アシタカは”サンカ”ではないかと思ったけど、青銅刀を持っているようで、ウメガイ(サンカ刀)を持っていないので、やはりエミシ(蝦夷・毛人)と呼ばれた北東日本の狩猟採集文化の人なのだろうな。そのアシタカの民族と文化は、その後、大和族の征服(というよりも稲作の普及)で北方へと後退してゆき、北海道ではオホーツク文化との混合などドラマチックな展開をしてゆく。アシタカは”アイヌ”か?という人もいるが、アイヌの発生と歴史はもっと新しい。
サンは中尾佐助先生の説でいう”照葉樹林文化”の人だろうか?アシタカの狩猟採集文化(ナラ林文化)と似ているけど、それとは別に東南アジアまで拡がる照葉樹林文化の北端が四国や九州など西南日本にあった、と宮崎駿さんは設定したのではないだろうか?ナラ林文化よりももっと呪術的な部分がある。
古代の日本には、このナラ林文化と照葉樹林文化があった。どちらも森の動植物に依存する狩猟採集文化であって、基本的には定住的ではない。したがって集団化、国家形成は成り立ちにくい。
さてここで、おそらくは朝鮮半島から北九州へ、”稲作文化”が上陸する。
稲作と米食の人口支持力は大きく、狩猟採取に比べて収穫も安定しているので人数はどんどん増えた。稲作は定住した上で秋の収穫を1年間は貯蓄するので、定住者には財産ができ、それを守る必要もあって集団化し、やがて国家化し、その中で稲の収穫を祈祷するシャーマンを神格化した”天皇家”を中心とする大和国家が生まれる。これが日本の国家としての原型だ。したがって、よく日本の天皇を”エンペラー”というのは、厳密には間違いで、正しくは”プリーストキング(祭祀王・Priest King)”というべきだろうな。むしろ古代エジプトの王に近い感じ。正月は”年越の祭り”、お盆はもともと”夏越(なごし)の祭り”だし、新嘗祭をはじめ今も天皇家が行っている祭祀は全て稲作が起源だね。
閑話休題。稲作は国家となって、西南から北東へと拡大してゆく、征夷大将軍が遠征したりするけど、『狩猟採集をやめて稲作にします』といえばそれで国家に仲間入りOK(^^)
ずぅ〜っと時代が進んで、稲作集団から武家(稲作集団の貯蓄防衛機能を独立させたもの)が生まれたり、稲作効率化のために鉄器が製造されたりする。
鉄器は出雲地方を一大産地とする”たたら製鉄”だっだ。これは今も日立金属の安来鋼や日刀保たたらで受け継がれている。たたら製鉄には、稲作とその人口支持力を飛躍的に拡大するパワーが有ったけど、基本的に自然破壊を前提としていた。つまり砂鉄採集にために山を削り、砂鉄を溶かして玉鋼にするための燃料に木を伐った。
山を削り木を伐り、稲作を押し付けてくる大和国家に対して、アシタカは闘いつつも後退し、やがて同化する。サンやモロはそれに反発し、自ら滅ぶことを知りつつ闘う。これが『もののけ姫』の背景やね(^^)
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