年を重ねたころの一曲。
それは、日本のチロルとして有名な、下栗の里の眼下を流れる遠山川でのこと。
その日は、翌日の日の出前に誰より早く入渓するため、釣友と二人で、林道わきにロッジ型のテントを一張で幕営し、その夜に起こった出来事。
林道わきとはいえ、単なる土砂崩れのための作業用車両の切り返し場で、いつ落石があってもおかしくない場所であった。
夕食は、明朝の大漁を祈願しながら、持参した弁当とビール一缶で、ささやかな宴会を過ごし、大物を釣り上げる夢に浸ろうとしていた。
しかしながら、床に敷いたのは専用のマットではなく、スーパーでもらった段ボール箱を二重に重ねたもので、いろいろな意味で、これ以上のパフォーマンスはないとそれなりに満足していたが、寝心地は我慢の文字が浮かぶ状況。
どれほど眠りについた後であろうか、そいつは、突然きた。
なんと、中で就寝している私の片側のほほに、外側のテントの生地から直接鼻を押しあてながら、鼻息を荒げ、私の匂いを嗅いでいるようであった。
とっさに、そいつの鼻と思われる部分にこぶしの鉄拳を食らわしたのであった。
私は、自分が餌食となるのではないかと思い、急いで靴を履き、懐中電灯でテントの周りを探した。奴は、すでにテントから10数メートル離れたところで、こちらを伺っていたようだ。私は迷わず、そいつの方向に、懐中電灯を置き、足元の石を拾い上げ、投げつけていた。
体色は白っぽく、鼻が長く、50センチを超える豚のようであった。
当たることはなかったが、何度か投げているうちに、暗闇に消えていった。
ひとしきり騒ぎながら事を終え、テントに潜り込むと、釣友は、何事も知らなかったように、寝入っていた。
翌朝、緊張の夜中を過ごしたせいか、釣りに集中にすることができなかった。
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