ホワイトアウトのスキー縦走 〜西大巓・西吾妻山〜


- GPS
- --:--
- 距離
- 10.4km
- 登り
- 643m
- 下り
- 1,311m
コースタイム
- 山行
- 7:00
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 7:20
天候 | 朝は晴れ、のち暴風雪 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
[下山]天元台スキー場のゲレンデは下のロープウェイ駅の湯元駅まで滑って降りられる。ただし上のロープウェイ駅から湯元駅まではスキー場としては閉鎖のことが多い。この場合は自己責任となる。湯元駅から米沢駅まではバスがあるが、厳冬期はバスは入らないので注意。10分ほど歩いた白布温泉が始発になる。ジョルダンなど乗り換え案内にも湯元駅発で検索されてしまうので要注意。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
危険箇所は全くない。とにかく天気が全て。 |
その他周辺情報 | 白布温泉に日帰りができる宿がいくつかあるが、時間がなく入れなかった。 |
写真
感想
厳冬期に会津〜米沢の縦走をスキーでやってみたかった。会津にはグランデコ、米沢には天元台のスキー場があり、標高が高いところのみでスタート/ゴールできるのがメリットだ。ただここは天候が荒れると怖いので、それだけは注意して計画した。注意していたつもりだが、結果的に悪天候につかまり、九死に一生を得て下山した。怪我もなく健康にも問題は無かったのは幸いだった。
前日はネコマのスキー場で滑り、裏磐梯の温泉に宿泊した。磐梯山近郊のスキー場は無料バスが充実しているので、車で来なくても十分効率的に行動できるのが良い。
グランデコに到着し、ゴンドラとリフトを乗り継いで1590mの標高から登山スタート。この時点では最高の天気だった。すでにトレースが3本あり、3連休最終日で沢山の人が入山していた。適当なトレースを再利用させてもらい、ハイスピードでハイクアップした。
西大巓の山頂まで来ると風が強くなり、ガスもかかってきた。この時点では降雪はそれほどでもなかったので、予定通り西吾妻山に向かうことにする。西吾妻との鞍部まで来ると2パーティが引き返してきた。ホワイトアウトで進むのが難しいらしい。私もどうしようか迷ったが、今日は午後は天気が回復する予報だったので、進むことにした。山頂に向かっていると左手に小屋が見えたので中に入って休憩した。2人の若者の登山者がいた。1人はグランデコからの往復、もう1人は天元台からの往復だった。時刻は正午過ぎでここまでは順調だった。行程はすでに半分を超えている。このまま順調に行けると思っていた。
ところがここから天候が悪化し、完全なホワイトアウトになった。雪もかなり降ってきて、予報のように回復はしなかった。スキーでモンスターの樹間を進むのは困難を極めた。視界があれば悪いところはある程度回避できるのだろうが、この視界ではそれも難しかった。
途中で小屋で会った若者に遭遇した。やはりこの天候で迷いながら進んでいて時間がかかったとのことだった。ただルートを落ち着いて判断しているようでスノーシューの足取りもしっかりしている。この状況では多少迷ってもルートを修正しながら前進できるだけでも物凄いスキルではある。天元台へのルートの情報もいろいろ教えてくれ、もうシビアな場所もないとのことだったので、少し安心できた。雪洞を掘ってビバークになるかもと最悪の事態も考え始めていたが、若者と話していて今はまだ進んだ方が得策だろうと前向きになった。
樹間の吹き溜まりと格闘している時に、シールの片方が外れているのに気づいた。少し戻って探したが見つけられなかった。頂き物の古いシールだが、大事にしていたので残念だ。片方シールがない状況で登りは厳しい。ただこの先ハードな登りはあまりないので、何とか行けるだろう。シビアなところは部分的にシートラで突破した。
問題はやはりモンスター地帯の通過だ。中大巓のトラバースに入ると強烈なモンスター地帯になり、時間もかかって焦ってきた。ただGPSを確認すると徐々に下りになりつつあったので、スキーテクニックをフルに使って大胆に進む方針に変更した。
私個人の意見だが、全てのスキーで一番高度な技術が必要なのは、コブでもガリガリのアイスバーンでもなく、密林の樹林帯通過だと思う。特に登りだと最悪で、ツリーホールにハマったら脱出に物凄く時間がかかってしまう(最悪、単独行だと出られずゲームオーバーもありうる)。下りも大変だが、登りに比べるとだいぶ楽だ。
何とか目印のロープを発見し、スキー場トップに躍り出たのは16時過ぎだった。生きて帰れるとようやく安心した瞬間だった。依然視界が無い中、ゲレンデ慎重に滑っていくと、先の若者もスノーシューで下っていた。私と同じようにハードなルートをクリアしてきただろうが、足取りはとてもしっかりしている。彼は下まで降りず、今晩はスキー場内のペンションに泊まるそうだ。お互い無事に下山できて良かった。
ロープウェイの終点まで来てようやくガスの下に出た。ロープウェイはもう終了しているので、そのまま車道を滑っていった。ここは一応スキー場のコースなのだが、現状はクローズ中とのこと。この状況では強行突破も仕方がない。ただガスも抜け、素晴らしいパウダーの安全なルートだったので、感動しながら20分ほどで順調にロープウェイの湯元駅まで降りてきた。16時50分、暗くなる前に下山できた。
ところが、十分間に合う時間だった米沢駅行きの17時20分の最終バスに乗り遅れてしまった。豪雪の影響で湯元駅までは上がってこず白布温泉が始発だったのを知らずに、ずっと待っていたのだった。出発後にそれを知って途方に暮れてしまったが、幸運があって無事に駅まで出ることができた(詳細割愛)。3連休最終日で、山形新幹線は満席。福島まで立席だったが、無事小田原まで帰った。昼の状況ではこの日に自宅に帰るのは難しいだろうと思っていたので、家で寝られる幸せをかみしめた。
−−−
天候のリスク管理が甘かったのが一番の反省点。まだ荒れ方がマシだった西吾妻避難小屋まででギブアップし、グランデコに引き返すのが妥当だったと思う。
ただこの経験で、個人的にはかなりの教訓が得られた。西吾妻山のようなモンスターが出来るほどの極度の豪雪地帯で天候が悪化すると、何が問題なのか?を一般論ではなく、具体的に言葉で説明できるほどリアルに体感した。
一番大きいのは、ホワイトアウトで方向が分からなくなること。これだけでは当たり前の話。当然ながら想定内だったが、樹木がホワイトモンスター化すると視界が完全に真っ白になり、そうすると四方八方だけでなく、上下すらも分からなくなるのだ。スキー場を滑っていてホワイトアウトは何度も経験があるが、視界のどこかに必ず目印はある。上下感覚が多少阻害されるので雪酔いはするが、完全に白くなると雪酔いが度を越して感覚が完全に狂ってしまう。上下感覚はスキーをするにあたってものすごく重要で、欠落すると恐怖以外の何物でもないということを学んだ。
もう一つの問題は、時間が莫大にかかること。これもしごく当たり前の話だが、こちらのほうが今回はダメージが大きかった。西吾妻山から天元台までは全ての木々が隙間なく樹氷が付着して真っ白にモンスター化している。モンスターの間を通過せざるを得ないこともあるが、吹き溜まりがすごく、雪面が荒れまくっていてツリーホールがめちゃくちゃ多い。行きたい方角にまっすぐ進んでバカ正直に樹間を通過していると、時間がいくらあっても足りない。積雪期のルートファインディングはどこが通過の際の弱点か、近傍のルート見極めが重要なのだが、ホワイトアウトになると見極めの質がどうしても落ちる。今回は樹間の吹き溜まりに足を取られて100m進むのに20分もかかったこともあった。結果として、最終ロープウェイに間に合わないほどスローペースになったが、朝の時点ではそんなことになるとは夢にも思っていなかった。(ロープウェイに乗らないで滑って降りてくるのは想定内だったけど)。
一言で言うと、なめた計画だったのだ。この地域の厳冬期は天気が悪いほうが普通なので、よほどの幸運に恵まれないと縦走は成功させることは出来ないと考えたほうが良い。頭では分かっていたが、想定していたレベルがあまりにも違いすぎた。甘かったということに尽きると思う。
ただシビアな状況に陥っても、最終的に体力が全てを解決出来る可能性がある。万が一のために日頃から体力を保っておくことはとても重要。今回はアップダウンが少ないルートだったこともあり、体力の余裕は幸いにもあった。
−−−
トータルな感想として、厳冬期の単独スキー縦走は色んな意味でリスクが高すぎると感じた。春は何回かやっているが、厳冬期は実は今回初めてだった。今後はスキー縦走は天気が安定する春まで待とうと思う。
白い闇と格闘したモンスター地帯は、視界があるといったいどんな場所なのだろう。いつか夏にも訪れて、様子を確認してみたい。
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