白山(別山東尾根)
- GPS
- 56:00
- 距離
- 45.4km
- 登り
- 3,388m
- 下り
- 3,533m
コースタイム
天候 | 雨、晴れ |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
別山東尾根はほぼ尾根の残雪をたどります。主稜は夏ルート、油坂の頭から南竜間は稜線通しに進みやまうば谷の上部をトラバースし室堂平らに出た。 |
その他周辺情報 | 平瀬温泉 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
ハードシェル
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
防寒着
雨具
毛帽子
着替え
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
アイゼン
ピッケル
スコップ
昼ご飯
行動食
調理用食材
飲料
水筒(保温性)
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
調理器具
ライター
地図(地形図)
コンパス
計画書
ヘッドランプ
予備電池
筆記用具
ファーストエイドキット
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ナイフ
カメラ
テント
テントマット
シェラフ
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---|---|
共同装備 |
スコップ
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感想
(当時の記録を参考に自分用に記しました)
長良川に沿って上流、蛭ヶ野高原までやってきた、今年の冬は雪が多い年であった。建物の陰や周辺の林には、たくさん雪が残っている。朝明けの日を期待したが今日は雲が低く、空は明るくなる気配がない。閑散とした蛭ヶ野高原を後にする。今朝早く家を出てきたのでここで御母衣湖畔の食堂で食事をとることにした。これから歩く別山東尾根の東端の山、日照岳は、ここから少し北にある尾神橋を渡り、更に三つほど短いトンネルを抜けると湖畔に突き出た小さい広場から送電線の巡視路道をたどって登るつもりである。相変わらず尾根の上部には低い雲がかかり、時折強い雨が降ってくる。車の中で三十分ほど待っていると小降りになってきたので小雨の中を歩き始めることにした。 道路を挟んだすぐ西側の沢に沿って巡視路に入る。沢に入ると丸木橋を左岸に渡る、まだ沢筋にはいっぱいの残雪が残っているのでその上を登る。日照岳までは左岸から鉄塔の巡視路を登る記録を読んだことがあるが沢の右岸側の尾根に続く巡視路も登れそうに見えたので、今日はこの尾根を登ることにした。尾根を横切っている三本目の鉄塔までは巡視路用の切り開きがあった。その先は笹と灌木の中の登りになったが残雪を選んで高度をかせぐ。風に流されて尾根を越えてくるガスと、笹に着いた雨で衣服が濡れ、風で体が冷えてくる。標高一三〇〇m付近まで登ると尾根筋の雪も多くなって少し歩きやすくなった。ブナの大木が並ぶ登りになる、ピーク一六四五mから日照岳に続く痩せた尾根筋は、雪の落ちた背の低い藪と笹が出ていた。尾根を過ぎ山頂に向かう雪の斜面に入ると、雪が固く締まってきた。傾斜が緩くなってきたと思ったらダケカンバの枝に「日照岳」の標識が見つかった。ガスで視界がないので標識がなければここが頂上だとは気づかないようなピークであった。それでも別山に続く尾根の末端に出たのかと思うと、身が引き締まる思いがする。周りを見ても同じような、特徴のない比較的広い高低差のない山頂付近である。笹と灌木を避けながら進んでみるが、地図と磁石で進む方向を確認しながら一番高そうな所を進む。目標物が見えない雪面のくだりになると、次のピークに向かう鞍部を見過ごし、このまま谷に降りてしまいそうな気がしてくる。ルートの確認をしながら歩くので、進んだ距離が分からなくなってきた、今日はこのあたりで野営場所を選びながら進む。広い雪の斜面をくだると、幽玄の森に入る。幻想的な感じの濃い緑のアオモリトドマツの純林に入った。森の中は居心地がいい、大樹の下で野営することにした。雪の斜面を平らにならしテントを張る。バーナーに火をつけ、暖かいコーヒーを飲む。登りで張りつめていた気持ちが少し落ち着いてきた。食事をしているとテントに日が差してきたのか中が明るくなってきた、外に出て近くの高みまで登ってみる。周辺ガスはいつの間にか風に流され空が見えてきた、天候が回復してきた。日照岳を越えた後、このまま回復が遅れればこの長い尾根をどの様に歩こうか、ルートを誤ったらどのあたりで引き返そうか、などと考えていたのだが明日の天気に希望が出てきた。暗くなって外に出て自然の霊気にひたる、人がめったに入ることがない森の中では大昔自然の中で得てきた人間の本能であろうか、身体の中のすべての感覚であたりの状況を把握しようとしている。何も恐れずそのまま自然の中で夜を過ごすことが出来たなら、それはきっとつまらない自然なのだろう、山々を歩きながら自分の五感を信じ、心地よい緊張感のある自然の中にいることで生きていることを感じ取っているのかもしれない。明日は早く起きて存分に歩こう。早朝の冴えた空気に触れると、次第に気力が充実してくるのがわかる。オレンジ色の光が山を染め、次第に白くまぶしくなってくる。天気は快晴だ。これなら今日中に別山を越えられそうだ、こんな日は地図も磁石もいらない、必要なのは丈夫な足と目の前に広がる雄大な手つかずの自然を楽しむ心があればいい。雪の落ちた南斜面は熊笹のジュータンのようであり、斜面に残る雪渓には、薄墨で掃いたような幾筋もの跡が急角度となって谷に落ちていく。山を歩いているのが心地よい。福島谷を挟んだピーク1850mに続く尾根の斜面を登りきると一瞬夢かと思う予想を超える空間に出た。ピーク2083mから北東へ派生する尾根の奥に、兎の両耳を立てたような白山の主峰、御前ヶ峰と剣ヶ峰が真っ青な空をバックにそびえているのが目に飛びこむ。そこから東に三方崩山につながる大パノラマが目の前に広がった。それに思いもしなかったアルペン的な三方崩山南面岩稜が続く。西には足元から別山に続く白い尾根が幾重にもピークを重ね延びている。南に目を向けると、藍色にかすむ大日ヶ岳から別山に至る尾根を空の下に眺めることが出来る。今日一日白山の一角を存分に楽しめそうだ、今この長大な尾根で大展望を見ているのは二人だけであろう、このルートを選んでよかった。ここ数年は一人で山に入ることが多かった。私は山登りを通じ今まで自然の中で多くのことを学んできたような気がする、そこから得られる喜びは体験を通して得られる最良のものを得てきたと思う。アオモリトドマツの樹間を縦横に歩き、またある場所では岩と緑の熊笹の間に続く残雪を選んで歩き、幾つかの小さなピークを越え徐々に高度を上げる。日が高くなると雪面からの反射もあり、半袖で歩いていても汗ばむようになってきた。標高2080mのピークを越え雪と岩屑の尾根になると目の前に遮るものはなく展望にも一段と迫力が出てきた。何ヵ所か痩せた雪の急斜面の緊張した登り下りはあるが、そんなに難しいところはない。大倉尾根と白水湖の独特な青い湖面を眼下にみながら、昼近くになって気温が上がり腐り始めた雪の上を歩く。日当たりのいい岩峰は岩が露出している。なだらかな尾根のかなたにあった別山が、いよいよ見上げるようになってきた頃、やっと南白山に達した。15時を過ぎ、急な雪の斜面を登り切ると別山の頂に出た。ここまで思ったより時間がかかった、東方を振り返ると、日照岳が幾重にも重なったピークの奥に歩いてこなければ日照岳と判らないほど遠くになった。南には懐かしい別山平から三ノ峰、更に大日ヶ岳に至る緩い山並みが続き、西側には赤兎山、大長山、取立山など懐かしい奥越の山が重なる。午後の雪は腐って、何度か雪に隠れた割れ目に足を取られる。南竜ヶ馬場まで進みたかったがなかなかはかどらなくなってきた。天池付近でテントを張ることにした、今日一日は充実と満足した一日であった。次の日も快晴だ、白山の主峰御前ヶ峰がもう目の前にある。油坂の頭からは南竜ヶ馬場へ向かう夏ルートは通らずそのまま稜線伝いに北に歩く。次のピーク2244mで少し休む、積雪時ここから南に見る別山崩れは迫力がある。急斜面の崩れそうな幾筋もの岩肌に雪がのこり立体的なひだを形成し、そのまま谷に続く。昨日歩いた別山から南白山の尾根もずいぶん立派な山に見える。南竜ヶ馬場を左下にみながら、尾根を快調に進み、やまうば谷の上部で谷を横切り室堂平らに出る。ここまで人に会うことがなかったが、室堂平らで南竜ヶ馬場から登ってきたスキー登山のパーティー二人に会う。今年は登山者が少ない様だ、そのまま御前ヶ峰に登る。山頂で春の白山を満喫する。別山の南には藍色の山が空と区別がつかないほど幾重にも折り重なって奥美濃の山に続く、今日は大倉尾根を下るだけだ。春の山は気持ちがのびのびとして、特に下りははかどる。喜び勇んで転ばないように一気に白水湖にくだる。平瀬への林道は雪が残っていたが八石平付近からは除雪がしてあ歩きやすかった。雪で真っ白な山の上から下り、林道に入徐々に々に木々の新芽の淡い緑が目に入って来るようになると平瀬バス停に着いた。長い間白山周辺の地図を眺めるたび、雪のある時にぜひ歩いてみたいと思っていた別山東尾根であった、ブナの大樹の登り、アオモリトドマツの森林帯の霊気、雪と岩の明るい尾根、この三日間は白山を存分に楽しむことが出来た会心の山登りであった、感謝します。
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