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2019年12月29日 22:39登山以外のいろいろ全体に公開

2019年、今年読んだ本

こんにちは。今年も残りわずかとなってしまいましたね。結果的にこの2019年も個人的には数回のみの登山しか出来ない1年になってしまいましたが、来年以降の宿題にしてユルユルとやってゆけたらなと思っています。

また年の瀬のご挨拶がてらこちらでも年に1回くらいは日記の更新もしたいので、今年1年の簡単な読書感想などを。読書数は決して多い方ではないし殆ど山とは関係ない本ばかりですが(笑)、山岳関係のも数冊含まれています。自己満足で書いているのでスルーしてくださいね。

(読んだ順にて)

「恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。」林伸次
「ここは、おしまいの地」こだま
「終電の神様 始発のアフターファイブ」阿川大樹
「その峰の彼方」笹本稜平
「戦場から女優へ」サヘル ローズ
「マチネの終わりに」平野啓一郎
「長いお別れ」中島京子
「穂高小屋番 レスキュー日記」宮田八郎
「教誨師」堀川惠子
「高校野球って何だろう」渡辺元智
「ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。」幡野広志
「本日は、お日柄もよく」原田マハ
「山小屋ガールの癒されない日々」吉玉サキ
「ビートルズへの旅」リリー・フランキー, 福岡耕造
「もうひとつのALFEE STORY」小野緑
「夕子ちゃんの近道」長嶋有


「恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。」

著者の林さんは渋谷でワインバーを営むマスター。氏の書き下ろしたこの恋愛短編小説集、なんというか・・・私のようなオッサンでも読むだけでホルモンの分泌が良くなるような(笑)、そんな素敵な物語の数々です。奥渋谷の静かなBar、上質なお酒と音楽、緩やかな時間の中でお客の恋バナに耳を傾けるマスター。物語はどれもそんな導入で始まります。もうその情景がお洒落すぎますよね。
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「ここは、おしまいの地」

こだまさんが前作で描いた私小説があまりに衝撃だったのですが、あの物語の前日譚と続編を思わせるようなこだまism溢れるエッセイでした。自らの弱さ、焦燥感、コンプレックスを隠すことなく全てさらけ出し、どれだけ暗すぎる身の上話でも常に第三者的目線を加えつつ、自虐の笑い話に昇華させてしまう。そんなこだまさんの紡ぐ文章にグイグイ惹かれてしまいました。
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「終電の神様 始発のアフターファイブ」

新宿歌舞伎町に集い、生きる人々の少しワケありな日常。人の数だけそれぞれの人生があり、時に躓いたり立ち止まったり、自分ひとりの力ではどうにもできない事情が出来たり、急な土砂降りのような目に遭ったりしながらも、それでも皆、今よりもひとつ先の前を向いて一歩ずつ歩いているんだな・・・と。気持ちが暖かくなるような短編集が収められています。
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「その峰の彼方」

山岳小説の大作です。アラスカのマッキンリーで消息を絶った孤高のクライマーと彼を救うべく立ち上った捜索隊、して身重の妻、それぞれの心象描写が繊細に描かれています。極限の状態に置かれた者にしか分からない、体感できないであろう境地が見事に表現されているのに驚かされます。といっても極限の登山をしたことがない私には身を以って理解できる範疇ではなく、あくまで想像の域を出ないのですが(笑)。生きること、死ぬこと、登り続けること・・・それぞれの意味は禅問答のように正解のないものなのでしょうが、逃げずに真正面から向き合う主人公の姿に大変心を打たれました。そして大作すぎてかなり読破に時間が掛かってしまいました(笑)。
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「戦場から女優へ」

テレビでよく見るサヘルローズさん、私大好きなんです。美人で聡明で。そんなサヘルさんですが、生い立ちからこうして世に出るようになるまでこんな壮絶な人生だったとは。祖国イランでの戦争で住んでいた街は壊滅、孤児院生活、養母と日本へ渡っての新生活、ホームレス経験・・・。そんな中でか弱き少女だったサヘルさんがお母さんとの触れ合いを糧として、逞しく強くなってゆく様が描かれています。
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「マチネの終わりに」

深い感動と良い余韻がずっと続いた物語でした。読む前はもっとドロドロした「大人の愛」を描いたものと想像していましたが、見事に裏切られましたねぇ。それぞれに立場のある二人が惹かれあい、すれ違い、そして・・・なのですが、気持ちの赴くままに自らの感情を相手にぶつけ合うのではなく、慮り、抑制し、運命を受け入れる。これも素晴らしき愛情の形なのでしょうね。読んでいる間中、ずっと音にならないクラシックギターの上質な音色が響いていたような。そして現在、福山雅治&石田ゆり子主演で映画化されていますが、そちらも本当に良かった。
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「長いお別れ」

認知症になってしまった父とその家族の長い歳月の物語です。これも今年映画化されましたね(まだ観ていませんが)。衰えてゆく両親、認知症、介護、家族間の様々な思惑と、全部私たちの身の回りや将来像と地続きで繋がっている物語だっただけに、時にユーモラスなタッチで軽快に描かれていたとしても笑うに笑えない現実感の中で「自分ならどうする?」を常に念頭に置いて読みました。決して劇的な展開にも美談にもせず、最後まで淡々と描ききった本作には大変共感が持てました。家族とは何なのかを改めて考えるきっかけにもなったような。
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「穂高小屋番 レスキュー日記」

奥穂高岳直下の穂高岳山荘で長年に亘りスタッフとして山岳遭難事故最前線の現場でレスキュー隊の第一人者として活躍され、2018年4月に海難事故で亡くなられた宮田八郎さん。山岳遭難の悲惨な現実と救ってきた多くの命、共に救助に関わってきた仲間との熱い日々、山への想い、そして人助けの最前線に立ってきた自らの矜持。その全てが存分に伝わる遺稿集です。「人は山で死んではならないのではなく、人は山でより生きなければならない。」この宮田さんの言葉を胸にこれからも山と向き合ってゆきたいものです。いち登山者の端くれとして、宮田さんのこれまでのご尽力に心から感謝を申し上げます。そして一度でいいからお会いしたかった・・・。
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「教誨師」

ノンフィクション作品です。もう社会復帰できない拘置所内の死刑囚と対話を重ね、「如何に意味のある死を迎えるのか」を一緒に考え、そして彼らの最期(刑の執行)にまで立ち会うという「教誨師」という任務。そこから見えてくるこれまで知らなかった死刑制度の実情。死刑囚本人、教誨師、直接刑を執行する刑務官、被害者加害者双方の家族等々、想像も及ばなかったそれぞれの深い苦悩と世の不条理に思いを馳せ、胸の痛みを覚えるような一冊でした。
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「高校野球って何だろう」

横浜高校野球部の前監督といえば神奈川県民には言わずと知れた渡辺元智さん。氏の野球論、人生論が詰まった一冊です。何度も甲子園で日本一に導き、多くのプロ野球選手を輩出した名伯楽の、実は一筋縄ではいかなかった野球人生。苦難と挫折を乗り越え、確固たる信念のもとで成功を収めた組織づくりは野球という枠のみならず、様々な異業種の組織論にも通じるような明快さがありました。それにしてもですが、渡辺さんからバトンを受け継いだ後任の横浜高校監督にはガッカリでしたね・・・。渡辺さんはどう思われているのだろう。
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「ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。」

写真家として、そして余命を告げられた血液がん患者として、様々な発信をしている幡野広志さん渾身の一冊です。幡野さんが撮る写真が大好きで、写真展がある度に足を運んだりしています。本書では命の重さ、尊さについて、そして家族のあり方になどついて氏の見解が述べられているのですが、「私はこう思う。で、あなたはどうなんですか?」と常に命題をガツンと突きつけられているようでもあり。人の生き方、家族や他者との繋がりや関わり方はどれ1つとして正解がなく、逆に言えば幡野さんが書かれていることすら真理の全てではなく時に「?」を持たざるを得ない。考え抜いて自分の答えを探すことが大切なのだと改めて気付かされるものでした。
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「本日は、お日柄もよく」

これは夏に北岳に登った際に夜のテント内での暇つぶしに・・・と思い持っていったのですが、読み始めてあまりに面白すぎ、ページを捲る手が止まらなくなってしまいました。今年一番の一冊を選ぶとしたらこれかも。ひとりの頼りないOLの女性がスピーチライターとして成長してゆく物語。伝え方ひとつで聞き手の印象をガラリと変えることができる言葉の魔力、言葉の持つ大きさを思い知らされました。真の友情の構築、家族のあり方など、様々な示唆にも富んでいました。何度も目頭が熱くなるような、素敵な物語です。
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「山小屋ガールの癒されない日々」

北アルプスの山小屋で10年間働いたwebライターの吉玉サキさんの視点から、山小屋で働き生活する悲喜交々、スタッフ同士や登山者との人間関係や出逢い(時に永遠の別れ)などが綴られた軽快なエッセイとなっています。北アルプスをはじめ様々な山小屋に私もこれまでお世話になったけれど、その小屋の存在も勿論のこと登山者の命をも守ってくれるスタッフさんたちへの感謝の念が改めて湧いてきます。山をテーマにした軽快なタッチで読み易いエッセイですが、本当のテーマは「自分らしい生き方の模索」なのかなと思います。日常で生き辛さを感じても、多少人生のレールを外したとしても、他人とは違う生き方であったとしても、心の拠り所や帰れる場所が自分に1つあるだけで人はまた前に向かって進んで生きてゆける。そんなことをさりげなく教えてくれる一冊でした。
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「もうひとつのALFEE STORY」

私、THE ALFEEが大好きなんです。そのALFEEのコンサートスタッフ1人1人にスポットを当て、彼ら彼女らの日常や人生をフォーカスした物語の短編集となっています。もう30年前に刊行された本ですが、今更ながら読んでみました。やはり最高のLIVEとはステージ上の演者、裏方のスタッフ、オーディエンスの三位一体で創り上げるものであり、そうした裏方さんたちの縁の下の力がどれだけ大切なものかが改めてよく分かりますね。
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「夕子ちゃんの近道」

長嶋有さんの作品はこれまでも読んだことがありますが、何気に凄い作家さんだなぁと思います。当たり前のような日常を描く一方で描写がとても繊細故にその情景が立体的に目に浮かぶような感覚になったり。この小説もそんな感じ。ただこれは小説とはあまり関係ないですが、この本を手に取った頃よりゆっくり読書ができる時間が取れず、読了までエラい時間が掛かってしまいました。来年はもっとサクサク読めるように努めようと思います。
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以上です!皆様、よいお年をお迎えください。来年もよろしければ、宜しくお願い申し上げます
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コメント

RE: 2019年、今年読んだ本
こんにちは。

最近、読書の機会が少ないですが、ryoさんの「今年読んだ本」シリーズの中で唯一、「穂高小屋番レスキュー日記」は私も読みました!
遭難現場にいち早く出動して、今まで多くの遭難者を救助された宮田さんですが、海難事故で無くなられたのは非常に残念でなりませんでした・・・
少し前にBSでも宮田さんの活躍を記録した放送をやっていたので何度も見てしまいました。

ryoさんの読書感想を拝見していると、どれも面白そうな本ばかりなのでとても参考になります。
この中の幾つか私も読んでみたいと思いました!

来年は山へ行く機会が増えるといいですね
今後とも宜しくお願い致します。では、よいお年を
2019/12/30 16:45
RE: 2019年、今年読んだ本
こんばんは〜。コメントありがとうございます
宮田さんの本、読まれましたか。一行一行に熱い情熱が伝わってくるような一冊でしたね。先日のBSでの特集もとても良かったです。元々宮田さんがお元気な頃よりブログの「ぼちぼちいこか」はとても好きでよく拝読していたのですが、まさかあんなことになるとは思いもよらず本当に残念です。

私も読書もそこそこに山の方へのもう少し意識を向けなければ・・・と思う今日この頃ですが、とりあえず来年の目標は「今年よりも1つでも多くの山に登る」くらいにしておこうかなと。夏はまた何処かにテン泊縦走でも出来ると良いなぁと思うのですが、さて。

今回紹介した本の方はどれも私にとっては面白い作品ばかりでしたので、宜しければご参考にされてみて下さい。今年も1年、大変お疲れさまでした。来年もまたよろしくお願いします。奥様と共にぜひ良いお年をお迎えください
2019/12/31 1:50
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