![]() |
![]() |
![]() |
この日記は、先々週、書き掛けだったもので、書き上げて掲載している頃には、北陸新幹線はとっくに開業しているだろう。
先日の日記で、北陸新幹線開業による大都市との時間短縮という光の部分と、反面、開業に伴う、平行在来線の第三セクターへの経営分離と、特急の廃止いう陰の部分について述べた。
今回は、その陰の部分を感じさせられた一幕が、あったので、それについて述べたい。
なお、今回の記述は、山を含めた観光について述べるが、山行には直接、関わりがないので、ご了承願いたい。
当日、ニュースでも頻繁に報道されていたが、大阪と札幌を北陸日本海側を経由して結ぶ、豪華寝台特急列車の「トワイライトエクスプレス」が廃止された。
「トワイライト」とは、Г黄昏時」という意味だが、ちょうど富山県と、筆者の住む新潟県を通過する時、車窓から日本海に沈む夕日と、朝焼けの山々を眺められるのが魅力であった。
筆者の自宅からも、夕方、通過する列車が望め、孑供と共に、それを眺めるのが、筆者の夕食後の楽しみであった。
新潟県内でも3駅に停車するが、最寄りの停車駅で、最終運行の見送りに行ってきた。
いつも見ていた列車の姿が見られなくなるのは、一抹の寂しさは感じる。
廃止の理由は、報道では、「車両の老朽化」だが、そうは言いながら、既に「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」という次期新車両のデビューが決まっている。
しかし、この次期新車両は、主に山陰地方で運行される予定で、従来の北陸から北の日本海側のルートでは運行しない。
それは、なぜか?
実は廃止の真相には、新幹線の開業が大きく影響しているからである。
先の日記でも述べたとおり、北陸新幹線の開業に伴い、平行する在来線はJRから経営分離化され各県ごとに第三セクター化された。
ということは、JRが「トワイライトエクスプレス」を従来どおり運行しようとすると、既に経営分離化された各社の線路を通るため、各社毎に運賃、特急料金が発生し、従来と同じ切符価格ならばJR側の収益が減るからである。
もう1つは、Гトワイライトエクスプレス」は青函トンネルを通過するが、来年3月には北海道新幹線が函館付近まで開業するため、在来線とトンネルを共用する新幹線の運行に影響を及ぶこと。
そして、同じ様に北海道新幹線開業に伴い経営分離される平行在来線の会社にも、収益を案分しなければならないからである。
さて、平行在来線がJRから経営分離する前に、Гトワイライトエクスプレス」が廃止になったのは、沿線にとっては痛手だ。
もはや、ローカル列車しか走らない平行在来線にとって、通過するJRの特急がもたらされ収益は大きな財源だからだ。
その大きさを現す一例が、この翌日廃止された、同じく豪華寝台特急列車の先駆けとなった「北斗星」の定期運行取り止めにおける、沿線の岩手、青森県等の対応だ。
この列車は、上野と札幌を本州の太平洋側の在来線(東北本線)を経由し、結んでいた。
東北新幹線が岩手県盛岡から青森県へ延伸される際に、北陸新幹線同様、新たに新幹線と平行する在来線をJRから経営分離化し、第三セクター化された。
Г北斗星」は、両県の平行在来線がJRから経営分離化後も、変わらず存続し、運行されていた。
今回、Г北斗星」が定期運行を取り止めるのに際し、両県等はJR側に存続を求めた。
ただし、両県では、同列車はJRとの境界の盛岡以外停車せず、通過するだけなので、定期運行を取り止めても両県のГ利便性」に何ら影響しない。それにも関わらずだ。
それは、Г北斗星」から、両県の平行在来線を経営する第三セクター会社にもたらされる収益が、無くなるからである。
Г北斗星」が両県の第三セクター会社区間を通過する際、その間の運賃や、特急料金は、全て同社らの物となる。
もちろん、JRの車両を用いて客から運賃、特急料金を頂いている(事前に切符に含まれている)のだから、JR側に「車両使用料」を払うのだが、人気列車故にそれを引いても、余りある収益がもたらされるのだろう。
報道では、年間数億円の収入になるとか。
両県の第三セクター区間を通過中も、運転手も車掌もJRのままだし、同区間では一切停車しないので、一切持ち出しも、集客努力もしなくても、収益だけは入ってくる。
正に「濡れ手で粟」状態である。
よって、明らかに「収益欲しさ」に、列車の存続を求めているのだから、あまりに虫が良すぎる。
JR側が応じる筈もない。
せめて、自社管内に停車駅を設け「利用客を増やすので…」と自助努力をすべきであった。
あわれで、滑稽にも見えるが、それだけなりふり構っていられない経営状況なのである。
今回、北陸新幹線開業に伴い、経営分離する平行在来線にも、当てはまることなのである。
平行在来線を経営する第三セクターにとって、JRの特急列車が通過してくれるのはありがたい。
もちろん、従来どおり、貨物列車も通過するが、それだけでは不十分である。
やはり、特急列車の乗り入れも求めるべきである。
短距離乗客の多い普通列車に比べ、特急列車は全線通過の乗客が多い。
また運賃以外、特急料金も頂けることから、客単価が圧倒的に高いからだ。
1 一つは、先の日記でも述べたとおり、新幹線に開業に伴い、平行在来線は特急廃止することなく、存続をさせるべきである。
この沿線の特急停車駅で、今回、新幹線駅が設けられなかった駅は10以上あり、特急の存続は、これらの駅の「利便性」の維持に繋がる。
また、各会社にとっても、財源の安定確保に繋がる。
最も良いのは、JRの車両でなく、自社の特急車両を使うことである。
自前の車両であれば、JRに車両使用料を払う必要もなく、同車両をJR線で使用される際は、逆にJRから車両使用料が支払われるからである。
北陸新幹線開業まで、金沢着発の特急が通過していた新潟県の第三セクター会社
ほくほく線は、自前の特急車両を所有していたので、これを短編成化し、使用すべきであった。
この車両、特急廃止に伴い、JRに売却されるという話だが、売却ではなく貸与にする等、考え直してほしいものだ。
2 次に次期豪華寝台列車の乗り入れを強く求めるべきである。
ただし、これまでの様な通過型ではなく、北陸、信越各県を数日間掛けてゆっくり周遊し、停車駅では、周辺の観光を楽しんでもらうようにするべきであろう。
ちょうど、九州で大人気の超豪華寝台列車「ななつ星」と同じ手法だ。
例えば、石川県では金沢観光や霊峰白山の観光を楽しんでもらい、和倉温泉まで列車で移動し、和倉温泉で宿泊する。
翌日は富山まで列車で移動する客は富山から立山黒部アルペンルートを縦断する。
列車は、新潟県の糸魚川を経由し、アルペンルートの終点大町駅に先回りをする。
その後は、糸魚川まで列車で戻り、日本海側を北上する。
この辺は、線路が波打ち際を通っているので、沈む夕日を眺めながらの食事は最高だろう。
翌日は新潟県の酒蔵を見学した後、妙高山や浅間山といった車窓から見える信越の山々を楽しみながら軽井沢に向かう。
沿線は、林檎、杏子、栗等の名産だ。
それを使ったスイーツを車内で楽しむのも良いだろう。
途中、長野から篠ノ井線に入り、姥捨の日本三大車窓を楽しんでも良い。
眼下に見える善光寺平の夜景が美しい。
最後は、軽井沢に停車して宿泊し、朝靄の軽井沢の朝食を楽しんでももらい、その後、軽井沢散策を楽しんでもらっても良いだろう。
これは、ほんの一例だが、沿線は著名な観光資源や、更には潜在する観光資源も多い。
いくらでも、プランの立て様がある。
これにより、平行在来線は、新たなГ収益」を得られるだけでなく、「沿線のイメージアップ」にも繋がるだろう。
そのためには、JRが利益を案分してでもなお、列車を乗り入れたくなる魅力ある観光資源が必要だ。
沿線は、これまでの観光資源に更に磨きを掛けると共に、潜在する観光資源の掘り起こしに、真剣に努めなければならない。
最後に、平行在来線は沿線住民にとって日常の大切な移動手段である。
それらを経営する沿線各社は、他から利益をもたらせるの待つのではなく、どうか自ら攻めの姿勢で収益を獲得し、存続していってもらうことを、強く願うものである。