隠岐の島町(島後) 鷲ヶ峰~トカゲ岩~大満寺山 隠岐固有の自然



- GPS
- 05:20
- 距離
- 8.3km
- 登り
- 827m
- 下り
- 826m
コースタイム
- 山行
- 4:28
- 休憩
- 0:52
- 合計
- 5:20
歩行距離8km、歩行時間4時間30分、歩行数15200歩
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
島内を自動車(マイカー)でアクセスする場合は、鷲ヶ峰と大満寺(だいまんじ)山の間(峠)の林道沿いに数台自動車を停めるスペース<写真01>があります。 鷲ヶ峰とトカゲ岩のみの訪問なら、非常に整備された中谷駐車場<写真31>があり、観光バスや観光タクシーでもアプローチができます。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
トカゲ岩<写真21>から大満寺(だいまんじ)山<写真38>の稜線は道がよく整備されており、急な傾斜は階段状になっていたり、梯子がかけてあったりして、安全に歩くことができます。また主要な分岐には道標が設置されており、目的地までの距離も記されているので、迷うこともないでしょう。 鷲ヶ峰の三角点<写真09>から北東に延びている屏風岩展望台<写真15〜17>やトカゲ岩頂上付近<写真26〜29>は岩場が多いので、安全確保をしながら、慎重に登る必要があります。ロープはしっかりしているので、頼れば大丈夫です。 中谷駐車場<写真31>から南の神原(かんばら)高原<写真19、20>に向けて、天然杉林の中を進んだのですが、途中、道が2つに分岐しました。直進コースは前方に案内板のようなものが見えており、しっかり整備された道でした。合流するものと思い込み、道標があった東に延びている自然林遊歩道コースの細い踏み跡を進むと、カツラの大木<写真37>の辺りから道が完全になくなり、15分程ヤブコギになってしまいました。掴める木が周辺になく、しかも、急登で崩れやすいふかふかの土壌でしたので、登るのに苦労しました。ごまのような香りのする大型の草(今回のコース上に「隠岐の島の代表的な山菜」と紹介されていた植物?)を掴んで登りましたが、何本か茎を折ってしまいました。自然林のみなさんごめんなさい。分岐が出てきたら、必ず南方向に直進しましょう。 |
その他周辺情報 | 西郷港のフェリー乗り場のそばにある隠岐ポートプラザの2Fに「隠岐自然館」があります。隠岐の島の海や山を歩く前に非常に有用な情報収集ができます。特に1時間も館内の展示物についてガイドをしてくださった方のおかげで、写真で紹介しているような隠岐特有の自然を満喫することができ、山行が何倍も楽しくなりました。 |
写真
大満寺山と鷲ヶ峰の中間点辺りの峠がそれぞれの山の登山口となっています。案内板には主なポイントまでのコースタイムが記されています。路肩は車1台分のスペースしかありませんが、11時半頃には2台増えていました。
イヌサフラン科の多年草で、枝分かれした茎に長さ3cm程の白い花が1,2ずつぶら下がります。6枚の花びらはくっつかず、茎の付け根近くは盛り上がって見えます。この周辺に2,3株しかありませんでしたが、花数はそれなりにありました。
名の由来は、白い花を雪に葉を笹にたとえたものです。北海道では小豆菜(アズキナ)の名で親しまれており、これは茹でると小豆のような香りがするところからきているようです。咲き始めでしたが、この後も何度か見かけました。
枝先に円錐花序(枝分かれして全体が円錐状に見える)を出し、白い4弁花をたくさんつけます。花径は1cmと小さく、よい香りがします。ツルシキミとは違い、地面を這うことはないようです。樹高は1mもありませんでした。周辺にたくさん生えていました。
オキシャクナゲは、島後の大満寺山一帯を中心とした稜線や、張出した尾根の部分、谷沿いの岩石地などに多く生育している隠岐固有の植物です。島前では神社の境内など、島後では村上家隠岐しゃくなげ園に約1万株があるそうですが、やはり自生しているほうがいいものです。
葉のついた茎は2本、どちらも葉は3枚セットでしたが、全体の雰囲気はミツバテンナンショウよりもキシダマムシグサ(ムロウマムシグサ)に似ているように思いました。別の場所に斑入りの葉のもありましたが、ピンボケしていたので写真はボツにしました。
屏風岩は高さ約80mの柱状節理が発達した断崖です。さらに進んだところに通称「屏風岩展望台(屏風岩観察スポット)」<写真15〜17>という岩場がありますが、ここからのほうが木々に邪魔されずはっきり見えました。
短い距離ですが、ロッククライミングも楽しめます。ザイルが必要なところは特にありません。ロープがあり、この岩のてっぺんが屏風岩展望台です。屏風岩<写真11>は近くに見えますが、木々で隠れ気味でした。
屏風岩展望台から北西を望むと、一番奥に標高597.7mの葛尾(つづらお)山が見えました。そのすぐ手前にかすかに見えているのが、今回のメインの目的地トカゲ岩<写真21>です。
北方系植物で、ダイセンミツバツツジに花色がよく似ていますが、葉柄に毛がなく、若い葉の表にはびっしりと毛が生えています。島後では、対馬暖流による高い海水温度と切り立った岸壁の地形の影響で水蒸気が急に冷やされ、冷たい空気が流れる場所ができます。そこには、温暖な気候では生きられない氷河期の生き残りともいえる北方系植物が数多く生育しています。
トカゲ岩をズームしてみました。遠目にはキツツキのようにも見えます…ここから動画も撮りました。屏風岩展望台より先は植物が茂って足元が見えない岩場が続きそうだったので、これ以上屏風岩に近づくのはあきらめました。
屏風岩展望台<写真15〜17>から引き返し、鷲ヶ峰三角点<写真09>を経て北西のトカゲ岩を目指します。このような縦長の奇岩が多い山域です。ロープのある岩場やハシゴを越えますが、歩きやすいです。
ユリ科の多年草で、3枚の黄緑色のガクが花びらのようにも見えます。もう黒い実ができかけていました。神原(かんばら)高原一帯にたくさん生えていました。鷲ヶ峰&トカゲ岩&中谷駐車場分岐<写真30>をトカゲ岩方面に進むと、途中から岩が埋まった急な斜面をロープに沿って上るようになり、トカゲ岩とトカゲ岩頂上の分岐からトカゲ岩に向かって石がごろごろした踏み跡を東に進みました。最後にロープを頼りに岩をよじ登ると・・・<写真21>へ
すぐ目の前に見えたので動画も撮りました。侵食によって造り出された大地のオブジェで国内で最も高濃度のアルカリ岩です。他に同じ成分を持つ岩は世界でも南極とキリマンジャロにしかないと言われています。(隠岐自然館情報)
トカゲ岩頂上の東側にはオキシャクナゲ<写真07>が咲いていました。オキシャクナゲは、一般的に酸性岩石の稜線に沿って分布しており、土壌としての被覆が極めて薄く、土壌水の保水量が極めて少ない風衝地に多く生えています。ここから動画も撮りました。
西側の岩場を下りると足元にありました。土地が国土のどの部分に位置しているのか明確になるよう測量され地籍図に記載されますが、その測量の基になっているのが地籍図根点です。標高は550mです。
キケマンよりも葉が細く、ニンジン葉のように見えます。この写真の葉はあまり細く見えませんが、この後、何度も見た株はみんなニンジン葉に似ていました。ふと中谷駐車場<写真31>のほうを振り返ったら、冬毛のニホンテンの子供?が目の前を横切りました。
中谷駐車場から石段を上り、自然回帰の森に入ってすぐにトカゲ岩第一展望台がありました。北西方面を望むと、先ほど登ってきたトカゲ岩が見えました。このアングルで見ると、トカゲよりもキツツキに見えます(*_*;
トカゲ岩第二展望台を過ぎ、神原(かんばら)高原<写真19>に向けて登っていくと、天然杉林の中に入りました。日本海側に分布するウラスギ(アシウスギ)のルーツが隠岐杉と考えられています。(隠岐自然館情報)
樹齢数百年のものも多く、人と比べるとその大きさがわかります。樹齢200年を超える杉だけでも800本以上あり、こうした特に大きな木には番号がつけられています。自然回帰の森は、天然林を後世に残すため伐採が禁じられた保護林です。直進方向はきれいな道でしたが、自然林遊歩道の道標が左にあったので合流するものと思い、細い踏み跡を進みました。
杉ばかりではありません。このように時折、カツラの大木も見られます。この辺りから踏み跡もなくなってしまい、ヤブコギが始まりました。木が生えておらず崩れやすいふかふかの急斜面をよじ登る際に、掴んで折ってしまった草のみなさんごめんなさい。正規ルートに合流後、鷲ヶ峰三角点<写真09>を経て大満寺山&鷲ヶ峰登山口<写真01>まで下り、今度は大満寺山に登ります。
階段状の土や石が埋まった道を上ると標高607.7mの大満寺山(だいまんじさん)の頂上三角点です。山頂には昭和60年4月、隠岐水産高校の創立80周年を記念して設置された方位盤が置かれており、隠岐の地名やローマ・モスクワ・アンカレッジ・シドニーなど外国の地名も刻まれています。
標高500m地点まで下ってくると、乳房(ちち)杉と有木方面に向かう分岐に出ました。地形図上では有木(南西)方面には道があり、乳房杉方面に向かう道はありませんでしたが、乳房杉方面に向かいました。石が埋まった道をさらに下ります。
樹齢は約800年といわれ、樹高約30m、幹囲約5m、主幹は15本に分岐し、その分岐した部分から大小24個もの乳房状の根が垂れ下がっています。周辺の山々の主のような神々しい姿を動画に撮りました。
乳房杉の風穴は無数の転石が積み重なってできたもので、玄武岩溶岩であり、大満寺山から崩れ落ちたものです。不規則に積み重なっているため、内部は隙間だらけの状態で、このため、転石の隙間から冷たい風が吹き出しています。
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下(厚手)
軍手
雨具
スパッツ
日よけ帽子とフード
雨用帽子
登山靴(防水加工)
靴ひも予備
アタックザック
ザックカバー
地形図
コンパス
ファスナー付クリアーファイル
筆記用具
携帯
時計(防水)
タオル
カメラ
飲料水(スポドリ&茶)
水筒(保温)
非常食(栄養補助食品)
スマホ(山使用可能)
eTrex30(GPSナビゲーター)
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感想
隠岐の島は人が住む島が4島あり、西ノ島、中ノ島、知夫里(ちぶり)島のある島前(どうぜん)と主島である島後島(どうごじま)のある島後(どうご)に分かれています。今回訪問したコースは島後にある隠岐の島最高峰の大満寺山(だいまんじさん)や鷲ヶ峰・トカゲ岩ルートです。島なのに標高500mから600m前後の山々が続きます。このコース上にはいくつか写真でも紹介しているように、多くの奇岩があります。その中でも外見だけでなくそれを作っている岩石まで珍しいというのはトカゲ岩だけです。このトカゲ岩を構成する岩石は、隠岐の中ではこの岩体以外に見られないもので、岩石を構成する化学成分のうちアルカリ元素と呼ばれるナトリウムとカリウムが日本で一番高い割合で含まれている火山岩です。このことが重要なのは、ナトリウムやカリウムを含む岩石は大陸の岩石の特徴とされているためで、日本列島とは異なる隠岐の独特のできかたを示しているようです。ちなみにトカゲ岩と同じ成分の岩は他に南極とキリマンジャロでしか見られないそうです。
このエリアは隠岐固有の動植物も豊富です。北海道など北国で見られる植物と沖縄で見られる植物が同じ場所に生きていたり、大陸性の植物、高山性の植物、さらには氷河期の植物までもが海岸の低地で共存していたりします。
高山帯に植生するオオイワカガミ<写真47>がこの山のみならず、海岸(海抜0m)に咲いていたり、雪の多い日本海を中心に分布するユキグニミツバツツジ<写真16>が山のみならず、やはり海岸にも咲いていました。もうすぐシロウマ(白馬)アサツキも咲きそうでした。北アルプスもびっくり!さらに夏にはナゴ(名護)ランも咲くようです。沖縄もびっくり!杉は巨木が多く、鷲ヶ峰のふもとの杉の天然林<写真34、36>など、樹齢数百年を超える杉が多数あります。太平洋側に分布するオモテスギと日本海側に分布するウラスギ(アシウスギ)の両方があり、隠岐独特のウラスギとオモテスギの両方の特徴が混ざりあった杉もあります。
隠岐固有の生物としてオキノウサギやオキサンショウウオなども観察できました。(オキノウサギは今回の山行外。)特にオキサンショウウオ<写真52や動画>は、渓流に棲むタイプのサンショウウオが池などに棲むタイプに進化をし、今、また渓流の環境に棲むようになったため、渓流のタイプに逆戻りの進化をしていることが明らかになりました。このような逆戻りの進化は世界中の生物を見渡してもあまり知られていないもので、生物進化を考える上でも重要な生物です。アメリカの科学者グループ(AZE)がオキサンショウウオの分布することを理由にして大山隠岐国立公園を『世界の希少種最後の生息地』に指定したほどです。居場所が特定されないよう写真や動画の場所を伏せています。
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