鋸山−小鋸山・郡界尾根（千葉のグランドキャニオン水切れ撤退）
zaoluck
体力度について
- GPS
- 07:40
- 距離
- 14.8km
- 登り
- 1,091m
- 下り
- 1,086m
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標高グラフを拡大コースタイム
- 山行
- 5:30
- 休憩
- 2:07
- 合計
- 7:37
| 天候 | 晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2021年05月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
|
| コース状況／ 危険箇所等 |
・日本寺に700円払っていわゆる鋸山を通らないと、ロープウェイ側から林道口側へ抜けられません。 ・「東京湾を望む展望台」以東は道が不明瞭な箇所があり、ピンクテープに頼ります。林道口の先の郡界尾根はバリルートの範疇で完全にピンクテープが頼り。案内は豊富でも、小さいながら激しいアップダウンと岩場を経て小鋸山に至ります。”千葉のグランドキャニオン”の先の尾根も同様で、当方の脚力では水が切れなくても嵯峨山までの往復は厳しかったかもしれません。 |
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感想
相変わらずのコロナ禍で、わが千葉県は「まん防」下で不要不急の県外他出はご法度。思えば去年5月も同じ理由で高い山に行けず、思い立って房総の富山−伊予ヶ岳を往復した。そこで皆さんのレコを参考に、鋸山の東・郡界尾根を嵯峨山まで往復しようと目論んだが、思いのほかの嶮路と暑さで1.5L持参した水が底を突きかけ、白狐峠〜小保田峠の中間点付近であえなく敗退した。
無料の金谷海浜公園駐車場は朝8時からとのことだが、ゲートがあるわけではなく既に先客も駐車していた。海伝いに国道127号を歩き、左へ折れてロープウェー駅へ。運行前で静かな駅を横目に「第2駐車場」を目指す。バキュームカーがある二股を右へ取り、落石注意の黄色看板が登山道入り口だ。
いきなり苔むした石段が現れた。磨滅したのかステップが斜面側に傾いており、滑らないよう注意が必要だ。下りには使いたくない。しばらくすると右後方に金谷港が見えた。曇りの予報が良い方に外れて日差しに海が輝いている。ただ、5月にしては高温で蒸すのがつらい。
石段が終わるとほどなく尾根に乗り、南側の保田方面が見えた。たっぷり汗を絞られたので風が気持ちいい。尾根をひと歩きでロープウェー駅が見え、左へ回り込むと駅のトイレ前に到着した。リュックを置いて汗を拭っていると、どこからか猫が数匹寄ってきた。観光客におねだりして生きているのだろう。
駅正面の階段を登ったところが”ロープウェーの山頂”で、下の駅から浦賀水道方面までがよく見えた。本当の標高は270mもないが、海に近いから見晴らしは素晴らしい。写真に収めて先を急ぐが、道は徐々に保田側に下って有料道路終点の駐車場に着いてしまった。リサーチ不足でどうしたら本来の山頂方面に行けるのか分からない。窓口の男性に聞くと、地獄のぞきの山頂一帯は日本寺の境内で、そこを通らないと東側には抜けられない由。入場料700円を払ったので、その地獄のぞきに立ち寄ることにした。
小学生時代、大学生時代、さらにその後もう2回くらい来たことがあるはずだが、いつ見ても垂直の断崖には驚かされる。房州石を切り出した跡地なのだろうが、こんな所で作業していた人の神経は大したものだと思う。ここでこの日初めて女性2人のハイカーと出会った。
石段を下りると車で来たらしい観光客に出会った。マスクをしていないのでそそくさと立ち去り、百尺観音前の北口を出て登山道を下った。どこにも手を合わせていないから、700円は拝観料ではなく入場料となる次第。
急な石段を「まだ下るの？」と心配になるくらい下って関東ふれあいの道分岐に到着。右の石切り場跡方面へ向かう。途中、地獄のぞきの断崖を下から見上げることができた。標高差70mはあるだろうか。その先の「安全第一」と彫られた石切り場跡もなかなか見ものだったが、先に進めない行き止まりだったので、戻って「東京湾を望む展望台」方面の道を辿る。古い案内には「地球が丸く見える展望台」とあるが、大風呂敷が過ぎると指摘でもあったのだろうか。
車力道分岐の先から段差が30�僂發△覽泙弊价覆鯏个辰申蠅�その展望台入口。景色は帰りの楽しみに残して整備の落ちた道を急ぐ。階段が付けられた所もあるが、道形がはっきりせず木にピンクテープが巻かれた区間もある。
電波中継施設が見え、間もなく樹木に囲まれた本当の鋸山山頂に着いた。標高は本日最高峰の329.5m。小学生の姉妹を連れたご夫婦が「小鋸山行こうか」と話している。おや、子供連れでも行けるのか？と気が楽になったが、それほど甘いルートではないことは後から知ることになる。
進行右手下の方には、近年の砕石だか砂利だかの採取跡である巨大な池が緑の水をたたえているのが見える。そのさらに奥には、段丘状に山が削られた通称”千葉のグランドキャニオン”が広がっているはずだ。
先発した先ほどの家族を追い越し、標高200m付近まで徐々に下って鋸山林道口。3台ほど車が止まっており、先行していた女性が1台に乗り込んで去って行った。さて、時計を見ると計画より20分ほど遅れている。地獄のぞきの道草に10分、石切り場跡でも5分ロスしたとしてもスピードが出ていない。理由はこの暑さにある。時々立ち止まって汗を拭き、水を飲み、何より登りでスピードが上げられない。
とにかく行ける所まで行って昼にしようと決め、いよいよ正規ハイキングコースではない郡界尾根ルートに踏み入った。林道口を50mほど南に行くと小さな手製指導標があり、行く手に点々とピンクテープも見える。
地形図の228mピークに登り返して右に折れ、テープを頼りに尾根を進む。一昨年の台風によるらしい倒木が今だところどころ道をふさいでいた。露岩が現れ、ふと足元を見ると30mも切れ落ちていたりするので気が抜けない。かと思えば、急に高さ3mほどの切通しが現れて尾根から降ろされる。昔の峠道だろうか。右に道が続いているように見えて引き込まれそうになるが、すぐ向かいの尾根へ登る急斜面に取り付くのが正解だ。
道の険しさが増し、南側のキャニオンの視界が開けて正面に垂直の岩壁が見えた。足元には切れ戸。岩壁の上が小鋸山のようだ。ロープの力を借りて切れ戸を下り、木々にもつかまりながら岩場を登り返す。落ちたらシャレにならない箇所もあって、いささか緊張した。子供は身軽だからまず大丈夫だろうが、先の家族のように気楽に行こうかと言う感じの山ではない。最後の山頂の露岩に這い上り、ホッと一息ついた。
先着の男性と言葉を交わし、景色を堪能する。足下のキャニオンを除けば360度全部緑の山並み。ここからは房総半島の山深さが実感できる気がする。いささか疲れたので大休止していると、先着の男性と入れ替わりに地元のエキスパートらしき男性が現れた。
近くに実を結ぶ木は野生の山ビワで「ここらでは珍しくない」とのこと。詳しそうなので見えるピークの名前などを教えてもらった。去年、富山と伊予ヶ岳に登った際に一昨年秋の台風の倒木被害がひどかった話題を持ち出すと、「もうだいぶ良いですよ。私もボランティアで登山道整備をするけれど、行政は予算がつかないと動けないのでどうしてもスタートが遅れます」と解説してくれた。
ふとこの先のルートに迷ったとのレコを思い出し、白狐峠へのルートも確認した。山頂の露岩手前に北へ下りる隙間があり、そこから急斜面をトラバース気味に下っていくと教えてくれた。お礼を言って、その北斜面に取り掛かる。お助けロープが渡してあるが結構歩きにくい。雨が続いたらドロドロで大変になるだろう。
4分ほどで明るい所が見えてキャニオンの一角に躍り出た。草地を下って白狐峠。グランドキャニオンとはよく言ったものだと思う。どん詰まりの方へ歩いていくと、小鋸山で先行した男性が昼食の準備中だった。「暑いですねぇ」が挨拶言葉になるような気候で、気が付けば手持ちの水がだいぶ減ってきた。この先、脚力のほかに飲み水という制限要因も加わりそうだ。
声を掛けたついでに嵯峨山方面の道を尋ね、ピンクならぬ白テープを目印に背の高いススキの藪に突っ込む。藪を抜けると登り斜面となり、再び尾根に乗った所に小さな手製の案内板があった。再び白やピンクのテープを頼りに尾根を辿る。間違いやすい支尾根にはロープを渡して道迷いを防いでおり、本格的なバリエーションルートとは違うが、それでも時々道を失いそうになる。
11時を過ぎて腹もすいてきたが、とにかく喉が渇く。せめて小保田峠まで行こうと思ったが、足はともかく帰路の水が持ちそうにない。近くに飲める湧水があるでもなし、ここらで諦めることにした。ちょうど見晴らしのいい露岩に出たので折り返し点と決め、リュックを置いた。近くに程よい木陰もあり、昼食にはもってこいだ。岩をよく見ると、赤い文字で「ノコギリ山⇔サガ山」と案内が書いてあった。白狐峠と小保田峠のちょうど中間あたりまで来たことになる。
眼下はキャニオンのさらに奥に当たる開けた土地で、キャンピングカーと展望台のような別荘らしきものがあり、風の加減でかすかに声も聞こえてくる。その向こうには鋸山。南東側から見ると石切り場はなく、こんもりした緑の山にしか見えない。
コッヘルを持参しなかったので水は純粋に飲み水として消費するだけだが、ここまで我慢してきたので、お握りを飲み込むのと一緒にかなり飲んでしまった。下界に戻るまで3時間は固いのに、残りは400�佞曚鼻�そもそも持参した1.5Lが少なすぎたのだが、とにかく水を節約しながら戻るしかない。
帰りは30分に一度、一口水を飲むだけに制限して歩いた。南風が強まり、尾根を吹き抜けて体を冷やしてくれるのがありがたい。おかげで調子に乗ってキャニオンに下りる道を曲がりそこねて直進してしまった。同じミスをしたらしい若者とすれ違ったのだが、注意してくれるどころか挨拶もなしにスタコラ行ってしまったので、崖の上で立ち往生するまで気が付かなかった。
ススキの藪でも少し逡巡したが、何とか往路と同じルートを見つけて脱出。白狐峠に差し掛かると、前方で右に曲がるべき所を直進して行く先ほどの若者が見えた。声を掛けてやろうかとも思ったが、あえて別ルートを行くのかもしれない。様子を見ていると、スマホを見ながらうろうろした末に振り返った。その視線の先に当方がいたので正しいルートを了解した様子。というわけで特に声はかけずに先行した。
小鋸山の北斜面をロープにすがって急登し、2度目の頂上へ。今度は汗を拭く程度の小休止にとどめて先を急ぐ。といっても、岩場の上下は結構な体力勝負でスピードは出ない。渇きを我慢しながら30分近くかけて林道口に辿り着いた。水を一口飲んで一休み。足も疲れてきて、先ほど下りで右膝がズキンと痛んだ。最近疲れるとよく出る症状だ。
この先はまかりなりにもハイキング道なので、100m以上の登り返しとはいえ、いくらか歩きやすい。やっと鋸山山頂に着いてベンチにひっくり返った。幸い木陰の山頂なので水は我慢して風で体を冷やす。すると、耳元でと感じるほど大きな声で「ホーホケキョ！」とウグイスが鳴いた。驚いて見やるとほんの4，5m先の枝にとまっている姿が見える。声はすれども姿は見えずが通り相場なのに、ずいぶんと大胆なウグイス君のようだ。続いて到着した男性も気づいて2人してそーっと写真に収めたが、なんのことはない、立ち上がって出発準備を始めても我関せずとさえずりを続ける常識外のウグイス君なのだった。
東京湾を望む展望台には、家族連れや若者ら十数人が休んでいた。なかなかの絶景だが、当方は暑い日向に長くいられない事情があるので、すぐに引き返して急な石段を下った。当初予定の関東ふれあいの道ではなく、より近い車力道を下る。分岐で一口飲んだので、残る水はあと100�佞發覆ぁ�
車力道は上部こそ石段があったが、じきに傾斜が緩んできた。まだ三々五々と登ってくる人がいる。右膝に気を付けながらゆるゆると下ると、車の音が大きくなって館山道の脇に出た。舗装道路となって別荘らしい民家も現れたところで、安心して最後の水を飲み干した。
今回はとにかく渇きがつらかった。最初の自販機で買った麦茶を一気に飲み干し、さらにスーパー「太田屋」で炭酸水を買い足した。もちろん、足だけでなく上半身も総動員しての登攀だったので、相当の疲れはある。歩いた距離や標高差のデータ以上に厳しいコースだったと思う。鋸山を低山と侮るなかれ、だった。
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