![]() |
慣れているから、と、完全に油断していた。
また、そんな所に穴が開いている、とは想定もしていなかった。
しかし、冷静に判断すれば、あり得る場所だと分かったはず。慣れていると思って、侮っていたのだ。
それがあったのは、比較的傾斜のある斜面で、雪が全体に滑っていた場所だ。
要するに「全層雪崩」の破断面の上に、ザラメ雪が乗ってヒドゥンクレバスを形成していたのだ。
こんなものがわかるはずがない。
ヒールを蹴り込んだ瞬間、「ズボッ」と落下。
やってしまった、と思ったが、幸い何とか、ザックが引っかかって深みにハマることは無かった。
しかし、体を動かすと、穴に吸い込まれた。
ザラメ雪はあたかも「蟻地獄」の砂のようになっているらしかった。冷や汗をかく。
一瞬、救助要請が頭をかすめる。
いや、何とかしてみよう。
斜面だったので、谷側に腕を伸ばし、ザックを頭の上の方に移動させ、ザック重みを利用して滑落覚悟の一回転。
これでやっと出ることができた。
今回の反省は、
たとえどんな慣れた山でも、いや慣れた山だからこそ、油断してはいけない、という事。
また、今回は軽い気持ちで行ったため、事前に雪の状態を調べておらず、スノーシューなど、必要な装備を怠ったこと。
また、久しぶりの登山だったため、体力が落ちていた事。
数え切れないほどの失敗をしてしまった。
今の時期は予想以上に融雪が進んでいることがあるようだ。
残雪は固いものだ、という思い込みは危険だ、という事を、身に染みて思った。