青龍の滝〜鎌刃城址〜向山〜男鬼山☆知られざる名城と名残の紅葉
- GPS
- 03:43
- 距離
- 8.4km
- 登り
- 648m
- 下り
- 651m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年12月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
コースの大半は踏み跡のないルート 詳細は感想/記録にて |
写真
感想
米原、新幹線や近江鉄道の駅の周辺は何もない寒々しいところであるが、国道21号線を跨いでその東側に入ると古い宿場町の雰囲気が残っており、国道を挟んで異次元の世界が隣接しているようだ。この米原宿と山を一つ隔てた東側には番場宿の宿場町があり、こちらはかつての中山道の宿場町であった。
以前よりこの宿場町とその上にある鎌刃城址が気になっていたのだが、そのすぐ近くに青龍の滝があることをHB1214さんが最近の日記でご紹介される。この日は家内が短い山行がいいというので、滝と城址の南に広がる鈴鹿北部の丘陵地帯を逍遥してみることにする。
米原から国道21号線を右折し、物々しい変電所を横目に見ながら東に進むとなだらかな丘陵地の間に忽然と番場宿の古い宿場町が現れ、一瞬でタイムスリップした感覚に捉われる。宿場町を奥へ進むと鎌刃城跡と青龍の滝への案内板があるが、滝谷林道は車では通行出来ないらしい。代わりに東隣の西坂からの林道が鎌刃城址の上に通じていることを知る。
宿場町を出て東に進み、製薬会社アストラゼネカの大きな工場を横にみながら西坂集落の手前を右奥へ進むと、綺麗に舗装された林道が奥へと続いている。やがて林道が尾根に近づくと長浜方面の展望が大きく広がる。
峠が近づくと鎌刃城址への案内板が現れる。峠を越えると林道脇に広い余地がいくつも現れ、原付バイクや何台かの車が停められている。右手から合流する滝谷林道の手前に車を停めて歩き出すと、まずは青龍の滝を訪れる。
滝谷林道を下るとすぐにも谷が深くなり、右手に滝が現れる。空は晴れているが、北向きの深い谷間には冬の陽は届かない。滝の周囲は薄暗く、赤い鳥居の奥で控え目な滝音を立てる滝には幽玄な雰囲気が漂う。滝の手前には祠があり、古来、番場の人々の信仰の対象の滝であったことを物語る。黒々とした岩肌を背景に一直線に落下する滝は水垢離のためには格好に思われる。滝の落ち口では形の良い不動明王の石仏が滝を見守っておられた。
鎌刃城址は山から突き出した尾根を利用した典型的な山城だ。城の領有を巡って浅井・京極勢と六角勢との間で度々争いがあったところらしい。尾根の東側をトラバースして北端部の副郭を訪れる。展望台が設けられてはいるが、展望台に登らずとも眼下に長浜から伊吹山にかけての広大な展望が開ける。
西側にも展望台があり、高校生と思しき制服を着た若者が来られる。親子と思われる男性の二人組も主郭のあたりから降りて来られた。数年前に続日本の100名城に選ばれたらしく、城跡ファンの間でも人気がある場所なのだろう。この米原や長浜の周辺は多くの城が築かれたところだが、城跡の雰囲気、そして展望という意味においてはここは確かに名城に選ばれるのに相応しい、なんとも魅力的な場所に思われる。
城跡を南にたどり主郭に向かうと、樹高の高い広葉樹は綺麗に黄葉しており、梢からは黄色い透過光が降り注ぐ。広い主郭には杉の植林されたと思われる杉の樹が生えてはいるが、古い石垣が城の風格を感じさせる。主郭からは七つの堀切が削られた痩せ尾根をたどり、城址の入口に戻る。
送電線巡視路を辿って向山に向かう。急登にさしかかると尾根上の踏み跡は不明瞭になる。左手の斜面をトラバース気味に登ってゆく杣道を辿り、傾斜の緩やかな尾根が現れたところで山頂に向かうことにした。尾根上に苔むしたカレンフェルトの岩が数多く現れる。
やがて向山の山頂が近くなると植林は下生のない広々とした自然林の疎林に変わる。三角点のある山頂は樹林の中であるが、そのすぐ先に紅白の大きな送電線鉄塔がある。鉄塔の琵琶湖側は広範囲に切り払いがされており、空中を走る送電線が気にはなるが、ここでも湖東の広大な景色が広がる。
向山からはなだらかな斜面に自然林の疎林が広がっており、斜面を谷に向かって下降してみたくなるところだ。稜線を南に辿り鞍部にたどり着くと林相は途端に植林に変わる。尾根の先にある178番の送電線鉄塔から霊仙山の全容が見えると書いてあるので、稜線を南下して送電線鉄塔を訪れてみることにする。
尾根の西側には紅葉の自然林が広がるようになる。楓以外の樹々は既に落葉しているのだが、名残の楓の紅葉が見事である。午後の陽光がもたらす紅の透過光に見惚れながら尾根を歩くと再び樹林が大きく開け、送電線鉄塔のある広場に出る。広場からは送電線が続いてゆく南の高室山方面の眺望が大きく開けている。東側には確かに霊仙山を望むことは出来るのだが、東側の杉の植林が邪魔して展望は今ひとつすっきりしない。鉄塔の南から一人の男性が登って来られる。
少し稜線を来た方向へ戻り、男鬼山に向かって林道の北側の尾根を辿る。植林の緩やかな斜面を登ってゆくと山頂が近づいたところで羊歯の藪が広がるようになる。台地状の山頂部の一帯が広く伐採されており、そこに羊歯藪が広がったようだ。問題はその中に伐採された後の杉の樹が散乱しており、乗り越えて進むのに難儀する。山頂の中心に山名標を見つけ、なんとかそこまで到達する。羊歯の間には苦労しながらここにたどり着いた先達者達の踏み跡が辛うじて残っている。
踏み跡を辿りながら伐採地を抜けて山頂の東側に出るとホッと一息つく。植林と低木の藪の間を辿って東側の斜面を下ると広い草原の斜面となり、目の前には霊仙の眺望が大きく広がる。先程の送電線鉄塔とは違って、ここからは霊仙の迫力のある山容をすっきりと眺めることが出来るのが嬉しい。
尾根の下の方から熊鈴の音が聞こえ、二人の登山者が丁度、すぐ下の林道に降り立つのが目に入る。我々も二人の後を追うように林道に着地する。林道を北に進んだところに車を停めておられたようで、車の傍におられたお二人にお遭いする。イワス、比婆山、高取山に登られから車でこちらに移動して男鬼山に登っておられたようだ。
お二人とお別れして林道を北に向かう。当初、林道を歩いて駐車地に戻るつもりではあったが、目の前に見えるca580mのピークのなだらかな斜面にはなんとも快適そうな自然林の樹林が広がっている。このピークを越えることにする。
谷間には植林が広がっているが、反対側の斜面に取り付くとすぐにも下生の少ない自然林が広がるようになる。向山との暗部を越えると反対側は植林となる。国土地理院の地図には破線の道が記されているが、残念ながらそのような道は見当たらない。植林の中を下降して舗装林道に降り立つと駐車地まではすぐだった。駐車地に戻ると我々の後ろに停めておられて三重ナンバーの車が出発されるところだった。
男鬼山は近江百山に選ばれてはいるものの、山自体は完全に植林に覆われている上に山頂がこのような状態とあっては登山の対象としての魅力は乏しいところだが、鎌刃城址や向山の東斜面に広がる自然林は季節を変えて訪れてみたい魅力的な場所だ。果たしてその時に再び倒木の散乱する羊歯藪を越えて再び男鬼山のピークを踏みに行く気になるだろうか?数年後にはますますひどい藪になっていないか心配だ。
コメント
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yamaneko0922さん yamaizuさん 晩秋のいい山を歩かれましたね。
男鬼山は、近江百山ですのでいずれ訪れたいとおもっていましたが、このレコを拝見し、週末にでもすぐに訪れたくなりました。鍋尻山も併せて踏んでこようかと考えています。春先には、福寿草が美しいと聞いておりますので、それまでに現地の様子を知っておくのもよいかなぁ。
鎌刃城は米原、長浜周辺の城址の中では知名度はかなりマイナーな部類かと思いますが、城跡の風格ある雰囲気、自然林と眺望いずれも期待以上の素晴らしいところでした。
男鬼山は歩き方によってはがっかり百山の一つになると思います(近江百山はそういう山は少なくない?)。
もしも晴れていたら是非、東斜面の大展望地を訪れてみて下さい。低木の藪を抜けると素晴らしい眺望が開けます。
霊仙界隈をくまなく歩こうと、、
みれさんと高取山~イブキまで縦走
水曜会で松尾寺山~鎌刃城址周回は工業団地の路肩に停めて歩きました。
懐かしいです。
その後向山、アミダ峰、ヒヨノとか、、
アケンバラ~霊仙周回とか、、近くて楽しい山域です。
jionさん コメント有難うございます。
この辺りは魅力的な低山がたくさんあり、また様々なコース取りが考えられるのが面白いところですね。鎌刃城から松尾寺山への周回は当然、気になるところです。新緑の季節にでも訪れてみたいと思うのですが、ダニが気になるところです。
レコに書き忘れたのですが、今回、車に帰り着くと、この季節だというのに私のズボンにはしっかりとダニが一匹着いていたのでありました。
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