【落石事故により登頂断念】猿倉〜白馬大雪渓



- GPS
- 04:05
- 距離
- 7.3km
- 登り
- 655m
- 下り
- 651m
コースタイム
天候 | 雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2009年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
八方第5駐車場(無料)に車を停め、八方停留所よりバス利用で猿倉へ。 料金は980円。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
前日より降り続く雨で、コースコンディションは最悪でした。 猿倉から白馬尻小屋までの林道は常に雨水が流れている状態。 山から染み出した地下水が林道に流れ出し、道を横切るような箇所もいくつかありました。 山道に入ると、登山道が沢のようになっていて、水の流れる道を上っていく感じ。 なるべく靴を濡らさないようにと思っていましたが、最後はもう水に浸かっていない部分がないほどで、諦めてジャブジャブと水に靴を潜らせるような状態でした。 白馬尻小屋までの最後の登りは小さな沢と平行するように登山道がありますが、もう沢と道の区別がなくなっていて、沢登りのようになっていました。 白馬尻小屋から雪渓取り付き部分までの登山道では、小屋を過ぎてすぐにある大岩の架け橋の所が、普段はチョロチョロと水道程度に流れている水が、小さな滝と化していて、架け橋を通るには滝に打たれなければなりませんでした。 大雪渓は、霧に包まれ視界が悪いうえ、雪がアイスバーンになっていて滑ります。 そのツルツルの氷の上を雨水がザブサブと流れてくる始末。 落石も多発しそうで、非常に危険な状態だったため、しばらく登って引き返すことにしました。 その矢先、同行者が落石事故に遭い、すぐに下山を余儀なくされました。 どれだけ登山者が居たとしても、やはり、雨の日は大雪渓は登るべきではないと痛感しました。 |
写真
感想
白馬大雪渓へは何度も訪れているが、葱平までの日帰りだったため、初めて山頂までの登山をすることに。
山荘泊も初めてのため、事前に白馬岳頂上山荘の個室を予約。
当日は雨予報。
午前3時に横浜発。
横浜は降っていなかったが、中央道で山梨入りするころから雨が降り始めた。
早朝6時半に白馬村に到着し駅前登山センターで様子を尋ねると、すでに100人以上の人が猿倉に向かったとのこと。
とりあえず猿倉まで行って、現地で状況判断することに。
八方第五駐車場は雨にもかかわらずすでに満車に近い状態で、八方バス亭からバスに乗りこむと、こちらも満席。
天候がすぐれないため、登山は無理と考えていたが、予想を裏切る登山者の多さに、「もしかして登れるのかな?」とのかすかな期待が湧いてくる。
猿倉に着くと雨はさらに強くなり、不安がよぎる。
ザックにレインカバーをとりつけ、雨具を身につけて、登山開始。
林道や登山道は、川の流れのごとき状態。
白馬尻小屋直前の最後の登りでは、横の沢と登山道の区別が付かないほどの流れで、まるで沢登り。
ゴアテックスの登山靴も水に浸かりっぱなしでは成す術も無く、早くも水浸しに。
白馬尻小屋で雨宿りをしつつ、登山情報を収集。
この天候でも、100人を越える人たちが大雪渓を登って山頂へ向かっているとのこと。
小屋では、登山を諦めて停滞する人のために部屋の準備に大忙しな様子。
登るか、諦めるか。
白馬岳頂上山荘の個室は、いまキャンセルしたら振り込んだ代金は丸々もどってこない。
個室予約代12000円をドブに棄てるか?( ̄ー ̄;)
この考えがいけなかった。。。。
とにかく大雪渓を少し歩いてみて、駄目そうだったら引き返そう。
決意して雪渓取り付き口へ。
ところが、白馬尻小屋を出発してすぐの、大岩の架け橋のところで早くも洗礼が。
普段はチョロチョロとしか水がながれていない筈なのに、雨水で増水してちょっとした滝になっている(汗
通り抜けるには、この滝の水を全身に被らなければならない。。。
引き返そうかと思うが、ゴアテックスのレインウェアを信じて通過(>_<)
水こそ浸透しないが氷のように冷たい感触に一気に体が冷えてくる。
雨の中アイゼンを装着し雪渓に降り立つと、えもいわれぬ冷気が。
さらに、体に打ち付ける雨のせいで、体温が奪われていく。
雪渓は雪が雨で固まりアイスバーン状態。
霧で(というより雨雲の中に居るから)視界も非常に悪く、固まった雪渓のコブの上をジャブジャブと水が流れていく。
この最悪のコンディションの中、100人以上が雪渓を登っているとのこと。
が、さすがにこれは無謀だろうと、山荘へむかうことは諦めることに。
せっかくなので、二号雪渓あたりまで登ったら引き返すことにして、黙々と前を登る人々の後に続いていたそのとき。。。。
すぐ後を登っていた同行者が「あぶない!あぶない!前!!」と叫んだ。
何事かと顔をあげると、10メートルほど上を、軽自動車のタイヤほどの大きな石が転がり落ちてくるのが見えるではないか!
石は大きく跳ねながら、ベンガラのルートより少し離れた場所を加速しながら下へと転がり続けていく。
同行者が、大声で「落石ーーーー!!!!!」と叫び、下に続く登山者に注意を促す。
登山者たちが次々に顔を上げ、石に身構えていくのがわかる。
あまりのことにドキドキしながら、また落石が続くかと上を見上げ緊張して様子を伺っていると。。。。
案の定、間髪いれずに第2石が、今度は登山ルートに沿って落ちてくるではないですか!!!
登山者の間を縫うように飛び跳ねながら落ちてくる石は、直径50センチ以上もあろうかという鋭利で大きなもの。
からくも身をよじってかわしたものの、自分のわずか30センチ横をかすめ通り過ぎていく(怖!
さすがにこの時は全身の毛が逆立った。。。。
もしかしたら、土砂崩れがくるかもしれない。
そんな恐怖に駆られながら、すぐに引き返そうと振り返ると、同行者の姿がない。。。?
まさかと思って視線を落とすと、3メートルほど離れた場所で、同行者が倒れていた。
慌てて駆け寄り「当たったの!??」と尋ねると、どうやら2石目が右足に当たった模様。
下に注意を促していたため、さらに落石が来たことに気付くのが遅れ、左膝の裏側をかすめるように当たったようだ。
薄地のゴアテックスのレインウエアはもとより、登山ズボンまで裂けて破れている様子に、血の気が引いていく。
同行者の顔も、恐怖で真っ青になっていた。
自分たちの後に続いていたパーティーのリーダーが駆け寄り、足の様子を見てすぐに下山するよう促す。
もとよりそうするつもりだったので、さっそく引き返すことに。
幸い、骨が折れた様子も無く、足を引きずりながらも自力で歩ける状態だったため、ゆっくりと雪渓を下りて行く。
同行者を庇いつつ、数歩歩いては振り返って落石の気配がないか注意を払いつつ。。。。
雪渓取り付け口までの15分ほどが、なんと長く感じたことか。
やっとの思いで雪渓から降り、登山道を白馬尻へ急ぐ。
ところが、雨で山からの鉄砲水が増え、行きにかろうじて通れた架け橋は、完全に滝に呑まれて濁流となり、とても渡れる状態ではなくなっていた。
途方にくれて視線を降ろすと、山小屋の方が迂回路を用意してくれていて標識が立っているのが目に入る。
手前の崖を川の方へ下りるよう、矢印があるので、標識に従い崖をおりると、さきほどの濁流を渡れるよう、岩場にロープを渡して山小屋の方が待機していた。
ロープの端は濁流の対岸の岩と太い木の幹に縛り付けてあり、もう片方は山小屋の方が体に巻きつけて引っ張っている。
足場は濁流の中の岩場だ。
1人づつしか渡れないので、まずは足の状態が心配な同行者を先に行かせ、自分もあとに続く。
ところが、あまりの沢の流れの強さに足をとられ、そのまま背中から濁流に呑まれた。
左手がロープから離れ、背中側の体半分がザックごと水に浸かり、もう駄目だと思ったものの、山荘の方が全身の力を込めて強くロープを引いてくださったおかげで、なんとか立ち上がることが出来た。
まさに、九死に一生。
ロープを掴んだ右手ひとつで命が繋がった。
たった1.5メートルほどの川幅が、なんと広く感じたことか。
どうにか対岸に渡り、山荘の方に深くお礼を述べて、山小屋へ急ぐ。
崖を登ると、白馬尻小屋正面に辿り着いた。
小屋に着き、落石で負傷した旨を伝え、応急処置をしてもらう。
といっても湿布を張る程度。
膝の上下に打撲の後があり、徐々に腫れてきてる。
裏側に石が当たったのに、その衝撃が膝の正面にまで及んでいるのがわかった。
一刻も早く下山して、病院へ連れて行かなければ。
けれど、登山とは過酷なものです。
この状態でも、自力で下山しなければならないなんて。。。。
レスキューを頼むと、膨大な費用がかかるのです。
(ヘリ要請は200万とも聞いたことがあります)
成人男性を担いで降ろすには、レスキュー3人がかりになるのだとか。
その費用は10万を越えるらしい。
歩けるなら、自力で下山した方が良いと山小屋の方にも言われ、覚悟を決めて猿倉へ向かって下山開始。
行きに沢となっていた登山道は、濁流に近い流れとなっていて、ルートコンディションは最悪中の最悪といった様相。
それでも、黙々と下って行きます。
林道に出てホッとしたのもつかの間、山から染み出た雨水が川になって林道を横断しているため、ほとんど深い水たまりの中をザブザブと歩く状態。
足の痛みは相当なはずの同行者は、この最悪の道を、弱音ひとつ吐かずに下りきりました。
同行者の歩調に合わせるため、後から見守るように歩いていた自分ですが、胸が軋む思いでした。
猿倉に着き、15分ほどでバスが来て八方停留所へ。
バスを降りたところにインフォメーションセンターがあったので、土曜日でも受診できる外科を探していただく。
そのあいだに、八方第5駐車場から車をまわし、荷物を積んで待機。
病院は大町まで行かないとないとのことで、電話で一報を入れてすぐに大町へ向かった。
1時間ほどで病院に着き、レントゲンなどの検査をしていただく。
幸いにも骨や筋に異常が無く、靭帯を少し損傷したものの、ほとんど打ち身で済んだ。
そのまますぐに横浜へ帰還。
翌日は日曜のため、いちにち安静に。
足は倍の太さにまで腫れ上がり、月曜に地元の総合病院で再検査を受けるも、大事に至らずホッとしました。
膝の下に溜まった血を抜いたら、足の腫れも収まってきて、あとは湿布と定期的な通院で様子を見ることに。
靭帯の一部切れた部分が繋がるまで全治一ヶ月、それまでは松葉杖が無いと歩けない状態とのことでしたが、驚異的な回復力で2週間で松葉杖なしで歩けるように。
1ヵ月後には腫れも引いて、普通に歩行できるようになりました。
あれだけ大きな石が当たったにもかかわらず、命に関わる状態や骨折もなく全治1ヶ月で済んだのは、不幸中の幸いだったかもしれません。
大雪渓では近年落石が増え、毎年死亡を含む大小の事故が耐えません。
ですが、まさか自分たちが落石事故に遭うとは、だれも思っていないのです。
今回は、そんな読みの甘さや、雨天時の雪渓登山がいかに危険かを、身を持って思い知らされました。
雨の日の雪渓登山は、どんな上級者でも避けるほうが懸命です。
それから、どんな軽登山でも登山保険には必ず入るべきですね。
今回の治療費も、保険に入っていれば補助があったはず。
なにより、レスキューを頼むのをためらうこともなかったかと。
それ以前に、レスキューのお世話になるような事態をまず回避するべきなのですが。
でも、こんな目にあってもなお、雪渓登山を諦めきれません(^_^;
来年もチャレンジしようと思っています。
ただし、晴れた日に。
同行者は今回のことがトラウマになってしまったようなので、反対するかもしれませんけど。。。(^^;
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