朝のうち、雨は降ったり止んだり。
宿のアニキも空を見上げて難しい顔をしている。
「はっきりしない天気だね。」
「そうっすね。これじゃ遠出する気になりませんな。」
などと言いつつ、実は新城（あらぐすく）海岸を
ロングアタックして来た。自転車で片道一時間半くらい。
降られたら泣くしかないが、今日はなんか午後から晴れる気がした。
わき目もふらず３９０号線をひたすら走る。
やがて東海岸沿いの城辺という町につく。
ここには総合運動公園がある。非常にイノセントな野営適地だ。
テントさえあればここに野宿しつつ、
海岸を攻めるのがいいんじゃないかと思った。
たぶん付近住民も、「あ、裸族だ。」くらいで許してくれるのではあるまいか。
というか、付近に住民はいない。
本当は吉野海岸に行くつもりだったが、
手前に新城海岸が出てきたのでとりあえずそっちを先に攻めてみる。
宮古のシュノーケルポイントといえば一番人気が吉野、
次が新城という感じである。
海岸へと急な坂を下って行くと、リーフに囲まれた海岸が見えてくる。
今日もばちこーんと干上がっている。
さすが人気スポットだけあって、シュノーケルグッズをレンタルする
出店などある。すごい数のゴーグルやマリンシューズが並べられているが
人影はまばら。
さっそく海へ。時刻はお昼を回って干潮間近である。
遥か沖の方で白波が立っている。ずぞぞぞぞぞぉって音が遠くに聞こえる。
リーフが俺を呼ぶやうだ。うだつの上がらねえ平民出にやっと巡って来た幸運か。
それとも破滅の罠か？
遠浅の海にはサンゴが一杯。水も透明だ。
しかし脇目もふらずにリーフへ。歩いていけるが結構遠い。
リーフ周辺はさらにキョーレツに枝珊瑚が密生している。
ここで問題発生。あまりに珊瑚が多くてリーフに近づけない。
どうしても珊瑚を踏んで傷つけてしまいそうだ。
あと５０センチも水深があったら泳いで突破出来るのだが。
こんな時の解決策は、
�ー�分だけは特別だから構わず突破。
�∧未縫蝓璽佞覆鵑謄�ョーミねぇからさっさと引き返す。
�０嫦榔�く辺りを徘徊してみる。
もちろん正解は��。�，世韻呂笋蕕覆い茵爾法�
ここまで来て後には引けない。
僕は温泉とリーフにはわりと卑しいのだ。
大抵一箇所くらい深い切れ込みがあって
そこからスムーズに沖に出れたりするものだが、
この海岸はどっちへ行っても珊瑚びっしり。
凄すぎる。でも困るぞ。
珊瑚の合間をぬって、なんとか沖へ出るルートを探す。
行き止まると、もと来た道が分からなかったりして。
珊瑚の迷路って感じだ。
他にも野郎二人組がやはりリーフを前にオロオロしている。
「あとちょっとなのにもどかしいっすね。」
「うーん、引けばいいってもんじゃないみたいだね。」
一時間ほど彷徨った挙句、ようやく突破できるルートを発見。
まったく、最後まで苦労させやがる。
たうたうここ数日焦がれたリーフとご対面。
堂々たる切れっぷり。２０メートル以上は優にある。
しかし何としたことか、ここまで来るのに消耗しきってしまった。
海底を目指してダイブを敢行するも、半分も潜れやしない。
なんたるザマだ。深さに体が馴染まない。
息が続かなくなるまで潜るなんてことは、そう簡単に出来ることではない。
大抵は恐怖心に負けて浮上してしまうのだ。
以前はこの位の深さはフツーに潜ってたものだが。
さみしく海面を漂って帰ってくる。
帰りは浅瀬の珊瑚を見ながらゆっくり泳ぐ。
案の定陽射しも出る。
水中から見上げると海面に珊瑚が映っている。
極度に美しい。コレのために人生を間違える奴がいても
まったく不思議じゃない。そいつは胸を張っていい。
海面近くをテバスズメが群れている。
テバスズメって枝珊瑚に群れてるもんだと思ってたけど
こいつらは海面近くを漂っている。
スズメダイがいると海中が華やかになっていい。
岸に戻って昼寝。のち再びリーフにトライ。
はやくも潮は満ちはじめている。
どうもこの満ち始めって奴は海が妙にざわついて怖い。
先ほど泳いだ辺りまで行ってみるも流れが早い。
上げ潮なのにどういうカラクリなんだろうな。
リーフ沿いに北向きの流れだが、うっかり泳いでると
持ってかれそうだ。
諦めて浅瀬で遊ぶことにする。
珍しく貝なんて採ってみた。僕は海に来ても眺めるばかりで
魚を突いたりってことにほとんど興味がない。
貝なんて持ってても邪魔だしな。
オニヒトデを一匹見つけた。本物を見るのは初めて。
持って帰るべきなのかもしれないが、網も何も無いしな。
あんなグロいもの持って泳ぐわけにもいかないだろう。
岸に戻ると早くも夕暮れの風情。
海水浴客たちも帰り支度をはじめている。
結局吉野海岸には行けなかったが充分満喫した。
沖縄屈指の珊瑚礁と言っていいだろう。
なんとしたことか、帰り道を間違えてしまった。
保良とかいう集落に紛れ込んでしまい、Ｔ字路の標識には
【←新城 東平安名崎→】
などと書かれている。どっちにも行きたくない。
方向音痴のクセに地図を持ってこないから悪いんだ。
一時間ほどロスして友利の町へ。前に一度来た所なので
ここまで来れば一安心だ。
ふと見上げると夕陽を従えてご大層な雲が西の空に浮かんでいる。
左手の集落には最初に点った小さな灯り。
こんな時こみ上げてくる強烈なサウダージを僕はどうしたらいいのだらう？
とりあえずデラックスチョコモナカを買って誤魔化しておいた。
７時過ぎ、すっかり辺りが暗くなり始める頃ようやく宿に着く。
ロングアタ・スイム無事終了。大遅刻だ。もめるぜ例会。
振り返ると満月近い月。大潮だからね。
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