大常木谷遡行〜竜喰谷下降


- GPS
- 32:00
- 距離
- 12.7km
- 登り
- 726m
- 下り
- 727m
コースタイム
4月29日(日)
7:45駐車スペース―7:50下降点―8:05一之瀬川本流ー8:20大常木谷出合―9:15五間ノ滝下―10:20千苦ノ滝下―10:55山女魚淵下―12:00山女魚淵上―13:50会所小屋跡―14:55シナノキノタル―15:55幕営地
4月30日(月)
5:40幕営地―7:30曲り滝上―8:05下駄小屋ノ滝上―8:30精錬場ノ滝上―9:10一之瀬川本流(沢装備解除)―9:55駐車スペース
天候 | 4月29日:晴れ 4月30日:晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2018年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
大常木谷:山女魚淵を泳がずに突破するのは厳しいものがあります。確実に泳げる時期を狙っていった方が良さそうです。 竜喰谷:下降の場合特に問題となる場所はありません。 |
その他周辺情報 | 温泉は道の駅たばやまに併設された「丹波山温泉のめこい湯」を利用。 |
写真
感想
大常木谷と竜喰谷という2つの名渓を1泊で遡下降する贅沢な計画。問題は大常木谷にいつくかある淵。泳ぐのは厳しいが、最悪ライフジャケットを使えばなんとかなるだろうと甘い考えで出発したのですが…
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4月29日(日)
大常木谷の下降点となるポイントより少し手前に駐車。この周辺にはいくつか駐車可能なスペースがある。
5分ほど歩き下降点へ。ここから一之瀬川本流へは明瞭な踏み跡が伸びており、特に問題なく下降できる。
一之瀬川に下り立ち、大常木谷に向けて本流を下降する。深い谷底を清廉な水が滔々と流れる一之瀬川本流はまさに「渓谷」の風格がある。
ほどなくして大常木谷出合に達し、ここから前半のゴルジュの遡行が始まる。両岸の岩が遥か上方までそそり立ち、脱出を許さない渓相が続く。
最初の5×8mは右の壁から小さく巻く。釜の周囲の岩が抉れて洞穴のようになっていた。
続いて五間ノ滝が現れるが、その前にある淵が少々厄介。選択肢は泳いで突破するかへつるかの2択。といっても、朝から泳ぐ気にはなれず、かといって幕営装備を背負ったままここをへつるのは厳しいので、結局空身で通過してからザイルでザックを引き上げ何とか突破した。
続く五間の滝は見た目悪そうだったので、同じく空身で右壁を登ってザイルを引き上げたが、実際のところホールドスタンス豊富で、わざわざこんなことをしなくても良かった。
この後、千苦の滝までは、淵や小滝が連続するが特段難しいものはない。渓相は総じて美しく、奥秩父にこのような沢があったのかと驚くほどだ。魚影も総じて濃い。
さて、ゴルジュを進んでいくと、前方に横殴りに流れる飛沫が見えるとともに轟音が聞こえてきた。
、、、というわけでこの沢のボスである千苦ノ滝に到着。高さもさることながら、水勢が凄く、滝に威圧感を与えている。
この滝の巻きは大常木谷の核心で、過去に死亡事故も起きているということで緊張感をもって巻きに入るが、実際のところ、高さはあるものの前半は頑丈な木の根が豊富にあり、また後半のルンゼのトラバースはロープがべた張りだったため、特に問題なく終了した。若干拍子抜け。
仮に途中の残置ロープがなかったとしても、高度感のあるルンゼ部分はザイルを出して懸垂の要領で簡単に通過できそうな感じだった。
だが、問題はこの先だった。山女魚淵に到着したところ、案の定泳がないと突破は厳しそう。そこで、初泳ぎに挑戦しようと3メートルほど進んだが、、、
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ、冷たすぎて死ぬー!!!
いや、もうライフジャケットを装着してどうこうなる問題ではなく、30秒で低体温症になるんじゃないかというほど冷たい。流石に読みが甘すぎた。
※なお、自分はかなり寒がりなので、普通の方なら泳げるのかもしれませんが・・・
とりあえず引き返し泳がなくて良い方法を考えるが、選択肢は限られている。右岸上方に立木があるのでそこまで登り、そこから懸垂すればなんとかなる、かもしれないというくらいだ。
というわけでとりあえず立木まで登ったところ、山女魚淵の左岸に残置スリングが見えたので、水面直上まで懸垂してスリングを掴んで左岸に移り、そのまま落ち口に向かう方針にする。
実際に懸垂してみたところ、淵中間部の水面直上に到達。ここでしばらく宙づり状態になるが、右岸を蹴って勢いをつけて空中ブランコをしたところ、左岸のスリングを掴むことができたので、気合で這い上がり、さらに際どいバランスで落ち口に向かってへつり、なんとか泳がずに山女魚淵を突破した。
文章にすると簡単だがここだけで1時間も要してしまった。。
この後、さらに早川淵が控えているが、こちらは右岸を巻いて簡単に通過出来た。(というか、どれが早川淵かすらよく分からなかった。)
早川淵を過ぎると長く続いたゴルジュもようやく終わりを迎え、癒し系の渓相に変容する。谷底に陽が届くようになり、穏やかな気分で遡行していく。新緑も鮮やかで次々に現れる小滝や美しい釜と相まってこれまた美しい景観を作り出している。
2段5mと7mの滝は、下段は右壁を登り、上段は右岸を高巻き、最後は懸垂で沢床に下りた。
右に御岳沢を分けると、谷はゴーロと化し、やがて右岸に石積みの土台のみを残す会所小屋亜跡を見る。幕営地としては申し分ないが、今日はまだ時間があるので、大常木林道を歩いて竜喰谷下降点まで行くことにする。
ところで、この大常木林道、「林道」というコトバは付いているが、実際は踏み跡程度で、特に会所小屋跡周辺が不明瞭でその目で見なければそれと気づかないレベル。(会所小屋ピッタリの位置から伸びているのですが・・・)あと数年で消失するんじゃないだろうか。また、時々崩壊している箇所があり、慎重に足を進める必要があった。
ただ、シナノキノタルを越すと通常の道のようになり、傾斜もほぼなくなって歩きやすい。竜喰谷の支沢を何本もトラバースし、井戸沢の一本手前の沢に達すると、周辺にちょうど良さそうなスペースを見つけたので、今日はここにツェルトを張ることにする。
少々長めの一日だった。
夕飯は、レッドカレーと筑前煮。両方ともレトルトだが美味しかった。
4月30日(月)
朝は結構冷え、濡れた沢足袋を履くのが辛かった。
竜喰谷は源頭部からナメや小滝が次々に現れイイ感じ。渓床が岩でも泥でもなく、白い砂というのも新鮮だ。
ある程度下ると、茶色い縞模様の岩床が多く出現するようになる。美しくて良いのだが滑りやすいので、慎重に進む。
標高1350m付近の等高線が若干疎になった部分は、幕営適地があった。竜喰谷のみ1泊で遡行するような時は、この辺に泊まるのがいいんじゃないだろうか。
滝がいくつも出てくるが、少し難しい滝は懸垂すればよいので特に問題となるようなところはない。特に曲り滝は迫力があり、滝の右壁を楽しんで懸垂できた。ただ、登るのは少々厄介そうだ。
というわけで全般通じて下降は問題ないが、贅沢を言えばやはり遡行の方が楽しめるという気がした。
下駄小屋ノ滝や精錬場の滝を下ると、もう一之瀬川本流は間近。3時間半くらいで下れてしまった。
最後は一之瀬川本流に懸る竜喰谷出合滝の右端を登り、林道直下で沢装備を解除。短い踏み跡を辿って林道に飛び出した。この後、駐車スペースまでのんびりと歩く。
帰路、道の駅たばやまに併設された「のめこい湯」に浸かって山行の締めくくりとした。
※知らないうちに、丹波山村にはタバスキーというゆるキャラ?が誕生していた。
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やはり大常木谷は盛夏の時期に行くのが正解でした。一方、竜喰谷は今の時期でも問題なく遡行できます。後者はレベルに応じて滝を高巻くか直登するか選べ誰でも楽しめそうなので、また他の人も誘って竜喰谷のみの遡行の計画を立てるのもありかな、と思っています。
いずれにしてもこの2本の沢の渓相は素晴らしく、奥秩父の懐の深さを改めて感じさせる2日間となりました。
コメント
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orochiさん、こんばんは。
奥多摩の美渓2本を贅沢に楽しんで来たようですね。本当に美しい谷ですよね。
でも「泳ぎ」がある沢にしては早い入渓時期で驚きましたが
やっぱり寒かったでしょうね
かなり深い谷で光が十分に届きませんからまだまだ水は冷たそうです
あの山女魚淵を巻いたとのことですが大変だったでしょうね。あの谷での巻きは至難の業です。右岸の立木は覚えてますよ。私も初めて行った時は泳ぎを嫌って巻こうと考えました。結局、懸垂しても突破出来ないとの結論に至り、泳いで左岸のスリングを使って這い上がりヘツって突破しました。
PS この谷は登山エリア的には「奥秩父」とカテゴリされますが、沢としては多摩川の源流域になるので「奥多摩」とカテゴリされるべきだと持論を沢の師匠から聞いて、なるほどって思った覚えがあります。
yoshi629さん、おはようございます。
はい、想像以上に水が冷たく、下界で猛暑日になるような日に行くべきだったと反省しています・・・
山女魚淵も左岸のスリングがあったから何とかなりましたが、それも無ければ最悪敗退だったかもしれません
といいつつ、やはり双方とも素晴らしい谷で、またこの周辺の山域は滝川流域や大洞川流域を含めまだあまり手を付けられていない谷がたくさんあるので、今後はその辺にも足を伸ばしてみようかと思っています。
>PS
調べてみると奥多摩・奥秩父の境界の議論はヤマレコ内でもあるみたいですね。沢主体の自分も、本来流域界で地域名を分けるのが明確かつ自然な区分だと思っています。
ただやはり、そうなると多くの主要な縦走路が2地域の境目になってしまい、通常登山の場合どちらの山域に行ったのか言いづらくなるので、一般には浸透しないかもしれないですね・・・(行政界でも同様のことが言えるので、結局「奥〇〇」はふんわりとした概念にならざるを得ない?)
>またこの周辺の山域は滝川流域や大洞川流域を含めまだあまり手を付けられていない
>谷がたくさんあるので、今後はその辺にも足を伸ばしてみようかと思っています。
柏からだと相当遠いからなかなか足が向かないエリアでしょうね。埼玉在住の私も大洞川や滝川源流域となると自宅から100km近くあります。もはや地元とは言えない距離ですよね(笑)
私もそんなに多くは遡行していないのですが、大洞川なら和名倉沢、滝川は古礼沢・金山沢・豆焼沢などがお勧めです。荒川源流の3つの内のもう一つ、入川も大荒川谷や真ノ沢などがあり、いずれも素晴らしいです
ええ、柏だとだいたいどこに行くにも一度都内に出ないといけないので、遠いんです泣
yoshi629さんお勧めの沢のうち、和名倉沢と豆焼沢だけは行ったことがあります。学生時代でもう10年近く前の話ですが…
次々と現れる滝場に加え、奥秩父北面の原生林が趣があって印象的でした。
アプローチを考えるとそんなに気軽に行けるわけではないですが、上越の沢などに比べるとシーズンが長いので、これからも機会をみて足を運んでみようと思います。
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