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そこでちょっと調べてみたら、1週間前にニースでトラックが群集に突っ込んだせいで、欧州でフランスだけポケモンGoが公開延期になっていた。
そのトラックが突っ込んだ当日、つまりフランスの革命記念日の日は、私はフランスのガイド会社が主催するオートルートのツアーに参加して、スイスの氷河に囲まれた断崖絶壁の上にあるベルトール小屋という小さな山小屋に泊まっていた。
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-920996.html
この小屋は、玄関にたどり着くために断崖絶壁に掛けられたら50mくらいの梯子を登らねばならない。梯子の手前は凍り付いた急坂でその上に昨夜降った新雪が積もっている。梯子に取り付くだけでもちょっとした苦労が必要だった。この日も天候は回復せず、夜は吹雪となった。
しかしストーブで十分に暖められた小屋は満員で、私はツアーのメンバーと、とても山小屋で作ったとは思えないような美味しいラザニアを食べていた。
ツアーのメンバーはガイドを含めた私以外の全員がフランス人とフランス語圏のスイス人。ベルトール小屋の位置はスイスの中でもドイツ語とフランス語の言語境界線に近い場所だが、フランス語圏に属しているので、皆リラックスして小屋の食事を楽しんでいた。
ワインはメンバーの中のスイス人が「これが旨いから飲め」と勝手に厨房から瓶とグラスを取ってきてしまうので、他の小屋を含め一度も自分で頼んだことはなかった。ちなみにそれらのスイスワインはシャモニーの食料品店では全く見かけなかった。
さて宴も酣となった頃、突然隣のテーブルのおじさんたちが ♪Allons enfants de la patrie〜と声を揃えて歌い出した。フランス国歌の「ラ・マルセイエーズ」だ。
フランス語圏の小屋なのでフランス語の歌が聞こえてきても不思議はないのだが、やんややんやと盛り上がるフランス人と「こいつら、またか」的な感じで冷ややかに見守るスイス人の間で、微妙な空気の差があったようにも感じられた。
ツアーのメンバーの1人の女性が
「oecはこの歌を知ってる?」
と笑いながら私に聞いてきた。
彼女はフランス在住で毎日国境を越えてスイスの会社に通勤している。とてもチャーミングで、よく気が利く上に山座同定と花の名前を当てる能力が半端ない。きっと30年前はものすごいモテただろうと思う。ただし彼女は絶対に英語を話さない。
「知ってるよ。Ils viennent jusque dans vos bras, égorger vos fils, vos compagnes! でしょ」
と歌詞を先取りして私も笑いながら言うと、彼女はニヤっとして頷いて、おじさんたちの歌声をしばらく聞いていた。
そのときはそれで終わったのだが、2日後にツェルマットへ下山したとき、たまたま出会った日本人の老夫婦から始めてニースでの事件の事を聞いた。
それは、まさにvos filsとvos compagnesをégorgerするような事件であった。égorgerとはフランス語で「のどを引き裂いて殺す」という意味である。
この下山日はたまたまスイスでのポケモンGoの公開日であったが、ツェルマットではそれらしい行動をしている人を全く見かけなかった。
シャモニーに戻ると、当然ポケモンGoをする人はいない訳だが、だからといって戒厳令が何か影響するかというとそういうこともなく、ごく普通の観光地の街に見えた。エギーユ・デュ・ミディのロープウェーも毎日平常運行していた。
ただし私が見た範囲では日本人は全く見あたらず、中国人もたまにいるという程度だった。韓国人のトレッキング客はたくさんいた。
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