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2020年12月27日 21:24登山以外のいろいろ全体に公開

2020年、今年読んだ本

すっかりご無沙汰しています。一応、年末の最後くらいはこちらヤマレコも更新しておこうかなと。

今年は登山、遂にたったの1回だけでした。登れませんでしたねぇ・・・。上半期はコロナの始まりから緊急事態宣言でひたすら週末は大人しく自粛の日々、下半期からは住んでいるマンションで管理組合の長を輪番で任されてしまい、これが平日・週末関係なしにとんでもなく大忙し。不慣れな上に次から次へと降りかかる難題に頭を悩ませている間に、気が付いたら私の2020年が終ってしまいました。皆さまはどんな1年だったでしょうか。

さて、今年も登山とは全く関係ない、今年1年間の読書感想などを書いて自己満足的に締めたいと思います。とはいうものの登山同様、今年は本もあまり集中して読めませんでした。

(読んだ順にて)
「ヨシダナギの拾われる力」ヨシダナギ
「小学校には、バーくらいある」尾崎昴臣
「ロバート・ツルッパゲとの対話」ワタナベ・アニ
「なんで僕に聞くんだろう。」幡野広志
「大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた」樋口毅宏
「ダンス・ダンス・ダンス(上)」村上春樹
「ダンス・ダンス・ダンス(下)」村上春樹
「ジャングルの極限レースを走った犬 アーサー」ミカエル・リンドノート
「バンド臨終図鑑 ビートルズからSMAPまで」速水健朗・他
「女帝 小池百合子」石井妙子
「秘める恋、守る愛」高見澤俊彦
「一人称・単数」村上春樹
「新編 山小屋主人の炉端話」工藤隆雄編
「友情2 平尾誠二を忘れない」山中伸弥・他


「ヨシダナギの拾われる力」

番組は終ってしまいましたが、クレイジージャーニーによく出演していた写真家・ヨシダナギさんのエッセイ。写真展に足を運ぶくらい好きなヨシダナギさんですが、その掴みどころのない不思議な素顔そのままに、彼女の人生観、価値観が存分に語られていてなかなか楽しい一冊でした。人付き合い、コミュニケーション能力においてこの上ない不器用さを自覚しながら、その自らの欠点をプラスに繋げてゆくポジティブさ。肩の力の抜きどころと入れどころのサジ加減を絶妙に駆使しながら生き抜いてゆく処世術。私のようなやや疲れ気味の中年男性には響くものがありました。
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「小学校には、バーくらいある」

昨年足を運んだ文学フリマで購入した小説。夜になると小学校の教室にひっそりと現れるバーを見つけ、通い出す女の子。そこにはこれまで女の子が出会ったことのないような人々が訪れていて・・・という物語。子供の頃って無限の好奇心、冒険心があり、驚きの出会いがあり、時にファンタジーの中に身を置いてみたりしながら成長してゆくもの。様々な機微の中で主人公の小さな心の変化がみてとれる様子に、かつての自分自身や子供の姿を重ねてみたり。児童文学というなかなか普段手にしないカテゴリーでしたが楽しく読めました。
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「ロバート・ツルッパゲとの対話」

ワタナベ・アニさんという写真家が書いた「哲学書」。といっても小難しいものではなく、大変面白かったです。言葉のチョイスにクスクス笑いつつ、上から下からの角度ではなく常に水平から人を見てゆき、社会の《当たり前》を疑うに氏の生き方と価値観に感銘を受ける。その自由な発想と直球で語られる言葉の美しさに触れ、コリ固まった頭の筋肉がだいぶ柔らかくなった気がしました。誰かの決めた価値観の上で胡座をかかずに自分のモノサシで生きてゆきたいものです。
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「なんで僕に聞くんだろう。」

こちらも写真家・幡野広志さんによる人生相談をまとめた一冊。寄せられる相談は、虐待を受けたり肉親を通り魔の犯行で亡くしたり重度の病気に罹患されているなど、かなりヘビーな内容が比重を占めます。もし回答者が私自身だったら・・・という視点で読み進めますが、こんな回答、絶対に言えない。傷を背負った人への優しさ、慈しみ、真の厳しさで幡野さんが文字の向こう側の人々と真摯に向き合っていることに気づかされる。そしてどんな属性同士であっても言葉の限りを紡ぐこと以外に本当の人間関係を築くことは出来ないことも改めて学びました。でも幡野さん、この人生相談の連載(cakes)で最近ちょっとヤラかしてしまい、炎上してしまいましたけれどね・・・。
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「大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた」

樋口毅宏さんのエッセイ。本書で語られている私たち世代(特に男子)が、かつて多感だった若かりし頃に影響を受けたであろう、当時のカルチャーへの想いや考察。そして遠い記憶の彼方に置いてきたはずの青春の残像。読んでいて色々思い出し、何もかもが懐かしかったです。私は著者の樋口さんより少しだけ年上のほぼ同世代。読んでいてまるで旧友との再会で昔話に花が咲き、居酒屋でエンドレスで語り合ううちにあの時代の詳細を全部思い出してくるような感覚でした。初めて樋口さんの文章に触れたけれど素晴らしい感性の作家さんですね。これから少しずつ氏の世界観を覗いてみたいと思いました。
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「ダンス・ダンス・ダンス(上)」
「ダンス・ダンス・ダンス(下)」

村上春樹大好きな私ですが、これはまだ未読でした。あぁ何という素晴らしく美しい物語なのか・・・もっと早く読むべきでした。しかし悲しいかな、目覚めた後に夢の中身を正確に思い出すことが叶わないのと同じように、私の語彙力でこの物語への想いを伝えることができません。「喪失と再生」が春樹さんの小説に必ず出てくるテーマですが、そのど真ん中を往く物語でした。
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「ジャングルの極限レースを走った犬 アーサー」

素晴らしいノンフィクションでした。4人1組で何百kmもの難路を走破する過酷なアドベンチャーレースというものがあるのですが、そのレース途中でふと寄ってきた野良犬にミートボールを差し出したことから始まった、著者と犬(アーサー)の物語。出会った瞬間から変わることのない人間と犬という主従関係を超えた互いの絆と深い愛情。世の中にはこんな奇跡のような邂逅があるのだなぁ。アーサーがこれからも末長く幸せに暮らしてゆけるよう、願わずにはいられません。私は犬や猫は飼えない環境ですが、こういう話を読むと猛烈に欲しくなりますね。
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「バンド臨終図鑑 ビートルズからSMAPまで」

1960年代から現代に至るまで名だたる数多のバンドやグループが如何なる理由で解散に至ったか、その事実が1つ1つ克明かつ冷静に語られており、大変興味深いものがありました。これを読むとバンドやグループってどれもいつかはぐちゃぐちゃに人間関係が壊れて解散して当たり前...くらいに思えてきます。それはやはり志を同じくして集まった結成当初の頃とその後の環境が激変してしまうが故ということに尽きるのでしょうね。まさに人間社会の縮図がギッシリ詰まっているとも言え、他山の石としたいところです。
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「女帝 小池百合子」

都知事選で小池氏圧勝の一報が伝えられた直後に読了。まずは長きに亘る地道かつ膨大な取材活動にて本書を上梓した著者に拍手を送りたいです。1人の人物像を追ったルポものとして極めて秀逸な一冊と思います。本書で語られる様々なエピソードには驚愕する部分が多いですが、同時に小池氏のそのモンスターぶり、裏表の顔の使い分け、政治家としての上昇志向はその是非や善悪を一旦置いて考えると、強烈な人間力、人間臭さを感じてしまうものでもありました。これから都政はどうなるのか、再び彼女が国政に転じることはあるのか。興味深いですね。
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「秘める恋、守る愛」

THE ALFEE タカミーの小説2作目。互いに秘密を抱えた夫婦と娘、それぞれの心情の変化を描いた物語。ドイツの美しい情景描写と家族間の冷めた距離感の心情描写、そのミスマッチがどういう訳か妙にしっくりと嵌るようで不思議な感覚でした。おそらく人間の心の中にある白や黒では表せられないグレーな部分と、美しくとも決して派手な色鮮やかさではなくモノトーンが掛かったような情景が何処か重なり合うようなシンクロニシティを感じたからかもしれません。高見澤先生の3作目も今から期待しています。
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「一人称・単数」

村上春樹さんの物語に飢えていた私にとっては待ちに待った新作(短編集)でした。どの短編も肩肘張らずにサラリと読めるものばかりですが、随所に出てくる春樹ism。エッセイなのか回顧録なのか小説なのかその微妙な分からなさ、回収されずに物語の隅に取り残されたままの存在、この終わり方??という後味のよろしくない終わり方(笑)。しかし何より美しい言葉の数々。どれもが「村上春樹」そのものかと思います。ウィズ・ザ・ビートルズ、謝肉祭(Carnaval)、品川猿の告白が特にお気に入りになりました。
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「新編 山小屋主人の炉端話」

今年読んだ山関連の本はこれだけです。全国各地の山小屋のご主人たちによるエッセイ集。登山者との一期一会の邂逅、小屋建設などの苦労話、遭難救助での悲しい体験談、果ては河童や雪女の目撃談もあり、話題が尽きることなくなかなか読ませる一冊です。山中で河童に雪女・・・ホンマかいな?と思わないでもないですが、その描写が詳細すぎて「確かに居るのかもしれないし、少なくともこの方には見えていたのだろう」と思わせてしまう説得力があります。 私がこれまで接してきた山小屋の方々も皆、気持ち良い人たちばかり。山を愛している彼らの努力で私たち登山者は守られているのだなと改めて思うのです。
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「友情2 平尾誠二を忘れない」

前作「友情 平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」」では山中伸弥先生が、今回はご家族から同期や世代の近いラガーマン、様々な巡り合わせで知り合ったご友人たちが語り尽くす平尾誠二さんの人物伝。なぜ平尾さんがこれほどまでに人望の厚いお人柄だったかが大変よく分かる一冊でした。時に真っ直ぐに、時に俯瞰するように視野が広く、語る言葉は常に含蓄に溢れ、そして何より、誰が付き合っても対等な目線で接することの出来る、誠実で気持ちのいいお方だったのでしょうね。平尾さんの語る一言一言がまるで自分自身に投げ掛けられているようで、気持ちの深いところに刺さりました。
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というところです。数は多くないけれど、どれも読み応えがあるものばかりでした。山関連で読みたい本などもまだ幾つもあるので、来年以降の宿題にしたいと思います。

世はコロナで大変ですが、皆さまくれぐれもご自愛され、良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いします
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コメント

RE: 2020年、今年読んだ本
お久しぶりです。
今年も色々な本を読まれ分かり易く感想を書かれているのでとても参考になりました
私は昔から感想文を書くのが苦手なので、ryoさんの文章はいつもすごいなと思っています。
そしてryoさんは今年色々と大忙しだったのですね。
管理組合の役員は物凄く大変なんだなと思いました
本当にご苦労様です。
私も忙しかったりすると山へ行く気になれなかったり、ヤマレコを覗かなくなってしまう事もあります
そして今年は更にコロナのせいで自粛もされたりしてなかなか山へ行ける機会が無かったのですね。
なるべく早く終息して来年は今年よりも良い年になって欲しいですね
ryoさんも良い年をお迎えください!
2020/12/29 22:10
RE: 2020年、今年読んだ本
kazさん、どもどもです。いつも私の方がご無沙汰してしまってすみません。

毎年年末にここに読書感想を書くのが恒例になってしまいました(笑)。これはですね、読書感想を専門とするSNSがあってそこに登録しており、読むたびに簡単な感想文をそこに書いているのですが、それをまとめたものをこちらに載せています。なかなか難しいですよね、感想文って。私もいつまでたっても慣れないですが、自分の備忘録として残すようにしています。ホントはもっと倍くらいあれこれ読みたい本はあるんですけれどねー。

マンションの管理組合とか町内会、自治会って今まで全く経験せずに素通りしてきましたが、とうとう逃げ切れることが出来ず、お役が回ってきてしまいました。正直、こんなに大変なものとは想像もしておらず、この半年間、面食らいっぱなしです。とうとう夏休みも1日も取れませんでしたし・・・(強引に取って山に行っても、連絡メールだLINEだジャンジャン入りまくって休んだ気にならなそうだったので)。

山が遠ざかるとそれが当り前になってしまい、気持ちの中で二の次、三の次になってしまいますが、何とか来年以降また少しでも元に戻せたらいいなと思っています。まだまだ登りたい山はいっぱいありますからね。kazさんご夫妻やpopieさんのレコをたまに拝見させて頂くと、お忙しい中でもきちんと計画立てて登ってらっしゃるので、いつもとても刺激になります。早くコロナが落ち着いて世の中がもっと平穏になり、安心して出掛けられる環境が整うと良いですよね。今は色々我慢しなければならないこともありますが、山と同じで我慢した先に見える景色もまた格別のはずですから。

ぜひ奥様とお二人とも冬の間体調管理万全にされてお過ごしください。また来年もよろしくお願いします。良いお年を!
2020/12/31 0:00
RE: 2020年、今年読んだ本
私もkazさんと同様に、ryoさんの感想文は素晴らしい!と思いながら、この日記を(何回も)拝見してました。
読書感想のSNSがあるのは初めて知りました。

以前は私も読書は趣味でジャンルは偏っていましたけど好きだったのに、何故か?最近は読む気になれなくて(^-^;本から遠ざかってしまっています💦

でもこちらの日記で紹介されていた「ジャングルの極限レースを走った犬 アーサー」は読んでみたいと思いました!
他の本は、、ryoさんの素晴らしい感想文で完読した気分になっています(苦笑)。

マンション管理当番とコロナが落ち着いたら、ryoさん来年はもう少し山に登れるようになるといいですね。私のレコのコメント返事にも書きましたが、いつかkazさんご夫婦と4人で登れたら楽しいかと思っています。
良いお年をお迎えください♪
2020/12/31 11:30
RE: 2020年、今年読んだ本
popieさん、大変ご無沙汰しています。私は元気です(笑)。お褒め頂きありがとうございます。読書感想のSNS、「読書メーター」というものなのですが、SNSとはいっても特に誰かと交流するでもなく、ひとまず読んだ直後の気持ちを残しておきたいと思って簡単に書いています。本は読める時は読めますが、私も時期によっては全く手が動かない時もありますよ。なんだろう・・・そういうスイッチが入る時と入らない時があるんですよね(笑)。「ジャングルの極限レースを走った犬 アーサー」、とても良い話でしたので機会あれば手に取ってみて下さい。

自営業で仕事をしていると「感染したらオシマイ」という気持ちが常にあってどうしても今年は守りに入ってしまい、さらにその管理当番もあったりして、登山その他なかなかチャレンジ出来ずの1年になってしまいました。また色々落ち着いてから、ガッツリ登ったりまだ未踏の山に行ったりと、今年出来なかったことをまとめてやり遂げたいですね。popieさんやkazさんのレポはいつも私にとって良い刺激になっています。「みんな頑張ってるなぁ、私ももっと頑張らなきゃ」って。いつかご一緒の時がありましたら足手まといにならないように頑張ってついてゆきたいと思います(笑)。よろしくお願いします。

ではpopieさんも良いお年を。来年もよろしくお願いします。
2020/12/31 19:42
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