奥久慈男体山(下山は弘法堂経由)
- GPS
- 04:49
- 距離
- 13.3km
- 登り
- 794m
- 下り
- 786m
コースタイム
- 山行
- 4:00
- 休憩
- 0:49
- 合計
- 4:49
天候 | 晴れ 朝方やや曇りがち |
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過去天気図(気象庁) | 2021年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
健脚コース山頂直下は凍結してましたが気がつかない程度です。 |
写真
装備
備考 | ファーストエイド、ヘッドランプ、行動食、水、目出し帽、靴下ミトン、手袋、ゴム引き軍手(商品名「タフレッド」) |
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感想
秩父、三浦半島、そして宝篋山と遊んできた年末年始。正月休みの最終日は登山だ。奥久慈のバリエーション、座禅岩(筆者勝手に命名)のコルからやせ尾根ルートをやろうなどと考えていたが、近頃そういう山に出かけていないので道具がガラクタの下に埋もれている。準備不足だからやめておこう。山に行くか、家の片付けに当てるか考えながら暖かい布団の中で「出たくない」、「でも山に行きたい」と言う両方の思いの間を行ったり来たり。
しかしだんだんと、6時出発、7時歩き始め、1時間で取り付いて1時間で頂上、下山は2時間かかって、最後取り付きから出発点までもう1時間で、7時スタート12時終了、帰宅は1時、午後の暖かい日差しの中でうちの片付け、などと考えていると、朝の日を浴びた奥久慈岩稜がおいでおいでをしている。布団を跳ねのけて、身体が温まっているうちに大急ぎで山服に着替えると、いつものハイキング道具を適当に詰め込んだ。
真冬に入ったから手の寒さが問題。今回は暖かさは最強と信じている靴下ミトンとして冬靴を履くときに使っているメリノウールのソックスを詰めた。後はからだの温まり具合と岩の具合に応じて軍手、ゴム引き軍手にはめ換える。顔の防寒と日中の日差し対策として今回は目だし帽で通すことにした。
家を出ること6時過ぎ。外はまだ暗い。車にたどり着いてフロントガラスの凍結に苦笑い。エンジンをかけてからアパートに戻り、融かすためのぬるま湯を取りに戻った。ガラスにショックを与えたくないので水より少し暖かい程度で、かけた水は再凍結しないうちにハンドワイパーでふき取ってしまう。今朝も相当寒いだろうか。出発してすぐに常陸太田駅前交差点の温度計を確認した。マイナス3度。年末の寒波の時には日の出後の7時過ぎでマイナス6度を見ているから、まあ普通の寒さだろうか。このところの乾燥天気で道は乾いており、いつもの道を気持ちよく西金駅へと走らせた。
西金駅の駐車場に車を置き、7時10分前にスタートした。水郡線の始発列車が今年の奥久慈山行の号砲のように汽笛を鳴らした。日の出後なので、118号を横断すると直ちに奥久慈岩稜が顔を出した。丸一日かけるつもりならば、釜沢越から入って、あの岩稜を歩いて男体山を目指すのが心地よい。
奥久慈のきんとした冷気を防ぐためにソックスをミトン代わりにはめて歩き出した。はめっぱなしの左手はすぐに温まったが、デジカメを操作するたびにミトンを脱ぐ右手はなかなか温まらなかった。中にもう一枚薄手の手袋をはめておくのがいいかもしれないが、それをすると手のひらの暖気が指先を暖めるのを妨げる。多少作業がしやすいように、ミトンにするソックスをうまく選ぶことが今後の過大だろうか。
年のせいか、それとも2014の初冬に西ー奥穂をやったときに軽微な凍傷になった影響か、指先の血の巡りが若いころほどでなく、さほどの寒さでなくても指先の感覚がなくなるのが早いのが困りものだ。
ナウマンゾウの足跡が発見された場所を通過すると、中央から右手に奥久慈岩稜、そして手前左側には林道沿いに立つちょっとしたピークが見える。林道沿いなのだが、果たして登ることができるのか、完全な薮山なのか、気になる。
さらに進むと鷹取岩、入道岩のシルエットがぬうと飛び出す。入道岩はいくつかの小尖塔を従えており、この角度から見ると入道岩が子持ち岩とも称されることにうなづける。そして、正面には民家越しに奥久慈男体山がその雄姿を現す。脈拍が一段と上がる瞬間だ。夜明け前に歩き出すと真っ黒なシルエットしか見えないのだが、この程度の時刻だと山容がわかり始めて気持ちが良い。
古分屋敷を過ぎてようやく身体が中華まんのようにホカホカしてきた。上着と靴下ミトンをザックに突っ込んで、手袋は軍手に取り替えた。ゴム引き軍手は指を締め付けて冷たくなるので、指先の血の巡りが悪いうちはまだ回避。目だし帽もやや暑いが、面の皮を保温するため、そのままで取り付いた。
往路は恒例により一般コース。むさぼるように歩いた。どんどん高度が上がる。息も上がる。足裏をべったりざれ気味の地面に置いて、踏み出す足は持ち上げて太ももで前に持っていく。地面を蹴るようなざっ、ざっという音を立てないように、とん、とん、と硬い音が出ることを心がけた。序盤の歩け具合で体調がわかる。今日はかなり良い。段差の大きいところ、ガレているところ、どこを歩いていいかがすっと見て取れて、足がどんどん前に出る。迷ったりバランスを崩したりということがない。なんて気持ちがいいのだろう。
大円地越直前で先行者があり、狭いところで追い越さなくてもいいだろうと一息ついて振り返った。谷の葉を落とした樹林をたたえるくびれ越し(そう、今はまさに大円地越のくびれの底にいるわけだ)に、朝日をたっぷり浴びた奥久慈の山並みが目に飛び込んできた。先行者の下さったお年玉のような気持ちになった。写真に撮ってしまうとなんてことのない景色なのだが、肉眼の有難さ、見たいものだけが意識の中に入ってくる。木の幹だらけで視界がさえぎられているわけでもなく、山並みだけが飛び込むわけでもなく。谷と幹と、遠景のバランスが吸い込むような奥行きを与えてくれた。
大円地越に到着して恒例の温度計観察。8時半ごろでマイナス1度。樹林帯なので寒さもほどほどだ。いつかここに酒を持ち込んで泊りがけでごろごろしたいと思いながら、葉を落としたケヤキの急斜面を一気に高度を上げた。大円地越のベンチがあっという間に小さくなって、頂上稜線に乗るところが、一般コースの気持ちいいところ。折しも朝日が本格的に照り始め、なだらかなハイキングコースを照らす。まぶしすぎて奥久慈岩稜の方面はよくわからなかった。
気持ちよくひと歩きして、ブナの巨木があるコルへ急に下る。歩くのに夢中になってブナに抱きつくことを忘れてしまったが、それぐらい歩くことが楽しかった。ここからは山頂までところどころ岩稜めいたところを2,3歩攀じながら頂上を目指す。がけっぷちになるので、景色は良い。男体山の正面岩壁が、快晴の下でくっきりとその姿を表した。そして先ほどは谷と幹越しに見ていた奥久慈の山並みが飛び込む。筑波山が見える。さらにそのはるか向こうには、かすんでいたけれど富士山が。正月としては幸先が良いではないか。足取りの軽さと景色のよさにぐいぐい歩いて頂上に到達した。
「どちらからですか?」山頂の祠で登山者の方が声をかけてくださった?おもわず「どういう意味ですか?」と失礼な返答をしてしまった。この質問は難しい。今日のルートがどこから課ということなのか。家はどこなのか?どちらにも取れるからなのだ。こういうときにはとりあえず質問の本当の意図を確かめずにどちらかの答えを解答してしまうのが、大人の対応というものだ。「いえ、つまりその、住所という意味なのか、ルートのことなのか、、、」やや申し訳なさそうに補足し、住所のことですよとのことで「太田です」と答えた。地元民は大抵常陸太田とは言わずに太田という。ちなみに登山者さんも地元のようだ。さて、非礼をわびて下山することにしよう。
恒例により下山は健脚コース。まず最初の岩場を潅木をつかみながら高度を下げた。まだやったことはないが、潅木に頼らずに岩だけつかんで降りるとしたら健脚コースの難度は一気に上昇するだろう。やさしめの岩場とはいっても危険度は相当高い。万一落ちたら重傷以上は避けられないから試してみようという気にもなれない。実際今回も潅木がなければ手も足も出ないような箇所も少なからずあった。
踏み跡があるような箇所も、あえて岩に(潅木の助けを大いに借りて)へばりつきつつ、おっかなびっくり高度を下げると、毎回恒例の難関が現れた。(上部から見て、以下同様)中央は土付きのハング気味を抜けて右のスラブを下るか、左はどこをとっても抜けそうなホールドだらけの、だけど危険一杯の斜面か。
今回は土付きを降りてから登り返し、ホールドだらけから下りなおしたが、序盤の心持被っている部分は足を置く勇気が沸かず、さらに少し左によけて、安定した倒木をつかみながら高度を下げた。どこでもそうだが、下りの際につかみきれないハンドホールドにうまく体重をかけながら最初のフットホールドを探っていくことが苦手だ。今年もずいぶんと鍛えられそうだ。
核心部分を過ぎても岩・岩と追いかけていくとあまりペースは上がらない。そうこうしているうちに山頂で声をかけてくださった登山者さんに再会した。健脚コースを2週するのが習慣になっていらっしゃるとのこと。自分もそういうことをしたことがあるのでうれしくなって少し話し込んでしまった。お互いに安全登山を確認して上へ、下へとそれぞれ進んだ。
結構しごかれてへろへろになりながら展望台岩へ。気がつくと展望台岩の基部から一段降りたところに良い感じのお弁当スポットを見つけた。何度となくこの岩には立ってきたけれども。岩の先へ進むことなど思いもよらなかったが難度も危険度もそれほどではない。軽くクライムダウンしようとしたら、登って来られた登山者さんに「そちらに登山道あるのですか」と聞かれてしまった。応えて「ありませーん。ほんのそこのテラスまで」。登山者さんには富士山が見えることを教えてあげたら、同行の登山者さんも何人かいらっしゃって、好評だった。
安全地帯でザックをおろし、おにぎりとみかんのおせち料理で正月を祝った。今まで山でみかんを食べることはあまりしてこなかったことをちょっと後悔するくらい、すっぱくて甘くて、みずみずしくておいしかった。
展望台岩基部に登り返し、ひと歩きして恒例のクラックを降り、(下から見たときの)鎖場序盤を下った。ここはざれてて落石注意なのだが、不覚にも一個落としてしまった。下のヘルメットの谷も含めて登ってくる人がいなかったのは幸いだった。落石も怖いがこの箇所は落ち葉が積もって滑落の恐れが満点だ。特に下りのときは足が安易に出がちだから気をつけなくては。
何とか割れヘルメットの谷まで降りてきた。樹木の葉が落ちて明るくなった谷を巨岩が埋め尽くしている。そそられるのだけれどもここをつめるときにはそれなりの武装が必要だろう。家の片づけをして探し物(登山道具)を済ませてからやることにしよう。
日が高くなって明るくなった一般コース基部を一気に降りていった。足の置き場が次々に見つかるときには気持ちが良い。本来こういうときこそ慎重に降りなければならないのだけれども、足が次々に先に進み。地面にしっかり食いつく感触がたまらない。最後の紛れと、かなりやばい細い踏み跡を抜ければ、緑の落ち切った緑のトンネルを抜けて茶畑に飛び出した。
巨岩の三兄弟、櫛が峰が歓迎してくれた。ずんぐりの三男(実は長男?)もここからははっきりわかる。あののっぽの二人のてっぺんには立てることがわかったから。これから何度かお邪魔するだろう。櫛が峰とは対照的にぶなの木ルンゼ(筆者勝手に命名)前衛峰はちょっと冷たい感じだ。
木道の割れ目に注意しつつ、健脚・一般分岐へたどり着いた。ひと歩きして、大円地山荘前で無事を感謝して手をあわせた。
西金までのひと歩き、弘法堂へ寄って奥久慈男体山をはじめとする山々の全貌を拝むことにした。長福山から鷹取岩まで一続きのパノラマとして楽しむことができるし、山名盤まである。さらに弘法堂から林道へ合流する際に正面に飛び込んでくる鷹取岩と入道岩の岩壁には圧倒される。
もうひとつささやかな楽しみ、林道に合流して暫く行くと右手にちっちゃな滝がある。年末年始の寒気で凍結して1mほどのつららを作っていた。一人でささやかなつらら祭りを楽しんだ。そういえば亀が淵奥も凍っているだろうか、、、。
林道をとっとこくだり、118号横断の少し手前で振り返ると、奥から鷹取岩がまたおいでと呼んでいた。一礼して国道を横断した。
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