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更新日:2021年05月16日 訪問者数:133
ジャンル共通 技術・知識
日本の山々の地質;第7部 東北地方の山々の地質 7−7章 奥羽山脈 ―「火山フロント」としての奥羽山脈―
bergheil
東北日本地下でのマグマ形成メカニズム概念図
文献2−b)の、図2.8.1 を引用。

・下部の白い斜めの帯が沈み込む太平洋プレート
・その上のグレーな部分が、ウエッジマントル部
・ウエッジマントル部内の薄い色の部分が、H2Oもしくはマグマの流れ
・上部の黒▲が、火山
地震波トモグラフィーによる、東北日本地下構造
文献5)の図7を引用

・青い、斜めの帯が、沈み込む太平洋プレート
・その上が、ウエッジマントル部
・ウエッジマントル部内の、黄色からオレンジ色は、地震波の低速度領域
・上部の赤い▲が、火山
(はじめに)
 この章では、東北地方の背骨ともいえる、奥羽山脈について扱います。

  奥羽山脈は、東北地方のほぼ中央部に、北は八甲田山から南は磐梯山まで、約500kmもの長さで、ほぼ直線的に南北に連なる長い山脈です。

  ただし、この山脈の中での登山対象として良く登られている山のほとんどが火山です(活火山、もしくは、活火山ではないが、火山としての形態を保っている)。
  なので、この連載の目的である「山々の地質」という点では、「それぞれ安山岩などの火山岩でできている」、とごく簡単に説明すれば終わってしまいます。

  それではあまりにそっけないので、この章では、各火山の概要(簡単な形成史も)を、まとめて紹介します。

  また、この奥羽山脈にかくも多くの火山が列をなしている点について、プレートテクトニクスの観点からの説明をします。
1)奥羽山脈の代表的な火山の概要
 以下、奥羽山脈の代表的な火山(百名山〜三百名山クラス)について、主に(文献1)、と(文献2―a)を元に、北から順に、その概要を箇条書きにて簡単に説明します。

 なお、岩石の種類について、(文献1)、(文献2―a)に記載がないものは、産総研「シームレス地質図v2」を元にしました。※印の部分は、「シームレス地質図v2」記載の岩石種類です。
 また、活火山かどうかは、(文献3-a)に記載の「日本の活火山リスト(2016年版)」を参照しました。


(1)八甲田山(火山群)、 (百名山)
  ・標高(最高点);1584m(大岳)
  ・岩石の種類;玄武岩、安山岩、玄武岩質安山岩、デイサイト、流紋岩と様々
         ※ 安山岩、玄武岩質安山岩
  ・活動時期;約110万年前〜現代 (活火山)
  ・火山形式;現存地形では小型成層火山が多いが、古いカルデラ(八甲田カルデラ)
        もある。

(2)八幡平(火山群)、  (百名山)
  ・標高(最高点);1613m(八幡平三角点)
  ・岩石の種類;安山岩が多く、玄武岩、デイサイトが一部
         ※ 安山岩、玄武岩質安山岩
  ・活動時期;約100万年前〜現代 (活火山)
  ・火山形式;アスピーテ型(?)。
        溶岩台地は分厚い安山岩質溶岩でできている。

(3)秋田駒ケ岳(火山群)、 (三百名山)
  ・標高(最高点);1637m(秋田駒ケ岳のうち、男女岳ピーク)
  ・岩石の種類;玄武岩、玄武岩質安山岩、安山岩
         ※ 安山岩、玄武岩質安山岩
  ・活動時期;約9万年前〜現代 (活火山)
  ・火山形式;成層火山、カルデラ火山

(4)岩手山 (百名山)
  ・標高(最高点);2038m
  ・岩石の種類;玄武岩、安山岩
         ※ 頂上含む東岩手山は玄武岩、西部は安山岩、玄武岩質安山岩
  ・活動時期;約70万年前〜現在 (活火山)
  ・火山形式;成層火山 
 
(5)焼石岳 (三百名山)
  ・標高(最高点);1548m
  ・岩石の種類;安山岩
         ※ 安山岩、玄武岩質安山岩
  ・活動時期;数万年前?(研究が進んでおらず不明)
  ・火山形式;成層火山(北側に馬蹄形火口あり)

(6)栗駒山 (三百名山)
   ・標高(最高点);1627m
   ・岩石の種類;安山岩
          ※ 安山岩、玄武岩質安山岩
   ・活動時期;約50万年前〜現代 (活火山)
   ・火山形式;成層火山、(山体崩壊による馬蹄形カルデラあり)

(7)船形山(火山群)、 (三百名山)
   ・標高(最高点);1500m
   ・岩石の種類;(文献1には記載なし)
          ※ 安山岩、玄武岩質安山岩
   ・活動時期;約80万年前〜(終息時期は不明)
   ・火山形式;(不明)

(8)蔵王山(火山群)、 (百名山)
   ・標高(最高点);1841m(熊野岳)
   ・岩石の種類;(文献1には記載なし)
         ※ 安山岩、玄武岩質安山岩
   ・活動時期;約100万年前〜現代 (活火山)
   ・火山形式;一部はカルデラ火山、溶岩ドーム、また溶岩流が広く覆っている。

(9)吾妻連峰(火山群)、 (百名山)
   ・標高(最高点);2035m(西吾妻山)
   ・岩石の種類;玄武岩、玄武岩質安山岩、安山岩
         ※ 安山岩、玄武岩質安山岩
   ・活動時期;約100万年前〜現代 (活火山)
   ・火山形式;成層火山群

(10)安達太良山(火山群)、 (百名山)
   ・標高(最高点);1700m
   ・岩石の種類;安山岩
          ※ 安山岩、玄武岩質安山岩
   ・活動時期;約80万年前〜現代 (活火山)
   ・火山形式;成層火山群

(11)磐梯山 、(百名山)
   ・標高(最高点);1819m
   ・岩石の種類;(文献1には記載なし)
          ※ 安山岩、玄武岩質安山岩
   ・活動時期;数十万年前〜現代 (活火山)
2)沈み込み帯に沿う火山帯(火山フロント)の形成メカニズム
 東北地方の東側には、太平洋プレートが日本列島の下に沈み込む「日本海溝」が、南北に長く続いています。またその太平洋プレートは日本列島の地下に斜めに沈み込んでおり、東北地方の奥羽山脈の直下では、地下約100km(プレート上面で)に達しています。

 沈み込む海洋プレート(ここでは太平洋プレート)は、一般に温度が低く、沈み込まれる側(マントル)のほうが高い温度です。そこで、低温の海洋プレートが沈み込んでいるのに、なぜマグマが作られて、その上に火山ができるのか?は、一つの地球科学的なパラドックスであり、いくつかの仮説が提案されてきました(文献4)。

 このパラドックスに関してまだ完全な解明はされていませんが、最近のプレートテクトニクス的な解釈では、沈み込む海洋プレート上部に含まれる水分(H2O)の影響が大きい、と考えられています(文献3−b)、(文献5)、(文献6)、(文献2−b)。


 以下、主に(文献3−b)、(文献5)をベースとして、そのメカニズムを説明します。

 まず、沈み込む海洋プレートの上部(玄武岩質の岩石層)は、非常に長い間、海水と接触しているために、表面部の岩石が水(H2O)と反応して、含水鉱物(化学的に言えば、水和物)注1)になっていると推定されています。
 また、海洋プレートが沈み込む場所ではプレートが折れ曲がるので、引っ張り応力が働く海洋プレート上部には多くの正断層が作られ、岩石は破砕されると推定されます。
 破砕された岩石の間に、(化学的ではなく)物理的に水(H2O)が浸透している、とも考えられます。

 このようなメカニズム(含水鉱物の形成、物理的な水分の浸透)により、沈み込む海洋プレートの上部に含まれる水(H2O)は、プレートの沈み込みとともに地下深くまで運ばれます。
 しかし、地下 約100〜200km付近(圧力=約3〜6GPa)になると、高い圧力と高い温度の影響で、海洋プレート上面にある含水鉱物から水(H2O)の放出(脱水反応)が起こり、沈み込みつつあるプレートに接したマントル部分(ウエッジマントル部)に水分が供給されると考えられます。

 マントルのうち、地下100〜200km程度の部分(=上部マントル)を構成している岩石は、カンラン岩と推定されていますが、沈み込むプレートから放出された水(H2O)の影響で、カンラン岩の融点が下がることで(注2)、マグマ(玄武岩質マグマ)が生じると考えられています。

 そのようにして生成したマグマは、浮力をもち、地上へと上昇してゆき、途中で「マグマ溜り」を作り、条件が整った場合には、地上への通路ができてマグマが地上に上昇し、火山を形成すると考えられています。上昇できずに地中にとどまったマグマは、徐々に冷却、固化して深成岩体、貫入岩体となる、と考えられています。

 なお、最初にマグマができる場所(深さ)は、明確には解っていませんが、(文献5)では、脱水反応で出てきたH2Oがそのままマントル内部を上昇してから、より圧力が低くなった、深さ 約150-100kmあたりで、マントル物質(カンラン岩)と反応してマグマができる、という考え方が示されています。

 また、細かすぎるので詳細は省きますが、ウエッジマントル部(沈み込む海洋プレートより上部のマントル部分)での、対流現象が、マグマの形成に大きな影響を与えていると考えられています。

  注1)沈み込む海洋プレート上面で形成される含水鉱物としては、例えば、
      ・じゃもん石;(Mg,Fe)3Si2O5(OH)4
      ・緑泥石(りょくでいせき);
          (Mg,Fe,Mn,Ni)6-x-y(Al,Fe3+,Cr,Ti)y x(Si4-xAlx)O10(OH)8
     が推定されています。
     (上記鉱物の組成式は(文献7-a,b)を参照しました)。

  注2)実験室レベルでは、かんらん岩に、0.1wt%の水(H2O)を加えると、
     約100℃も融点が下がることが解っています(文献3−b)。
(参考文献)
文献1)小池、田村、鎮西、宮城 編
    「日本の地形 第3巻 東北」東京大学出版会 刊 (2005)
     のうち、第4章「奥羽脊梁山脈と火山群」の項


文献2)日本地質学会 編
    「日本地方地質誌 第2巻 東北地方」 朝倉書店 刊 (2017)
     のうち、以下の各項

    2−a)第9部「(東北地方の)活動的な火山」、
        9―3章「脊梁火山列」の項

    2−b)第2部「東北日本の基本構造」、
        2−8章「島弧火山活動と地殻・マントル構造」の項

文献3)大谷、長谷川、花輪 編集
    「現代地球科学入門シリーズ 第7巻 「火山学」」共立出版 刊 (2017)
      のうち以下の各項

    文献3―a)表1.1「日本の活火山リスト」 (2016年版、原典は気象庁)

    文献3−b)1−3章「マグマの発生、上昇、定置」の項


文献4)上田 著
     「プレートテクトニクス」 岩波書店 刊 (1989)
      のうち、第6-2章「沈み込み帯」の項


文献5)長谷川、中島、北、辻、新居、岡田、松澤、趙
    「地震波でみた東北日本沈み込み帯の水の循環
       −スラブから島弧地殻への水の供給― 」
     地学雑誌 第117巻 p59-75 (2008)

   https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/117/1/117_1_59/_pdf/-char/ja
   


文献6)大谷、長谷川、花輪 編
    「現代地球科学入門シリーズ 第16巻 「岩石学」」 共立出版 刊 (2013)
      のうち第6章「火成岩(マグマ)の化学組成の多様性」の項、
     特に、6.6.3項「プレート収束境界の火成活動」の項

文献7)ウイキペディアより
    7−a)「じゃもん石」の項
        蛇紋石 - Wikipedia

    7−b)「緑泥石」の項
        緑泥石 - Wikipedia

       
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