滝子山・大谷ヶ丸縦走


- GPS
- --:--
- 距離
- 17.3km
- 登り
- 1,367m
- 下り
- 1,252m
コースタイム
- 山行
- 11:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 11:00
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2007年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
|
感想
コース
初狩駅(7:52)〜滝子山(12:15)〜大谷ヶ丸(14:08)〜曲沢峠(15:52)〜道証地蔵(17:03)〜笹子駅(18:41)
中央線の勝沼と高尾の間にあるエリアである。ぶどうの産地や高尾山、富士五湖など観光地の中間にあるエリアであまり降りることはないと思う。
今回の登山は一言で言うと...
危なかった。
初狩駅
5時35分に新宿に着く。山手線はこんな時間でも席が埋まっていた。ガラガラのはずでは?38分の中央線各駅停車に乗り換え。ホームが分からず逃がすところだった。逃がすと50分のになる。八王子に6時26分に着く。松本行きの中央線普通に乗り換える。中央線だけどボックスシートの中央線だ。カメラをホームに置きっぱなしで乗るところだった。電車を待っていた人が教えてくれた。一人でだいじょうぶかなあ。途中、少し寝て体調を整える。7時26分、初狩に到着。天気は晴れ。登山の準備をして52分に出発となった。
笹子川を渡る交差点で小学生があいさつをしてくれた。私もあいさつを返した。坂を登って集落に入る。入口に木の看板あり。「この宿を挨拶街道と呼び何人もかならず挨拶を交わすよう通行人に申しわたす 代官」と書いてある。タイムスリップである。この看板がどこまで本気なのか分からないが本気だとしたらどうなるか。あいさつしなかったら代官のお裁きになるかもしれない。坂を登ると向こうから小学生が歩いてきた。あの看板は町おこしの冗談だろうなんて思って、あいさつしなかったらどうなるか想像する。目を合わせたらあいさつしてきた。私も出ない声であいさつ。よーし助かった。さらに道を進む。もしいきなり横からあいさつされたらどうしよう。何十人もぞろぞろ人が出てきたら全員におはようございますおはようございますってあいさつしないといけないのかな。ああ、とうとう大人の人がやってきた。看板が冗談じゃなかったら大人でもしなきゃいけない。でも冗談だったら大人どうし知らない人なのにあいさつしたら変な人だと逆に怪しまれるかもしれない。そもそも代官なんて書いておいて本気で「何人も挨拶を交わすように」なんて書くなら、日本国憲法に代官なんて役職はないわけだから、それはつまり今自分が歩いているところは、この先日本国憲法通じずになるわけだ。現代の法知識が通じないことになる。ああどうしよう、大変なところにきてしまった。何が正しいのか法律で考えちゃだめだ。そうなったら人間の常識的な感覚で考えるんだ。人間の常識的な感覚って何だ。どうしよう、どうしよう。さっきと同じように目配せをして「お...」と言ってみたら、おはようございますとあいさつしてきたので不慣れな小さな声であいさつを交わした。大人どうしでもあいさつをするということは、子どもの教育向けのマナーポスターのようなものじゃなくて本気で何人もあいさつをしなさいと言っているわけだ、お代官さまが。早くこの街道を抜け出さなくては。
登り始め
妄想に夢中になりながら藤沢子神社に着く。舗装道路が終わって登山道らしくなってくる。少し進むと自然派なうどん屋さんと薬草膳のお店の看板。なかなか良さそうな雰囲気。道標に沿って道を進みいよいよ登りが始まる。最近の大雨のせいか小さな沢が道を横切って流れている。完全防水の登山靴でないと中にまで水が入ってしまいそうな沢だ。こんな沢を渡るのは初めてだ。一つ一つ石を確かめて渡る。ここから先、雨のせいで道はドロドロ、沢も何度も渡ることになった。途中、ストラップが外れてカメラを落としてしまいシャッターが下りなくなった。日みたいなホルダーでベルトを留めるやつだ。わざわざ別途購入したストラップなのに緩んだように外れた。カメラをザックにしまって登山を続ける。雨がぱらぱら降ってきた。レインカバーを持ってこなかった。大雨になったらいやだなあ。レインウェアはゴアテックスなので大丈夫だろうけれど、これ以上雨が強くなったらどうするか決めないと。でもどんな判断基準で登山を中止したらいいんだろう?分からないなあ。こんな緩いと遭難してしまうぞ。
降ったり止んだりが続く。他の登山者と会わない。もしかしたらこんな日に山に入るのは間違っているのだろうか。ベンチが見えてきた。人工物を見て安心する。ベンチを置く程度に人が来るところなんだ。ガイドブックにあった最後の水場だった。ザックを下ろしてボトルの水を空けてしまう。それから汲みに行ったら蛇口に手洗い用と書いてあった。飲めないらしい。水は3リットルくらい持ってきたので大丈夫だろう。ベンチに戻ったら登山者と出会う。ほかに登っている人がいると分かると、根拠はないことは頭では理解しているが、安心する。
ここまででもう疲れていた。初狩から滝子山に登るコースは、ガイドブックによれば、頂上まできつい登りが続いている。実際、楽な登りではなかった。20歩も進まないうちに立ち止まってしまう。地図やガイドブックの頂上までの所要時間は3時間55分から4時間20分とある。実際は4時間7分。登っている最中は相当遅く登っている気がしたがそうでもなかった。水場で会った人とは会わなかった。息を切らしときどき心臓がバクバク鼓動するのを感じて怖くなって立ち止まったりしながら登り続けてやっと檜平にたどり着いた。この辺りで少し平坦な道になる。ザックを下ろして一休み。ボトルに水を補給したり写真を撮ったりする。お腹も空いていた。登り始めにカロリーメイトを一袋食べたけどもうお腹が空いた。ウェアを着直すとまたがんばれそうな気持ちになってきた。雨がぱらぱら降ったりする。男坂、女坂の道標。疲れているので女坂で登ろうかとも思ったけれど、男坂がどんなか知りたい。男坂を登ることにした。ああ早く頂上に着かないか。
登り登り登り。岩が多め。5歩進んで立ち止まり5歩進んで立ち止まり。檜平から頂上までは1時間のようだがこれではいつになったら着くのか分からない。早く着かないと帰りが日暮れになってしまう。そう思うと少し急がなきゃいけないと思うようになるが体はついてこない。1時間で終わる、そう思いながら登り続ける。標高は高くなってきたので木々の間からの眺めは良くなってくる。男坂と女坂の合流地点に着いたのは11時37分。登り始めが分からないので1時間で登ったのか分からない。頂上到着が12時15分で11時37分が坂の終わりなので1時間以上がかかっているような気がする。
地図を見ないで登っているのでこの先はもう楽かなあと思ったけれども最後にもう一回ハードな登りになった。大谷ヶ丸まで行くのはやめて滝子山でやめようかと思いながら登る。天気が良くなってきたのが幸いだ。上の方を見るとだんだん木がまばらになってきた。頂上は近い。下山する人と出会う。木の枝を杖にしている。若い女の人だ。しかもエビちゃん風だ。格好は...ショルダーバッグ!この格好で登ってきたのか?続いて男性の下山者。まともな格好をしている。2人組みなのか。それにしてもショルダーバッグで山登り。大丈夫かなあ。
滝子山頂上
岩場に出る。ああまったく疲れた。上を見ると人の姿。空しか見えない。ここを登り切れば頂上だ。こういうときは一気に登れたりするものだけど数歩ずつしか登れない。やっとこさ登頂。人が何人もいた。天気もいい。頂上は狭い。みんなご飯を食べている。なんだか食べる気も起きないけれどとりあえず水を飲んだり魚肉ソーセージを食べたりする。バーナーでコーヒーを淹れようと思っていたけれど頂上も狭く気力もなかった。
カメラをチェックする。このカメラ、お古なのでときどき気まぐれを起こす。シャッターを押してみたらカシャンと音がした。頂上に着いたら機嫌を直したようだ。機嫌が良いうちにカシャカシャ写真を撮る。頂上の北側と南側で天気が違う。北側はよく晴れているが南側はガスというより雲で景色が見えなくなったりする。雲がとても早く移動している。誰かが風って怖いわねえと言っている。この雲の動き次第で遭難してしまったりするわけだ。秋雨の時期であり天気は変わりやすい。そう思うと頂上にいつまでもいられないという気分になり、荷物をしまって次のコースに挑むことにした。片付けているとき黄色い蝶々のような蛾のようなのが腕に留まった。
寂ショウ尾根に降りるコースと鎮西ヶ池に下りるコースがある。地図を見て時間を見ると大谷ヶ丸まで行っても5時には甲州街道に出られそうだ。せっかくここまで来れたので大谷ヶ丸まで行くことにした。
道標に沿って鎮西ヶ池に行く。大雨の影響か倒木が多く道が分かりにくい。鎮西ヶ池の周りも枝や葉っぱで道が分からない状態になっていた。そして大事な道標が見つからない。周りの景色を観察しながら踏み跡を探しつつ前に進んだ。道が続いているような雰囲気かどうかで前に進んだ。なんとか正解だったらしくヤブだらけの道を見つけさらに進む。コンドウ丸から笹子駅に降りる道のところで登山パーティーと出会う。道標にだんご三兄弟の手ぬぐいを掛けて干している。ひとめくりして道を確かめる。
滝子山から大谷ヶ丸までは地図で1時間。尾根道だから楽だろうと思ったけれど登り降りがある。地図で確かめれば途中に3つピークがあるのが分かってペース配分できたのに見ないで歩いたものだから、ここを登れば大谷ヶ丸だと3回も勘違いしてまた疲れた。
大谷ヶ丸の頂上は道標がなくて分かりにくかった。近くにあった道標には湯ノ沢峠を示すだけだった。地図を見ても湯ノ沢峠が見つからない。周囲を見回すと頂上らしき場所がすぐ近くに見える。でもそこへの道がまるではっきりしない。頂上なのか?登ってみたら大谷ヶ丸の頂上だった。道標もあり次の目的地である曲り沢峠も示されていた。帰りの電車で地図の畳まれていたところに湯ノ沢峠があることが分かった。
時計を見ると14時8分。やや遅い感じがする。地図の所要時間ではここから林道まで1時間30分くらいだ。ザックにしまっておいたヘッドランプを念のためウェストバックに移した。ウェアを調えてザックも整え靴紐を締めなおして地図を見て峠まで一本道で簡単なことを確認して下山を始めた。
道を間違える
ももの前側を痛くしながら急坂を降りる。後は楽な降り道だ。誰とも会わない。しばらく進むと地図に書いてあった防火帯に出会う。林の中にそこだけススキが広がっていて非日常的な景色だ。写真を撮って防火帯に入っていった。胸ぐらいまでのススキでいっぱいで帯の端をどんどん下ってゆく。ここを降れば曲り沢峠になると誤解していた。防火帯の終わりまでくると辺りの景色がどうもおかしい。目の前には急な山の頂が見える。右手の先には深い落ち込んだ沢のようなものが見える。左手には林が広がっていて少しばかり空間がある。空き缶などが落ちていて人が来たことが分かるが、登山道を示すものもそれらしき踏み跡も見つからない。もう一度、目の前の山の頂を見上げる。日差しが傾き始め目の前の山は半分影になっている。何の音もしない。沢らしき落ち込みから自分のところまで目線を動かす。いったいどこまでが地面なのかススキが生い茂っていて分からない。この場所はおかしい。来てはいけない場所に来てしまっているのかもしれない。いやここは普通、人が来てはいけない場所なのだ。
怖くなり左の地面が見えている方へススキを掻き分けながら逃げる。ススキが窪みや崖を隠しているかもしれないと思うと動けなくなりそうだった。足元に気をつけながら空き缶が落ちている場所に移動した。左の靴紐がほどけていた。時計を見るともう15時を過ぎていた。地図に「防火帯に入らない」と書いてあることを思い出した。防火帯というのを周り林に入らないと勘違いしていたらしい。それに防火帯は登山道ではない。今自分がいる場所は本来人がいる場所ではない、日差しも夕方の気配になってきている、息を整えることもせず防火帯から戻ることにした。終点まで降りてしまった上に直登なので息がすぐに切れる。休んだらどんどん時間がなくなってしまう。途中、右の靴紐がほどけたり眼鏡が枝に引っかかって落としてしまう。うっかり踏んでしまったらかなりまずい。ヤブの中、目を凝らしてどうにか見つける。
登山道に戻ることができた。ザックもウェストバックも放り投げて座り込む。右の靴紐を締めなおした。あのまま気付かずに進んでしまっていたら登ってまた戻ろうとは思わなかったかもしれない。疲れていると楽な方に進みたくなってしまう。登山道の外側はまるで歩ける場所ではないことも分かった。きれいな光景に見とれてそのまま中に進んでしまったわけだ。あのまま山の中の帰れないところに連れて行かれてしまうところだった。
曲り沢峠への道を急ぐ。峠の手前にあるコンドウ丸に到着する。正しいコースを進んでいる。コンドウ丸から曲り沢峠までは20分。この辺りも倒木がたくさんあって道が不明瞭。踏みしろを確かめつつ道を見つける。登山道にクモの巣が張っている。まるで人が来ない登山道のようだ。道ははっきりしている。時計のレコードには防火帯を出たらしき時刻が15時37分とあって曲り沢峠は15時52分だ。
曲り沢峠に着いた。ここから沢筋の道に降りて林道に出る。道標にはようやく笹子駅の文字。なんとか帰れそうだ。尾根道からなのでT字のようになっていると思ってしまうが来た道を戻るような感じになっている。道を間違えた上に疲れていたのでまた戻るような錯覚になり不安だったが道標が正しい。
道は歩きやすい。しばらく歩くとぐるっと右に曲がり杉の植林帯になってくる。沢の音が聴こえてくる。一安心。まだ足元も見える。転ばないようにするだけだ。沢の音は聴こえるがなかなか沢が見えてこない。うす暗い道を降りて沢に出る。ズミ沢である。三丈の滝のそばで丸太2本の橋を渡る。道ははっきりしている。送電線の横を通る。送電線を建てられるような場所まできた。スチールの橋を渡り上を見ると白いガードレール。林道大鹿線。やっと文明と出会った。もうこれで今日の登山はおしまい。道に迷って帰れなくなることはない。買ったばかりの靴の左のほうが痛い。下のほうだけ結んで笹子駅までの道を歩いた。駅のそばの笹一酒造の看板を見て急に足が速くなった。
帰った日の夜、寝付くとき、細い崖沿いの道を歩こうとして落っこちそうになる夢を見た。夢の中で落ちそうになったとき、木を掴もうと左手が動いてしまった。私は道を間違えたことが相当怖かったようだ。
http://zimineko.blog.so-net.ne.jp/2007-09-15
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する