古道葛川越〜比良岳〜森山岳☆シャクナゲ尾根と裏比良の池巡り
- GPS
- 04:51
- 距離
- 12.3km
- 登り
- 1,076m
- 下り
- 1,066m
コースタイム
天候 | 曇りのち雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
日本海側を進む低気圧による季節外れの寒気が前日に引き続き、この日も本州に流れ込み、高山では雪の荒天となるようだ。この日は午前中は天気がもつかもしれないと期待して、前日に諦めた比良の山行に出かけることにした。
比良に向かうのニュースでは静岡で竜巻により車が飛ばされたり電柱が数多く倒された被害の
早朝の坊村の市民センターは普段でもこの時間帯にはかなり車が停まっているものだが、この日は二台ばかりであった。おそらくこの日の悪天の予報のせいだろう。珍しく人の気配のない
地主神社の右手の尾根に取付くと、明神谷林道のショートカット・ルートを辿る。もう長いこと明神谷林道のつづら折りを歩いた憶えがない。再び林道に出ると新緑が眩しい。覚照水で最初の急登で乾いた喉を潤すと、ペットボトルに水を補給する。
林道終点から白滝谷に入ると一気に緑の世界に飛び込むことになる。苔むした岩に降り注ぐ新緑のグリーンは春の陽射しによる透過光がなくとも十分に新鮮であり、感動的だ。ここ数日の雨のせいか白滝谷も水流が多い。葛川越の古道に入る前に登山道に沿って白滝谷に下降し、渓流の小滝や若葉を纏い始めたカツラの樹々の写真を撮る。
いざ古道に向かおうとしたところで、全くなんでもないところで足を滑らせて沢に足を浸してしまう。この日は軽量化を図ってトレラン・シューズだったのだが、普段履いている登山靴のヴィブラム・ソールに比べるとグリップの効かないことを考慮すべきであった。沢のほとりで靴下の水を絞る。しかし通気性・速乾性という点に関してはトレラン・シューズは優れているようだ。歩くうちに靴の中の濡れはすぐに気にならなくなった。
古道は杉の植林と自然林の境界をゆくので、古道の右手の斜面の新緑を眺めながら進むことになる。古道は杉の植林と自然林の境界をゆくので、古道の右手の斜面の新緑を眺めながら進むことになる。古道沿いにはピンク・テープが頻繁に現れる。前回、昨年の秋に辿った時には見られなかったように思うので、最近、どなたかがご親切にテープをつけてくれたのだろう。
古道沿いには次々と道標のように炭焼き窯の跡が連綿と現れる。まるで炭焼き窯の跡を縫うように古道が通じているようにも思えるが、実際にはこの道は琵琶湖側に炭を運ぶためのものでもあったので、道沿いに炭焼き窯が多く見られるのは不思議ではない。しかし、その本来の目的を失った窯跡は石積みの芸術品のようであり、この古道はで比良屈指の窯跡のギャラリーとも云えるだろう。
古道の周囲に見られるブナの樹々は新緑がかなり進んでいるようだ。やがて樅の大樹が旧街道の並木のように続く場所を過ぎると、台地状の緩斜面を通りすぎてクルシ谷の上流の二俣に出る。二俣と書いたがさらにその右手、左手にもそれぞれ谷があるので正確には四俣になる。
正面の左側の谷、四俣を右から三番目の谷が目指す葛川越への谷となる。しかし今回は谷に入ることを躊躇する。というのも谷の左岸の尾根で満開の花を咲かせたシャクナゲが数多く見られる。早速にも尾根を辿ってみる。
尾根は両側が切れ落ちたナイフリッジとなっている。尾根を登り詰めると比良岳の東峰(「比良岳」と道標のあるピーク)に出ることになる。一瞬、この尾根を辿ってみるのも悪くはないと思ったが、シャクナゲの藪漕ぎは通行に難渋する可能性があるので、それはまたの機会にとっておこう。
シャクナゲの枝を掴んで斜面を下降すると再び新緑の谷に降りたつ。尾根の源頭に近づくと新緑はまだ萌え出したばかりだ。所々でオオカメノキの白い花が目立つ。
葛川越からは琵琶湖の彼方に霊仙、御池岳までの好展望が広がる。琵琶湖の上に雲からこぼれ落ちた光が斑らに輝きを放っていた。比良岳への縦走路に入るとトウゴクミツバツツジには季節がまだ早かったようだ。尾根には次々と大岩が現れるが、岩の上からは烏戸山とその左手に武奈ヶ岳の展望が広がる。右手に本来なら伊吹山が見えるあたりが白く霞んでいるのは雨のせいだろう。
比良岳の山頂、前回は紅葉が真っ盛りの季節であったが、このあたりは新緑はまだこれからのようで林の中が明るい。比良岳の山頂直下の展望地からは正面に見える蓬莱山の斜面が黄色く染まっているのが見える。早くも水仙が咲いているのだろう。
比良岳の南西の斜面に入る。前回は右の谷、ボウダラ谷を下降したので、今回はおそらく無名谷と思われる真ん中の谷を下降する。ここを流れる谷とその間の尾根はいずれも共通して緩斜面にブナやカエデの疎林が広がり、なんとも素晴らしいところだ。おまけに林床を覆う草が景色に柔和な印象を与えてくれる。
白滝谷を下降して対岸の登山道に合流する。大神橋との標識があるが、橋は谷に落下したままだ。ここからは森山岳の北西尾根を目指す。
尾根を下から見上げると、まさにシャクナゲが満開だ。比良には釈迦岳のワンゲル道や堂満岳周辺などシャクナゲが綺麗に咲くところがあるが、この尾根は知られざるシャクナゲの名所といってもいいだろう。しかし知られていないのは登山道がないからだ。
三年前の今頃、やはりシャクナゲの満開の時期に辿ったことがある。シャクナゲが綺麗なのはいいが、シャクナゲの濃密な藪こぎを経験された方はご存知だと思うが、シャクナゲの藪はかなり手強い。
尾根の取付きのシャクナゲの藪を避けるべく、北側の谷に入渓する。谷相がよければそのまま谷を詰めても・・・と思っていたが、すぐにも大樹の倒木が大きく谷を塞いでいる。小滝を左から巻いたところで、新緑の葉が萌出したばかりのコアジサイが群生する右岸の斜面を鹿の踏み跡を辿ると、程よくシャクナゲの密生地帯の上部に出ることが出来る。
とはいえ、折角の満開のシャクナゲの花々を見過ごすこともない。微かな鹿のトレースを追ってシャクナゲの群落の中に敢えて突入してみる。折しも雲の間に広がり始めた蒼空から陽射しが差し込み、花盛りのシャクナゲをまるで照明器具のように明るく輝かせるのだった。
この尾根はシャクナゲの群生は忽然と終わり、下生の灌木の代わりに一面のイワカガミが広がる歩きやすい尾根に変わる。やがて尾根には樹木のない好展望地に出ると、正面には比良岳の眺望が大きく広がる。
尾根は傾斜が緩くなり、ブナの快適な樹林となる。森山岳の北峰に至るとブナの樹林が途切れて大きく展望が広がるようになる。比良岳の右手には再び鈴鹿北部の山が見える筈だが、先ほどまで綺麗に見えていた鈴鹿の山々も雨雲に烟っているようだ。この頃から急に風が冷たくなり、どうやら天気が崩れるのは予報よりも早そうだ。
森山岳西峰から武奈ヶ岳、彼方に江若国境の百里ヶ岳を確認すると早々に下山の途につく。森山岳と白滝山の間はいくつもの小さな丘陵が寄り集まって非常に複雑な地形を織り成すところではあるが、これまでに十回以上ここを歩いたせいもあり、GPSに頼らずとも地形を憶えているつもりだ。この日は最短コースで池を繋いでゆく。
まもなく前方からゲコゲコと蛙の鳴き声が聞こえてきた。声を頼りに容易に池に辿りつく。この池群の中で最も南に位置する池だ。まだ成長した蛙が少ないのだろう、鳴き声もまばらに聞こえる。
小さな丘陵を北側に越えると、次の池に出ることが出来る、音羽池とほぼ同じ大きの池である。
すぐにパラパラと小雨が降り始める。ここから東に谷を進むと小さな湿地を過ぎて小さな池が二つほど現れる。池というより水溜まりという感じかもしれない。池の周囲には緑の苔が綺麗ではあるが、池の水量が少なくなり湿地化したせいなのだろう。
再び北上して長池の南の丘陵からその姿を目にして愕然とした。年々、池の水量が少なくなっているように思われたが、池の西側半分が干上がり、草地に置き換わっているのだ。今年の冬の雪の供給が少なかったせいだろうか。最早、長池という名称を返上しなければならいような状態と云っても過言ではないかもしれない。
杉の樹が立ち並ぶスギヤ池の畔を巡ったのち、カラスゴ池の北側の緩やかな谷を登って音羽池のほとりに立つ。ここは昨年の秋に訪れた時には普段は黒々としている池面が一面のアオコに覆われていて吃驚したのだが、池は黒い水面を取り戻していた。しかし、池の水面をアオコが縁取っているのが不気味だ。アオコが増殖して昨年のような状態になるのは時間の問題なのかもしれない。
このあたりで急に雨脚が強くなってきた。白滝山に向かいたいところだったが、雨の冷たさが気になるところだ。白滝山を諦めて、その北西尾根に入ることにしよう。この尾根は杉の植林が延々と続く面白くない尾根ではあるが、しばらくの間は植林のお陰で雨が気にならないだろう。
植林に入ると確かに雨が気にならないどころか、樹上から滴り落ちる雨滴もない。さすがは植林帯と思っていると、いつしか雨も止んでいたのだった。結局、坊村に辿り着くまで雨は止んでいたのだった。坊村の駐車場には車が増えてはいたものの、普段よりはかなり少ない。流石にこの天気では登山客は少ないだろう。
温暖化の影響だろう、南の洋上の海水温が高いせいで今年の5月、6月は雨が多いそうだが、果たして果たして長池にに再び水が漲る日が来るのだろうか・・・などと思いながら、明らかに車の少ない国道を京都に向かうのだった。
※前回、紅葉の盛りに訪れた時のレコです。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2670176.html
コメント
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何度行ったか忘れた
それは数えていないからでしょう
とは言いつつも、私もヤマレコがなければ 思い出せません
初めて訪れたのは15年ほど前。ヤマレコはまだなかった。ここへ行くためにガーミンの高価なGPSを買った。なのに使い方に慣れてなくて迷いそうになった。とってもあせったのを覚えている。今じゃ携帯で楽々行ける。技術の進歩はすばらしい。反面、誰でも行けてこのすばらしい場所を秘密にしておくことができず残念でもある。教えたいけど教えたくない場所、それが森山岳。
以前のものと異なり、最近の地図では森山岳の山名も記載されるようになり、比良1000mピーク14座のうちの一つにも数えられるようになっているので、森山岳もメジャーになりつつあるのかもしれません。この山の界隈の静寂がいつまでも保たれて欲しいと願うばかりではありますが。
ヤマネコさん、おはようございます。
コロナ宣言下でのお気遣いが無ければお誘いいただけてたのかと思うと残念です。私の大好きな白滝谷から雰囲気のある峠・葛川越へ古道をいにしえに思いを馳せながら辿るコース、魅力的ですね!またそのうち訪れたいと思います。
それから森山岳とその北側の一帯は素晴らしいですよね。初めて訪れたときは山と高原地図だけ持って夫婦滝の方から長池までで精一杯、迷いそうになりました。
その後ヤマレコを始めて、スマホ片手に森山岳まで足を延ばせたのでした。flatwellさんのおっしゃる、誰でも、の一人です😅そのくせ、誰にも、教えたくないです〜
いえいえ uriさんはこの日は鈴鹿で「男達の一文字縦走」をご予定されていた筈なので、お誘いしてもご無理だったと思います
今回はクルシ谷の尾根に寄り道したりしているのですが、もしも辿られるとしたら、前回の山行では古道を忠実にトレースしているので、前回のレコを念のためリンクを貼っておきました。
歩けばすぐにわかりますが、音羽池から森山岳の間は地形が複雑すぎて地図には全く表現できていません。地図にはない小さな丘陵や谷が迷路のように入り組んでおり、最初はGPSなしに歩くのは無理でしょう。
初めて訪れた時、当時はなるべくGPSは見ずに地図とコンパスで歩く・・・と意地を張っていたのでした。雪深い冬の日でした。長男と家内と二つ手前のピークで分かれて、私一人で森山岳のピークを踏みにいったのですが、下山でショートカットするつもりが思い切り違う方向に迷い込んだのでした。GPSのお陰でなんとかリカバリーしましたが・・・私もその一人です。
山猫さん、こんにちは。
クルシ谷の尾根や森山岳北東尾根にもシャクナゲの群生地があるんですね。メモしておこう。
白滝谷から葛川越へのルートは、以前にも山猫さんのレコにて見させていただきましたが、古道で新緑の綺麗なルートですね。南北比べるとこちらの方に軍配が上がるかな。等高線もの間隔もこちらの方が密じゃないんでよさそう。途中のトラバース状の部分は注意も必要かな。
明神谷林道のショートカット・ルートを教えていただいてから、まだ一回もこちらへ行ったことが無いんです。あの舗装路のヘアピンカーブをショートカットできるのはいいですね。
ののさん コメント・・・それから昨年の新緑の葛川越のレコを憶えていて下さり、有難うございます。
今年は昨年よりも早い時期であり、ほぼ満開のシャクナゲに出遭うことが出来ました。
この古道のトラバース道は踏み跡を見失わない限り、クルシ谷まではとても歩きやすい道が続いています。行かれる際は何箇所か斜面を逆方向(左)に折り返す箇所がありますので、僭越ではありますが、小生のログが参考になると幸甚です。
レコにも書きましたが、森山岳北東尾根の取付きのシャクナゲは南比良屈指だと思いますが、シャクナゲの藪漕ぎは非常に難儀なので、出来ればこの取付きを巻いて、シャクナゲの群生の上に出るのがいいでしょう。
最近訪れていないのですが、比良岳の本峰と西峰との間の吊尾根の北斜面も良かったような。
明神谷林道のショートカット・ルートは一度知ってしまうともう林道は歩けなくなります。
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