赤湯温泉〜苗場山ピストン
- GPS
- 12:52
- 距離
- 23.0km
- 登り
- 2,086m
- 下り
- 2,061m
コースタイム
- 山行
- 9:50
- 休憩
- 1:21
- 合計
- 11:11
天候 | 2日間とも快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登山ポストは小日橋横にあります。 赤湯温泉までの林道&登山道はよく整備されており、危険箇所は特にありません。 赤湯温泉から苗場山山頂台地までの昌次新道(しょうじしんどう)は、雪はほぼありません。ただ、台地直下の鎖場には雪庇が残っていて登山道を塞いでいましたが、雪庇脇の熊笹をひっつかんで上がれました。6月中には融けてなくなると思います。 |
写真
感想
赤湯温泉のことを知ったのは、3,4年前に電子書籍アプリのお試し読み放題で読んだ、昭和30年代前半の日本奥地紀行を綴った「日本の秘境」(岡田喜秋著)という本でした。ネットで調べてみると、登山記録が色々出ていたり、HPもちゃんとあったりで知る人ぞ知る秘湯としてけっこう有名ということを知るに及んで何としても行きたいとずっと思い続けてきて、自分の境遇や色々なタイミングが合って、今回やっと叶いました。
これまで宿泊を伴う山行はすべてテント泊で、山小屋には一度も泊まったことがありません。理由は簡単で、協調性がまるでないため、1枚の布団を赤の他人3人で分け合うとか、消灯時間が決められているとか、トイレに行くのにも気を遣うとかの山小屋泊あるあるが嫌でたまらないからです。なので、少し沈静化してきたとは言え、まだまだコロナ禍の今なら逆にもしかしたら空いているかもと思い、うまくいけば個室の可能性もありかという甘い考えの下、予約の電話を入れたところ、当日の宿泊客は自分1人だけとのこと。安堵をあっさり通り越して、かえって自分1人のために小屋を開けて待っていてくれるのかと思うと申し訳ない気持ちにさえなりましたが、それも一瞬だけで、ワクワクして当日を迎えました。
ということで、今回の山行は赤湯温泉山口館宿泊がメインではありますが、山に登らない山行は自分的にはあまりにも物足りないので、おまけとして苗場山にも登ることにしました。
小日橋から林道終点までは林道だけに歩きやすく、何だか奥多摩の三条の湯へ向かうときのお祭り登山口から片倉谷ゲートまでの道のりに似ています。棒沢橋を渡ると本格的な登山道に入ります。本格的といっても30分ほどで赤湯登山道最高点の鷹待峠(1184圏)に到達して、後は細かいアップダウンはあるものの、見返り松を経て赤湯温泉まで山腹トラバースで緩やかに下っていきます。赤湯2号橋を渡って川沿いの露天風呂を横目に歩いていくと赤湯温泉山口館です。場違いな「ご神体」が異様な気配を醸し出しています。建物は思っていたより大きく立派でした。入口でブザーを押すと、「はーい!」と元気な声がして「ニコニコいい人オーラ全開」の女性が出てきてくれました。予め話が通じているようで「気をつけて苗場山まで行って来てください」とザックの中身を預かってくれました。
小屋前の岩だらけの河原で、持参したパンの朝飯を食べてからいよいよ苗場山へ向けて標高差約1100mを出発です。まず、赤湯1号橋で対岸に渡って100mほど登ると赤倉山分岐に出ますが、またすぐ九十九折りを下って河原に下りまた橋を渡ると、苗場山への登山道がスタートです。苗場山まではすべて樹林帯の中を登って行きますが、一本調子の登りではなく、九十九折や直登系の登りがしばらく続いた後は今度は緩やかな尾根歩きになったりの繰り返しで飽きません。途中、お助けロープが垂れ下がっている急登がいくつかありましたが、結局、登りも下りも使うことはありませんでした。登山道脇には色々な高山植物が咲いていて、片っ端から写真を撮りまくりましたが、情けないことにシャクナゲ以外何一つ名前が分かりませんでした。苗場山頂台地直下の登山道は鎖場になっていましたが、グズグズ腐れ雪の雪庇に覆われて塞がれて直登はできそうにありません。雪庇の下は雪が融けて空洞になっていましたが、その下を潜っていくような勇気はサラサラなく、雪庇と岩場の境目に自生している熊笹を掴んで体を引き上げればさほど苦もなく台地に出られました。
山頂台地は所々まだ雪田が残っていて、どこが木道かわからないようなところもありましたが、ショートカットできる分、歩くには苦労しませんでした。池塘が広がり針葉樹が点在する台地は見ごたえがありましたが、全体的に枯れ色で先日訪れた尾瀬ヶ原と比較すると荒涼感が漂っているように感じてしまいました。苗場山頂ヒュッテに着くと、ヒュッテ前のテラスで鼻歌を歌いながら、何に使うのか藁を1本1本ハサミで切っている、話しかけるには少しクセが強すぎそうなおじさんがいましたが、どうしても山バッジが買いたかったので意を決して声をかけてみると果たしてヒュッテの関係者でした。テラスのベンチで昼ご飯を食べた後は、苗場山山頂まで行って写真を撮ったり、日向ぼっこしたりして1時間ぐらいウダウダした後、下山開始です。
山に行くといつもそうなのですが、登りのときより下山の方が時間が長く感じてしまいます。実際には物理的にみても下りの方が早いのは自明なのですが、なぜだか下りの方が長く感じてしまうのです。原因のひとつには自分自身が登りより圧倒的に下りが苦手ということがあるような気がしています。山に行く度、少なくとも最低1回は下山のときに足を滑らせて転んでしまうジンクスがあります。今日はそうならないよう、慎重に慎重に下ったせいかいつもより尚更長く感じましたが、赤湯1号橋まで一度もコケずに戻ってくることができました。
しかし、好事魔多し。ジンクスは繰り返すからこそジンクス。山小屋まであと50mもない河原の岩場で足を滑らせてバランスを崩し転倒。頭を岩にしたたかにぶつけてしまいました。悪態をつきながら額を押さえると、ヌルッとした覚えのある感覚とともに血がボタボタと岩に滴り落ちました。一般に頭部は皮膚直下に多くの血管が走り、皮下脂肪も薄いことから傷のわりに出血が多くなるということは知っていましたが、想定以上の出血と、なかなか止まらないことに我ながら焦りました。数年前、台風直撃下の涸沢カールでテント用のベニヤ板を運搬中に板ごと岩場に吹き飛ばされて頭から大出血して以来の久しぶりの負傷です。血だらけの手拭いを頭に巻いて、小屋番の方に帰還とケガを報告すると、絆創膏を持ってきてくれただけでなく、治療を手伝っていただきました。本当にご心配とお手数をおかけしました。
宿泊客は私1人とのことで、本館・別館含め部屋はどこでも選び放題ということでしたので、小屋番さんイチ推しの別館2階の部屋にしました。10人は余裕で寝られる広さに私1人という超贅沢な仕様です。照明はランプ1つ。照度はあまり高くないので、暗くなったら寝るしかやることがありません。
さて、よくよく見るとけっこう傷口が深く大きいことに改めて驚きながらも、ようやく出血も止まったことから、汗だくの服を脱ぎ捨てて温泉へ。まずは茶色い玉子湯から。時間や季節によって温度が変動するとのことでしたが、今日はぬるめの湯温で長湯ができない私でもまったりと浸かることができました。続いて薬師湯へ。半濁の湯色で玉子湯より熱め。しばらく浸かっていると、汗とは異なる感触が顔を伝います。湯に浸かって上気したせいなのか、止血したはずの傷口がいつの間にやら再び開いて再出血。急いで湯から上がって、絆創膏の上からホワイトバンテージをベタベタ貼って強引に止血。時折、血が垂れてきましたが、もう気にしないことにしました。
お待ちかねの夕飯は18時から。全部美味しかったですが、中でも山菜の天ぷらとタケノコの味噌汁はとても美味しく、何年かぶりにご飯もお代わりして満腹になりました。夕食後はお茶をいただきながら小屋番の方から色んなお話を伺いとても興味深かったです。今夜は晴れているので星がよく見えるだろうから、夜中、行燈を灯して風呂に入るといい、と勧められましたが、部屋に戻ってひと心地ついたら、前日からの寝不足と登山の疲れとランプの柔らかな明かりのせいで、急激に睡魔が襲ってきていつの間にか寝落ちしてしまいました。
翌日は朝4時過ぎに目が覚めたので、着替えやザックの中身を整理した後、昨夜入りそびれた「青湯」に浸かりにいきました。「玉子湯」「薬師湯」「青湯」の3つの温泉のうちではこの「青湯」が温度も泉質も自分に一番合っているように感じがしました。
紅葉の時期になったらもう一度来ようと思います。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する