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運がいい!
そう素直に思えるほどさわやかな空気の中、駅前の交差点をさっそうと雪を踏みしめて進む。
駅で付近の地図も手に入れたし、このまま40分も歩けば目的地に着くはず・・・・・・。
そう思っていた。
目的地までのルートには地図上に学校の記号が二つ。だいたい三分の一と三分の二のところにある。
まずは一番目の学校を目指そう。
でも全部で何キロくらいあるのだろう。そこは聞くのを忘れたが、一般的に大人の歩く距離は15分で1キロと記憶している。
そうすると3〜40分だと2〜3キロというところか。
道路はそんなに広いわけではないが国道らしい。
しかし横殴りの冷たい強風は頬を射し、まっすぐには歩けないくらいだ。
行きかう人は誰もいない。気のせいか通り過ぎる車だけがやたら多い。
もう歩き始めて30分。
それでも見渡す限りの雪原が続き、最初の学校が見えてこないのだ。
地図に載っているファームは確かに過ぎたから方向は間違っていない。
が、何かがおかしい。
だんだんわかってきたのは目的地までは以外に遠いということだ。
駅員は感覚的に3〜40分と言っただけで、実はそんなに地理に詳しくなかったのだ。
その事実に気づいた時、ムクムクと湧き出てきたのは駅員への腹立たしさと同時にそれを疑いもせず信じた自分の愚かさ。
そしてストーブにあたりながらおとなしく次の列車を待ってればもう着いていたはずという後悔の念。
しかしもはやこうなった以上は先に進むしかないのだ!
やっとのことで一つ目の学校を過ぎた頃には、歩き始めたころの意気揚々とした気分はすべて打ち砕かれていた。
いつもならば好意を持って見えるどこまでも続く北海道特有のまっすぐな道路も、ひっきりなしに通り過ぎる車でさえも、恨めしさ以外の何者でもなくなっていた。
そろそろ1時間も歩いたろうか。
悪いことに雪もかなり降ってきた。強風に煽られた横殴りの雪が・・・。
そこには寒風から頬を守るためフードで頭を覆い、背を丸めてトボトボと雪道を歩く惨めな自分がいた。
さらには道路の真ん中で無残にも轢き殺された野ねずみか何かの死骸が横たわっていたりして。
きっと快適な暖かな車内からは自分も野ねずみと同じに映っているんだろう。
などと、そんなくだらない思いや、屈辱的な思いにかられながらすれ違う人もなく歩くこと約2時間。
いや、本当は何百人と会っていたのだ。フロントガラスだけを通して・・・。
そんな今にも崩れ落ちそうな心をたった一つの"ある”熱い思いだけが支えていたのであるが・・・・・・・・。
[続く]
はじめまして、はねぱたと申します。
『屈辱と快楽のバランスシート 』楽しみに拝見させて頂いてます。
駅員さんの距離感覚
う〜んと、よく山里の人に道を尋ねて
『ここなら20分くらいで着くよ。』
とおっしゃってたのに結局40分位掛かった事がよくあって、それと同じ感じなのかと思いました。
恐らく、田舎の人って普段車移動が多いから、実際に歩いた時の時間が分からない人が、多いのかなぁ(^^;
次回作、楽しみにしております
hanepataさん、こんにちは。
おっしゃる通りだと思います。
私なんかも道を聞かれてうる覚えでとっさに答えてから「あれ?ほんとにそうだったか」
で、実際は反対方向だったなんてことありますから・・・・・
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