そして好みのモチーフを好みの文体で書く作家をみつけて小躍りしている。
縄文杉・神代桜など観光としても有名な樹木が出てくるが、そうであっても見方がひと味違う。感性が輝き光っている。文体も小気味良い。
彼女は小さな頃から木に対して関心が強い。全国の山深い樹木にも足を運んで訪れている。
倒木更新・・・この一語を知ったときに、今まで北横岳辺りの縞枯現象は知っていたが、歩いてきた樹林帯に起きているこの現象に全く気が付いていなかった自分に愕然とした。多分植林の樹林帯と倒木更新とを区別できていなかったのだと思う。
北海道の蝦夷松の倒木更新について書かれている。
北海道の自然林では、倒木の上に着床し発芽したものだけが育つ。それ以外の場所に着床し発芽したとしても育たないという。倒木が真っ直ぐなので、その後育っている若木は真っ直ぐに整然と並んでいるというわけだ。そして倒木はいつの間にか跡形も無く土と化していく。
一列一直線に並んで立っている自然林は倒木更新だからだという。
こういった内容が非常に平易ながら素敵な文章で次々と紡がれていく。
一例を引用しよう。
前略−その絶壁は古くからのものなのだろう。一面に色とりどりの紅葉の錦が、いまを盛りに飾られていた。木々は標高の高い、寒冷地に適応できるもののみが根付いているので、紅葉もあれば黄葉もあり、褐色もオレンジもあり、よい程に針葉の濃緑もまじる。樹種はいろいろだが、そのどれもが丈高く伸びず、矮性で盆栽系の姿をしていた。絶壁という恐ろしい条件を下に敷いて、その上を装うもみじのその美しさ。溜息の出るみごとな風景だった。−後略
山で時折見かける崖の紅葉を表現した一文であるが、難しい表現で無くても、自分がかつて見たあの山の紅葉が心の中に蘇ってくる文章である。
これから彼女の他の本を読んでみようと思う。
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