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そうそれは『犠牲が大きいほど得るものも大きい』というような高邁な信念
・・・などではない。
単に『アノ温泉に入りたい』という単純な欲求であり、しかしもっとも欲求の底辺に属する、より根源的なものだったのだ。
雪の降りしきる中、屈辱の2時間を経て目に飛び込んできた「流山温泉」
の文字。
そしてその後に訪れた安堵と少しばかりの達成感。
さあ、借りを返すのはこれからだーーー。
痛い!
温泉の湯船に浸かって最初の感覚は熱いとか温いとかではなく、まさに痛いという感覚であり凍てついた心身が心地よいと感じるまでにはしばらくの時間が必要だった。
そのうち、この温泉はお湯の熱さが「熱め」「中くらい」「温め」の3段階に分かれていることに気ずいた。
奥の方は温く入り口付近では熱い。
なんという心憎い気配りではないか。
まず奥の方に移動してみる。
「温め」の付近は体温と同じくらいかそれ以下の温度なのだろう、ほとんどお湯に入っている感覚がないので長い時間入っていても違和感がない。
その、皮膚とほとんど変わらない感じの温泉にゆったりと浸る。
ここの名物風景である駒ケ岳は残念ながら見えない。
屈辱の2時間を取り戻すのには同じ時間が必要である・・・・
そういう勝手な論理のもと、なるべく長居しようと決めていた。
そのためにはまずできるだけ長く「ぬるめ」にいなくてはならず、出る間際になってから「熱め」に移動するという戦略をとった。
小一時間もゆったり浸っていると、徐々に心身が和らいで穏やかになっていくのがわかる。
いままでの屈辱と辛さはいったいなんだったのか、思い出すのも難しくなって行く。
思いっきり「温め」を堪能したらすみやかに「中くらい」から「熱め」へ移動。
はあ〜気持ちいい!!
思わず叫びたくなる衝動をかろうじて抑える。









人は皆精神のバランスをうまくとりながら生きて行くのだろう。
辛いことは永遠に続かない
もちろん楽しいことも・・・・・。
「より大きな果実はより大きな犠牲から」
今回は真理であった・・・・などととりとめもないことを考えながら
ゆっくりと癒しの時間に身をまかせるのであった。

[完]
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