部子山から能楽の里牧場まで
- GPS
- 06:04
- 距離
- 15.5km
- 登り
- 1,352m
- 下り
- 1,349m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
明日からもう4月ですが、この冬ラストチャンスに部子山に行ってきました。(今シーズンラストの滑りなんてことはありませんよ。念のため・・・)
雪があれば定番通り銀杏峯に登ってから部子山にしようと思ってたのですが、案の定いこいの森からの登山道は雪がほとんどなくなってました。仕方がないので林道を進んでみます。林道も流水のあるところは雪が切れてますが、ほぼスキーのまま進むことができました。しかし帰りにはそれもやばかったので、だんだんスキーを脱ぐ箇所が増えるでしょう。
林道は途中大きく迂回するので、ここは尾根も雪がつながってそうなので尾根筋を進みます。しかし雪切れしているところや、ツリーホールが大きく開いていて思うようなラインで歩けません。仕方がないのでカニ歩きで垂直登行することがかなり多くなります。カニ登りは大腿筋を多用するので結構ハードです。
尾根筋をクリアすると林道に出ます。そのまままた尾根筋に取り付いたのですが、どうも林道が部子山方面に伸びているのを見つけて、また林道に戻って進んでみました。しばらくすると凶悪そうな片斜面が見えたので、あっさり諦めて尾根筋に戻りました。
ここの尾根筋では雪が緩み始めて、場所によってはズルズル滑り落ちそうな感じです。なるべく緩みのマシなところを選んで登りました。ここはあまりカニ登りは使わずに済みました。
尾根をほぼ登り切ると、銀杏峯〜部子山の稜線に出ます。ここでようやく登山者を見かけるようになりました。コルのところまでクトーを外してシールで滑り、そこからまたクトーをつけて部子山に登ります。この斜面はなかなか手強いというか、ニセピークに何度も期待を裏切られてしまいます(笑)。登りが結構ハードだったので、もしかして体力落ちたか体調イマイチか?と思いましたが後続の方々をぐんぐん引き離していたので、それは気のせいだったようです。
部子山では適当にセルフタイマーで撮影して、さてまだ時間も早いので電波反射板まで行くことにしました。ここはやはりシールを剥がして滑ってナンボでしょう。ザラメが快適でビューン!と一気にコルまで滑り、またシールを貼って登ります。
電波反射板までは15分くらいとあっという間。まだ時間もあるので、この広大なザラメ斜面が続く能楽の里牧場に滑り込むことにしました。ここは広いのでどこまで行けばいいのか悩みますが、行けば行くほど帰りの登り返しが長くなるだけです。
しばらく滑ると、オーバーデッキのカフェのような作りの建物がありましたので、それと記念撮影をしてここでお昼にします。先週日曜日は重いお湯を持って行ったのにカップ麺を忘れる痛恨のミス(笑)をしてしまいましたが、今日は大丈夫です。
天気もいいのでシールを干して粘着力を回復させましょう。
お昼を済ませたらシールを貼って、また部子山まで戻ります。だだっ広い緩やかな斜面ですから、シール歩行は苦痛ではありません。部子山までは35分くらいで戻れました。
部子山には4人ほど登頂されており、後続も何人かおられます。山頂への登山道が雪切れで階段が出ていたので、その前にシールを剥がしてスキーを担ぎましたから、スキーを履けば早速滑走です。
一部クラックがあるのでそこは避け、ザラメ斜面を快適に滑ってコルに落ちます。ここでまたシールを貼って登り返しです。登ってきた尾根筋まで戻れば、シールはザックの中に深くしまいこんで(笑)、あとは急な痩せ尾根斜面を滑って林道に戻ります。谷筋の方が滑りやすいですがもはや谷筋は最後が雪融けでどうしようもない状態なので、入らないようにします。そのため痩せ尾根の滑走は加賀禅定道か笈ヶ岳を思い起こさせてくれます。ザラメなので丁寧に細かくターンし、ツリーホールに落ちないようにします。
林道は杉の落ち葉との戦いですが、漕ぎながら滑って無事に登山口に戻れました。風は強かったですが、天気もよくザラメも快適でいい山スキーになりました。
ここからは今回の山行とは関係ありませんが、興味のある方は読んでみてください。
先日の八ヶ岳の事故で改めて感じたのですが、登山をしていると事故死ということが現実のものとして予期すべきものだということです。
プロでガイドをするという場合を除き、通常は趣味の範囲で登山しています。プロというのは生活のためにそれで働くこと、英語でも (do something) for a living と表現しますから、それをしなければ生活が成り立たないという意味です。つまりプロであれば命を懸けて登山することの意味があります。
何年か前に、西穂〜奥穂の縦走に同行したことがあります。一般ルートとしては最高難易度のルートではあったのですが、それは難易度が高いのももちろんですが、一つの失敗や不運が発生すれば死に直結するというものでした。これを10時間くらい繰り返しますから、頭がおかしくなりそうでした。幸い運が悪いということはなく、問題は何も起こりませんでしたが、命を懸けてまで行くところではないと知りました。
そのルートに行ったのは、結局私が無知だったからです。ルートを歩き終えて、達成感であるとか、自分の技術や体力が優れているとかは感じなく、「あんなところには二度と行ってはいけない」ということだけが残りました。
登山者であればより難易度の高いルートに行くこと、そのために高い技術や体力を身につけることに興味を覚えます。それはやはり達成感と向上心、そして周囲に認めてもらえるということから来るもので、それは人間をより研鑽させる源泉ですから、決して否定されるものではありません。ただ、それがために登山というスポーツは命を落としてしまう側面も持ち合わせています。
単独登山が危険であることは間違いありませんが、ではパーティーを組めば危険度が下がるかと言えば、それはほとんど変わりないでしょう。事故があった時にもしパーティーの誰かが救助してくれたり、麓に行って連絡してくれたりするメリットはある反面、体力や技術で劣るメンバーが無理をしやすい、他のメンバーのことを意識してカッコよく振舞ったり、無理してでもピークを狙ったり、一人のミスがメンバーを巻き込んだりするデメリットも多数あります。
単独登山の難点は、事故があった時に捜索がとても難しくなることが多いからです。そのため捜索する立場から見れば、単独登山というのはとても厄介な存在なのです。しかし実際には、単独での事故とパーティーでの事故の比率は、それほど違いはなく、人数で言えばパーティー遭難の方が多いくらいです。
危険箇所を通過する時、優秀なリーダーにアンザイレンされていれば精神的に安心するものですが、それは全くの誤解であると言って間違いないと思います。
アンザイレンでの引き込まれ事故については、「生と死の分岐点」(山と渓谷社)の「パートナーの滑落」という章で実際に実験を繰り返し詳細について触れられています。「アンザイレンで同時行動(コンティニュアス)中、誰かが滑落すればほぼ間違いなく全員が引き込まれて滑落する。」「確保用に固定支点を作ると時間がかかると言うが、その時間をかける意味は十分ある。」ということが書かれています。この章を読むと、アンザイレンの危険性は理論的にも実証でも明白で、アンザイレンなどしない方が絶対マシ、危険なところ = 失敗や不運が許されないところでは、きちんと確保しないと死ぬ、あるいはメンバーを死に追いやるということが理解できるでしょう。アンザイレンに対する無知が引き起こしたもの、それが先日の八ヶ岳の事故でもあります。
私の趣味である山スキーは、無雪期の登山と比較するとやはりその危険性は比較するべくもないでしょう。雪崩による埋没、クラックや穴への転落、雪庇崩壊、滑落、転倒、立木や倒木への衝突、悪天候や道具に問題が発生して行動不能、と想像しただけでもかなりたくさんあります。登山人口の中で山スキーヤーの比率はかなり少ないですが、それでも毎年何人もの山スキーヤーが命を失っています。プロではない私が、そういうリスクを背負ってでも難易度の高い山スキーをする意味は何なのかと自問すると、それは前に述べたように達成感や周囲からの認知欲ということでしかないのだと思います。
下界での役割、それは家族や仕事、社会とのつながりを考えると、趣味によって命を失うというのは非常に愚かなことです。ましてや同行したメンバーが死ぬことなど、決してやってはいけないことです。
そう考えると、リスクの高い山行をしているというのは、結局私自身が無知であることをさらけ出しているのに他ならないのではないかと思えてきました。
もちろん極めて高度な訓練を積み重ねてこられた方々が難易度とリスクの高い山行を実現されるのは、私のようなレベルでは見えない別世界なので、また違う判断になるでしょう。
人間というのは、個人の欲望で判断行動すると失敗することが多く、逆に社会的な意味合いを考えて判断すると間違いが少なくなります。では私が山スキーすることの社会的な意味合いは何かと考えますと、「大自然の中でリフレッシュして健康を維持すること。そして100%無事に下山すること。」ではないかと。
引き返すこと、撤退すること、登り返すことに躊躇せず、「多分大丈夫」は禁句です。これをモットーに引き続き山スキーを楽しみたいと思います。
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