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Yamareco

記録ID: 1248394
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
芦別・夕張

新雪の芦別岳  <40>

1975年11月22日(土) 〜 1975年11月24日(月)
 - 拍手
GPS
56:00
距離
18.2km
登り
1,589m
下り
1,588m

コースタイム

22日 札幌(22:20)普通列車からまつ→

23日 山部駅(2:50〜3:05分)→登山口(3:50〜7:20、ツェルトを張って仮眠)→見晴らし台下(8:35〜9:00)→うぐいす谷(9:40〜43)→半面山(10:30)幕営

24日 半面山(7:00)→雲峰山(7:50)→芦別岳山頂(8:25〜40)→半面山(9:50 〜10:52)→登山口(13:15〜14:10)→山部駅(14:55〜15:45)
普通列車→滝 川駅(18:03〜18:30)→札幌(20:45)
天候 22日 雪、23日 風雪、24日 曇り。
アクセス
利用交通機関:
電車
スキーの特訓
雲峰山(右)と雪雲のなかの芦別岳の山頂方面(中央)
雲峰山(右)と雪雲のなかの芦別岳の山頂方面(中央)
雲峰山の屏風岩
芦別山頂にて
半面山の手前、鶯谷付近で。木立の向こうは、北尾根の稜線下部。
半面山の手前、鶯谷付近で。木立の向こうは、北尾根の稜線下部。

感想

 1975年の記録。
 
 初冬の芦別岳。冬山らしい感じがし始めたのは、長くきつい尾根道をいいピッチで登り つめて、標高1200メートルのウグイス谷に着いてからだった。すっぱりと切れ落ちたユ ーフレ谷を隔てて、夫婦岩から北尾根へと続く岩稜、そして切り立った屏風岩が、新雪を まとって、黒と白のすごみのあるコントラストを見せてくれた。

 強風がガス(雪雲)を吹き飛ばし、稜線の上はときおり青い空が見えていた。でもすぐに また、ガスを伴った強い風が、すべてを灰色に塗り変えてしまった。

  幕営場所は、予定通り、標高1400メートルほどの半面山の山頂にした。そこは登山口 から芦別山頂のちょうど中間地点で、積雪はまだ20センチくらいしかなかった。ぼくたち は、テントを風にあおられながら苦労して張り終えると、競ってテントの中の安堵の空間に もぐりこみ、昼食をとった。

 頂上は、この半面山からは見え隠れしていたが、雪が降っているらしいし、風もかなり強 いことから、予定のアタックは明日に延期。雲峰山の東斜面まで登っていってスキーの初 滑りをしたり、ちょっとした小沢の落ち込みで滑落停止訓練を寒さを忘れるくらい熱心にや った。


 夜は吹雪。テントの内側はバリバリに凍り、ライトで照らすとキラキラと輝いていた。狭い テントに3人がぴったりくっついて「サシミ」になって寝たので、みんな少しも寒くなく安眠でき た。

 24日、午前3時すぎに起床。餅を焼いてそれぞれ6個ずつお腹につめこむ。明るくなっ たばかりの、雪が舞い降りる外へ出た。視界はあまりよくない。

 雪は一晩で15センチほど新たに積もっており、雲峰山から先はさらに深そうだ。でも、一 番怖い風がそう強くないことから、アタックを決行することにした。ピッケルやアイゼンなど、 借り物もふくめて、各自ができる限りの装備を身につけて出発する。

 雲峰山の東斜面は、少し深いラッセルが必要なところ。でも、昨晩、苫小牧の山岳会の9 人のパーティーが、半面山と雲峰山の鞍部に幕営し、今朝は私たちの200メートルほど前 を先行している。ずいぶん楽にこの斜面を越えた。

 次は山頂下の鞍部への下降。夏道が溝状になってへこんでいて、周囲は安全な場所なの で、なかば尻セードで下降した。

 ここから山頂の尾根へ向けて、やや深い雪の斜面の登りとなる。ちょっと雪崩が怖くて、緊 張させられる。半分ラッセルのキックステップで、一歩一歩登った。

 頂上へと続く岩まじりの尾根に出る。ここで苫小牧のパーティーを追い越して、最後のツメ にかかる。

 西風をまともに受けるこの尾根は、雪はほとんど吹き飛ばされていて、半分氷化してがち がちに凍った薄い氷の層だけが、岩にへばりついていた。風はここへきて、いちだんと強く なる。足元は、落ちたらとても止まらないような、岩と氷の斜面が落ち込んでいる。ぼくらは、 神経をぴりりと張り詰めて、足を進めた。

 夏にきたときの記憶をあてに、尾根を乗り越し、西側にまわりこんで、最後の頂上の高み ののぼりにかかる。斜面はいっそう急になる。

 登りきったところに、芦別岳の山頂をしめす三角点が、氷漬けになっていた。今日はぼくら が最初の登頂者。登るのをやめたとたんに、すぐに体に震えがきた。寒いだけだったし、視 界はまったくなかった。けれども、冬の芦別岳の頂を踏めたことは、やっぱりうれしかった。

 苫小牧のパーティーは、何分もしないうちに登ってきた。一人がやせ尾根の斜面で滑落し、 体は止めることができて大事にいたらなかったものの、まだ稜線へ上がれないでいるとのこ とだった。

 ぼくたちは、大事にセーターに包んできた紅茶を回し飲みし、祝杯を上げた。まだ温かい。 互いの顔を見ると、目出帽からはみだした髪の毛や、まつ毛や、ヤッケのフードが凍り付い ている。目もあけていられないような風が吹く。互いの顔、姿をあきれ合いながら、記念の撮 影。そしてすぐに下山にかかった。

 やせ尾根も急な雪面も無事に通過し、雪が深い雲峰山まで下降すると、ほっとする。ようや く気持ちが緩んできて、雲峰山の雪面はわいわい騒ぎながら、シリセードでにぎやかに滑り降 りた。


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