百里ヶ岳〜若狭駒ヶ岳☆新雪の山毛欅のトレイルに


- GPS
- 05:43
- 距離
- 13.3km
- 登り
- 990m
- 下り
- 998m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
この日は好天が期待される休日ではあるが、私の職場では容赦なく業務がある。若手は休む者はいないのだが、上級のスタッフはこぞって有給休暇を希望する。仕方がないので午後は自宅からのテレワークをすることにするが、幸いなことに仕事量は少ないので午前中は私も有給を頂くことにする。
確実に午後13時までに帰宅するということが山行の条件となる。木地山を起点とする百里ヶ岳から桜谷山を経て若狭駒ヶ岳への周回する江若国境尾根は実に都合が良い。というのは木地山に下降する尾根が何本もある。途中の与助谷山からの南尾根に始まり、東に向かってp432, p674, 9519を経由する尾根、いずれもが下降路となりうる。下降のエスケープ・ルートの選択肢がいくつもあるということがこういう山行では重要な条件と考える。
百里ヶ岳は先週の金曜日の午後にも訪れたばかりではあるが、今週の火曜日に京滋の北部を中心に降雪があったようだ。火曜日の積雪でどれほど回復したかも興味があるところだ。
早朝に家を出ると京都の市内では上空に星が瞬いている。R367を北上すると、坊村の市民センターでは早くも登山の準備をしている方がおられるようだ。しかし、高島に入ったところで本降りの雨が降り始めた。雨雲レーダーで確認すると百里ヶ岳のあたりは開始する頃には雨が上がるようだ。しかし比良はしばらく雨に見舞われることになりそうだ。坊村で登山の準備をされておられた方が心配だ。
朽木のコンビニで朝飯を買い、駐車場で簡単に食事をとるうちに雨は小降りになる。木地山に到着した時点では予報通り、すっかり雨は上がってくれる。
林道に入るとツボ足では踝以上に沈みこむ。期待通り、雪の供給があったようだ。早速にもスノーシューを履いて、植林の暗闇の中へと入る。東尾根は途中の小ピークp723に到来するのにほぼ平行に南北に二本の尾根がある。傾斜という点では北側の尾根が緩やかなのだが、こちらは尾根下部でユズリハの小藪があり、降雨直後に辿るのは避けたいところだ。先週に辿ったばかりではあるが、登山道が明瞭な南側の尾根を辿ることにする。
先週は数名のトレースがあったが、新たに降雪した雪がトレースをすっかり消去したようだ。それでも切り払いがされている登山道はわかりやすく、ルート・ファインディングに苦慮しない。しかし、足元の雪は相変わらず腐れ気味だ。先程までの雨のせいだろう。
この山域で驚くのは標高400m台からなだらかな細尾根に次々と立派なブナの樹が現れることだ。湖北の山々もかなり低いところからブナが現れるが、さすがは江若国境だ。
ca450mからp723にかけての急登が始まるあたりに来ると周囲は十分に明るくなり、ヘッデンの明かりを落とす。周囲の自然林はその多くがブナの樹だ。振り返ると東の空が紅に染まっているが、登るにつれて急速に色が褪せてゆく。この急斜面は尾根芯がいささか不明瞭だが、右手にあまり入らずに左側を歩く方がいいだろう。
ca723で小さながらも平坦なピークに到着すると、ここは否が応でも一息入れたくなるところだろう。均整のとれた何本ものブナの樹が自然と目を惹きつけるからだ。
尾根は緩やかになるが、斜面の右手から植林が登ってくる。早くも東の空から真っ赤な太陽が昇り始める。空気の湿度が高いせいで、太陽の色は赤いが、直視しても眩しさを感じない。
もう少し登れば東に展望が大きく開ける筈だ。なんとか早く展望地にたどり着きたいところではあるが、生憎、このあたりから急に足元の雪が深くなる。標高はca750mほどだ。
今朝までの雨がこのあたりでは雪だったからだろう。よく見ると、足元には降り積もったばかりの新雪の粒が見える。
展望地に出ると、朽木のあたりの雲海を朝陽が照らしている。その彼方で、琵琶湖の湖面がひときわ明るく黄金色に輝いている。ふと琵琶湖はこんなに遠かっただろうかと疑問が生じるが、よくよく考えて見るとこの百里ヶ岳は滋賀県が西に大きく迫り出したところに位置するのに加えて、安曇川河口域のデルタ地帯が琵琶湖の湖岸を東に遠ざけている。
朝日の右手、蛇谷ヶ峰のあたりは晴れて黄金色の空が広がっているが、その右手に見える筈の武奈ヶ岳のあたりから西側にかけては灰色の空が広がっている。
百里ヶ岳の山頂が近づくと再び広い雪原が広がる。上空では雲の間に青空も垣間見えるようになった。前回はここから三十三間山、三重獄、武奈ヶ嶽と大きな山容を広げる野坂山地西部の山々を望むことが出来たのだが、この日は雨雲が通り過ぎたばかりで空気中の水分が多いのだろう、これらの山々のシルエットはすっかり霞んでいる。
百里ヶ岳の山頂では山名標の埋もれ具合からすると、積雪は数日前よりも1m近く増えたようだ。
百里ヶ岳の西側にも尾根上にはしばらくはブナの回廊となるが、桜谷山に向かって尾根が北向きに方向を転じると途端に尾根の東側には植林が続くようになる。ここは昨年の初秋にも訪れているのだが、樹々が落葉するとブナの樹影の美しさが際立つ。
桜谷山の山頂が近づくと尾根の東側の植林が切れて、途端に樹高の高いブナの壮麗な樹林が広がるようになる。このあたりのブナの樹々が落葉していたのだった。果たして来年は元気に新緑の葉をつけてくれるか心配だ。
桜谷山の山頂からは若狭駒ヶ岳に向かって蛇行しながら東に向かう国境尾根を一望することが出来る。その彼方ではようやく野坂山地の山々が明瞭に姿を現す。
ここからは樹木が疎らとなるために尾根の雰囲気は一変する。トレースのない広い新雪の尾根を快適に進むが、随所でブナの大樹が現れる度に、語りかけられているような気がして思わず歩みを止めることになる。
ブナは樹林になると梢の高いところで枝分かれする箒状の樹影となるのだが、雪原の中に佇むブナの樹は四方に枝を伸ばし、個々の樹が個性的な樹影を呈するものが多い。
中間のピーク、与助谷山に向かって登り返しになると、再びブナの樹林となる。この山はピークの前後でブナの印象がかなり異なる。ピークの西側は梢が高い樹林を形成して、何とも壮麗な雰囲気だ。東側では
与助谷山を過ぎると、南側は再び植林地となる。北側はブナの樹林が続くので、専ら左手の方向を見ながら進むことになる。
中小屋尾根との分岐を過ぎると、南側の植林はなくなり、再びブナの疎林が広がる。尾根の左手には若狭駒ヶ岳から千石山へと続く北尾根、その彼方には久須夜ヶ岳を望みながら山頂への尾根を辿る。
若狭駒ヶ岳を昨年末に訪れた時には数多くのトレースがあったが、今日は若狭駒ヶ岳に至るまで、トレースは完全に消えている。無垢の新雪の尾根を辿る愉悦を堪能する。
若狭駒ヶ岳に到着したのは10時20分。このまま江若国境稜線を先に進んだところから下降したいところではあるが、国境稜線はラッセルによりスピードが出ない。時間的には短時間で下降することが期待できる中小屋尾根を下ることにする。
分岐までは先ほどの自分のトレースがあるので、快速で到達することが出来る。中小屋尾根を下り初めるとすぐに、かすかに風にのって女性の声と熊鈴が聞こえたようなような気がしたが、人の気配はない。どうやら気のせいだったようだ。
尾根の傾斜が緩やかになったp674のあたりで、休憩しておられた男性一人、女性三人からなる4人組のパーティーと出遭う。先方もこの時間に下山する者と遭遇することは予想外だったようだ。「昼過ぎから仕事があるので、間に合うように下山する必要があるのす」と申し上げると、その途端にリーダーと思しき男性の方が「もしかして山猫さん?」と仰る。
「先日のレコにもそのようなことが書かれていたので・・・」とのこと。確かに最近も仕事の前のスピード・ハイクのレコをいくつかアップしたような気がする。蓬莱山か武奈ヶ岳のレコだろうか。三国岳のレコは昨日の午後にあげたばかりのだが、流石にこのレコを読まれている可能性は少ないだろう。午後から仕事という人は世の中に少なからずいる筈だが、仕事の前に早朝から登山する人間は滅多にいないと推察をされたのだろうか。ご明察の通り、いかにも・・・我輩は山猫である。
リーダーの男性はヤマレコ・ユーザーのnakazo55さんであった。パーティーの皆さんはとても気さくな方達で、たちまちのうちに山談義に花が咲く。数年前の私の赤坂山〜野坂岳へのレコを参考にして下さり、このコースを縦走されたとのお話を頂いたのには私も驚いた。丁度、今週末に再びこのコースを縦走しようと考えていたところだったからだ。
パーティーの皆さんにお別れして、尾根を下降する。程なく尾根は再びブナの美林となる。標高は500m台に差し掛かったところだろうか、尾根がなだらかになると、この標高でこんなブナの樹林が、思うほどに端正なブナの樹林が続く。
尾根のca510mからは再び植林の中の急下降となる。このコースは少なくとも二回、渡渉する必要がある。最初は出合での東谷の渡渉、二度目は焼尾谷の渡渉となる。先程、お遭いしたパーティーの方達もなんとか渡れたが簡単ではなかったと仰っておられたが、確かにその通りだ。岩が苔むしたものが多く、すべて濡れていることもあり緊張を強いられる。
無事、焼尾谷の右岸に移ると、最後は麻生川にかかる小さな橋を渡り、木地山の集落に戻ることが出来る。どうも休日に仕事が入る日は悉く快晴となるのだが、この日も絶好の晴天が午後まで続いているようだ。
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