピークを過ぎると程なく目の前に1014m独標の森が広がってくる。すぐ北側に小さな沢が這い上がってくると、朝陽に照らされた新しい緑に包み込まれた森に入っていく。まるで自分もその緑に染まってしまうような錯覚を楽しみながら。
 「ああ…、来て良かった…」。
 1014m独標北側の鞍部に向かって緩やかに登っていく。根元だけが立っている朽木には、キツツキなどの鳥たちが中に潜む虫をついばむために掘った穴がたくさん空いている。その上空の樹冠には隙間があって、この樹がまだ元気だった頃に陽射しを集めていた領域だろう。周囲には若い樹もある。また、足下には無数の樹の芽も出ている。この隙間を埋めるのは、おそらく1本のみ。自然界での厳しい競争である。
 林床に敷き詰められた落ち葉を踏みながら、彷徨うような気分でゆっくりと鞍部に登り着いた。どこかで腰を下ろそう。見回すと、ちょうどいい具合の根曲がりのブナ。腰を掛ける。ひんやりした風が森の中を緩やかにそよぐ。森を見渡しながらおにぎりなどついばむ。
 7時半。そろそろ多くの山屋が出発してくる時間になってきた。ピークの時間帯になる前に東雨乞を超えてしまおう。
 「ありがとう。また来ます」。
 森にあいさつして、まずは鞍部に下る。この鞍部には、いつだったか、真下から新緑に輝く樹冠を見上げたブナがある。天気も好いから、その時と同じように根元から見上げてみる。「あれ?、枝、こんな南ばっかりに偏っとったっけ?」。それに、見慣れない赤い花。葉っぱを見ると「あれ?、ハウチワカエデ?、ブナとちがうの???」。よく見ると、確かに今、ブナの根元に立っている。そしてハウチワカエデはすぐ脇から枝を伸ばしてきている。
 それにしても、ハウチワカエデの花は初めて見る。というか、今まで目に入っていなかっただけだと思う。イロハモミジの花だったら毎年楽しんでいるのに、その何倍も大きな花を見事に見逃していたということか。
 さて、登りにかかろうか。いつもキツいと感じる登りなので、今日はできるだけ鼻で息ができるペースに徹することにして、足も機械的に出してただ体重を載せるだけ。というわけで、ノソノソと登り始める。
 森の奥から、キツツキのドラミングが聞こえる。たぶん1羽ではない。音の高さが3種類。3羽で縄張りを主張し合っているのか、それとも時期的に求愛のドラミングなのか。代わる代わる樹をつつき合う音を楽しみながら登っていく。息が弾んでいないので、森のざわめきなども楽しめるというものである。
 20分ほどで平坦地に着く。昔は何かの集積地にでもしていたのかな、などといつも思う平らな場所。少し陽射しが強くなってきたので、水をひとくちついばんで、すぐに出発。
 この平坦地を境に森が薄くなり、次第にササが地面を覆うようになってくる。すっかり勢いをなくしてしまったイブキザサであるが、この尾根がまだ藪漕ぎルートだった頃は、ここの山に限らず鈴鹿の山は、背の高さぐらいのササの海を泳ぎながら登っていた。鈴鹿の名物とも言われた藪漕ぎであるが、2000年ぐらいからナリを潜めてしまった。御池やイブネなどのように丸坊主になってしまった山も珍しくない。生態系の変化とともに、表土の流出や土砂災害などの心配が年々大きくなってくる。シカの食害説がよく聞こえてくるが、気候変動の影響もあるかもしれないし、複雑に絡み合っているんだろうと思う。いずれにしても、その元凶は人間社会なんだと思う。弱ってしまったササを見ながら登っていると、いつもそんなことばかり考えてしまう。
 そんなことを考えながら、何の気なしに手を掛けた樹の手元に異様な物体!。「ドキッ!」として思わず手を離して確かめる。大きなナメクジ⁉。幹に生えたコケを布団のようにして「寝転がって」いる。コケが水をたっぷり含んでいて具合がいいのかもしれない。
 この子、立山で見たことがある。「ヤマナメクジ」。日本の固有種で、時に15cmほどにもなるヤツが居るという。山に結構ありふれているヤツらしく、キノコを食糧としているらしい。それにしても緩い斜面で良かった。3点確保の手元にヤマカガシが居たとか言った日には、噛まれるか転落するか…。クワバラクワバラ。
 東雨乞から南へ派生する尾根に乗った。傾斜が緩むと足取りは軽くなる。やはり鼻で息ができるペースで登ってきただけに、足もそれほど疲れていない。これを続けていけば、ペースも上がってくるハズである。というわけで、ノン気に歩いていると、足下にハルリンドウ。「お久しぶり」。しゃがみ込んでごあいさつ。
 8:19東雨乞岳到着。雲一つない青空。空気もこの時期としては澄んでいる。陽射しは強いが緩やかな風が気持ちがいい。琵琶湖を眺めながら水をひとくち。
 久しぶりに雨乞岳へ寄ってもいいが、そんなヒマがあったら七人山でゆっくりしたい。そろそろ登ってくる人も増えてくるだろう。サッサと退散。
 鞍部への下りは、礫質の粘土地盤のルートは踏み固められて磨かれてツルツル。「そうやったな〜」。雨乞岳へのメインだけに無理もない。そう思いながら…。
 この斜面は比較的イブキザサの背が高い。さすがに身の丈を越えるわけではないが、昔のように両手を広げてササをつかんでブレーキをかけながら下ることができる。「ササやと思て握ったらイバラやったことあったな〜」。そんなことを思い出しながら…。
 何パーティーかとすれ違いながら下る。やがて傾斜が緩み、七人山の西の鞍部に到着。クラ谷のメインルートを離れてそのまま七人山へと登っていく。
 先に2人パーティーが登っていくのが見える。たいがいは独標まで登って「何にも見えない」で終わって引き返すだろう。ノソノソ登って独標を素通り。奥の方へ入っていく。
 山頂部に上がると、奥には新緑の光あふれるブナの森。落ち葉を踏んで、半ば彷徨うように入っていく。陽射しの暑さと風の冷たさがちょうどいい具合に混ざり合う。自分も緑に染まってしまうような透過光の中、鳥の声を楽しみながら森の中ほどを過ぎて小さな高まりを越える。
 さらに山の東端へと向かおうとすると、「あっ、サル!」。そこそこ大きなサル。立ち上がれば1m50ぐらいはありそうな。向こうも気づいたようで、ゆっくりと森の向こうへ歩いて行った。群れが居るのか、はぐれザルなのかはわからない。もちろんここは山の住人達の庭。そこで遊ばせてもらっているだけである。自然の摂理として距離を取らなければならない。今日はここまでにして、森の真ん中あたりまで戻ることにしよう。
 どこかに腰を下ろしたい。そんなことを考えつつ…。なだらかな山頂部の森を彷徨い歩き、大きなブナの樹の根元に陣取る。
 腰を下ろす。驚くほど音がない。風はあるが、芽吹いたばかりの葉は柔らかく、ざわめくまでには至らないのかもしれない。聞こえるのは鳥の声、キツツキのドラミング、時々森の住人が落ち葉を踏む音…かな。たまにはシカの一声も。それから、周囲の落ち葉から、朝露が陽射しを浴びて乾燥するのだろう、パチパチとハゼるようなかすかな音…。時折、七人山の独標に登ってくる人の鈴の音が遠くに聞こえるが、目的となる山もすぐ近くにあるからほとんど目に止められることもなく、この山を目的地とする人など皆無と言っていい。音を探しながら、森の中…。ポツンと独り…。
 ハラが減っていたのを思い出した。ラーメンを取出す。先週は調子が悪かったピーク1。調子は?…。点火する。火力は安定した。やはり道具は使わないといけないようである。
 ラーメンをついばみながら周りを見回す。ブナのドングリのカラがそこかしこに散らばっている。ブナの樹の下だからかな?。それにしても、去年の秋は不作だったと聞くから、このカラは一昨年のものだろうか?。それにしては落ち葉に埋もれていない。仮に、豊凶に地域性があったとして、この山ではそれなりにドングリがバラまかれたのであれば、実生もあるのではないか。
 ラーメンを片付けて、周囲を這いずってみる。ブナの葉はギザギザの葉。そんな感じの葉を3枚広げたような芽があるにはあるが、数は非常に少ない。それに、例えばミズナラのドングリだったらその実がくっついていることも多いので、落ち葉をめくって根元を辿ってみるが、実はついていないようである。もう少し数があれば確率的に確認できるのかもしれないが、根元をほじくることはやめておこう。
 そのほか、芽が出てカラをつけたままの双葉を持ち上げたものや、楓かな?、浅く3裂する小さな葉を2つ広げた芽があっちこっちに出ている。
 かなり陽射しが強くなってきた。そろそろ山頂に人が集まる時間帯にもなってきた。大多数が下山にかかる前に下山にかかろう。
 とはいえ、去りがたい森…。それに根元を借りたブナの樹は、森の中でも大きい。試しに直径を計ってみた。胸の高さで幹回りを計ってπで割ればいい。抱きかかえても手が全く届かないから、コンベックスをヨーヨーのように投げて幹を一周させる。そうして測ってみると1m86。3.14で割るとザックリ60cm。見上げれば樹高も相当高い。30mぐらいに育つと言われるブナ。この樹もそのぐらいあるのかな?。
 「ありがとう、お邪魔しました」。ブナに声をかけて独標に向かう。けどやっぱり去りがたい森。何度も立ち止まって、陽射しを浴びて緑あふれる森を眺めたり、樹冠を見上げたりして、独標に近づく。
 10時。雨乞ルートからの声がよく聞こえるようになってきた。帰ろう。
 「また来ます」。
 七人山に別れを告げて鞍部へと下る。靴ひもを結び直してクラ谷のルートを下り始める。雨乞を目指す人たちと何度もすれ違う。人数はそれほど多くなく、渋滞する心配もないが、この人数が東雨乞を含めた山頂に集まれば、結構混雑した感じになるだろう。
 まだまだ足慣らしなので、下りもスピードは控えめ。暗い色の岩が多いクラ谷ではあるが、明るい陽射しに照らされた森が、谷の暗さを消し去っている。ハウチワカエデも花を咲かせている。トリカブトも元気に群落を作って茂り始めている。タテヨコ互い違いに葉を出して背伸びをしているのは?…、葉が大きめなのでフタリシズカかな。1014m独標の森へ這い上がる沢を、出合からのぞき見ると、陽射しを受けた緑がまぶしい。
 いつの間にかクラ谷を離れてコクイ谷分岐との間の尾根を乗越す登りの取付まで来た。いつもなら足を引きずる登りであるが、ずっと鼻で息ができるペースを守って来たからだろうか、キツさを感じないどころか、余裕さえ感じながら尾根を乗越す。
 コクイ谷道の分岐に着く。ここは必ず休憩する炭焼きの窯跡。吹き抜ける風が強い陽射しで火照った体に心地よい。
 11:03水を飲んで出発。いつの間にかルートが高巻のように付け替わっている。目の前のちょっとした滝場の脇を、以前は水平に抜けていた。雪が中途半端に積もったときには、このたった30mぐらいの距離が通過できず、時間切れで退却したこともあった。
 廊下状とも言えないぐらいの狭い谷を抜けると、再び陽射しを受けてまぶしい新緑が出迎えてくれる。「今日は来てよかった」。至福とはこのことだろうか。そんなことを考えながら、沢谷峠まで緩く登っていく。
 峠に到着。スカイラインからの音が聞こえる。「あ〜、社会復帰のリハビリが始まるんやな」。一期一会の森に別れを告げて、最後のトラバースルートに踏み込んでいく。11:58武平トンネル西駐車場に帰還。
 もっとごった返しているかと思ったが、トンネルを抜ける車はそれほど多くはない。しかし、トンネルを抜けてスカイラインを下り始めてみると、路駐もいるし、旧湯の山街道のルートを知らないのだろう、車道を歩く山屋の姿も多い。一ノ谷から蒼滝大橋までは、人も車もかなり多い。この感じだと、御在所はごった返しているのかもしれない。
 今日はうまく人波を避けることができた。何よりも、森の大歓迎を受けた。こんなことはめったにない。これを味わってしまうから、何度も山に通ってみようという気にさせられる。そんな中毒性の高い山になった一日である。

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