タトラ山地縦走〜スロヴァキアからポーランドへ〜 スロヴァキア最高峰ゲルラホフスキ2655m、ポーランド最高峰リシ2499m登頂
- GPS
- 56:00
- 距離
- 36.4km
- 登り
- 3,826m
- 下り
- 3,845m
コースタイム
7/30(日) Sliezsky Dom5:50 〜 6:55Batizovské pleso7:05 〜 8:55Gerlachovský štít9:40 〜 11:00Batizovské pleso12:00 〜 15:20Popradské pleso△小屋泊(9時間30分)
7/31(月) Popradské pleso6:30 〜 9:45Rysy10:00 〜 11:50Czarny Staw12:10 〜 Morskie Oko 〜 14:50Parking Palenica Białczańska[下山](8時間20分)
天候 | 7/29 晴れ 7/30 快晴 7/31 晴れ時々曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2017年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
[下山] ポーランド側のモルスキエ・オコ湖へアクセスする駐車場Parking Palenica Białczańskaからザコパネ行の乗り合いバスが頻発していた。ちなみにズオチを全く持っていなかったが、ユーロでバス料金の支払いOKだった。バスに乗る前に確認したほうが良いだろう。駐車場周りの売店では両替できなかったので注意。ザコパネはポーランド人がバカンスに来る風光明媚な町で観光にもよい。クラクフへはバスも鉄道も頻発しており、2時間程度で出られる。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
スロヴァキアの最高峰ゲルラホフスキは一般登山道は無くアルパインクライミングになり、ガイドを付けることが義務付けられている。私はここに依頼したが、手配予約は非常にスムーズだった。 http://mountainproguiding.com/en/guiding/gerlachovsky-peak/ ポーランドの最高峰リシはスロヴァキアの国境上にあり、どちらの国からも一般登山道があり国境越えの縦走も可能。ただし、ポーランド側は危険な岩稜がかなり長く続く。プロテクトは十分されているが、日本でいえば槍穂高の一般道が楽に登れる程度の技量は必要。 |
その他周辺情報 | 山中の山小屋は食事や宿泊が可能で、スロヴァキア側は曜日にもよるだろうがそれほどの混雑はなかった。ポーランド側の混みようは日本並み、上高地並みなので、宿泊や食事を予定する場合は要注意。山の中としてはビールが尋常でなく安く、つい飲み過ぎてしまうので注意。 私が宿泊した宿は以下。週末にかかったので両方あらかじめ予約したが、それほどの混雑はなかったので飛び込みでも大丈夫かもしれない。 Sliezsky Dom(1泊24EUR): http://www.sliezskydom.sk/en/hotel-and-accommodation/accommodation/tourist-standard-accommodation/ Popradské pleso(1泊18EUR 朝食込み): https://www.booking.com/hotel/sk/popredska-c-pleso.ja.html?aid=356995;label=gog235jc-hotel-XX-sk-popredskaNcNpleso-unspec-jp-com-L%3Aja-O%3AwindowsS10-B%3Achrome-N%3AXX-S%3Abo-U%3AXX-H%3As;sid=02ce795cbb78afa7cadb9c27b67a7c51;dist=0&sb_price_type=total&type=total& |
写真
感想
3年前にギリシャとブルガリアの山々を登った時の楽しい山旅(https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-475897.html) が忘れられない。あの時から次ヨーロッパに行くならまた東欧だと決めていた。東欧でバルカンの次に高い山域はタトラ、よっしゃタトラだと。ようやくこの夏実現できたのだが、普通の旅行もしたくてハンガリー、スロヴァキア、ポーランド、ウクライナ、ルーマニアと欲張って10日間で5か国も行ってしまったため、山は少々駆け足になってしまった。でも短いなりにタトラの魅力は満喫できたと思う。今年の東欧は強烈な熱波に見舞われ、毎日35度を超える日が続いたが、山の中はすごしやすかった。
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7/29(土) [入山]Starý Smokovec15:00 〜 17:50Sliezsky Dom△小屋泊(2時間50分)天気:晴れ
前日はスロヴァキア東部のスピシュスケ・ポドフラディエという村に宿泊して、午前中に近くのスピシュ城を見学してからタトラに向かったので、登山口のスタリー・スモコヴェツ駅に着いたら昼過ぎになってしまった。食事もせずに急いでやってきたので、駅近くのレストランでゆっくり食事する。登山靴に履き替えて出発したのは15時だった。
しばらくは針葉樹の中を進むが、起伏の少ないダラダラの斜面が続き、あまり変化がない。花はヤナギランが多かった。今日は土曜とあってかハイキング客が多く、5分ごとに人とすれ違う感じだった。しばらくは斜面を登り続けるが、やがて分岐になる。ここを西に折れ、あとはひたすらトラヴァースする。1500mを超えると森林限界でハイマツが出てくる。
やがて登山道は峻険な谷に吸い込まれ、ここが今日の宿Sliezsky Dom到着した。小さな青い池のほとりにあり、素晴らしいロケーション。このホテルはあまりに高級なので、すぐ横に併設する登山者用のドミトリーを予約していた。こちらは1泊24EURとお得である。でも食事は奮発してビュッフェにした(激ウマ!!)。
ドミはスロヴァキア人のグループが二つ入っていたが、まだベッドに2つくらい空きがあった。部屋は少し狭いが、新しくてとてもきれいで、シャワーまであり非常に快適だ。
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7/30(日) Sliezsky Dom5:50 〜 6:55Batizovské pleso7:05 〜 8:55Gerlachovský štít9:40 〜 11:00Batizovské pleso12:00 〜 15:20Popradské pleso△小屋泊(9時間30分)天気:快晴!
今日はスロヴァキア最高峰ゲルラホフスキ2655mに登る日だ。昨日に手配会社とのメールのやり取りでちょっとしたコミュニケーションミスがあったので心配だったが、朝5時半過ぎにガイドはちゃんとやってきてくれた。ガイドはティボール。私より10歳くらい上のベテランだった。早速出発しようというが、私は今日下山したらポプラドスケ・プレソまでそのまま行きたいので、荷物を全部持っていきたいと言ったら、ティボールはう〜んと考えて、予定していたノーマルルートから登るのはやめて、下山ルートからピストンしようと提案してきた。難易度はどちらも同じだそうだが下山路のほうが距離は少し長い。でもピストンにすれば余計な荷物をデポして行けるのでメリットは大きいのだ。オーケーと快諾し、話はまとまった。
ポプラドスケ・プレソへと向かう西への登山道を1時間ほどトラヴァース
すると大きなな谷に出合い、きれいな湖もあった。タトラの山々もヨーロッパアルプスと同じで、あるところまで登ると突然ガキンガキンの岩山に変わる。見るからに難易度は高そうだ。ここの湖のほとりの岩陰に荷物をデポして、ゲルラへのクライミングになる。ロープをタイアップして直後の岩の取りつきが若干危険で、その後も微妙で難しい登りがずっと続く。私の力量で登れるのかとさすがに不安になってくるが、ティボールは淡々とリードしてゆく。
やがて、ヴィア・フェラータのような梯子があらわれ、そこでティボールがストップした。ここは難しくて危険だから、自分の登るのと同じように登れという。一歩一歩足の置く場所までチェックした。なんとかクリアできたが、高度感が非常にあり、厳しかった。無事登り終えて息を整えていると、ここから先はほとんど難しい場所はない、安心して、と言われてちょっと拍子抜け。湖からまだ1時間も登っていない。ここまでかなり危険を感じるルートではあったが、すぐに終わってしまいあまりにあっけなかった。
そこから先の登りは確かに難しくはなかった。休憩中にあとどれくらいで頂上かと聞いたらあと1時間もかからないといわれ、またびっくり。まだホテルを出てから2時間ちょっとしか経っていない。元々登りは4時間と言われていたが、ヨヘイはとても登るのが早い、もうすぐ頂上についてしまうよ、とのことだった。
そこから本当に1時間かからず、山頂に到着した。山頂は非常に狭く、周りは絶壁でこれまた非常に危険な場所だった。スロヴァキア最高峰ゲルラホフスキ2655m、標高だけ見るとなんとも低い山ではあるが、それを全く感じさせないほど素晴らしい山だった。ガキンガキンのかっこいい岩山であることももちろんだが、何が素晴らしいって登山道が無いことだ。明日登るリシも確認できたが、ちょっと冴えなかった。でも明日も楽しみだ。
幸いにもノーマルルートから登ってくる人たちもまだ到着しておらず、思う存分写真撮影できたのだった。ティボールはこっちに安全地帯があるよ、といい場所を確保してくれていたので、のんびり食事しながら無駄話した。
下りも順調で、何パーティか抜かしたが、ティボールが必ず、彼はジャパニーズ・マシーンだ、と説明するので恥ずかしかった。そういえば、コトパクシに登った時のガイドのファビアンにも同じことを言われたのを思い出した。ヴィア・フェラータの箇所は慎重に通過し問題なし。その下のとりつきのところで、そこ注意して、と言われた直後に岩の上でスリップして転びかけた。この岩、理由はわからないんだけど皆ここで必ず滑るんだよね、とティボールが言った。ベテランガイドに守られて安全にクライミングできたんだな、と改めて思ったのだった。やれやれ、ようやく湖まで戻ったと思ったら、山頂を出てからまだ1時間20分しか経っていない。クレイジーだと言われた。
この湖Batizovské plesoはあまりに快適な場所なので、すぐ出発せずにウダウダしてからポプラドスケ・プレソに向かうことにした。ティボールとはここでお別れ。ほんとうに大感謝だった。今日は最高のクライミングを楽しんだと、感謝を言ったら、自分もだと返してきた。ヨヘイが速かったから今日は家に帰ってゆっくりできる、ありがとうと言われた。素直にうれしかった。
ポプラドスケ・プレソまではゆっくり歩いて3時間ちょっとで到着。途中変化のない登山道で飽きてきたと思っていたら、ポプラドスケ・プレソの谷が見えて突如愕然とした。素晴らしい谷だ。槍ヶ岳のような岩山がカールに落ち込み、きれいな針葉樹の森が碧の湖を囲んでいる。その湖のほとりに今日の宿はあった。なんてすばらしい景色なのか、、しばらく絶句して動けなかったのである。これがわずか2500m規模の山? 日本の3000mをしのぐほどの迫力だと思うけど…
ポプラドスケ・プレソはビジーだからおすすめしないとティボールは言っていたが、全くもって快適。混むと言っても日本と比べたら全然だ。ドミトリーも8人部屋に3人だけ。シャワーはお湯も出るしトイレもきれい。ビールは大ジョッキでも2.4EUR。冗談かと思う値段だ。食事は少し高いがチェコ料理やデザートまで充実していておいしかった。明日の国境越えに備えて十分英気を養った。
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7/31(月) Popradské pleso6:30 〜 9:45Rysy10:00 〜 11:50Czarny Staw12:10 〜 Morskie Oko 〜 14:50Parking Palenica Białczańska[下山](8時間20分)
今日は国境越えもあり、ポーランドに入ったらどうなるかわからないので早く出たかったのだが、朝食は6:00〜だった。せっかくなのでしっかり食べてから出発した。針葉樹の森を登ってゆくとやがて分岐になり、右に登って谷を抜けるとリシにたどり着く。まっすぐ行くと谷の奥まで行けるようだが、地図を見るとポーランドには抜けられないようだ。
しばらくすると大きな池が二つある。ここで大休止するが、周りの山は昨日よりも峻険で、剣山のような岩が並んでいる。標高は低いが非常に難しそうだ。このあたりのルートは稜線に道がなく谷に道がつけられているが、この有様を見ると納得がいった。池からさらに上ると滝がかかるモレーンのような壁が立ちはだかり、これは登れないのでは?と思うがルートはうまく弱点を突いており、上まで抜けられた。多少危険であるが、プロテクトは十分で安心して通過できた。
モレーンの上に出るとそこには山小屋があった。標高2100mくらいでタトラでは標高の高い山小屋だろう。ここに泊まるのも一興だと思う。その上のカール地形は雪渓で埋もれていたが、夏道は出ており問題なかった。ようやく稜線上の鞍部に出ると目の前には昨日登ったゲルラが…。随分近くだが、ルートが全くないので、ぐるっと回り込んでここまでやってきたのだった。そこから山頂はすぐだったが、途中ルートを誤って行き詰まったりしてちょっと時間がかかった。リシ山頂に到達したときには残念ながら雲の中に入ってしまった。
頂上は狭くスロヴァキア、ポーランド両方から登山者がいっぱい登ってきていた。写真だけ撮ってすぐにポーランド側に下山することにする。ちょっと降りてみて驚いたが、ポーランド側はスロヴァキア側と比較にならないくらい危険だ。鎖で十分プロテクトされてはいるが、万が一落ちたらそれ相応のケガや死亡は避けられない。人とのすれ違いも多いので、十分注意して下った。モルスキエ・オコ湖の谷へと下る道ではあるが、ルートは途中まで小尾根を伝っており、鎖場の連続だった。かなり長く続く危険地帯を集中が途切れないよう注意しながら下り、ようやく草付きの斜面に降り立ち、ほっとした。
草付きの斜面では美味しい沢水も得られた。昨日もゲルラの枝沢でティボールに勧められて生水を飲んだが、この一帯の水は飲んでも全く問題なかった。放牧もないので、汚染はされていないのだろう。これまた異常に長く続く急な草付きの斜面を下ってゆく。この谷の標高差はまったくすごい。日本では2500m級の山でこれほど深く急峻な谷は知らない。
あともう少しで湖のほとり、というところで突然ヘリがこちらに向かってきた。すぐそばでホバリングして中から人が降りてきて、ちょっとストップと制止された。どうやらケガ人を搬送するらしい。その場に座って救助が終わるのを待っていたが、こんな間近で救助劇を見たのは初めてだった。素人目ではあるが、レスキューの方の所作も無駄がなく、ホバリングも完璧で、あっという間に去っていった。去る間際、ヘリのパイロットが、足止めしてゴメンね!と手を振ってから急旋回していきましたが、その姿に思わず、カッコいい〜!と日本語で叫んでしまった。それにしてもバックの湖の色のきれいなこと!青インクを溶かしたような濃い青色である。
二つの湖のほとりをぐるりと回り、登山口であるモルスキエ・オコ湖の小屋までたどり着いたが、すごい人人人!上高地もびっくりだ。小屋で食事しようと思ったが、あまりの混雑に恐れをなしてその場をすぐに去ることにした。ここから車道歩きだが、一般車は入ってこられない。観光用の馬車はあるが、なんとなく乗るのは気が引けて最後まで歩きとおした。
Parking Palenica Białczańskaの駐車場まで無事到着。ここから調べてあったバス停まであと2キロだが、見ると駐車場にはバスがいっぱい止まっていて、運ちゃんが「ザコパネ〜ザコパネ〜」と叫んでる。下調べでも交通機関が全然わからなくて不安だったのだが、なんだここから直接ザコパネに行けるじゃん、と一気に緊張が抜けてホッとした。ただスロヴァキアから歩いてここまで来た私は、通貨のズオチを持っていない。周辺の売店を数軒回ってユーロで払えるか聞いたが、どこもダメだという。どうしようと思ってバスの運ちゃんにユーロしか持ってないんだけどいい?と聞いたらノープロブレムだという。これは助かった。
ザコパネまでバスで30分、10ズオチ。駅に行くとすぐに発車するクラクフ行きのバスがあったのでこれに乗車。2時間ほどで18ズオチだった。順調にクラクフまでたどり着くことができ、国境越えの縦走も無事終焉を迎えた。
タトラの山々、標高は低いものの難易度が高く急峻な岩山で、深い谷への標高差は世界でも屈指のものだ。世界的に見ても名山といって差し支えないだろう。そして確かな技術で信頼できる、尊敬できるガイドがいるのも欧州ならではだ。2泊3日という短い期間ではあったが、天気にも恵まれ、十分に満足して山を去った。
その後の足取り…
8/1 アウシュビッツ博物館を唯一の日本人ガイド中谷さんの解説で見学。深夜に夜行列車でウクライナへ。
8/2 ウクライナ第2の都市、リヴィウを観光。リヴィウはとても美しい古風な街。こんな街がまだ欧州にあったとは…
8/3 列車でウクライナ南部のムカチェボへ。そこからローカルバスでスラティナという村へ。1時間歩いて国境に到達。無事にルーマニアに入国。
8/4 マラムレシュの木造教会群を自転車で観光。ルーマニアの田舎の風景はとても美しく、大いに癒された。
8/5 世界一陽気な墓を観光。ルーマニア人気質、明るくていいですね。マルシュルートカでサトゥ・マーレという地方都市へ。
8/6 ディーゼルの列車で国境を越えハンガリーのブダペストへ。観光後、夜に日本へ向けて無事離陸。あまりにも盛りだくさんの旅行でした。
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