【2009年】岩手山〜八幡平バックパッキング
- GPS
- 124:29
- 距離
- 55.4km
- 登り
- 4,356m
- 下り
- 3,533m
過去天気図(気象庁) | 2009年09月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
船
現地までは新幹線、在来線、バスを利用。 |
写真
感想
Day1:乳頭温泉〜田代平〜乳頭山〜滝ノ上温泉 (5時間10分)
裏岩手山縦走は名湯で名高い乳頭温泉から開始した。乳頭温泉までは田沢湖からバスの便があり、約50分で到着する。今日は乳頭山(1477.5m)を越えて滝ノ上温泉までの計画。乳頭温泉には大釜温泉や妙乃湯温泉、蟹場温泉、孫六温泉などが軒を連ね、どれも雰囲気のある良いたたずまいである。さっそくひとっ風呂浴びたいところだが、いきなり温泉では歩く気力も萎えてしまうだろう。
登山道入口付近はブナの森だ。立派な巨木も点在している。ブナの葉を通してふりそそぐ秋の陽が心地よい。道はときおり滑りやすいぬかるみの部分があるが、良く整備されていて歩きやすい。しばらく登っていくとオオシラビソの木が姿を見せ始めた。
オオシラビソはマツ科の針葉樹で、東北や日本海側の雪の多い地域に多く分布しているとのことだが、北海道には存在しない木である。このオオシラビソの樹林帯を歩くとほんのり甘い香りがするのだ。なんだか気持ちが良くなる香りで、アロマ効果とでもいったらいいのか、「これから歩くぞ!」と、勇んだ気持ちをリラックスさせてくれた。
歩き始めて1時間30分で田代平という湿原帯に出た。この辺りから紅葉が色づき始めている様で、オオシラビソの濃いグリーンとのコントラストが中々素晴しい。手前には乳頭山の姿も現れた。
登山口から2時間で山頂に到着。山頂からの見晴らしは抜群で、お隣の秋田駒ケ岳や北側に端正な稜線を見せている森吉山、そして明日登る予定の岩手山も山頂部分は雲に隠れていたがその大きさは確認できた。
下山を開始し硫黄の臭いが強くなってきたな、と思ったら今日の目的地滝ノ上温泉である。乳頭温泉から入山して一山超えたらまた別の温泉があるという実に愉快な話しだ。
温泉は滝峡荘へ。建物からしてレトロであるが、浴場には湯船がひとつと一畳程の洗い場のみ。当然、シャワーなどなし。ホースからコンコンと湧き出る湯でカラダを洗うというシンプルさが潔い。ラジウム泉で泉質はバッチリだし、隠れた名湯といっていいだろう。
滝ノ上キャンプ場は滝峡荘とは別の滝観荘(名前が似てるのよ)が受付となっている。協力金200円を払いテントを張った。キャンプを整えるとまずはビールである。やはり温泉に浸かってからのビールは格別なのである。
Day2:滝ノ上キャンプ場〜三ツ石山荘〜鬼ヶ城〜岩手山八合目 (9時間10分)
キャンプの朝は以外にも暖かかった。標高700mのキャンプ場は冷え込むのものと覚悟していたのでちょっと拍子抜け。他のキャンパー達は早々にテントの撤収を終え、トレイルへと向かった様で僕のテントだけがポツリと残されている。
さて、今日は岩手山(2038.2m)へと足を伸ばす予定。岩手山を単体で登るなら頂上を目指して胸を突く急な坂を登らなければならないだろうが、ここ滝ノ上を起点とする場合は谷から一旦三ツ石山方面へ尾根に取り付きそれから長い稜線を歩くことになる。登りに関しては比較的楽だが、歩く距離は圧倒的に長い。
出発して2時間30分で三ツ石山荘に到着。三ツ石山荘は湿原の中に位置し、テラスから眺める景色も抜群。設備も新しくきれいで、しかも、無料。
八幡平周辺にはこのような素敵な避難小屋が適所に設置されていてうまく利用すればテントなしでも充分にロングトレイルを歩くことが可能だ。ただし、宿泊は早いもの順で収納人数も30人程度だから保険としてのテントの持ち歩きをオススメする。
今日の宿泊は岩手山八合目付近にある不動平避難小屋か八合目避難小屋に宿泊の予定だが、5連休真っ只中、満員の場合は小屋付近に適当な場所を見つけてテントに泊まるつもりだ。
狭い岩場の鬼ヶ城を越えると程なく八合目の不動平避難小屋。ヨーロッパアルプスの山小屋を思わせる(行ったことないけど)佇まいであるが、扉を開くと中高年夫婦を中心に既に満員でソロの僕が入り込む余地はなかった。
更に歩くこと10分で八合目避難小屋に到着。こちらは収容人数が120人なので問題なし。無料の山小屋があるのに一泊1700円はちょっと高いなぁ、と思ったが、管理人のいる山小屋は初体験なのでソレもいいかな。
午後からはガスも晴れ快晴だ。明日は御来光が拝めるかも!と期待に胸を膨らませてスリーピングバッグに潜り込んだ。小屋は全体が三層に区切られていて最下部の居住スペースの高さは80cmくらいしかない。一人用テントより低く、体を起こす度に天井のタル木に頭をぶつけてしまった。・・・究極の一人用テントだがハバHPの方が快適かもな。
Day3:八合目避難小屋〜岩手山山頂(御来光)〜八合目避難小屋〜姥倉山〜松川温泉
(7時間30分)
早朝に小屋を出てヘッデンの明かりを頼りに山頂を目指したが、山頂でのご来光は叶わず、途中で日の出を迎えてしまった。しかし太平洋から登る朝日にウットリだ。刻々と遷り変わる山と空のスペクタクルを終焉まで見届けた後、僕は山小屋へ一旦戻り、水を補給してから下山を開始した。カラミで山頂への上り下りしていた身にはバックパックの重さが堪える。しかしこれもわずかな時間だ。15分も歩けば再びエンジンがかかるだろう。
今日は昨日登ったコースと並行して延びる「お花畑コース」を下り姥倉岳分岐から
松川温泉に抜ける予定だ。実は2日前にキャンプした滝ノ上と松川温泉は登山道で繋がっており、歩いて4時間程度の距離関係にある。だから丸2日がかりの岩手山登山は「大いなる迂回路」だったのだ。
岩手山八合目から滑りやすい下りに気を付けながらを歩くこと約5時間で松川温泉に到着。登山道はキャンプ場に直結していたが、荷を降ろすのも面倒なのでそのまま温泉に直行した。しかしキャンプ場から松川温泉までは結構距離があり、やはり荷を解いてから温泉へ行くべきだった。だって・・・温泉に入ってサッパリした後に、キャンプ場に着くまでまた汗ダクになってしまうではないか!!ブナの森の中にある静かな松川キャンプ場。温泉とキャンプ場利用の手続きは松川温泉「峡雲荘」でね。
Day4:松川温泉〜大深山荘 (3時間)
八幡平では連日天気に恵まれて旅は順調そのもの。ガスがかかる事はあったが、少なくとも僕の頭上には一滴の雨も落ちていない。旅も4日目ともなるとそろそろ雨が降ってきてもいい頃だな、と思っていたら案の定、空から雨粒が。朝の撤収作業の途中、ちょうどテントをたたもうとしていた時だ。最初は小降りだったのでテントに大きなダメージはなかったがバックパックにすべての荷物を収納し終わった時には本降りになっていた。
(装備とは使う為にあるのだよ)とうそぶきながらパックのフロントポケットの奥からパックカバーを取り出しレインスーツを着込みゲイターを装着する。とり合えず完全武装を施して雨が小止みになるのを待つことに。で、やはり秋の空。しばらくすると青空が!
青空に後押しされる格好で歩き始めたものの、天気は思わしくなく、予報も午後から雨、とのこと。予定では今日一気に八幡平まで歩き通すつもりだったのだが・・・。
結局、予定は未定なのである。歩き始めてわずか3時間で大深山荘に宿泊決定!(あっけなく・・)道はドロドロで滑りやすいし、レインスーツのフードをかぶって歩くのもかったるい。なにより、ガスで覆われていてはせっかくの景色が全く見えないではないか!この大深山荘もご多分に漏れず新しく内部も新築マンションの様に美しい。
ロフトの下の6畳ほどのフロアを独占して濡れたウェアを乾かし、寛いでいると賑やかなお客さんが(すっかり自分の家気分)やってきた。沢登りに来たというおじさん5人組だ。沢で釣った岩魚を天ぷらにして天丼を作りコッヘルのまま運び上げたという。いきなり僕に「ブランデー飲む?」といってカップに注いでくれ「つまみにどうぞ」といって岩魚の天ぷらをくれた。更にペットボトルに入ったウィスキーと日本酒、北海道で云うところのボリボリ(キノコ)を置いていってくれた。アルコールの持ち合わせがなかったし、単調なドライフード食に渇を入れる意味でも、これは嬉しいプレゼントだ。
福島から来たという彼らは僕より少し下くらいの年齢から同じくらいの人、ちょっと上の人、すごく上の人、と年代がバラバラ。若い人はガッツリ荷物を背負い、年齢が上の人は経験と知恵を伝授する。自然と車座ができあがり笑いが絶えない。こーゆーグループっていいな・・。
「さよーなら、北海道から来た人!」小屋で昼食を食べ終えた福島からのご一行はこの先「藤七温泉」へと霧の中へと足早に歩いていった。
さて、小屋の中はまた一人。
ありがたくウィスキーの水割りをチビリチビリと頂いた。
Day5:大深山荘〜諸桧岳〜モッコ岳〜藤七温泉(4時間)
昨晩は二組のグループが山小屋に宿泊した。いずれも沢登りの途中だという。流行ってるのかな、沢登り。一組は土間を挟んで向かいのフロア、もう一組は二階のフロアに陣取り、それぞれあまり交流のないまま夜は更けた。
早朝6時15分リスタート。山小屋の場合撤収時間がキャンプと比較し大幅に縮小されるので早立ちが楽だ。今日こそ八幡平へ!
天気は曇っているが、視界は思ったほど悪くない。山荘からは瞼岨森(1481m)諸桧岳(1516m)モッコ岳(1577.8m)のなだらかな山頂を結ぶ易しい尾根歩きだ。振り返ると、薄っすらと岩手山のシルエットが見える。
歩きも5日目となると体が完全に歩きモードになってくる。自然と足が前に出る、と同時に人間の持っている野性的な部分がいくらか覚醒してくるように思うのである。
モッコ岳という不思議な名前の山。縦走コースからは少し離れた場所に山頂があるので、分岐点に荷物をおいて、山頂へ登った。荷を降ろすと背中に羽根が生えた様に体が軽くなる。上り坂だというのに足取りが弾む様に軽い。この感覚は縦走登山者やバックパッカーにはお分かりいただけると思う。
モッコ岳を下ると八幡平はもう目と鼻の先。小1時間登れば山頂である。山頂付近の散策をあわせても3時間程度か。でも、ここで問題が。いや、問題って云うほどのことではないのだが、モッコ岳から八幡平の鞍部は「八幡平樹海ライン」が道を寸断しているためこの黒い車道を見た途端、急に歩く気が失せてしまったのだ。これまでは自然歩道、あるいは舗装路でも自然に近い(つまりあまり車通りのない)道しか歩いてこなかったのだが、いきなりのハイウェイはあまりに違和感があり、思わず拒否反応を示してしまったのだ。
ネガティブな気持ちに追い討ちをかける様に空から雨が降ってきた。こうなるとメンタリティーは一気に萎えてしまうのだ。実にタイミングがいいことにここから歩いて10分程度のところに評判の良い温泉宿がある。「藤七温泉」である。
本降りと化した雨の中、駆け込んだ温泉のフロントで空部屋を確認すると、今すぐ宿泊可能とのこと。まだ午前中なのにね。お言葉に甘えてそのまま今日の宿としてしまった。ハハハ・・・我ながら、この軟弱さには参ってしまった。いや、柔軟な対応とでも云おうか。ともかく、体がふやけるまで温泉に浸かりまくったのだった。
Day6:藤七温泉〜八幡平山頂〜山頂周辺散策〜八幡平レストハウス (2時間30分)
標高1400mの藤七温泉は雲の上。雲海を感じながら朝風呂に浸かるなんて、サイコーの贅沢。温泉で英気を養い、旅のラストスパート!と、いうか3日前の松川温泉からほとんど進んでいない。通常なら八幡平まで日帰りコースなのだ。天気も上々だし、今日はイイワケできないよね。
八幡平頂上まではきちんとした石畳の道で歩きやすいことこの上なし。スニーカーでもパンプスでもOKだ。縦走装備が不相応な感じさえする、整備された登山道だ。
湿原の中の木道。この上をポコポコ靴音を鳴らしながら八幡平山頂発田沢湖行きの
バスに乗るため、駐車場へと向かった。
オオシラビソの香りと温泉の豊かさが一際目立った今回の旅であった。
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