|
|
|
我が街、埼玉県飯能にはなんと、3つも山陵・尾根がある。
これは多分、凄いことだと思う。
南から、奥武蔵グリーンラインの中間部(高麗川・西武線・国道299の北)、飯能トウノス山から正丸峠まで(入間川北)、長沢背陵(都県境界)東部である。
この真ん中、所謂イワユル、飯能から正丸峠までの尾根を飯能アルプスと呼ばせたがっている人々がいる。
すこし恥ずかしいが、何とか銀座みたいなもので、まぁ愛嬌。いいのではないか……。
長沢背陵以外はスルーハイク？はしたことはない。
が、小生にとって飯能アルプスとグリーンラインはご近所の散歩道。セクションでは始終歩いている。特に冬場。
ご近所の思索、哲学の道である。
逆に、長沢背陵、と云うより県都境界尾根はアプローチが良くないので、立ち入ったらある程度歩ききらなければならない。
京都の哲学の道は、今や軽佻浮薄喧騒の巷で、昔にあっても本当にこんな道で思索ができたのか？不信である。(京都一周トレイルの中途去年通過した。)
我が哲学の道は、道はアップダウンすくなく、危険少なく、人は少なく、いつでも鉄道に直接アクセスできる。
実に思索に適した山道でR.
但し、杉の植林がおおく、やや暗く、尾根は狭く(飯能アルプス)、林としての風情には欠けるが、それでも正月あたり、杉林に千両の赤い実が光るのは美しいものである。
チョロチョロと沢も明るい。小さな滝もいくつかある。
グリーンラインから北は林道が四通八達し林道によくある袋小路行き止まりが少なく、意外な場所に出るので、ジムニーなんかで遊ぶのも楽しい。
ハイカーにとってはやや迷惑であるが。
バイクは比較的少ない。乗り入れ禁止の箇所もあったように思う。
山上集落やら、古刹やら茶屋も多く、退屈はしない。
西武線の側に降りないと、かなり交通の便は悪い。
ｸﾞﾘｰﾝﾗｲﾝの北はゴルフ場が多いので水は農薬で汚れてる可能性が高い。川遊びできる場所には蝮も多い。
有名な巾着田などかなり汚いので、まちがっても川の水で炊飯などしないように。
ひたすらガシガシ、或いは沈思黙考もくもくと、歩くには飯能アルプスが向いている。
小雨でもあまり濡れないし。
山道から見下ろすと意外な場所に石灰石を採った跡の池
が出来ていて驚いたりする。
⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛
哲学とはある種の人間にとって治癒だと云う。
たいていの人は、時に思索的になるものだが、哲学的になるものはごく限られている。
哲学と思想はかなり根本的に異なった行為だ。
哲学、世俗的には何の有用性もない。
思想は世のため人のためになることもあることもあるし、災厄になることもある。
思想は世俗の言葉で組み立てられるものだし、哲学は言葉その物を構築しなおそうとする。
家を建てることと、金槌や鋸を作ることくらいの違いがある。
誰が、金槌を作ることに興味を持つと云うのか？
哲学とは、世界に対する通俗的説明に違和感を覚えざるを得ない「病人」が、自らの言葉でより納得の行く回答を出そうと立ち向かう、勝ち目の無いおろかな行為だ。
たとえ何らかの実りがあったとしても、その説明は誰にも理解されないだろうし、愛するものさえ納得させられない。
世間と言うものは頑迷と云うよりも、ただただひたすら健康なのである。
健康的とは、存在に対する恐怖の欠如の謂だ。
恐怖の強迫反復だけが切実に哲学に向かわせる。
健常者に松葉杖は要らない。
ウィトゲンシュタイン流に言うならば、蠅取り壺の外に居る蠅は、出口を探す必要はない。
われら病人は憐れみを乞うても益はない、ただひたすら健常者の足手まといにならぬ様に無様に松葉杖をふるだけだ。しかも、松葉杖を悟られないように。
彼らが名誉に思うことに羞恥を覚える。道徳的に正しい行為に疑問を禁じ得ない。だから……、
無様にカネをかせぎ、無様に社会生活をおくり、無様に愛想笑いをして、無様に語る……いや語ってなんかいないのかもしれない。語るふりをする。
嘘だと知って嘘をつく。
無知ならば嘘ではない。
世界は肯定せざるを得ない。何故なら、既に存在しているのだから。
だから、世界に疑問を持たない健常者が正しい。QED
彼らは当たり前のように時間の実在を信じ、平気で無限を語り、ビッグバンを論じ、宇宙の膨張を話す。
われわれの言語に、世界の外側や時間の始まりを語れるのだろうか？
完全！永遠！虚無！！僭越な……。たかだか人類ごときが。
生者に死後を語る権利はあるのか？
他者の幸福を語ることは可能なのか？
そもそも、我々は語り合えるのか？
(勿論、語り得る。ある、水準までは……)
野球の解説者は勝負哲学を語り、実業家は経営哲学をかたる……。
少なくとも、哲学的であったなら、スポーツや金儲けは出来ないと思う。
世界のルールにさえ疑問を禁じ得ない者がどうやってそのルールの運用の熟達者になれると云うのか？
挙げ句の果てに、「ニーチェに学ぶ経営学」ときた。
泉下でニーチェも悶絶してるだろう。
哲学に建前は無い。
充分に考え抜いた、とは、そのようにしか行為できない、生きられない。と云うことだろう。
勿論、天才的に頭は良いが不純な(世俗的に成功した)哲学者というものもいる。アリストテレスやライプニッツの様に。
……ただ、なんとなく彼らの学問はワタシの心をうたない。知的に面白いとは思うが。
そういえば、天下のNHKでギターを引きながら「回る回るよ地球は〜♪」と歌いながら、永劫回帰を説明していた大学教授がいたが、これこそ本当に世も末、狂気の沙汰。学生が気の毒だ。
死ぬまで回ってろ、利口ものが。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
……もののけが、見えるのならば、そもそも見えるとはどうゆう事態か？
……愛はあり得るのか？あり得るとしたら、その定義と条件は？
……ラカンの象徴界、実在界(現実界)の話と、スピノザの身体・観念論は相補的に説明可能なのではないか？
……悉有仏性と「神即自然」の異同は？
……龍樹の空論と相対論の極北の関係は？
……この意識の実体はナンなのか？ドゥルーズの言う、観念のリフレクション、を実感するとは如何なることか？
……ワタシから他者を引き算したら何が残るのか？
………等と、何の益もなく、結論もでない埒もない思い付きを妄想しながら散歩するには数時間の気軽な独りの山道が丁度良い。
なにしろ、アマチュアは気楽なものだ。論文の締め切りもなければ、先行文献の渉猟も要らない。勝手に妄想して勝手に忘れ去れば良い。
金と名誉をあきらめれば、意外に世は楽に渉れるものだ。
ついでに、孤独と死を受け入れられれば殆ど無敵。
が、それはもはや人間ではない。ヒトデナシだろう。
………形は槁木の如く心は死灰の如し。荘子の世界である。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
カントは散歩が日課だったらしいが、余程静かな時代だったのだろう。
山頭火は日記で何度も「外道車」と罵っているが。昭和初期の四国中国九州地方の話である。
現代なら何と言うだろうか？
小賢は野に逃れるにしかず。
煙草の趣味のある方はときに座って一服付け、左党
はスキットルから命の水を補給しつつ、騰騰兀兀逍遙し、あたりが薄暗くなったころ適当な西武線の駅に降りれば良い。
30分に一本は電車がある。
……残念ながら、小生は肺を病みすこしばかりつぶれてしまったので、葉巻もパイプも不能になった。
命と引き換えるほどの享楽でもない。すっぱり止めた。
酒は死にかけたが止められない。
いずれ、酒で命を落とすのは覚悟している。
話を戻して飯能アルプスだ。
夜道は、危険は少ないのだが、イノシシが多いので少々怖い。きゃつら暴走族だからなぁ。とにかく初めてお会いすると腰を抜かしそうになる。
熊も出るらしいが、どうだろう？少なくとも奥多摩よりはるかに少ないと思う。会ったことは無い。糞も見ない。
飯能アルプスから正丸峠を越えて浦山口なり生川に降りるまで、水場は子の権現のお寺と、正丸の茶屋で 分けてもらうしかない。まぁ駅まで我慢すれば良いだけだが。
野宿ポイントは獣道や、獣道に隣接しているから意外と少ない。仮眠するなら、天覚山の祠跡の広場、古御岳のアズマヤがいいかもしれない。
天目指峠や子の権現にもアズマヤはあるが、少々落ち着かない。
(実は、小生は飯能アルプスで朝まで寝たたことはない。なにしろ、地元なもので、夕方飲み潰れても、終電までに降りてしまえばすぐに家だ。最悪三時間も歩けば良いだけだ。)
正丸峠を越え横瀬に入ると本格的に山らしくなる。それなりの足ごしらえも要る。鉄道までも遠くなる。
大持山あたりは静かで紅葉も良い。
雪の武川岳も良い。が、ここはもはや飯能アルプスではない。(のだよね？)
ｸﾞﾘｰﾝﾗｲﾝは野宿場所には事欠かない。ただし、車がうるさいので、やはり冬が良い。
長くなりすぎた、長沢背陵についてはまたの機会に……
(写真は、天覚山の祠跡、役の行者像、顔振峠あたりの秋)
兀狄gotuteki 山人記
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する