![]() |
![]() |
自分は、登山を始めてから2年ほどはストックは荷物になるだけで、ストックに頼る位なら自分の歩行技術や体力向上を進めたほうが良いと考えていました。
しかし、少ない休みの中で、より多くの山に登りたい。美しい山の景色をできるだけたくさん見たい!!という欲求が日に日に増していきました。そういう背景から、歩行距離の長距離化、歩行速度の向上、荷物の軽量化を進めていきました。当然ながら、リスクとのバランスを考慮しつつ、登山装備を主としつつも、トレラン装備の活用が増えていきました。トレランの道具は見れば見るほど、設計者の創意工夫と熱意を感じることが多く、感心すること、勉強になることが多々ありました。
このような自分なりの登山スタイル構築の中で、ストックについても情報収集・勉強を進め、現場でトライ&エラーの試行錯誤を行いました。そして、ストックについて、自分なりの一定の結論が出ました。それは、
「ストックは、肉体のポテンシャルを最大限に引き出し、体力を最後の最後まで使い切ることができる素晴らしい道具」
ということでした。
もちろん、ストック自体の重さや、収納が面倒というデメリットはありますが、これはワンセット500g程度まで、3ピース、もしくは4ピースのストックを購入し、ショルダーベルトにバンジーコードで留める工夫をすることでほぼ解決できました。
参考として、写真を添付します。写真のようにバンジーコードとストッパーをショルダーベルトに2箇所設置し、折りたたんだポールをバンジーで固定します。体の前面にあるので、ザックをおろすことなく括り付けることが可能です。これはとても重要です。気が付いたらザックをおろすことができないような急斜面などになっていることがあります。「やばい!!ストック邪魔だ!だけど、ここではザックおろしたり、ストック収納とか危なくてできない!」といった時にでも、ザックを下ろすことなくストックを収納して、両手フリーの状態に切り替えることが可能となります。それと、細かいことですが、4ピースだとこのバンジー2点の距離にギリギリとなって、ちょっと取り付けにくいことがあります。下側のバンジーを上側にスライドさせれば良いだけですが、3ピースの方が取り付けしやすいです。
なお、以下のケースではストックの効果は少ないか、邪魔になります。
1.ハイキングコースとして平坦な登山道が完備されている短いコース
2.岩登りや沢登りなど、両手も使って登坂するクライミング要素が大きいルート
以下はストックの利点です。
1.使用筋肉の分散による脚部の疲労軽減
2.バランスの補助
疲労困憊した時、足場の悪い場所、筋力・バランス感覚低下した肉体などに効果的。徒渉時も小さな石やバランスのとりにくい石を支点にして石跳びをするなど。
3.歩く前の足場の確認
1歩先の足場がどのようなものか確認する。
上記1に関して、以下に詳細説明します。効率の観点からの考察ですので、ダブルストックを前提とした話となります。
まず、ストックを使わないと、脚部の筋肉(厳密には臀部も)だけを使うため、酷使される脚部の筋肉は疲労しやすくなります。特に長距離歩行では疲労蓄積が顕著となり、脚部筋力の限界が、その日に進める距離の限界となります。
対してストック使用では、肩や肩甲骨周りの筋肉を使用するため、使用する筋力を分散でき、脚部の疲労が軽減でき、1日に進める距離が伸びます。個人的には、ストックとトレランシューズの採用で、1日に歩ける距離は1.5〜2倍、速度は1.5倍程度となりました。
ただし、ストックを最大限に活用するには、以下の2つが重要となります。
1.ストックの使い方の技術習得
2.上半身の筋力強化と柔軟性(肩回り、肩甲骨周り)
まず、「1.ストックの使い方の技術習得」について説明します。
ストックを使用する際は、意識して脚部をリラックスさせて姿勢良く立ち(前かがみにしない)、少し力を抜きます。その分の推進力をストックで補う意識を持ちます。ちなみに、脚は、脚の付け根、できればへそのあたりから振り子のように振り出すようにします。脚の付け根がへそにあるような意識です。
ストックの使い方は、肩と肩甲骨周りの筋力でできるだけ後ろまできっちりと押し続けます。突くのではなく押し続けるのです。体全体を前に押し続けるのです。体を押し続けるためには、ストックを体の前に置く必要はありません。ストックを体の前に置くときは、前に転倒しそうな時に体を支える時であり、体が前のめりになっているときです。こういう使い方も普通にしますが、ここではストックを推進力として活用する時の説明です。
ストックの先端は体の真横より少し前(ここに置くと、押し始めるときは体の横に来る)に置きます。ストック先端を置くときは、力強く突く必要はなく、置くだけでよいです。強く体を前に押し込む意識が強すぎると、無意識にストックを地面を叩くように突く方がいますが、そんな必要はありません。ストックの先端を地面に優しく置いて、そのまま肩、そして肩甲骨まで使って次第に体を押し込むことで推進します。使う筋肉が分かりにくい場合は、椅子やテーブルを左右において、その間に自分が立ち、両掌を椅子やテーブルに置いて、体を支えて足を地面から離してください。その時に使っている筋肉でストックを押し続けるのです。当然ですが、両掌が体から離れすぎると、脇が開いてしまい、体幹(体に近い大きな筋肉)や骨格で支えることが困難となり、より小さな筋肉で支えることとなり、疲労します。ですので、基本はストックは体から離しすぎないことが重要です(左右のバランスをとるときは、体から離す)。
次に、「2.上半身の筋力強化と柔軟性」について説明します。
脚部の負担を肩や肩甲骨にも分散することで、脚部一極集中の疲労を軽減します。その場合、当然、両肩や肩甲骨は負担が増えますので、その筋力の強化は効果的です。ストックの効率的な活用ができるようになると、最初のころは肩や肩甲骨周りの筋肉痛が増えるのは、こういう理由です。
また、肩や肩甲骨周りが柔軟な方は、より長くストックを押し続けられるので、ストック技術を習得するとかなり効果があるはずです。肩甲骨周りの柔軟性は、人によってかなり差があります。両掌を体の後ろで組んで、肘を曲げすに組んだ掌を上に高く持ちあげられる方は肩甲骨が柔軟な方です。一般的には女性の方が柔軟な方が多いので、ストックの活用は女性の方が効果があるかもしれません。ですが、肩甲骨周りが硬い方でも、ストレッチで改善できるので、ぜひともトライしてほしいです。
大体の説明は上記の通りです。このほか、趣旨とはずれますが、UL装備でツェルト泊などでストックを支柱として利用する場合もあります。この場合、重いテントを持参せずにすむので大幅に重量軽減できます。具体例としては、ヘリテージのトレイルシェルター(300g以下)などです。ここまでの活用を考慮すると、ツェルトに必要な長さと強度として、ストックはトレラン用のワンセット300gとかいうような超軽量のものではなく、最低限の強度を持ちつつ、長さは115〜120cm、ワンセット350g〜500gのものが主体となると思います。ツェルト使用がなければ、長さは何でも良いです。
最後に効率化を求めたストック使用のデメリットですが、強いて言うならば、道具に頼って効率化に縛られ、自由で優雅な登山を見失うことかもしれません。
登山の本質は、山や自然の美しさ、豊かさを楽しむことだと思います。効率は無視して、ストックを持たず、肉やフライパンを持参して、山菜やキノコを取り、山頂で設営したテントの横で、絶景を眺めつつ、ステーキと山菜、キノコを食べるような登山が本当に豊かな登山だとも思います。
自分もまだ、その域には全然達していませんが、老化に合わせて、そういった登山をしていきたいと思っています。
※sari-paAさんからの質問に対する追加説明
・ストックを体の前に置くケースについて
上記で、ストック先端を体の横近くに置いて、肩と肩甲骨で押し込むことで推進力を得る方法を説明しましたが、急斜面については例外で、ストックを前に置きます。その理由は2つあります。
1つ目の理由
上記のように急斜面でストックで体を押し出すように使うと、ストック先端と地面の距離が離れてしまいます。結果的に肩と肩甲骨を使っても、十分に押し込めなくなります。特別長いストックならば、問題なく方と肩甲骨で押し込んで推進力を得られるかもしれませんが、ふらつきやすくなりますし、押せる距離にも限度があります。
2つ目の理由。
急斜面では、ストック先端と地面との接点が当然少なくなるだけでなく、グリップが十分に効かずに下へずり落ちやすくなります。これは当然のことですが、急斜面になればなるほど、極端な場合、垂直ではストックは置くことさえできません。また、急斜面で無理に体の後ろから押し込んだ時に、ストック先端が滑ったとしたら、バランスを崩して、そのまま滑落するかもしれません。ですので、一定以上の斜度になり、ストックが滑り始めたたら、ストックは体の前に置き、上半身は前かがみになり、ストックで支える形にするのが、安全かつ効率的な使い方となります。
ただし、これには例外もあり、山スキーなどで石突きとスノーバスケットの装備で、急斜面でもストックが雪に沈み込み、しっかりとグリップする状況では、結構な急斜面でもストックを体の真横に置いて、加重分散しながら、そのまま押し込む方がずり落ちずに推進力が得られます。とはいえ、無雪期とことなり、シール付きのスキー板を履いての作業となるので、急斜面にも限度があります。
あっ!もちろん、下りはストック前に置きます。転ばぬ先の杖です。
以上、個人的な考えですが、異なるご意見も広く聞いてみたいと思っています。
ストックの有効な使い方について、教えて頂きありがとうございます。
ところで一つ、気になる点があるのですが、ストック先端のゴムキャップは、勿論、付けたままですよね。YouTubeのどなたかの映像に、ゴムキャップは外す、という説明がありました。一日何百人も通る登山道なら、いっぺんに道がグチャグチャになりますよね。
推進力としてストックを使った場合、ゴムキャップ付けたままだと滑ることがあります。まあ、推進力の補助としてストックを使っているのだから滑っても問題ありませんが…。それとも私の使い方が間違っているのでしょうか。
私はハイキングなら一本ストック、縦走など荷物の多い時は2本持ちます。というのも、二本持って地面に触れるだけで、総重量がわずかながら分散されるからです。そして登りの時は、ストックを前に突いて体重を前方にかけて、脚力の使用を推進だけにするようにしています。特に急な登り…(笑)
この前、ストックを真横近くに設地して推進力の補助にする、というやり方で上がってみました。緩い登りでは有効でした。ただ、ストックが後ろに滑ることがありましたが…。
長い話、付き合って下さって、ありがとうございます。何かアドバイスあれば、よろしくお願いします。
あくまでも私の場合・・・の使い方で、恐縮です。
1.ゴムキャップについて
you tubeで説明されていた方については、どんな状況での説明か、どんな方なのかも不明なので、良し悪しの判断がつきませんが、私はゴムキャップをつけています。キャップを外して石突きで効果があるのは、硬い雪面の雪渓や急斜面の土場位だと感じています。それ以外は、岩場にしろ、泥場にしろゴムキャップで不便は感じたことはありませんし、むしろそちらの方がグリップは良いのではないかと思います。ただし、ゴムキャップがシナノのように柔らかくグリップしやすいものは良いですが、安物だとプラスティックに近い性質のものがあり、それはきっとグリップしないはずです。それとストックの先端が滑るのは危険です。補助として使ってはいますが、推進力として積極利用する場合は、結構がっつり押し込み、力もかかっています。ですので、ゴムキャップのグリップはかなり重要ですし、ストック先端を置く位置も、きちんとグリップする場所におくことが重要です。ですので、私は地面の状況がシビアなほど、置く場所をきちんと考えて置いています。置いた後のバランスにもかなり影響しますので。
2.登りの時について
私の日記で、ストックを前に置く場合の説明を省略していましたが、sari-paAさんと同様で、斜度が急な時です。今日は1日雨で時間がありますし、せっかくだから日記で説明を追加しますね。
ストラップ使わず持ってます。
昔の旅人スタイルですかね?
松尾芭蕉みたいな。
最近は岩場以外では
持つのが普通になってます。
自分が持つ理由としては、
・常用で膝の負担軽減
・渡渉の時などに足場の確認
・ヤブ道でクモの巣の破壊
・緊急時の武器として(?)
って感じです。
2本持ちのほうが
膝の負担は減りますが、
転倒時が怖いので
最近は1本で頑張ってます。
ストック1本持ちなんですね。1本でもやはり、あるとないとでは大違いですよね。
ストックが滑って転倒して怪我をされて、それ以来、ストックが信用ならないと使わない方もいます。色々な理由で持たない方、1本持ちの方がいるのも、それぞれの経験など背景があり、そういったお話を聞くのも勉強になりますね。
転倒時に、2本持ちでも上手に転べる方法、工夫があればよいのですが・・・。
確かに良い方法は思いつきませんね。
あとは、1本持ち、2本持ちで転ぶ確率+怪我のレベルを、統計的に比較できるようなデータがあればうれしいですね。
ちなみに、山スキーではブラックダイヤモンドのウィペットを使ってますが、これは転倒時に持ち手の部分のピッケル形状の突起が雪面に自動で刺さるので、滑落防止できとても便利です。ストックでも転んだ時に、クッションになるような工夫があればよいかもしれませんが、重くなるので難しいかなあ・・・。こぶしガードとか、そういったものになるのかもしれませんね。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する