貝吹岳



- GPS
- --:--
- 距離
- 4.3km
- 登り
- 418m
- 下り
- 418m
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
2010年3月28日、貝吹岳に行ってきました。
秋田と岩手の県境、当然昔は藩境でもあったわけで、南部藩と佐竹藩の境を示す石碑が残っていたりします。
また、近くを旧仙岩道路が越えていたこともあり、尾根づたいに旧道に出ると仙岩道路開通記念碑なんかも見ることができたりと、登山というジャンルよりは街道史、近代交通史なんかで有名な山かもしれません。
さて、貝吹岳には主に二つの登山ルートがありますが(道の駅雫石付近から旧秋田街道に沿って登るルート・旧仙岩道路国見峠付近からの尾根づたいルート)今回は残雪期専用の第三のルートを登ります。
登山口は仙岩トンネル手前の駐車帯。
夏だとババへらアイスのおばちゃんがいる場所です。
当然の事ながら登山口の標識なんかは一切ありません。
っていうか、夏道は無いのであるわけありません。
残雪を利用して、この道路脇の斜面を登っていきます。
今日は最初からスノーシュー装着で登っていきます。
昨日降った雪が20センチくらい積もり、ふかふかのパウダーを楽しむことができます。実は「この時期だと、もう残雪期で雪も締まっているだろうからアイゼンかな〜。」「でも、念のためシューも持って行くかぁ」などと、ちょっと悩んだのですが
シューを持ってきて正解でした!
こんなフカフカなところ、ツボ足ではキツすぎます!
入山後、いきなりの急坂となります。
まだ暖まっていない体が悲鳴をあげますが、一方で久しぶりの雪の感触にウハウハしていたりします(笑
まぁ、時間はたっぷりとあるのでゆっくり行きましょうということで、じわじわと高度を稼いでいきます。
私達の前に4人ほど先行する登山者がいたのですが、わりとあっさり追いついてしまいました。見ると、その人達はワカン装備のようで、私達と比べてかなり深いトレースを刻んでいます。やはりスノーシュー装着は正解のようでした。
岩手の雪山のガイドブックによると、この斜面を登り詰め尾根に取り付き…というコースがとられていますが今日は適当な場所で右に折れ、ブナ林の中を進んでいくことにします。まぁ、コースなんて有って無いようなものなので適当に(笑 天気もいいですし…ね。
まだ誰の足跡もないバージンスノーの雪面を進んでいきます。
まっさらな雪面にトレースを刻んでいくのって気持ちいいですね。
俄然テンションが上がってきます!
しばらく進むと、ぽっかりとブナ林が開けます。上空を通る高圧線沿いにブナ林が伐採されているのです。煩わしい高圧線ではありますが、自分の位置を確認するのには良い目印になりますね。
そこからさらに進み、頂上へと続く尾根筋に向かいます。
高圧線あたりまで来ると、鞍部を視認することができますのでコレを目指します。
鞍部に登ると、紫波三山などが一望できるポイントとなります。
ここまでブナ林の中という狭い空間だったので、一気に視界が広がったような感じで爽快です。もっと景色を見ようと尾根筋ぎりぎりまで進んだところで、ふと横を見ると雪庇が張り出しているのが目に付きました。
…ということは、今自分がいるのも雪庇の上…
あわてて後ずさりました(汗
あぶないあぶない。
景色に見とれてうっかり忘れていましたが、ここは雪山。
尾根筋では足下に気をつけなければいけません。
こんな基本中の基本を忘れるようでは、一人前の雪山ノボラーにはなれませんね…。
一休みしたあと、尾根沿いに山頂を目指します。
さっきの「うっかり」を教訓に、今度は林の際をトレースしながら進みます(笑
標高が上がるにつれ見渡せる範囲が広くなり、「いかにも雪山」な景色になっていきます。
ところどころに吹きだまりができていて、これが難物です。
柔らかい雪の下に固く凍った雪が隠れているので、踏ん張りも効かず、さりとてスノーシューの爪もたたず…。
何度か足下にプチ表層雪崩を発生させずり落ちたりしました。
三歩すすんで二歩さがるぅ〜
いよいよ目指す貝吹岳の姿が見えてきました。
今までいくつか冬山に登ってきましたが、その大半が林間の雪面歩きでした。
このような開けた場所を歩くのは…高下岳以来じゃないですかね〜。
わくわくします
稜線に近づくと巨大な雪庇が見えてきました。
その下に生えている木と比較すると、より一層巨大さがわかるというものですが、こんな大きな雪庇、生で見るのは初めてです。
そして、あの上あたりを歩くんですね!
やっべ、ドキドキしてきました!(笑
貝吹岳へと続く稜線に近づくと、目に入るのは目の前の真っ白な雪と青空のみ!
なんだか上下感覚が喪失して、ふわふわした感じになります。
その真っ白な雪の丘を最後の一踏ん張りで乗り切ると…
おおおお〜、真っ白に雪化粧した秋田駒が、どどーんと視界に飛び込んできました!
うは〜、綺麗ですねぇ…
麓から見る秋田駒もいいですが、この目線の高さから見ると、また違った印象になります。見上げるというよりも、向き合う感じになる…というか。
石碑の近くで小休止したあと、いよいよ貝吹岳山頂へと向かいます。
先ほどの巨大な雪庇の近くを通過していくのです。
…というわけで、あまり左には寄らないようにしなくては…
いや〜、それにしても良い景色だ〜。
林間歩きと違って、いかにも冬山に登っていますっていう感じがするのがいいですよね〜。高圧線と電波反射板が少々目障りではありますが…。
そういえば、登ってくる途中に先行者がいないはずなのにも関わらず
どこからともなく「ガツーン ガツーン」という金属同士がぶつかるような音を聞いたのですが、どうやらこれは、鉄塔に着いた氷が溶けて落ちた時に鉄塔にぶつかった音のようです。
鉄塔の下にこぶし大の氷が散乱していました。
当たったら大けがです。鉄塔の下を通る時は気をつけましょう。
鉄塔の先にある小ピークを越えて山頂に向かうわけですが、ここが本日最大の難所となりました。この小ピーク、向かって左側はストンと切れ落ちた崖になっており、そこに大きな雪庇が発達しています。雪庇の上を通過するのは論外ですが、さりとて痩せ尾根になっているので安全に通過できるラインがどこなのかもよく分からない…。
結果、右側の斜面をトラバースするしかないのですが、これまた笹と灌木が入り交じった難しい場所です。スノーシューを履いたまま通過できる場所ではないので軽アイゼンに履き替えます。ところが、思ったよりもアイゼンが効いてくれません。
固く締まった雪の上にある程度の厚さで雪が積もっている…という状況なのでアイゼンが効いてくれるような、しっかりとした雪面までアイゼンの爪が届かないようなんですね。
とくに足場になるような木が生えていない斜面を横切る時は緊張しました。
なにせスリップしたら、そのまま斜面を20m〜30m滑り台することになりますから…。やまめさんが先頭に立ってステップを切ってくれたので、安全に通過することができました。
しかし、この「天然滑り台」を横切ると、今度は笹と灌木が行く手を阻みます。
木や笹が無い場所は、それはそれで難所ですが、有ればあったで…というわけです。
何度かルートを変えてアタックしてみましたが、なかなかコレといったラインを見いだせません。
そして事件は起こります。
私、滑落しました(笑
何気なく踏み出した足が、するっと谷側に持って行かれて、そのまま尻餅をついたら1mくらい流された…という事なんですが、幸い、すぐ下に木が立っていたので、そこに足を着いて、それ以上下に行くのを食い止めることが出来ました。
その時は、正直あまり怖いと思わなかったのですが、家に帰ってから冷静に考えると
あそこに木が無かったらどうなっていたのか、ちょっと予想がつかないということで、じわじわっと怖くなってきました(笑
斜面は下に行くほど緩くなっていたので、自然に停止したんじゃないか。
でも、勢いがついていて、木に激突したかも…。
そもそも、途中で制御不能になって頭が下になったら無事でいられたのか?
考えても答えは出ませんが、まず大事なのは滑落しないこと…
というより、滑らないように歩くことですね〜。一度滑り始めたら、よほど訓練した人じゃないと即座に体勢を立て直すのは難しいと感じました。
そんなことがありまして、これ以上進むのはどうだろうか?
今日の所はここで撤退しようか? と協議を始めたのですが
ふと上の方を見ると、先ほど追い越してきたパーティが追いついてきていました。
あの人たちは、どうやってココを突破するつもりなんだろうと思っていると我々が藪が濃くて突破を断念した場所を強引に突破して行くではありませんか!
ウソだろ〜と思って見ていましたが、案外スムーズに通過して、さっさと先に行ってしまいました。
いったいどうやって突破したのかと思い、そのラインまで戻ってみると…
どうやら雪面に足場を求めていないようで、生えている木の根本を踏みながら進み
我々が邪魔だと思っていた藪さえも、手を掛け、足をかける場として利用していったようです。しかもワカンを装着したままで…。
あの方達は、よほど藪に慣れていると見ました。
三人が通過したあとは鮮明なラインになっており、我々もそこをたどって先に進むことができました。小ピークの向こう側に着いてほっと一息…。いや〜、さすがにこの区間は緊張の連続だったので写真を撮る余裕がありませんでした。
最大の難所を通過したら、あとはなだらかな雪の尾根を山頂まで登るだけです。
どうですか〜、この景色…。
今までは、こんな雪山の景色なんて写真で見るだけでしたからね〜。
まさか、自分の足でこんなところまで来る日が来ようとは…。
いや、バリバリ冬山登山やっている方からすれば、失笑モノの感動かもしれませんけどね?
ヘロヘロ隊としては快挙なんですよぉ?(笑
そして、登山開始からおよそ二時間。
貝吹岳山頂に到着しました〜。
わずかに1000mに届かない山ですが、眺望は360度。
天気の良さもあって、まさに絶景! 大パノラマです。
北には秋田駒がどどーんとそびえ、当然、岩手山も姿を見せており、田沢湖も見えていて、県境の山であることを再認識。
南には羽後朝日岳や和賀岳が奥深い山塊を形成しているのがよくわかります。
遠くに鳥海山も見えていました。
ふぅぅぅ! お腹いっぱいになるほど眺望を満喫しました!
貝吹岳、想像していたよりもとってもいい山でした♪
本日は快晴無風、まったく寒くありません。
こんな日ならば、いつまででも眺めを楽しんでいることができそうですが午後からしだいに天気が崩れるという予報もあることですし、適当なところで切り上げます。
下山はもと来た道を戻ります。
難所の斜面も今度は難なく越えて…
藩堺の石碑の近くでランチを広げ…
ランチ後はザックも軽く、心も軽く、お腹だけが重く…(笑
軽快に雪の斜面を駆け下りて、1時間かからないで登山口へと帰還しました。
スノーシューで駆け下るのに丁度良いくらいの傾斜なので、
非常に楽にスピーディに下りてきました。ここの下りも楽しい♪
…というわけで、快晴の貝吹岳登山、最高でした♪
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