記録ID: 2550917
全員に公開
沢登り
白山
【白山】海上谷〜△1785.2m(点名「海上谷」)〜サブ谷
2020年09月04日(金) 〜
2020年09月05日(土)
hillwanderer
- GPS
- 32:00
- 距離
- 19.5km
- 登り
- 1,160m
- 下り
- 1,166m
アクセスを調べる
標高グラフを拡大コースタイム
1日目
- 山行
- 6:30
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 6:30
10:00
60分
自転車デポ地
11:00
11:00
120分
海上谷出合
13:00
13:00
210分
取水堰堤
16:30
幕営地（1340m付近二俣）
2日目
- 山行
- 13:20
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 13:40
6:10
190分
幕営地（1340m付近二俣）
9:20
9:40
70分
P1785.2m(点名「海上谷」)
10:50
10:50
170分
P1852m
13:40
13:40
20分
30m大滝
14:00
14:00
70分
サブ谷本流との合流点
15:10
15:10
70分
大スラブ滝
16:20
16:20
210分
尾上郷川本流との合流点
19:50
自転車デポ地
尾上郷川沿いの林道入り口から自転車デポ地まで片道約2時間弱
| 天候 | 9/4 曇りのち雨（夜は晴れ） 9/5 晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2020年09月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
・海上谷へは，大シウド谷出合から尾上郷川に降り，尾上郷川を遡ってアプローチ。地形図では，大シウド谷出合に橋が架かっているように書かれているが，この橋は存在せず，渡渉する必要がある。この箇所は水流が結構強いので，特に増水時は注意。（また，航空写真では，大シウド谷とアマゴ谷・大日谷の出合付近から海上谷出合付近に伸びている道形が写っているが，この林道は廃道で，完全に藪に埋没している。） |
| コース状況／ 危険箇所等 |
【海上谷】 ・ 両岸が立っている区間が多く，（天気が悪かったせいもあったかもしれないが）何となく暗く陰鬱な感じの谷。河原歩きの区間が多く，遡行難度はそれほど高くないが，出てくる滝は形が整ってきれいなものが多い。 ・ 核心は標高点1148mを過ぎたあたりのゴルジュ帯で出てくる，勢いよく水が飛び出すような形をした5m滝。直登は無理で，周囲は両岸とも圧倒的な岩壁に囲まれており高巻きは容易でなさそう。滝身のすぐ左手をきわどくへつって抜けることができるが，スリップすると滝壺に叩き落されるので緊張する。 ・ 今回は1280m付近の二俣から1785.2峰（点名「海上谷」）に突き上げる枝谷に入ったが，この枝谷には10mほどの滝が3つほどあり，いずれもブッシュの繁茂した急斜面をトラバースするかなり苦しい高巻きとなる。 ・ 海上谷は中間部で取水堰堤が出てくるが，ハシゴがあり容易に通過できる。人の気配の全くない陰鬱なゴルジュの中に突然高々と張られた落石ネットと取水堰堤が現れるので，一種異様な感じがする。また，そこから少し遡ったところで，林道跡が谷を横切るが，この林道は完全に廃道化しており，エスケープやアプローチでの利用は困難と思われる（←【一部訂正】この林道跡は海上谷に近づくほど崩壊が激しくなるものの、ネット上にオフロードバイク＋歩きで海上谷まで到達された記録も載っており、全く使えないわけではないようです。chuki様、情報いただきありがとうございました）。 ・ また，この谷はぬめりがひどく，ラバーソールの沢靴はおすすめできない。フェルトが吉。 【1785.2m峰（点名「海上谷」）〜1852m峰】 ・ 「海上谷」の三角点は，完全な藪の中にあり，しかも土の中に埋もれていた。探し当てるのに20分ほどかかってしまった。掘り起こそうとしたが，ネマガリタケの根ががっちり張っており，上部の「三等」の文字を確認するのが精いっぱい。この三角点が陽の光に当たったのは，何年，いや年十年ぶりなのだろうか？ 三角点はピークのほぼ中央（南から上がってきた場合は，ピークに登り切ってから北に10mほど歩いたところ）にあります（実際に行こうとする人はいないでしょうが…）。 ・ 無雪期の別山東尾根の状況を知りたいと思い，寄り道として訪れた1852m峰。1785.2m峰（点名「海上谷」）から1852m峰までは，背丈くらいの猛烈な笹に灌木が混じった完全な藪。ただし，ところどころ獣道が走っているため，それを辿ると少しマシ。1852m峰から見た別山東尾根も，胸位の笹藪で一面覆われており，無雪期の縦走はかなり大変そうでした（遠くから見ると快適な笹原に見えてしまうのが恐ろしいところ…）。 【サブ谷】 ・サブ谷は，海上谷とは対照的に明るく開けた感じの快活な谷で，河原歩きが長いのが難だが，出てくる滝は非常に美しい。特に中間部で出てくる40mほどの大スラブ滝（と勝手に命名）と，その奥にある8m滝は本当に美しく，最近見た滝の中では最も美しいと言っていいかもしれない（アプローチ難さえなければ，ちょっとした名所になりそう）。遡下降自体も簡単なので，渓谷美を楽しみながらゆったり逍遥できる。 ・ただし，下部は大規模な土石流があったようで少し荒れている区間がある。水に少し濁りが入っているのはそのためです。 ・今回の山行では，サブ谷へは1852m峰から南西に流下する枝谷から下降したが，この枝谷は滝が多く，今回の山行で見た最大の滝である30mほどの大滝も現れるなど，結構大変（懸垂下降2回，捨て縄×2消費。あとは巻き下りでクリアできた）。 ・ぬめりは海上谷ほどひどくないが，上部はけっこうぬめるので，フェルトの沢靴のほうがいいと思う。 【尾上郷川本流】 ・大シウド谷出合〜海上谷出合は広い河原歩きに終始し，全く問題ない。渡渉は何度もするが，それほど困難はない。 ・海上谷出合〜サブ谷出合の区間は，ところどころ大きな廊下帯や巨岩帯が出てきて，何度か泳ぎや高巻きを強いられ，ちょっと大変。懸垂下降も1回入った。ただのアプローチ（又は帰路）だと思っていると意外に時間を食われるので注意。 |
写真
国道156号線の尾神橋の手前の林道入り口から自転車でアプローチ。林道は入り口に車止めゲートがあり，基本的に車の通行はできない。この林道，とにかく長いダートで，大シウド谷出合まで1時間半ほどかかる。
国道156号線の尾神橋の手前の林道入り口から自転車でアプローチ。林道は入り口に車止めゲートがあり，基本的に車の通行はできない。この林道，とにかく長いダートで，大シウド谷出合まで1時間半ほどかかる。
大シウド谷出合付近に自転車をデポし，尾上郷川に降り立つ。航空写真に写っていた、大シウド谷と大日谷の出合付近から海上谷出合付近に直接伸びている林道の探索（結局，廃道化していて使えず）などでうろうろしたため，入渓は10時とかなり遅くなってしまった。
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大シウド谷出合付近に自転車をデポし，尾上郷川に降り立つ。航空写真に写っていた、大シウド谷と大日谷の出合付近から海上谷出合付近に直接伸びている林道の探索（結局，廃道化していて使えず）などでうろうろしたため，入渓は10時とかなり遅くなってしまった。
穏やかな流れが続く尾上郷川を，左右に渡渉しながら河原をつないで歩いて行く。さすが白山の谷，水はとても冷たく，川霧が立っている。
海上谷は両岸が立っており，少し陰鬱な感じがする。この頃から小雨が降り始め，一層暗い感じに。ただし，谷の中は岩がゴロゴロしているくらいで，歩きやすい。
海上谷は両岸が立っており，少し陰鬱な感じがする。この頃から小雨が降り始め，一層暗い感じに。ただし，谷の中は岩がゴロゴロしているくらいで，歩きやすい。
しかし困ったことに，この谷は非常にぬめりが強く，今回ラバーの沢靴で来てしまったため，面白いようにつるつる滑って危なくて仕方がない。自然，遡行速度も落ちざるを得ない。（同じ水系のカラスノ谷はあんなにフリクションがいいのに，どうしてだろう…）
しかし困ったことに，この谷は非常にぬめりが強く，今回ラバーの沢靴で来てしまったため，面白いようにつるつる滑って危なくて仕方がない。自然，遡行速度も落ちざるを得ない。（同じ水系のカラスノ谷はあんなにフリクションがいいのに，どうしてだろう…）
7mほどの滝が出現。直瀑で美しい姿だ。この滝は左岸から巻くが，この辺りまでは釣り人が入るらしく，うっすら踏み跡があった。（これより上部は踏み跡は一切なし）
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7mほどの滝が出現。直瀑で美しい姿だ。この滝は左岸から巻くが，この辺りまでは釣り人が入るらしく，うっすら踏み跡があった。（これより上部は踏み跡は一切なし）
かなり歩いてきたところで，再び深いゴルジュに。しかし，行く手の様子がおかしい…
おわっ！なんじゃこりゃ！なんと，ゴルジュの側壁に唐突に落石ネットが。こんなに深い谷の奥の暗いゴルジュに落石ネットが張られているとは，かなりシュールな光景。
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おわっ！なんじゃこりゃ！
なんと，ゴルジュの側壁に唐突に落石ネットが。こんなに深い谷の奥の暗いゴルジュに落石ネットが張られているとは，かなりシュールな光景。
なんと，ゴルジュの側壁に唐突に落石ネットが。こんなに深い谷の奥の暗いゴルジュに落石ネットが張られているとは，かなりシュールな光景。
しかもよく見ると，滝に見えたのは堰堤だった。地図にある取水堰堤に到着したのだ。落石ネットはこの堰堤を守るためのもののようだ。毎度思うが，深い谷の中で突然人工物に出くわすと，ちょっと怖いというか，異様な感じがする。
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しかもよく見ると，滝に見えたのは堰堤だった。地図にある取水堰堤に到着したのだ。落石ネットはこの堰堤を守るためのもののようだ。
毎度思うが，深い谷の中で突然人工物に出くわすと，ちょっと怖いというか，異様な感じがする。
毎度思うが，深い谷の中で突然人工物に出くわすと，ちょっと怖いというか，異様な感じがする。
ハシゴで堰堤を越えると，大きな釜を持った美しい5m滝。右岸側のバンドを辿って越える。
そして唐突に現れる廃橋。これもびっくりした。地図上の林道がまたいでいる箇所に着いたのだ。
白山で最も隔絶された場所にある廃橋の一つかもしれない。
白山で最も隔絶された場所にある廃橋の一つかもしれない。
橋の両側の林道は完全に廃道化している。よくもまあ，こんな深い谷の深い箇所に林道を敷設したものだ。何をしようとしたのだろう…。
と，再びゴルジュに突入。水が勢いよく飛び出るような形の5m滝にぶつかる。両岸は50m以上はありそうな圧倒的な壁になっており，高巻きは難しそう。この滝が核心であった。
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と，再びゴルジュに突入。水が勢いよく飛び出るような形の5m滝にぶつかる。両岸は50m以上はありそうな圧倒的な壁になっており，高巻きは難しそう。この滝が核心であった。
まず滝の左手の壁を一段攀じ登る。写真は滝を真横から見たところ。なかなかの迫力。
その上はさらに立った壁に阻まれる。登れそうにも見えるが，スタンスが全て外傾しているうえに，ぬめりがひどく，思い切りがつかない。
どうしたものか…と滝の落ち口の先をのぞき込むと，これはぎりぎり側壁をへつれなくもないか…？ 思い切って一歩を踏み出す。すぐ足下はすさまじい勢いで滝に落ち込む白濁スライダーとなっており，少しでもスリップしたら5m滝の瀑水とともに宙を舞うことになる。緊張する一歩一歩を重ねて，何とか滝上に抜けられた。
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どうしたものか…と滝の落ち口の先をのぞき込むと，これはぎりぎり側壁をへつれなくもないか…？ 思い切って一歩を踏み出す。すぐ足下はすさまじい勢いで滝に落ち込む白濁スライダーとなっており，少しでもスリップしたら5m滝の瀑水とともに宙を舞うことになる。緊張する一歩一歩を重ねて，何とか滝上に抜けられた。
へつり抜けたあとに，5m滝の落ち口を見下ろしたところ。（右側をへつって来た）
正面から。左右の滝の均整が素晴らしい。
この滝は強者であれば直登も可能そうだが，大人しく右岸を高巻いた。かなり急斜面であり，ちょっと大変。
この滝は強者であれば直登も可能そうだが，大人しく右岸を高巻いた。かなり急斜面であり，ちょっと大変。
時間も遅くなってきたので，泊まり場を探すが，両岸が険しく，岩がゴロゴロしているため，ちょうどいい場所がなかなか見つからない。1340m付近の二俣でやっと人一人横になれそうな平地を見つけ，タープを広げる。谷が大きく開けて明るく，結果的に気持ちの良い幕営地であった。この頃にはありがたいことに雨も上がって，晴れ間も見え始めた。
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時間も遅くなってきたので，泊まり場を探すが，両岸が険しく，岩がゴロゴロしているため，ちょうどいい場所がなかなか見つからない。1340m付近の二俣でやっと人一人横になれそうな平地を見つけ，タープを広げる。谷が大きく開けて明るく，結果的に気持ちの良い幕営地であった。この頃にはありがたいことに雨も上がって，晴れ間も見え始めた。
一日中降り続いた小雨で，薪という薪が全てぐっしょり濡れていたため，大きな焚火に育て上げるまで時間がかかってしまい，ご飯が炊きあがったのはかなり遅くなってからであった。今日はどうやら満月のようで，夜が深まるにつれて谷の中天に月が登り，周囲の森や水がヘッドランプも要らないくらいに白く浮かび上がり，幻想的な谷の夜となった。
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一日中降り続いた小雨で，薪という薪が全てぐっしょり濡れていたため，大きな焚火に育て上げるまで時間がかかってしまい，ご飯が炊きあがったのはかなり遅くなってからであった。今日はどうやら満月のようで，夜が深まるにつれて谷の中天に月が登り，周囲の森や水がヘッドランプも要らないくらいに白く浮かび上がり，幻想的な谷の夜となった。
夜中に少し起きて焚火に薪をくべたりしたが，概ねぐっすり眠ることができた。次第に空が白み，谷の朝がやって来た。
朝の幕営地。本当は5時前には出発するつもりだったのだが，コーヒーを飲んだり焚火の前で居眠りしたりしているうちに，ようやくタープを畳んだのは6時過ぎになってしまった。毎度のことだが，心地よい幕営地だと，つい長居してしまう。というか，帰りたくない…。
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朝の幕営地。本当は5時前には出発するつもりだったのだが，コーヒーを飲んだり焚火の前で居眠りしたりしているうちに，ようやくタープを畳んだのは6時過ぎになってしまった。毎度のことだが，心地よい幕営地だと，つい長居してしまう。というか，帰りたくない…。
今日は先へは進まないが，右俣の先の様子も少し覗いてみた。険しい谷が続くようだ。いつかこの谷を詰めて，P1900m（点名「丸山」）にも行ってみたいな。
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今日は先へは進まないが，右俣の先の様子も少し覗いてみた。険しい谷が続くようだ。いつかこの谷を詰めて，P1900m（点名「丸山」）にも行ってみたいな。
谷を少しだけ戻り，1280m付近二俣から西方向にP1785.2m(点名「海上谷」)に突き上げる枝谷に入る。濃い緑の中，小滝が階段状にひたすら続く。
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谷を少しだけ戻り，1280m付近二俣から西方向にP1785.2m(点名「海上谷」)に突き上げる枝谷に入る。濃い緑の中，小滝が階段状にひたすら続く。
とにかく森が深く，立派なサワグルミの木が多い。この枝谷は，さすがにほとんど人が入らないのではないだろうか。
枝谷をどんどん詰めていくと，心なしか空が近くなってきた。鈴を鳴らすようなメボソムシクイのさえずりも聞こえる。高度が上がってきたのだ。
と，10mほどの滝。上部がつるつるで，これは登れない…。左右もブッシュの茂った泥の急斜面となっており，嫌な感じだ。
仕方なく左岸から巻きに入るが，かなりの急斜面なうえ，藪が非常に濃く，奮闘的な高巻きとなる。
谷に戻り，振り返ると，向かいの稜線が望めた。見えるピークは，おそらくP1900m（点名「丸山）だ。
少し進むと，今度は2段20mほどのさらに大きな滝が…。泣く泣くブッシュに再突入し，左岸巻き。
頃合いを見て谷に戻ろうと下降していくと，なんと谷中にはさらに10mほどの滝が…。勘弁してくれ…と泣き言を言いつつも，ブッシュにぶら下がり泥に足を突っ込んで耐えるような苦しい急斜面トラバースを継続する。
頃合いを見て谷に戻ろうと下降していくと，なんと谷中にはさらに10mほどの滝が…。勘弁してくれ…と泣き言を言いつつも，ブッシュにぶら下がり泥に足を突っ込んで耐えるような苦しい急斜面トラバースを継続する。
やっと谷に復帰し，どんどん急になっていく谷を喘ぎながら登っていく。もう流れは細くなっているのにところどころナメが出てくる。本当に岩がちな谷だ。
ついに水切れ。稜線のすぐ手前まで水が途切れず，白山の水の豊富さを実感した。
すぐ北側のピークに上がり，三角点「海上谷」の捜索に取り掛かる。相変わらず濃い藪で，これは難航しそうだ。
20分ほど藪をかき分けて探し回ったが，三角点は見つからない。これはもしかして埋まってしまったか？ とアイスハンマーを取り出してピックで地面を突き刺して回ると…手ごたえあり！
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20分ほど藪をかき分けて探し回ったが，三角点は見つからない。これはもしかして埋まってしまったか？ とアイスハンマーを取り出してピックで地面を突き刺して回ると…手ごたえあり！
三角点「海上谷」。完全に埋まってしまった三角点を見るのは初めてだ。この三角点が陽の光に当たるのは，何年振り，いや何十年ぶりになるのだろう。
完全に掘り起こしてあげようとしたが，ネマガリタケの根ががっちりと張っており，スコップでもない限り無理そう。上部の「三等」の文字を確認するのが精一杯だった。
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完全に掘り起こしてあげようとしたが，ネマガリタケの根ががっちりと張っており，スコップでもない限り無理そう。上部の「三等」の文字を確認するのが精一杯だった。
少し経てば再び土に埋もれてしまうであろう三角点を名残惜しく手で撫でたあと，尾根を北上して，P1852mに寄り道することにした。P1852mは何もないピークだが，別山東尾根の無雪期の様子を見てみたいと思ったためだ。濃い藪の中の薄い獣道を極力辿って進んでいく。
少し経てば再び土に埋もれてしまうであろう三角点を名残惜しく手で撫でたあと，尾根を北上して，P1852mに寄り道することにした。P1852mは何もないピークだが，別山東尾根の無雪期の様子を見てみたいと思ったためだ。濃い藪の中の薄い獣道を極力辿って進んでいく。
獣道があって比較的歩きやすい区間と，背丈くらいの濃い笹薮に囲まれて奮闘的な藪漕ぎになる区間が交互に現れる。それほど距離はないと思っていたが，やはり時間がかかる。
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獣道があって比較的歩きやすい区間と，背丈くらいの濃い笹薮に囲まれて奮闘的な藪漕ぎになる区間が交互に現れる。それほど距離はないと思っていたが，やはり時間がかかる。
別山東尾根が近づいてくる。遠目で見ると，笹原で歩きやすそうに見えるが，これに騙されてはいけないんだろうな…。
P1852mに到着。別山東尾根に乗った。別山東尾根は，一面の笹原にオオシラビソがぽつぽつと生えており，一見美しいが，笹は濃密で胸以上あり，夏季にこの稜線を縦走しようとするなら，相当な覚悟をしなければいけないことを確認できた。
P1852mに到着。別山東尾根に乗った。別山東尾根は，一面の笹原にオオシラビソがぽつぽつと生えており，一見美しいが，笹は濃密で胸以上あり，夏季にこの稜線を縦走しようとするなら，相当な覚悟をしなければいけないことを確認できた。
海上谷の源頭部を見下ろす。（一見）気持ちのよさそうな，ダケカンバが点在するなだらかな笹原が広がっている。積雪期に訪れたら，さぞ美しい雪原となっているだろう。
海上谷の源頭部を見下ろす。（一見）気持ちのよさそうな，ダケカンバが点在するなだらかな笹原が広がっている。積雪期に訪れたら，さぞ美しい雪原となっているだろう。
P1852mからサブ谷に下降するため，南西方向に深い笹の斜面を滑り降りていく。
灌木に捨て縄をセットして懸垂下降（10mくらい）。瀑水をまともに浴びながらの懸垂下降で，全身びしょぬれになった。
左岸の急斜面をきわどくトラバースし，ガレを滑り降りるようにして谷に戻って巻いた。
と，またまた目の前が大きく切れ落ちている。かなり大きな滝だが，手持ちのロープでも滝下までぎりぎり届くか…。
灌木に捨て縄をセットし懸垂下降（18mくらい）。前回にもまして滝の水にまともに打たれながらの懸垂下降となり，目も開けられないほどだった。
少し進むと，またまた滝！しかもかなりの高さ。これは明らかに，手持ちのロープ（40m。ダブルにすると20m）では滝下に届かない。一瞬途方に暮れたが，落ち着いて周囲を観察すると，険しい両岸の中にも，高巻けそうなラインが見えてきた。右岸から急斜面を巻きに入り，灌木がつながっている箇所を狙って下降。何とか巻き下ることができた。
少し進むと，またまた滝！しかもかなりの高さ。これは明らかに，手持ちのロープ（40m。ダブルにすると20m）では滝下に届かない。一瞬途方に暮れたが，落ち着いて周囲を観察すると，険しい両岸の中にも，高巻けそうなラインが見えてきた。右岸から急斜面を巻きに入り，灌木がつながっている箇所を狙って下降。何とか巻き下ることができた。
高巻きを終えて振り返ると，30m以上はありそうな堂々たる瀑布であった。まさかこの小さな枝谷で，今回の山行で最大の滝にぶつかるとは…。
こんなに滝の多い枝谷だと思っていなかったので大変だったが，何とかサブ谷本流との合流点に到着。
サブ谷は明るく開けた大らかな流れで，朗らかな気分で下降していくことができる。
谷に戻って振り返ると，8mほどの端正な滝であった。この滝は本当に整った姿をしており，あまりの美しさに思わず足を止めてしばらく見入ってしまった。
そして少し進むと，この谷のハイライトとも言える大スラブ滝（と勝手に命名）。谷いっぱいに広がった滑らかな一枚岩の上に，複雑な形のポットホールが彫り込まれており，瀑水がその上を踊るように流れ下っていく。
そして少し進むと，この谷のハイライトとも言える大スラブ滝（と勝手に命名）。谷いっぱいに広がった滑らかな一枚岩の上に，複雑な形のポットホールが彫り込まれており，瀑水がその上を踊るように流れ下っていく。
発達した滑らかな岩盤が美しい。もっと近場の谷にあったら，なかなかの名所のなりそうだ。
この滝は右岸から懸垂下降（10m位）で降りたが，右岸を巻き下ることもできそうであった。写真は大スラブ滝の最下段。周囲の岩壁も素晴らしい。
途中，右岸側からかなり荒れた様相の枝谷が流入する。上部には手ごわそうな滝が見え，興味をそそる。
下流側は大量の土砂に埋まっている。どうやら，さきほどの枝谷から大規模な土石流があったようだ。しばらくは荒れた谷が続くので，ちょっと惜しいところ。
途中，不思議な形に浸食された壁があった。この谷はなかなか見物が多いなぁ。
尾上郷川本流は，相変わらず見とれてしまうほどのおおらかな渓流美。しかし，見とれているわけにはいかない。まだまだ先は長く，約4時間の尾上郷川本流下降が待っているのだ。尾上郷川本流は大部分はただの河原歩きだが，取水堰堤〜海上谷の区間の予想外の険悪さや，夕方になって突然降り出した雨もあり，ずぶ濡れ状態で自転車デポ地にたどり着いた頃には，既に辺りは暗くなっていた。
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尾上郷川本流は，相変わらず見とれてしまうほどのおおらかな渓流美。
しかし，見とれているわけにはいかない。まだまだ先は長く，約4時間の尾上郷川本流下降が待っているのだ。尾上郷川本流は大部分はただの河原歩きだが，取水堰堤〜海上谷の区間の予想外の険悪さや，夕方になって突然降り出した雨もあり，ずぶ濡れ状態で自転車デポ地にたどり着いた頃には，既に辺りは暗くなっていた。
しかし，見とれているわけにはいかない。まだまだ先は長く，約4時間の尾上郷川本流下降が待っているのだ。尾上郷川本流は大部分はただの河原歩きだが，取水堰堤〜海上谷の区間の予想外の険悪さや，夕方になって突然降り出した雨もあり，ずぶ濡れ状態で自転車デポ地にたどり着いた頃には，既に辺りは暗くなっていた。
装備
| 備考 | ・ラバーソールの沢靴を使用しましたが，海上谷もサブ谷もぬめりが強く，かなり後悔しました。同じ尾上郷川のカラスノ谷はフリクションがいいのに，どうしてだろう…。 ・40ｍロープ携行。海上谷では使用しなかったが，サブ谷下降で3回ほど，尾上郷川本流のサブ谷〜海上谷区間で1回懸垂下降で使用。 |
|---|
感想
登山道のない長大な稜線である別山東尾根にはいくつかの三角点があるが，その中でも1785.2m峰（点名「海上谷」）は最も不遇な三角点と言っていいかもしれない。他の三角点（「大峠（南白山）」「焼滑」「丸山」など）は数は少ないものの一応ネット上に登頂記録が上がっているのだが，この「海上谷」だけは記録が全く見られない。三等三角点のうえ，目立つ山容でもなく，しかも別山東尾根の稜線からわずかに南に逸れているので，わざわざこのピークを目指す人がいないのも当然と言えば当然なのであるが…。しかし，このピークを挟んでルート取りをすれば，海上谷とサブ谷という尾上郷川の二つの大きな支流を一度にめぐる周回ルートが取れる（といっても，この2つの谷もマイナー中のマイナーなのだが…）。もともとこの2つの谷の奥深さに惹かれていたので，今回辿ってみることにした。
三角点「海上谷」は，予想通り完全な藪の中にあったが，予想以上だったのは完全に土の中に埋没していたことだった。三角点を発掘するというなかなかできない体験をさせてもらっただけでも，忘れられない三角点になりそうだ。ネマガリタケの根に阻まれて少ししか掘り下げられなかったため，しばらくしたらまた埋まってしまうと思うが，この三角点が次に陽の光を浴びるのは，何年後（何十年後？）になるだろうか。
今回辿った2つの谷も，どちらも地味ではあるが，アプローチの長さも含めて，奥深さと人擦れのなさは素晴らしかった。自分の周囲数キロ以内には人が絶対いないだろうな，と思える場所で一夜を過ごせるのは素晴らしい。海上谷は目立つ巨瀑はないものの連続するナメ滝群が楽しめ，またサブ谷は長い河原歩きがちょっと単調なものの，30m以上はありそうな大滝や巨大な一枚岩の大スラブ滝，8mの美瀑など，思わぬ見所があった。この夏の猛暑で大峰や台高など近畿の沢が軒並み減水する中で，豊富な水量と身の切れるような水の冷たさを保っているのは，さすが白山という思いにさせられた。
ちなみに，「海上谷（かいしょたに）」という谷名（三角点の名前にもなっている）は，ちょっと不思議な名前であるが，これは尾上郷川が庄川に流れ込む付近にかつて存在し，現在は御母衣湖に沈んでいる「海上（かいしょう，かいしょ）」という集落から来ているものと思われる。しかし，なぜ尾上郷川の最下流にある集落の名前が，この川の奥のほうにある谷に付いているのかはよく分からない。
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miyabi787 さん
海上谷は何度か計画してたが、天候その他の理由で未だ入れてなかった谷です。
見んとこ…と思いつつ、少し読んじゃいましたw
三角点発掘、、、すごすぎます！！！
こんばんは！海上谷、アプローチが面倒ですが、よかったですよ。途中で枝谷に入ってしまったので、本流を丸山まで詰め上がれなかったのが少し心残りです。覗いただけですが、本流も滝が続いていそうで結構面白そうでしたよ。
オフロードバイク＋歩き で行かれてるかたのブログ記事。
まぁまぁ歩けそうな感じです。。。
https://ameblo.jp/rk-ppp/entry-12543527678.html
紹介いただいたブログ早速拝見しましたが、本当ですね！歩きなら何とか行けそうですね。海上谷にかかっている橋の両側は道が分からないくらいに藪が凄かったので、こりゃ歩けんだろうな〜と勝手に思ってしまっていたのですが…記録の記載を少し訂正しておきます（笑）情報いただきありがとうございました。
ちなみに、国土地理院のページで航空写真を見ると、海上谷が尾上郷川に流れ込む辺りに林道跡らしき線形が写っていて、大変気になっています。この林道が本当に存在すればアプローチが結構楽になりそうな気がするのですが、実際に現地を見てみると両岸とも切り立っていて林道が跨いでいるようには到底見えず、謎のままです…。
木が生えてるところと生えてないところで、航空写真だと明らかに違いがあるように見えたりしますけど、実際には、木が生えてないようでも、幹の細めの木が生えた鬱蒼とした藪ってことはありますもんね。あと、もう一つ、地形図で奥丸山谷のほうに伸びてる林道が記載されてますが、これも分岐がかなり分かり難いです。私が行った時は誰かのつけたピンクテープが二つか三つくらい見えましたけど、「これ、、、道やないな」という感じでした。でも、もっと辿っていけば 道らしいところも残ってたりするかもしれませんね。 またまたついでに、尾上平スキー場跡には雪のある時期に行ってみたいな とか思ってます。w 尾上郷川ばんざい！w
奥丸山谷の林道は私も気になってましたが、廃道化してるんですね。この辺りは沢も面白いですが、林道も複雑怪奇ですね。昔は森林鉄道も通ってたらしいので、もしかしたらその線路敷跡なのかも、と思ったりもします。
尾上平スキー場、恥ずかしながら知らなかったので、検索してみましたが、びっくりしました（笑）まさかこんなところにスキー場があったとは…。山スキーで大日ヶ岳から滑り込んでる記録がありましたが、面白そうですね〜。
尾上平スキー場、知ってるほうがinsaneですw まー色々楽しんでくだせー。
1998か1999年には海上谷まで車で行った事があります。
2001年の遡行時に魚止滝(5mチョックストーン滝、(当時は大きな岩が挟まっていました))の上流に岩魚を放してきました。魚止滝右岸にスリングとハーケンを残置してきてしまいましたがもうないかもしれません。
今は北海道に住んでいますし、もう歳なので再訪は無理です。
岩魚が居着いていてくれると嬉しいです。
釣行記はジオシティーズに掲載していたので削除されました。
はじめまして！ 当時は車で海上谷まで行けたんですね〜。驚きました。
「魚止滝」は，22番目の写真の，水が飛び出る感じの5m滝でしょうか。確かに右岸の壁に錆びたハーケンが残置されていた記憶があります。roman_tanakaさんのハーケンかもしれないと思うと，感慨深いですね。
5m滝の上にイワナがいたかどうか，はっきりした記憶がなく申し訳ないです。この遡行のときは竿を持っておらず，先を急いでしまったもので…。roman_tanakaさんの放したイワナが海上谷の上流で人知れず繁栄しているといいですね〜。コメントいただき，ありがとうございました。
うわー、お返事ありがとうございます。
そうです、魚止滝は水が飛び出してる感じで滝壺が浅く見える所です。
もし機会があれば滝上で竿を出してみて下さい。結構な数を持ち上げて放した筈なので。
では、お気を付けて山行をお楽しみ下さい。
この谷に行きたいなぁと思って調べていたらこのブログがでてきて拝見させていただきました。
海上谷を遡行中、林道を渡した橋がでてきた所から上流に衛星写真では堰堤のような物が映っていたのですが堰堤はありませんでしたか？
はじめまして！ おっしゃるとおり、確かに堰堤、あった気がします。なんでこんなところに堰堤が…と驚いた記憶があります。左岸から巻いて越えたような。この記録では省いてしまっているのですが。
序盤は急に人工物が出てきたりしてびっくりしますが、奥に行けば行くほど秘境感たっぷりの良い雰囲気になるので、楽しめると思いますよ。良い山行をお祈りしております！
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