記録ID: 24118
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沢登り
谷川・武尊
谷川岳・ヒツゴー沢遡行
1980年07月26日(土) 〜
1980年07月27日(日)
tanigawa
その他1人
- GPS
- 32:00
- 距離
- 16.8km
- 登り
- 1,679m
- 下り
- 1,614m
天候 | 霧雨 |
---|---|
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
東京での仕事と生活が始まって3カ月。このあいだに、秩父・和名倉沢(6月)、奥多摩・小川谷(7月)、奥利根・楢股川(7月)と、3度、渓流釣りをかねて沢に入った。4度めが、この谷川岳登山。谷川岳は、高校時代に読んだ山の本で「魔の山」としての、その歴史と登高記録を知り、なるべく早く登ってみたいと考えていた山だった。この山には沢から入るのが一番、ふさわしいと考えたが、私には岩登りをまじえた登高の技量が欠けている。幸い南面に「ヒツゴー沢」という、ほどほどにやさしい沢があることを知って、このルートから谷川岳の本峰をねらうことにした。 同行は、恵廸山の会OBのS君。7月26日の午後3時に赤羽駅で待ち合わせ、鈍行列車で水上駅へと向かった。水上からはタクシーで谷川温泉に入り、そこからヘッドライトをつけて登山道を40分ほど登って、道の傍らに適当な空きスペースを見つけてテントを張った。 27日は6時48分発。テントをたたんで40分ほど登って、二股につく。オジカ沢沿いの登山道をさらにすすんで、10分で目的のヒツゴー沢との出合いに着いた。ヒツゴー沢は、出合いのすぐ上に「逆くの字状の滝」(7メートル、15メートル)を懸け、落ち口を見上げると、相当な高度感がある。遡行の最初から、これはなかなか手ごわそう。先行するパーティーがザイルの確保付きで取り付いている。「大丈夫かな」「なんとかやれるよな」などと声をかわし、私たちもあとに続く。 「逆くの字状の滝」は、滝の左岸の壁を登って、途中から、滝壺側へ張り出した丸みのある岩をトラバースして右岸に出ないと、上へ進めない。ボルトが打ってあるのはちょっと大げさじゃないの、などと思ってはみたが、やってみる段になると、岩の張り出しを「えいっ」と乗り越すところは、これは怖い。S君はうまく抜けたが、次は僕。下を見たら、思わず体が岩にひっつくが、体をぐいっと外にふらないと、岩の張り出しは越えられない。右手のホールドで支えて、「それっ」と半身を振り出し、左手のホールドをタイミングよくつかむ。助かった。 そこからしばらくは、滑滝、小滝が連続する気楽で美しい渓相に変わった。重武装の先行パーティーを追越し、少しいやな泥壁の滝などを巻いてすすむと、3段20メートルの滝に出た。両岸は草付きの壁で危なそうなため、巻いて越すしかないが、ルートがはっきりしない。S君は、左手から草付きと岩のミックスに取りつく。しかし、2段目の滝の乗っ越しにかかったあたりで、草付きの様相が一段と悪くなり、ホールドを失いかける。それでもワラジのフリクションと草の根がかりをあてに、なんとか上部へ。僕も続く。草付きはますます悪くなる。「ルートがこっちじゃなかったね」と対岸を指差すS君。いまごろ、いわれても困るが、僕の力量でもなんとかクリアできた。 2時間ほどの遡行で、目の前におもしろい滝が現れた。「10メートル・チムニー状の滝」で、黒々と磨かれた岩の内部に、傾斜角65度ほどのまっすぐなトンネルがあり、沢水がその中を勢いよく流れ落ちている。水流を包むトンネルの外壁は、一段が30〜40センチほどの岩の階段になっている。ワラジで岩の感触を楽しみながら、この岩場を乗り越すと、上には雪渓があり、その50メートルばかり先にハングの滝(5メートル)があった。この滝は、落ち口の脇の岩を直登できるが、我が身をわらじの摩擦力にまかせて乗り越すのは、スリルがあった。 浅いV字型の沢幅がぐっと狭くなり、ついには水がきれて源頭となった。11時45分、源頭を離れ尾根に取りつき、12時25分、稜線に到達する。 12時45分、谷川岳山頂着。風が強く、ガスも出始め、視界はほとんどなかった。一の倉岳へ縦走路をたどる。稜線の右下はバッサリ切れ落ち、一の倉沢が黒い大きな口をあけている。僕たちは、越後側からの風で断崖側へ吹き飛ばされないように、風が強まった時には手をつないで歩いた。そして、ガスが吹きはらわれるたびに、その断片を見せる一の倉の岸壁を、怖いものでも見るように何度も立ち止まっては、見おろした。灰色の岩壁に汚れた残雪がひっかかっている様は、凄惨な光景でもあった。 茂倉岳14時17分通過。ガスが晴れ、小雨が落ちてはくるけれども、展望がひらけ始める。ここからさきの谷川連峰は、稜線も丸みをおび、蓬峠が目の前にひろがる。ここで稜線を離れ、越後側のブナの尾根を下って、土樽の駅へと下った。駅には18時着。赤羽駅に着いたのは22時17分だった。 http://trace.kinokoyama.net/josinetu/tanigawa-hitugo-sawa.1980.7.htm |
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