安全登山セミナー（2日目）メモ（未定稿）

2021年05月23日 21:31未分類全体に公開

昨日（5/22）と今日（5/23）の2日間、国立登山研修所が主催されている安全登山セミナーをオンラインで受講しました。
2日目の講義の概要メモ（未定稿です）を取りましたので、また長くなりますが、おおよその内容を紹介させていただきます。

第2日目（5月23日）
講義Ⅳ「医学」「20分で学ぶファーストエイド！基本編「熱中症・高山病・低体温症」」
大城和恵氏（国際山岳医社会医療法人孝仁会北海道大野記念病院　国立登山研修所専門調査委員）

熱中症、高山病、低体温症の3つのテーマについて、それぞれ20分程度にまとめられたナレーション付きパワーポイントスライドを見た後、質疑応答をするという内容でした。
（6/10 追記）ナレーション付きパワーポイントスライド（映像資料）が国立登山研修所のHPに掲載されました。
https://www.jpnsport.go.jp/tozanken/tabid/82/Default.aspx

（１）熱中症
・熱伝導のメカニズム（放射、対流、蒸発、伝導）
・人の行動（洋服を脱ぐ等）による体温調節が重要。
・熱痙攣⇒軽症（足がつった⇒水分・塩分の補給）
・熱失神・熱疲労⇒中等症（めまい・立ち眩み⇒経口補水液２リットル以上補給）
・熱射病⇒重症（意識がおかしい、体温39度以上⇒すぐに救助要請）
・重症の確認は、意識が正常かどうかと、体温の測定。
・重症は緊急性が高い（死亡率25～50%）。様子を見ずに直ちに救助要請。
・中等症で30分処置して改善しない場合も救助要請。
・中等症の処置：日陰に移動。まず安静、足を上げる、経口補水液２リットル、冷却。ぬるい水をかけて蒸発させる（冷たい水だと皮膚の表面の血管が収縮）。あおぐ。
・重症の処置：中等症の処置に加えて、回復体位をとる。ＡＢＣ（気道、呼吸、脈の確認）。0.1度でも下げる。勢い良くあおぐ。アイスバッグで冷やす。冷水に身体をつけるのは効果があるが、気道確保が必要、その場合は最大でも１０分間。
・予防方法：登山前　500ml水分補給、トイレに２回行く。
　　　　　　登山中　塩分を含んだ水を２０分ごとに100~250ｍl。
　　　　　　登山後　塩分を含んだ水を500ml以上補給。
・暑さ指数WGBT：気温と湿度の指数。２５度から要注意、２８度以上は登山中止や時間短縮、３１度以上は中止。

（２）高山病
０）高所の定義
・1500m以上。低酸素によって呼吸が早くなる「低酸素換気応答」が始まる高度。
１）高山病の種類
・急性高山病と高地脳浮腫⇒脳・神経系に症状が出る。
・高地肺水腫⇒肺に症状が出る。
いずれも、低圧、低酸素が原因。
２）急性高山病
・症状の始まりは２５００～３０００ｍに達して２４時間以内。
・同じ標高にとどまると数日以内に改善するが，標高を上げると悪化。
・自己診断ツール（レイクルイーズスコア）：頭痛、胃腸/食欲、疲労倦怠感、ふらつき等の症状の程度を点数化。３点（軽度）⇒これ以上標高を上げない。６点（中等症）⇒即下山。
・急性高山病発症者の72%が脱水症を、また、脱水症発症者の87%が急性高山病を併発。水分補給が重要。
３）高地脳浮腫
・３０００ｍ以上（２１００ｍの事例もあり）で、急性高山病が悪化して発症。意識障害や動作行動の異常が見られる。放置すると命に危険。すぐに１０００ｍ以上下山、９０％以上に動脈血酸素飽和度（SpO2）を上げる。
４）高地肺水腫
・上昇スピードが速いとき、到達した標高が高い時などに発症。２泊目の夜に発症しやすい。初期症状に気づきにくい。動脈血酸素飽和度を測ると早期発見できる。早く下山しないと死んでしまう。
・予防策として、ゆっくり登る、しっかり呼吸、こまめに水分補給、初日は２５００ｍまでの標高で宿泊。

（３）低体温症
・熱喪失の４つのメカニズムは、熱中症の熱伝導のメカニズムと同じ。
・熱中症と同様に、人の行動で体温調節することが重要。
・体温を下げない４か条⇒食べる、隔離、保温、加温
・震え（体温を上げられる）、意識（正常かどうか）、脈と呼吸、で重症度を判断。
・軽度（深部体温35℃～32℃）は、震えがあり、意識が正常な人。初期の震えと意識に注目し、軽度のうちに対応すれば、自力回復も可能。
・中度（深部体温32℃～28℃）は、震えがなくなった人、意識が正常ではなくなった人。一つでも該当すれば中度。
・高度（深部体温28℃～24℃）は、震え、意識なし。脈・呼吸のさらなる低下。
・重度（深部体温24℃～15℃）は、震え、意識なし。呼吸なし・脈ふれず。
・まずは低体温症になっていることに気づくことが大事（軽度のうちに気づいて対処しないと助からない。）
・対処できる装備（食料、隔離、保温、加温ができるもの）、通信手段を持つ。
・加温は体幹を温める。熱いお湯を入れたものを火傷しないように布でくるんで当てる。

お知らせ：
第４１回　日本登山医学会学術集会　５月２９日、３０日（北海道大学交流会館）　WEBで開催。
http://www.academiasupport.org/41tozan.html

講義Ⅴ「リスクマネジメント」「山のリスクマネジメント」
村越真氏（静岡大学教授 (公社)日本オリエンテーリング協会顧問　国立登山研修所専門調査委員）
（追記）国立登山研修所のHPにセミナーのYouTube動画が掲載されています。
・リスク：想定される危険。自然の中に顕在・潜在。起こる確率が低いけれども、起これば大損害なものも。
・マネジメント：どう対処（管理）するか、管理の中身を考える。
・良い加減にやる（notいいかげん）。魅力とリスクは裏返しの関係（リスクの両義性）。両者のバランスをとる。
・リスクの性質：「起こりやすさ」と同時に「損害の程度」、「時間的性質」も考える。
・起こりやすさ：道迷い、転倒・滑落は起こりやすい。落雷、動物の襲撃は起こりにくい。
・損害の程度：滑落、転落、転倒は損害が大きい。病気は男性には致命的なものが多い。道迷い、疲労のほとんどは無事救出。
・いきなり型（急襲的リスク）：滑落、転落、転倒、落雷、雪崩
・じわじわ型（漸進的リスク）：道迷い、病気、疲労
対応の局面が違う。
・４つのリスク源：天候、地面（傾斜・路面）、登山者（認知・身体）、他の生物
・リスク源ｘ不適切な行動＝リスク（損害の可能性）
ex.不明瞭な道ｘ地図を見ない⇒リスク⇒＋リスク増大要因（霧、疲労）⇒＋未知の要因⇒事故

［演習］
＜地形図を見ながら、ルート上のリスクを特定＞
＜リスク分析・評価＞
確率の高中低と損害の高中低のマトリックス表に、ルート上で特定したリスクを当てはめて評価。確率、損害ともに高ければ中止することも。
＜現場の写真からリスクを予測＞
＜リスク増大要因からその対応（対策）を考える＞

講義Ⅵ「読図」「読図とナヴィゲーション」
村越真氏
（追記）国立登山研修所のHPにセミナーのYouTube動画が掲載されています。
・地図を読む目的：道に迷わない、危険個所の把握、様々な目的がある。目的に合った情報を地図から読み取る。どういう地図の情報を読み取ればよいか。
・山のリスクとナビゲーションスキル
　スマホのアプリについてどう応えるか。紙の地図との使い分けが必要。画面が小さいのでより広い範囲を把握するには地図があった方がよい。
・現在地把握以外の地図読みの課題もある。地図を読む楽しみ。
・道迷い遭難は各年代とも多い。若年世代では他の遭難が少ない分、道迷い遭難の比率が高い。
・夏山以外の季節、低山で起こりやすい。
・道迷いが起こる原因：山の中の道がわかりにくい。道標もない。頼れるのは自分ひとり。
・対策：用心深く進む（間違えても復帰できるように）　　　　
・実践力として：先読み⇒ルート維持⇒現在地把握の作業を繰り返す。
・基礎力として：地図の約束、地図記号、等高線に慣れる。

［演習］
＜どのような地図記号を重視しているか＞
　どんな山登りをするかで、人それぞれ関心のある地図記号は違う。
＜ルートの維持＞　
＜現在地の把握（地図上のどこにいるか）＞
　まずは風景を見る。
　風景の中で、地図に描かれている特徴的なものを探す。
　その他の特徴も探して多面的に現在地を推定する。
　地図のルールで記号の省略があることに留意。
＜練習問題＞
□行程の把握（周回コース）
　距離と累積標高の把握。
　地図の主曲線、計曲線を読み取って登りの累積標高を算出。
□道迷いのリスクの発見
　具体の場所と内容。
□現在地の把握
　ルート上の数か所の特徴を設定。

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2日間、様々な分野の講義があって盛りだくさんで、引用先のURLを調べたり、整理するのに時間がかかりましたが、備忘録として残しておこうと思います（間違い箇所に気づき次第、追って修正していこうと思います）。講師の皆様、主催された国立登山研修所の皆様、どうもありがとうございます。

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