仙ノ倉谷西ゼン
- GPS
- 16:32
- 距離
- 15.6km
- 登り
- 1,331m
- 下り
- 1,331m
コースタイム
- 山行
- 15:19
- 休憩
- 0:44
- 合計
- 16:03
天候 | 曇り時々晴れ、朝夕一時雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2017年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
石渡沢沿いの林道のゲート手前余地に駐車。10台程度は駐車可能。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
◆登山ポスト JR土樽駅にある。 ◆道の状況 平標新道は渡渉もあり、泥濘もあり気を抜けない登山道だった。特に下りでは滑りやすい所が多く、全員どこかしらでスリップしていた。 |
写真
感想
いろいろと当てが外れて味噌が付いたけれど錦秋の西ゼンを辿って来た。仙ノ倉は北尾根と言い何とも塩っぱい思いをさせてくれるものだ。終わってみれば大スラブの登攀や密生するネマガリタケの藪漕ぎ等、非日常性を満喫させて貰った沢旅だった。でも、もう一度行く?と聞かれたら…、少し考えさせて貰います。
出発時点では星空だったので晴天は確実かと考えていたが、土樽駅で計画書を提出し毛渡沢に沿った林道のゲートに辿り着くと周囲はガスった雰囲気。30分程車中で休憩して5:15から準備をし出したがやはり周囲の山の高い所はガスに覆われていた。出発する頃にはしとしとと霧雨模様。でも群大山荘に出合う頃には止んでいた。意外と早く着いた群大山荘を過ぎて橋を渡ると林道から右手に平標新道が分れるのでこちらに進む。平標新道は下草は刈られているものの渡渉もあり泥濘もありで往路のダイコンオロシ沢出合まででもそれ程楽な登山道では無かった。
ダイコンオロシ沢の渡渉はロープに沿って行き渡った先から巻いて入渓と言うのが楽なようだったが、H薗さんは沢の上流方向の岩に飛びつき越えて行く。13Kさんも続くがI久保さんは多分正しいと思われる方法で渡渉し、僕もそれに続いた。が、Speedcross ProはSpeedcross 3よりも多少濡れた岩の苦手度が減ったと言うものの未だ頼りないもので、最後に岩を蹴って飛ぶ所で軸足が滑ってドボンと入水してしまった。首から懸けていた一眼レフも没水。一応防滴なんで機構的には無事とは思うがレンズはいずれ結露するだろうと悔やむもののいたしかたない。これがケチの付き始めだったかもしれない。
ダイコンオロシ沢の脇で沢支度をして、何故かその先の小沢から入渓。でもいずれ合流する。水は想像していた程冷たくないが水量はかなりある。最初のうちはゴーロが続くが、丹沢の渓とは空の開き加減や岩の磨かれ方が違う。20分も歩くと奥の方に平標北尾根らしい稜線が見えて来たが、見事な紅葉に思わず歓声を上げてしまった。V字の渓に漏斗の底のように白く見えるのが西ゼンのようだ。川床にスラブが現れだしナメが続く。青空が少し出て来て朝陽が渓に射すようになると増々紅葉とのコントラストが美しい。緑と黄色と赤色が混じり合って岩壁を彩っている。8mナメ滝を越えた所で小休止としたが皆この展望を満喫した。しかしこの後長い時間ザックを降ろすこともできないとはこの時点では思っていなかった。
しばらくナメ滝が続くが水流沿いや左岸の草付き際から越えて行き6m滝に巡り会う。これは右壁のコーナーから越えて行く。この辺りが東ゼンとの出合の筈だが、むしろトポには無い右側から合流するスラブの方に眼が行ってしまった。25mナメ状滝ではH薗さんは沢の左側に取り付いたが、I久保さんは右の草付き際を登って行く。多分H薗さんは楽しそうなルートを選択したのだろうけど、後者の方が楽そうだとI久保さんに続く。しかしどこからどこを測って25mなのか解らないがスケールの大きなナメ滝だ。流程は100m以上ではないだろうか。その先も同じスケール感のナメ滝が続く。左岸側を藪漕ぎしながら進むと20mナメ滝は大分下を流れている。H薗さんも合流してきた。第一スラブ帯が衝立のように迫って来て、6mチムニー滝に出合う。
6mチムニー滝は水流沿いもスタンスがありそうだったが何しろ水量が多いので薙ぎ落とされそうだ。周囲を見渡すと左岸側にフレークがありしかもお誂え向きに倒木が寄り添えてある。Aki-CLさんが先ず登り、H薗さんが続き、後続の13Kさん、僕、I久保さんは降ろして貰ったロープで確保して登った。そしていよいよ第一スラブ帯。最初に右岸側の踏み跡を辿って入口の滝を右手に見下ろす所まで登る。この先が良く見えないので川床にH薗さんが降りて先を観察、と思っていたら左岸側をスルスルと登って滝上に出ている。スラブを見ながらこちらに×のサインを出して来た。でも踏み跡は続いているんだが、と半分疑いながらでも着いて行く。しかし左岸側の取付は結構危うい。水流沿いの方が楽かと思ったがトライした13Kさんは寒くて無理と言うので、仕方なくボロボロ加減の左岸側を登って滝上のスラブが一望にできる所に3人集合した。未だスラブの末端まで優に2ピッチはありそうなスケールだ。川床に立っている時に6mチムニー滝の下に4人パーティが来ているのを見たが、I久保さんはその後に続いて右岸側の踏み跡を登りつつあった。
H薗さんはその先に延ばそうとしているが、何しろスラブなので支点を作る所を探すのが大変だ。Aki-CLさんが何とか探したリスに少し心もとないけどハーケンで支点を作り、ロープで確保してH薗さんがスラブをフリクションを効かせて登って行く。30mロープでは足りず、2本を繋いで行く。H薗さんは中間支点をハーケンで作ってピッチを延ばす。ほぼロープ一杯。ここでも支点を作る場所探しが難題だった様子だが、ハーケンとナッツで支点を作っていた。13Kさん、僕、Aki-CLさんの順番でフォローしたが上からはロープに荷重を掛けるなと言うコールが掛かる。久々のスラブ登攀、しかもフェルト底の沢靴でと言うのは結構な緊張感があったが、ちょっとしたスプーンカットや凹凸を拾って一歩一歩に荷重を十分に懸けながらこんなだったかなと思いながら登り切れた。ラストのAki-CLさんが登って一息ついて今度はトラバースだ。目標になるのは沢筋の左岸側に既に渡って待っているI久保さん、大体100mはありそうだ。H薗さんはこの沢のトラバースが不可能と見たのだが、実際にはヌメってはいたが足幅が収まる溝が続いていてロープを出さなくても沢の横断が出来たらしい。宇都宮から来たと言う4人パーティは既に第二スラブ帯へと進み、その後の単独行者も同様に登って行った。もう後続パーティはいない。
トラバースは直登よりも緊張する。ラストのAki-CLさんがそのままスラブ上の大岩までピッチを延ばすが、その足元から100kgはありそうな岩が滑り出して割れて弾けながら落ちて行った。割れた岩の一部は我々が最初に立っていた辺りにも飛び跳ね、もうもうとした砂塵が舞い上がった。後続が全部登り切っていて良かった。岩はスラブ上にただ乗っているだけで摩擦力だけでそこにあるみたい。ちょっとした下向きの荷重が掛かるといきなり滑り出すようだ。支点を作ってコールが掛かり僕、13Kさん、H薗さんの順番で続く。立って歩けるような所もあるが大半は手掛かり足掛かりを求めながらとにかく滑らないように慎重に進む。ラストのH薗さんは本来は確保されているのだがロープの結び目が中間支点に引っ掛かってしまったのでその後はプルージックで自己確保し、ロープを手繰りながら渡って来た。I久保さんは20m程上に移動していて次のピッチはまた真横にトラバースだ。登って来てくれたお陰で降りる必要はなくなった。ここも最後にヌメってホールドが無い所を何とか処理して久し振りに全員集合。第一スラブ帯を登り切った。しかし3時間も掛かり既に12時だ。
第二スラブ帯入口の15m2段滝が目の前にある。下段は右側コーナーを登れば容易そうだが上段はH薗さんもルートを判断しかねている。その様子を見てAki-CLさんは右手の沢筋から高巻くことにした。この沢筋はそのまま辿って行っても良いと思わせる快適さだったけど10m程登ってから左手の薮に入ってトラバースしていく。足元はまるで見えないが途中切れている所もあり結構な危うさだ。ただ展望は増々良くなる。左手には足拍子岳の稜線が先ほどから見えていたが、今ではそれも眼下、稜線越しに巻機山も望まれるようになった。沢まで一旦降りて草付きを攀じ登る。ここから見る第二スラブ帯は傾斜もあり中々険しそうだ。右壁にバンドが見えるがあれが登路になるか?でも時間を考えて尾根の灌木帯を登ることとした。結果的にはこれがまた楽に行こうとして裏目に出た感じだった。灌木帯と思って突っ込んで行ったがそのうちにネマガリタケが密生する斜面になり、足元は滑り、撥ね除けても撥ね除けても目の前に立ち塞がるネマガリタケに悪戦苦闘した。下から眺めて緑と黄色と赤色が混じり合って綺麗、と見ていた緑色がこれだった訳だ。暫くはH薗さん、I久保さんに着いて行けたが足元が滑って登れない所で離れてしまった。手の握力も低下し、右手は攣ってしまってさてどうしたものか。ザックを降ろして水を飲み、再度歩き出す。日の入りまでに稜線の登山道に出ないとまた面倒になるのでとにかく進むことだ。右手ではもう握れないが、却ってこれが良かったようで掴んで登るのではなく撥ね除けて径を開けて登る方式にすると楽になった。これで藪漕ぎもノービス位にはなったかもしれない。上からはH薗さんとI久保さんの声が、下からはAki-CLさんと13Kさんの声が聞こえる。H薗さんとI久保さんは熊の寝床らしい所を見つけてそれから会話をしながら登って行ったとのことだった。たまにオーイとコールを掛け合ってお互いの位置関係を確認する。身の丈以上のネマガリタケの間をがむしゃらに藪漕ぎして、沢筋の上部のガレに出たら後10m程で2人が待つ場所だった。そこからは真上に進み登山道に出た。30分以上待たせてしまっただろう。でもAki-CLさんと13Kさんは更に格闘が続いていた。何とか17:30、陽の残るうちに全員稜線に登り着くことができた。
疲労困憊だが下らなければならない。ダイコンオロシ沢の渡渉もあるので僕は沢靴のまま下ることとした。陽も落ちてヘッデン下山だ。ヘッデンのバンドが緩くなっていたのでヘルメットに装着して被った。平標新道は一本道で道迷いになるようなポイントも無かったが急傾斜も多く滑りやすい径だった。皆、どこかしらでスリップダウンしている。もう大分標高を下げた樹林帯の中で派手に尻餅を付いたらヘッドランプが衝撃で外れて飛んで行き10m程斜面の下に転がっていった。Aki-CLさんにロープを出してもらい無事に回収できたが、何とバンドから本体が外れて飛んで行ったのだった。真っ暗な中、ペースも当然上がらないのだが2時間でダイコンオロシ沢に着いた。そこで小休止して更に1時間弱で林道、そこから30分弱で林道のゲートに辿り着いた。21:30、行動時間は16時間を越えてしまった。
Aki-CLさん、13Kさんは14年前にも西ゼンを遡行しているのだが、概ね沢の左側を進んだこととたまにロープを出したこと程度しか記憶に無いとのことだったが、第二スラブも左側を直登したようだ。多分そちらが本来のルートなのだろう。最後の藪漕ぎも緩傾斜帯なので今回の苦労とは比較にならない程度だったそうだ。
ともかく予想以上に紅葉は美しく雄大な眺めを楽しめたし、普段経験しないスラブ登攀や藪漕ぎと言う非日常満載の山行だった。その場ではヒーヒー喘いでいたが無事に帰って日が経つと「楽しかった」と言える気がするのも不思議なもの。(by Aki-CLさん)
コメント
この記録に関連する登山ルート
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はじめまして、西ゼンでI保さん?にお会いした単独行者です。
当日は、スラブにとても紅葉がきれいで、最高でしたね!
こちらも写真を撮れましたので、良かったら記録を見てやって下さい。
水滴がついていたりするのも多少ありますが・・・
どうもご心配をお掛けしました。
正しいルートと池塘や山頂の紅葉の美しい写真を拝見しました。稜線からの西ゼンの眺めは素晴らしいですね!
これはもう一度行かないとダメでしょうね。
稜線からの眺めは素晴らしいので、是非!
東ゼンも魅力的です。
スラブでは、しばらく拝見していましたが、
しっかり支点を打って、慎重にロープを伸ばしていたので、
心配はあまりしていませんでした
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