京都北山/光砥山・小野村割岳から雷杉@巨樹を巡って花を探しに
- GPS
- 06:07
- 距離
- 16.1km
- 登り
- 784m
- 下り
- 774m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
早稲谷左岸尾根/取りつきは植林地の急登。尾根に出ると部分的に踏み跡はあり、難所やたいした倒木もなく、急登もなく概ね歩きやすい。日当たりのよい数箇所はややブッシュあり。上部に行くほど踏み跡は明瞭になる。 |
写真
感想
先週に広河原下ノ町を基点にして、光砥山に登ろうと予定していたのだったが、長雨の後ということで、普段は水量の少ない滝がいい具合になっているのではないかと思い、急遽大文字山裏の小滝巡りに予定を変更した。
その日はyamaneko0922さんが、まさに広河原下ノ町を基点にして、光砥山周回コースを歩かれていて、さらにuriuri4211さんもその数日後に、やはり同所基点で違うルートをたどり光砥山に登られている。お二方のレコを見て、わたしもやっぱり行きたくなってきた。
そして翌週の今回は、そのお二方のレコを参考に1週遅れで光砥山へと向かった。もちろんここに行きたいのは、あの花に出会えるかもしれないからだ。それに周辺の杉の巨木群も会える。
uriさんレコの早稲谷から滝やカツラの大木などを見ながら登ろうか、yamanekoさんレコの早稲谷左岸尾根を杉の巨木を巡りながら登ろうか、直前まで散々迷った挙げ句、今回は尾根道ルートをたどることに。
下ノ町から植林地の急登を登り尾根に取り付く。このあたり非常にギンリョウソウが多くみられる。真っ白なものから、半透明のもの、やや青みがかかったものまで、これを見ているだけで楽しく、急登のつらさは感じない。
P686でちょっとだけ東の尾根に入ってしまうといういきなりのルートミス。軌道修正して尾根を北に向かうと早くも伏条台杉が現れる。その後も次々に現れ、いきなり写真を撮るのに忙しい。
今回は巨木を広角で根元から見上げたい、また花のマクロ撮影もしたい、ということで、広角ズーム交換レンズ、クローズアップレンズ、それに小型三脚まで携帯している。それらを撮影の度にいちいちザックから取り出すのは面倒なので、それらを収納できる大きめのポーチを首から提げている。カメラも首から提げており、遠足のような格好だが、難所はないので問題ないだろう。
一旦大杉は姿を潜め平凡な尾根となるが、少し高度を上げると再び次々と伏条台杉が現れるようになる。
その先で人の声がすると思ったら、女性お二人が休まれていた。このルートで人に会うのは想定外。同じく光砥山に向かわれるそうだ。
ルートは時々明るく開けた場所を通り、その区間だけやや籔っぽいが、この尾根全般に倒木は少なく、難所といえるようなところもなく概ね歩きやすい。獣除けのネットが張られた箇所もあるが、すべて倒れてしまっており、その後修理もされず放置されている。
何本の巨樹を写真に収めただろうか、撮影に夢中になっていたので、しばらくGPSで位置確認をしていなかったが、P686以降初めてチェックしてみると、意外にももう標高が900m近くになっている。
次第に尾根の傾斜は緩やかになり、どっしりと広がってくる。林下であるにもかかわらず、ヒメワラビの新芽が顔を出し、地面の色彩も豊かになってくる。そしてほどなく光砥山に到着。誰もいない。
写真だけ撮って小野村割岳方面へと向かう。ゆっくり周囲を見回し、時には寄り道しながら。
この間も大杉は多く、時には下をくぐり抜けられそうな根上がり杉や、台座に多くの木や草を宿した台杉などが現れる。
途中、下ノ町でわたしと同時刻に出発して早稲谷林道方面に行かれた単独男性とすれ違う。早稲谷ではヤマビルは見かけなかったとのこと。天狗岳まで行かれるそうだ。
小野村割岳では男女3人が休んでおられる。
わたしもひと休みする。南に視界が開け雲取山だと思われる山頂部分の広い山が奥に見える。
ここで首に掛けていたタオルに大きなダニがついているのをみつける。見たことのないオレンジ色のツートーンカラーのダニだ。
帰ってから調べてみると、シュルツェマダニの雌で、ライム病やダニ媒介生脳炎を媒介するらしい。日本では主に北海道に生息しており、本州の標高の高いところにもいるようで、近畿では標高1500m以上に生息とされているのだが、ここは標高900mほど。生息域の分布図を見ると、確かに近畿では紀伊山地の一部に加えて、ピンポイントでまさにここ京都府北東部の狭い範囲が記されている。ここだけは例外的に標高の低い場所に生息しているらしい。
噛まれなくてよかった。わたしは18歳の頃マダニに噛まれたことがあり、その後原因不明の高熱が続いたためライム病を疑われたことがある。結局は違ったのだが、当時はまだライム病がほとんど知られていなかったこともあり、血液を海外にまで送って検査された。
小野村割岳で小休止後西へ縦走する。天候はずっと晴れ、気温は上昇しているだろうが、湿度が低いため特に暑さを感じず、風がないのにもかかわらずそれほど汗も出ない。寒がりで冷え性のわたしにはこれくらいが快適である。
このあたりは6年ぶりに歩くことになる。以前に比べると山全体が明るく感じる。またシンボル的だった朽ちたオブジェ風の木が6年の歳月でなくなっているなど、ちょっと以前と印象が違って感じられ、初めて歩くルートのような感覚になる。
P911の先で早稲谷右岸尾根との分岐。この尾根を下りようか、佐々里峠まで行こうか、直前まで迷っていた。
野暮用があるため、午後2時には下ノ町の駐車地に戻りたい。現在は11時40分。右岸尾根を下るのが無難だとは思いつつ、エイリアンの木や雷杉にも久しぶりに対面したいと思うと、足は自然に西へと向いてしまっていた。
バイケイソウの群落地を過ぎ、ひと登りすると通称エイリアンの木。これはもうその名の通り未知の生命の集合体。それぞれの生命力と順応性、寛容性とでも言おうか、絡み合い共存している。
さらにトチの木がある鞍部から雷杉へ。雷杉様お久しぶりです。まだまだお元気そうで何よりです。この木には毎回畏怖の念を覚えずにはいられない。
この先からは少し意識して足を速める。それでも時々写真を撮りつつ楽しむことは忘れない。
廃村灰野や大段谷山からの道と合流し、ブナの新緑を見上げてトラバース道を歩くとすぐに佐々里峠。
クルマが5台駐まっているが、小野村割岳からこの間、意外にも誰にも会っていない。
峠からは尾花谷を下ってもよかったが、近年の谷道の状況が分からないので、時間の読める府道を歩く。
花を写真に収めながらテクテク歩き、広河原下ノ町の駐車地に戻ると午後2時ちょうどだった。
気持ちのよい青空の下、お目当てのサルメンエビネの花にも会え、多くの巨木と語らいながらのよい山行だった。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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珍しく滝のカットが無いルート取りなんですね。情報が少ないマイナーなエリアで谷ルートは状態も解らず危ないですよね。
エイリアンの木も健在のよう。その名前はokaokaclubの哲郎さんが、私が命名したとか言っておられたのを思い出しました。そのルートは立ち入り許可の入る縁ルートなんですが、ちょこっと赤崎尾根を下って巨大芦生杉群生地へも寄りたいですね。内緒ですけど。
珍しいダニの写真。そんなの見たことがありません。危ないダニのようですね。
このルートは、佐々里峠にチャリデポして行こうかなと山猫さんやウリさんたちのレコを見てプランは作ってあるんですけどね。プランばっかりです(笑)
no2さん、こんにちは
今回は滝なしでした。何かひとつ物足りなさを感じたのはそれだったのかぁ、今やっと分かりました。なんてね
早稲谷上流は林道から見える大きめの滝の上にも連続して滝がかかっていると山友が言ってました。地形図を見ても滝がありそうなのはよく分かります。
エイリアンの木もすっかりその名に市民権を得たような。何をもって仮称なのか通称なのか正式名称なのかは分かりませんが、このあたりを知っている登山者なら誰しもが知っている名前となりましたね。
今回もう少し時間があれば赤崎尾根に迷い込む予定だったんです。由良川沿いにも迷い込みたいし、櫃倉谷にも迷い込みたいです。
わたしもプランはたくさんあるのですが、なかなか追いつきません
盗掘など人間の仕業では無く、鹿の食害によって数が減ってるのだと聞きましたが、登山道付近だけでそこそこ見つかることからして、私たちの目の届かないところに沢山咲いていてくれてる事だと願いたいですね。
なるほど!巨木との語らいですか。
まるで台杉の写真集のように沢山の素晴らしい写真を載せていただき楽しませていただきました。台杉のことが大好きでブツブツ話しかけておられる姿が目に浮かびます。
立ち枯れたものも含めて伏条台杉の様々な形状の姿を見ていると、樹も生き物なのだなぁと改めて強い生命力を感じます。
それにしてもHBさんの写真が美しくて感動しています。カメラの性能や撮影の腕前が素晴らしいのは勿論なのですが、素敵な被写体を見つける視点、気付き、感性みたいなものが明らかに私とは段違いですね。
こういう写真が撮りたいなぁと思います。
ちなみに、特に#81の九輪草が好きです。
uriさん、おかげさまで出逢えました。ありがとうございました。
山で出逢える花の中でもラン科の花は特別感がありますね。出逢えたときの喜びは大きなものです。
この花の減少もやはり鹿の食害が原因ですか。普通に見られる花は全部鹿にとって毒か、食べるに値しないものばかりです。今回、花の横には鹿の糞がありました。
巨木もいいですよね。見つけると抱きついてしまいます。uriさんのレコを拝見していると、ブナの巨木がよく登場するので、参考に行かねばと思うばかり、no2さん同様プランが山積みです。
もっともっと山で写真を撮りたいと思うのですが、いざ山に行くと、写真をゆっくり撮りたい、でも(カメラをザックに収納して)体育会系に激しく歩きたい、この相反する行為の葛藤があります。
でも、もともと天邪鬼な性格なので、ひとと違った写真を撮りたいとか、ひとの歩かないコースどりをしたいとか思うから、感性があるかどうか分かりませんが、写真を撮るときもちょっと意識していることがあるのかもしれません。
自分では#46#68#76あたりが気に入っています。#81はわざと花を端っこに入れました。
遅コメにて失礼します。
引用有難うございます。少しでもレコがお役に立てることがあれば幸甚です。
>・・・この相反する行為の葛藤
私もしばし同様の葛藤を抱える結果、どちらも中途半端なものになるのですが。却って花のない冬の季節の方が立ち止まることが少くて、無心に長距離の山行が出来たりするのかもしれません。
同じ日、三国岳〜天狗峠を歩いておりましたが、こちらでも鹿に齧られたと思われる花茎をいくつか見ることになりました。話は変わりますが、百里ヶ岳のあたりはニッコウキスゲの群落があり、この花の西限だったそうですが、今や鹿のせいですっかりなくなってしまったそうです。それもこの数年の間の話・・・
その一方で鹿が食べないクリンソウはあちこちで増生しているようですね。クリンソウが繁茂するのは鹿が増えている場所と一致するとか。
いつまでも北山でこの花に出遭うことを願って、毎年の今頃、この山域を歩くのですが、巨樹に出遭えるのもこの山域を歩く喜びの一つですね。
おかげさまで、お猿さんにも出逢え、満足行く山行となりました。
確かに、花の時期以外のほうが無心に歩けますね。わたしの場合、谷道を歩くと花と同じように、滝にも気をとられるので、正確には花の時期以外で滝のないルートは……といえるかもしれません。
百里がニッコウキスゲの西限だったとは知りませんでした。40数年前には確か演習林の中のツボ谷源流が西限だと言われていました。ここには実際に探しに行ったことがありますが、出会うことはできませんでした。
このように気候変動とそれに伴う動物の生息範囲の変化などで、植物の生息域がどんどん北上?もしくは狭くなっていくのでしょうか。悲しいことです。
わたしもこの花(猿)を毎年訪れて見守っていきたいと思っています。
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