|
千葉に住んでいた時たまに行っていた某始祖鳥メーカーの男性店員さんは、トレラン村の村長みたいな人で、毎朝出勤前に高尾山へランに行っていると言っていた。しかも２往復…。きっと某始祖鳥メーカーもこういう人にウエアを着てもらえて本望だろう。
好きでもないのに勧誘されて入った陸上部（長距離）で練習が嫌いすぎて「学校爆発したら部活なくなるのに…」とか「いっそ太腿を小刀で刺せば部活に行かなくて済む…」と毎日思っていた私にとって「山を走る事が楽しい」という感覚が全然わからない。奈良の若草山のクロスカントリーレースに出た時はマジでしんどくて沿道でボーっとしている鹿にキレそうだった。（八つ当たり）
そんなトレラン村に、もはや理解の範疇を超えたサンダルが存在していることを最近知った。「裸足に近い状態でトレイルを走ることで自分の体に合った走り方をするようになる」（うろ覚え）的な思想で作られたルナサンダルだ。トレイルの形状と荷物の重さでシャンクの硬さを選んで靴を買ってきた私にこの考え方は衝撃的だった。なんとなく肌断食とか半日断食とかジュースクレンズとか、自己治癒能力とか、好転反応とか、そういう単語が絡んでくる界隈の空気に近いものを感じる。そして私はそういう物が（割と）好きで、西式甲田健康法をやり過ぎて飢餓状態に陥ったことなどもあり…結果から言えばルナサンダルを買ってしまった…しかも一番原理主義的な型を買った…。
届いたルナサンダルを見て「これで12,000円かよ！？」と驚いた。買う前からわかってはいたが、ビブラムシートを足の形に切り取ったソール（というか板）にナイロンの紐が通してあるだけのものだ。やっぱり返品して300円くらいのビーサンを代わりに買おうかその日一日考えた。ルナサンダル一足で一生分のビーサンが買える。でもやっぱり気になってしまって、夕方ルナサンダルを履いて犬の散歩に出た。すると、自分が歩く時に全然拇指球に体重を乗せられてない事がわかった。上手く歩かないと「オットット」と足がつっかえてしまう。拇指球に体重が乗っていないと、足がソールから外側にズレていってしまう。なるほどなるほどこれは12,000円だわ。（チョレー）
あとこのサンダルで外を歩いているとなんだか楽しい。舗装されていない道だと特に楽しい。ここのところ自分が登山が本当に好きでやっているのか、それとも自分に付加価値を与えるために登山という体験をこなしているだけなのかわからなくなっていた。先週も赤岳に行こうとしていたのに、直前で嫌気が差して行くのを取りやめてしまった。色々と考えてみたりしたけれど、裸足に近い状態で歩いてみて、自分が山とか岩場とか森の中とかを歩くのが好きだったことを思い出した。変な話だが、自分がそういうことを好きだという事をすっかり忘れてしまっていた。それなのに「山に行かないといけない気がする」とだけ思って焦っていたのだから、しんどいのは当然だったと思う。高くて名のある山に行くのも、地元の低山に行くのも、根本の「山歩きが楽しい」があれば、たぶんどっちだって楽しいはずなのに、3000ｍ峰に登るような登山に戻る事ばかり考えていたと思う。
とまあ、まんまとルナサンダルの思想に触発されてしまって、目がマジになりかけているんだけど、行き詰まったときにはたまに隣の村を覗いてみるのも悪くないですねという話でした。
