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2015年06月07日 22:51山岳遭難全体に公開

山岳遭難について(終稿)

この日記には登山者を批判する記述もあります。不快になられる方もおられると思いますのであらかじめおことわりしておきます。それでも構わないって方はお読み下さい。

私が山岳遭難等について、ヤマレコの日記に投稿し始めたのは、あるユーザーさんの遭難死がきっかけです。当時、少なからず救助側にいた者としてはどうしてその遭難を防ぐことができなかったことに自己嫌悪に陥り、そのユーザーさんの歩いたであろうルートをたどりながら、今、私ができることは遭難未然防止への情報発信だと感じるようになりました。

当然、ヤマレコにおける他のユーザーさんの日記等も拝見しています。賞賛すべきものもあれば首をかしげるものもありました。でもそれでいいと思います。山の登り方が人それぞれであるように考え方もいろいろあって当然です。ヤマレコの禁止事項である他のユーザーおよび第三者への誹謗中傷、揶揄、挑発、攻撃に該当しないかぎりにおいて、自由に発言すべきだと思います。

でも、登山者としてやってはいけないのは遭難への賛美です。山の歌の中には賛美はしないものの美化したものもあります。無謀な登山者の遭難について非難すると遭難者を擁護する意見や非難したマスコミを批判する声も聞かれます。でも登山者が自ら常々「自己責任」って言っているわけですから、各論として画一的な報道しかしないマスコミや登山道を整備しない管理者を攻めるのは仕方ないにしても、総論としては遭難の責めは登山者が負うべきものです。

他のサイトでは、「遭難事故のほとんどは、備えるべきものを備え、注意すべきものに注意し、体力や体調に応じて行動すれば防止できる」、「メディアは騒ぎすぎですが、遭難するのはへっぽこばかり。(中略)極論すれば、現在の日本の山岳遭難は99・9%登山者の責任です」等と語られる方がいます。その通りだと思います。遭難は他人事と思う「危険意識の欠如」が原因で、登山者がいろいろなリスクを考えた上で綿密な計画を立てていれば、少なくとも遭難という事態は半減する思います。

一方で、白馬岳遭難死の公判で、「被告が登山の一般的危険性を理由に減額を主張したのに対し、判決が参加者には天候に関しての事前情報収集義務および催行検討義務がないという具体的な指摘をもってこれを否定した」との司法判断があります。被告である登山ガイドの有責については必然とは思いますが、私が着目したのは登山者である参加者の義務を否定したということです。
もう一つ、北海道積丹岳遭難死の公判で、「悪天候が予想されたにもかかわらず不十分な装備で入山した男性の過失を認めたものの、道警山岳遭難救助隊が男性を乗せた搬送用そりを一時的に固定した方法や、そばを離れた判断に過失があった」との司法判断があります。過失相殺があるものの救助者の責任が問われました。

その他、過去にはトムラウシの遭難事故等がありますが、近年の判例では上記2例が印象深いものでした。そして、30余年登山して信じていた「自己責任」って何なんだという疑問にぶつかりました。前述の通り、遭難の責めは登山者が負うものと思っていたのに、登山者以外に責任を負わせる司法判断が下された。これって、登山者が言う「自己責任」って実はまやかしで、世間一般的には、登山者は責任を負う自覚に欠けていると思われているということです。

ただ、登山者自身が責任を負うつもりでもそれを果たせぬ場合があります。それは死です。登山者の家族は皆が登山に好意的な方ばかりではないにもかかわらず、遭難してつらい思いをするのは家族です。登山は自己責任っていうけど、つらい思いをした家族の分まで責任を負える方っていません。
遺族の中には遭難死した登山者の非を認めつつも、やり場のない憤りを同行者や救助にぶつける人がいます。果ては計画書をチェックしなかった大学等に責任を求めた事例もあります。

また、「自己責任」について思うのは、他に「自己責任で登山禁止の山に登った」などという投稿に辟易しています。さらには登山禁止は役所の責任逃れ、投稿の是非を判断するのも自己責任と話される方もいます。私は「自己責任」とは自身への戒めと感じていました。戒めとは過ちのないように前もって与える注意ということです。ですから入山前に綿密な計画を立てることも「自己責任」です。登山禁止の山に登ることを計画することは過ちであり、過ちと感じるなら登るべきではありません。

こうして考えると、山は自分の足で歩いて自分の足で下りるという当たり前のことができない方が増加する現状下では、自己責任論は空論でしかありません。そしてそんな登山者を漫然と放任していたのは私たち登山者です。「遭難は他人事と思う危険意識の欠如が原因」と遭難者批判をしましたが、危機意識が欠如していたのは遭難者だけでなく登山者全体なのかもしれません。

登山で大切なことはたくさんありますが、一番大事なのは計画だと思います。そして計画に必要なのは情報です。ヤマレコってサイトは登山者に多くの情報を提供できるところだと思っています。そう思い遭難未然防止という情報を発信してきましたが、遭難体験者とコメントをやりとりする機会があったにもかかわらず非力な私の力では次なる遭難を防ぐことはできず、残念ながら歴史は繰り返されてしまいました。

長々とお話しさせて頂きましたが、命は山で捨てないもの、山岳遭難が1件でも減ることを切に望みます。これにて山岳遭難についての日記は終稿とさせて頂きます。お付き合い下さった方には感謝申し上げます。
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コメント

RE: 山岳遭難について(終稿)
masutyannさん、こんばんわ。いつも記事を楽しく読ませてもらっています。。
基本的には同意見なんで賛同する部分も多いのですが、山の遭難について語られるときにちょっと違和感を感じるのが、登山もしくは登山者の定義です。どこからが登山でどこからが登山でないか。

またケーブルで筑波山に登る登山から、厳冬期の北アルプスに入る登山までをじゅっぱひとからげに語られることに違和感を感じます。

となると、おのずと自己責任が発生する山にも違いが生じるのではないか。これを明確に区分せずに語るところから、登山者内、登山者と一般の人々、メディアなどとの間にも齟齬が生じているのではないか。そう思う次第です。
2015/6/8 0:02
RE: 山岳遭難について(終稿)
s-katayamaさん、こんばんは
登山の定義ですが、警察庁の統計では低山であろうが歩いて頂上を目指すものは全て登山です。一方、判断は難しいとは思いますが、高山でもケーブル等で上がり終着駅周辺だけを歩くのは観光になるかと思います。(警察庁の統計では遭難の形態として登山以外では観光、写真撮影、自然観賞などがあります。)
ですので、ケーブルで筑波山に登る登山と厳冬期の北アルプスに入る登山とでは登山者の責任に当然差異はありますが、登山である以上、自己責任が発生しない山はないと思います。
警察庁の統計には違和感のあるものもありますが、遭難のデータとして公正に参照できるものは他にはありませんので、登山者やメディアの判断の如何にかかわらず、十把一絡げであろうとも山に登ること自体が目的であれば登山(ハイキングや沢登り、岩登り、スキー登山を含む)になるかと思います。
2015/6/8 1:16
RE: 山岳遭難について(終稿)
masutyannさん こんにちわ

おっしゃること解ります
また、masutyannさんの遭難防止に対しての
啓蒙についても共感します

現在、登山人口はますます増えて低山から
高山。また無雪期から雪山へと行きたい山を
追及する登山者が後をたちません

確かに山は美しくて登り切った解放感や充実感
は他にはないものです

そういう表面的な部分のみで山に入る人たちが
急増しています

しかし、山は美しいけれど危険な場所です
それをどこまで理解して登っているのか?

たぶん、本当の意味で理解していない人たちが
多いのだと思います

その原因はなにか?
それこそ本当の情報を持ちえないからです

もちろんネットやいろんなところで山のルートや
なにから他人がいった情報は解ります

しかし、いった人と自分は違うのです
体力も技量も・・・

そういう意味でも本当の情報とは、自分の力量を
理解できる判断基準がしっかりあり、それに伴い
準備するための情報だと思います

それから、ガイド&ツアー登山ですが
白馬の大量遭難やそのほかの遭難でのガイドに対しての法的な判断

これらは判断するものが山を知らない人たちです
「自己責任」この事自体が理解できないと思います

つまりお金を支払って参加している
これに関してはお金を受け取っていること自体が
ようは「安心と安全」を約束して仕事として
受けていることになります
なので世間の常識から考えて、責任者の問題と
なるわけで・・・

もちろん不可の要素に関しても、責任者の
判断ミスとなるんだと思います

それが今の実情なんでしょう

しかし、おっしゃるようにツアーであれガイド登山
であれ登る登山者自身がどこまで自己責任を
自覚しているのか?本当はそこが一番の問題なんだろうと思います

そもそもツアーやガイド登山に参加する人たちに
見られるのは「自分一人ではいけないところだから
連れて行ってもらう」という風潮です

もちろん中にはそうでなく「学ぼう」という人も
いますけど

ようは自分がいけないところに行くために
簡単に人任せにする
この事自体がおかしいのではないかと思います

いけない山に行きたい

これっておかしくないですか?

いけない山なら努力して自分でも行ける山にすれば
いいんですよ

努力してそれでもいけないならそれが実力です

そこに「自己責任」という意識の低さを感じます

それから、今や masutyannさんのように
本当に今の山の状況を危惧されて声を出しておられる
方は多いです

しかし、悲しいかなそれを聞いてくれる人たちが
少なくなっているのも事実です

こんなことを書くとえらそうにと思われると
思いますが、昔は山岳会などで基本を学び
先輩からは自分の力量をしらされ、そうして
学んだものです

でも今や山岳会自身が衰退しています

今の「楽しく自由に登りたい」という登山者
のニーズとは違うんでしょう

先日いった姫路の300Mの低山でも
ハイキングですが「遭難予備軍?」と思われる
人たちに出会いました

低山でも人は遭難しています

ほんま怖いことです

なんとかならないか?なんとかしないといけないのでは?と私自身も考えています
2015/6/8 8:48
RE: 山岳遭難について(終稿)
karankurunさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
多くのヤマレコユーザーさんは自己責任の意識が低い登山者が多くなっていることを知っています。かつて地元警察の方や山岳連盟の方と登山届の提出の啓発を実施したところ、既提出者は1割にも満たない状況でした。登山届の提出が自己責任の一部とすれば、大半の登山者に自己責任の意識がないってことになります。これでは良識ある登山者が「登山は自己責任」と叫んだところで説得力はありません。これが現状なんです。
それでも私はそのような輩とは違うと言い続けますか?というのが登山者の課題であると思います。そういう輩はヤマレコを読むことがないかもしれません。楽しいところだけを伝える情報番組で知り得た知識だけで山に登っているのだと思います。ヤマレコユーザー1人1人の力でこの現状を変えて貰うことを祈念します。
2015/6/8 13:31
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