蛇谷ヶ峰☆古道を辿り植谷左岸~右岸尾根周回
- GPS
- 04:23
- 距離
- 9.6km
- 登り
- 861m
- 下り
- 858m
コースタイム
- 山行
- 4:11
- 休憩
- 0:12
- 合計
- 4:23
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
久しぶりの週半ばの休日、日がな雨の予報ではあったが、前日になると雨が上がる時間の予報が早くなり、昼過ぎには雨が止む予報となる。雨の音を聞きながらゆっくり起き出してみると8時半には既に雨が上がっているではないか。一時的な雨上がりかと思ったが、雨雲レーダーを確認すると西の方面には雨雲はみられず、どうやら雨雲は既に通り過ぎたようである。
午前中からの山行は諦めていたのだったが、早速にも出掛けたいところだ。しかし折悪く、家内が洗濯機を回し始めたところだった。洗濯物を干し終わるのを待って家を出ることになる。
短時間で登山口にたどり着ける山ということで、白倉岳か今津の武奈ヶ嶽かのどちらかと考えて、R367を北に向かうことにする。途中トンネルを越えたところで琵琶湖の方角へ目を向けると三上山の向こうで鈴鹿の山並みまで見渡すことが出来る。
花折峠を越え、坂下のあたりでは電光掲示板には気温が18℃と表示されている。京都市内は20℃にまで上がるとの予想であったが、この季節にここで信じられないような暖かさだ。この気温だと山の雪は一気に融けてしまうことだろう。行者山トンネルの上を見上げると江賀谷山のピークよりも雲は高いところにある・・・ということは雲の高さは1000m前後だろう。
白倉岳の東斜面には光があたっている。北東の方角の空が明るいことを理由に急遽、蛇谷ヶ峰へと山行先を変更する。標高は901.7m、雲が下ることはないだろうから、山頂は雲の下だろう。
この蛇谷ヶ峰に登るルートとしては躊躇なく植谷峠を経て山頂へ辿り着く南西尾根を選択する。膝蓋骨骨折を負った左脚のリハビリ・ウォークにとflatwellさんよりお薦め頂いたコースの一つであるが、蛇谷ヶ峰の山頂へ至る長くなだらかな尾根は以前より気になっていた。大野からの一般登山道は林道歩きが長いので、こちらを下山ルートにする周回コースを考える。
まずは大野登山口の手前に車を駐車する。植谷から流れる川にかかる橋を左岸に渡ると、高乗寺の裏手から尾根に取り付く。杉の倒木により道は荒れてはいるが、すぐにも掘割式の明瞭な古道が現れる。植谷峠道かとも思ったが、後にネットで調べると本来の植谷峠道は植谷に沿ってつけられていた・・・との記載もあり、この古道を植谷峠道とするのは間違いかもしれない。しかし、蛇谷ヶ峰の南にある畑集落へ抜ける古道の一つであったのは間違いないだろう。
杉の植林地はすぐにも終わり、樅の樹林にかわる。最初の標高点437m地点に達すると途端に広くなだらかな尾根となる。いつしか樅の姿は少なくなり、赤松の林となる。マツクイムシの被害によるものだろう、立ち枯れの樹が少なくない。下藪も少なく、どこでも歩くことが出来るような平坦な尾根であるが、よくよくみると薄い掘割の古道が続いている。
雲の合間からこぼれ落ちる日差しが尾根を照らす。見上げると雲の合間から青空が顔を覗かせるが、上空では風が早いのだろう、青空の形も急速に変わってゆく。上空からはほぼ間断なく風鳴りの音が響いているが、尾根上はさほど風はなく、シャツ一枚で十分な暖かさだ。風の音の伴奏に乗って、鳥の囀りによる華やかな重唱が聞こえてくる。鳥に関しては無知なので、鳴き声での鳥の同定が出来ないのだが、数種類の鳥の声が聞かれるように思われた。
いつの間にか雲の高さが僅かに上がったのだろう。右手を見ると重苦しい雲の下で白倉三山のピークが明瞭に見えている。やがて、なだらかであった尾根が斜度を増すと、尾根は赤松にとってかわり山毛欅が登場すると、細川尾根に代表される比良の西側尾根上部の雰囲気となる。やはり尾根に沿って掘割の古道は延々と続いている。
いよいよ南西尾根へと上がると東側の展望が大きく広がる。蛇谷ヶ峰から須川峠、横谷峠を経る南尾根の彼方にリトル比良を望む。南側を振り返ると、残雪が斜面に斑に残る釣瓶岳のピークがギリギリ雲の下に見える。武奈ヶ岳は上の方は当然ながら、雲の中だ。尾根を少し北に辿ると792m峰である。広い山頂広場は気持ちのいい場所の筈なのだが、立派な山毛欅の樹が根こそぎ倒れ、山頂広場に横たわる姿を目にするのは何とも痛々しい。
ピークの北側に出ると途端に蛇谷ヶ峰の山頂とこれから辿る尾根を眺望することが出来る。この眺望を楽しみながらランチにするとしよう。さすがに尾根では急に風が強く感じられる。大きな杉の樹を風除けにして湯を沸かし、ハンバーグとレトルトのカレーを温める。
軽いランチを済ませるといよいよ蛇谷ヶ峰を目指して、この南西尾根を辿る。尾根は小さなアップダウンを繰り返しながら緩やかに登ってゆく。尾根には薄い踏み跡はあるものの、植谷の左岸尾根に見られた古道は最早、明らかではない。
尾根上の小さなピークではところどころに天然の杉の樹がみられる。樹高はそれほどはないものの、幹の立派な大樹が少なくない。杉の姿が目立たなくなると、山毛欅の多い明るい樹林が続くようになる。尾根からは随所に開ける好展望もこの縦走路の大きな魅力である。
反射板のある西峰を目指して最後の登りに差し掛かるとピーク直下では樹も少なくなり、背後の展望が大きく開けると、これまで辿ってきた縦走路と植谷左岸尾根を振り返ることが出来る。
反射板から明瞭な一般登山道を歩くことになる。東へと尾根を辿るとすぐにも小栗栖山西峰の立派な山名標がある。人口に膾炙している蛇谷ヶ峰とは高島における名称であるのに対して、小栗栖山とは朽木におけるこの山の呼称である。
西峰からは蛇谷ヶ峰本峰との間の小さな鞍部へと下る登山路は雪解けの水が絶え間なく流れ続けている。鞍部から蛇谷ヶ峰本峰への登り返しの登山道には雪が覆う箇所が多いが、雪の上を歩くと多数の踏み抜きが生じる。踏み抜きで雪が割れると、登山道脇で雪の下に埋もれていた樹の幹がバネ仕掛けのように跳ね上がる。それに呼応するかのように登山路から離れた場所でも雪の下から幹を跳ね上がらせる樹が現れる。まさに春の覚醒めのようだ。
まもなくすっかり雪が消失した蛇谷ヶ峰の山頂に辿り着く。山頂からは展望が一気に広がることを期待していたのだが、視界に飛び込んできたのはカーテンのように眺望を遮る白い雲ばかりであった。
下山は蛇谷ヶ峰から西にほぼ真っすぐに延びる尾根を下ることになるが、植谷の右岸尾根に相当する。山と高原地図にも書かれているように、山毛欅、小楢の多い、気持ちのよい自然林が続く。尾根の下部、猪の馬場のあたりに来ると赤松の美林が広がる尾根上の広場となる。マツクイムシの猛威に曝されることなく、なんとかこの美林が保たれて欲しいものだと願うばかりだ。
猪の馬場を過ぎると忽然と林道終点に飛び出した。林道を下ると完全に錆びついた古い廃車が現われる。車の中にはいすゞ自動車と書いてあるので旧いISUZUの車なのだろう。果たしていつからここにあるのだろう、雪で立ち往生したのだろうか、などと空想を巡らすことになる。おそらく永遠にここに留まり続けるのだろう。その錆びついた姿は廃棄物というより倒木で荒廃しつつある林道の装飾物のようにも思えるのだった。
九十九折の林道をショートカットして、車を停めた駐車地に戻る。R367を北に向かい朽木にflatwellさんにご挨拶に伺うと、上原酒造の「杣の天狗」と「あどあずみ」を入手して京都への帰路についたのだった。
コメント
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あの車は不法投棄で、所有者がわからないよう防火していきました。10年ほど前なのに、あれだけ錆びているのはそのせいです。
コアな情報を教えて下さり、有難うございます。なるほど、そうだったのですね。廃車のための手続きや手数料を倦んだのでしょうか。何とも嘆かわしい話ですね。古い車ですし、所有者の足となって相当な時間と距離を走ったことでしょう。車がますます哀れに思えてなりません。
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