御嶽山(五の池小屋泊)


- GPS
- 14:13
- 距離
- 13.9km
- 登り
- 1,451m
- 下り
- 1,472m
コースタイム
- 山行
- 6:36
- 休憩
- 1:38
- 合計
- 8:14
- 山行
- 4:50
- 休憩
- 1:06
- 合計
- 5:56
天候 | 晴れ時々雷雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2021年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
コース状況/ 危険箇所等 |
よく整備されている 白竜教会避難小屋から五の池小屋までの道に少し岩場あり |
写真
ここは早く通り過ぎた方が良い、と五の池小屋で一緒になった人が教えてくれた。2013年(噴火前)のNHKBS「にっぽん百名山」でも、ガイドさんが同じことをお話ししていた。
受付前に、濡れたカッパなどを干させてもらった。スタッフさんたちのあたたかいお気遣いに感謝!
ザックの背中もぐっしょりだったが、乾燥室のヒーターが強力ですっかり乾いた。ありがたい。
部屋は四人寝られるスペースを二人で使わせてもらえた。
スペースごとに電源があったので助かった。(消灯まで。)
雲行きが怪しくなってきたのでロープウェイで下山。途中、雨が激しくなってきた。
ロープウェイ山麓駅に到着後、しばらくしたらロープウェイが止まったとのこと。間一髪だった。
装備
個人装備 |
Tシャツ
アームカバー
ソフトシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
日よけ帽子
着替え
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
昼ご飯
行動食
非常食
飲料
ハイドレーション
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ストック
ナイフ
カメラ
ヘルメット
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感想
リーダーとの山行のための休日合わせにはいつも苦労するのだが、7月に3連休が重なることが分かった。北アルプスも候補だったが、リーダーが早々と木曽御嶽の五の池小屋の予約をゲットしてくれたので、この機会を逃すことはできないと、御嶽山行きを決定した。
小屋では十分な感染対策をしているらしいが(それも行くことを決めた理由の一つ)、布団は供与されないので、寝袋とマットを持参しなければならない。脚力のない筆者らにはかなりの負担となる。泥縄的に近所の低山でボッカ訓練の真似事などしてみたが、てきめん筋肉痛に陥った。余裕のある行程にはしてみたが、不安はつのるばかり・・・。
余裕のある行程にしたので、前日は木曽福島駅近辺泊りである。筆者はリーダーより前に宿に入り、夕食に出かけようとしたのだが、リーダーから電話があり、予定した列車が局地豪雨で運休になりそうだとのこと。今日木曽福島に来られないと予定・行程の組み換えが難しく、これは山行自体が中止かもしれんなあ、と思いつつ、悩んでもしょうがないので、数少ない営業しているお店に入った。このお店、「だんぢり」さんのホスピタリティがすばらしかった。食事もよかったが、当日、地元の花火大会が開催されていて、店の外に席を設けてくれたのだ。リーダーが地団太踏んで悔しがることを少々後ろめたく思いつつも、でもあんまり気にせず、その特等席で花火を見ながらゆっくり飲食させてもらった。すばらしい時間でした。ありがとうございました。
さて、遅れに遅れてリーダーが11時前に木曽福島駅に到着し、山行は予定通り決行出来ることとなった。よかったよかった。翌日は我々の弱い脚力をカバーするために早朝にタクシーを利用した。少々お金はかかるが止むを得まい。ロープウェイ山麓駅まで1時間弱。到着すると駅前の駐車場にはもうかなりの車が停まっていた。7時運行開始だがすでに乗り場前に人が並び始めていて、我々も並ぶことにしたのだが、そこから真っ青な空を背景に御嶽のいくつかのピークを見上げることが出来た。
山頂駅に15分程度で到着し、高度慣れするためにゆっくり準備をし、予定より15分早く、7:45に出発した。歩き始めは平らな木片チップを敷いた道である。こういうケースでは砂利を敷くものだと思っていたが、砂利を持ち上げるよりは何らか不要になった木を木片化して敷くほうがいいのだろうか。そんなことを考えているうち、すぐに7合目行者山荘に着いた。
7合目から8合目は広葉樹の森から低木に変わっていく道である。ところどころにやや急な部分もあり、いつもより大きなザックが重いが、木の葉の間から見える空は真っ青で気持ちがいい。ちょっと上が開けた場所で振り返ってみると中央アルプスが雲の上に浮かんでいた。
8合目到着。ここは女人堂と言うらしい。明治初期までは女性が登るのを許可されたのはここまでだったらしい。いまやここを越えていく人は女性の方が多いのではないだろうか。ここから先、仏像(あるいはお地蔵様)が至る所に現れる。さすがに信仰の山である。白装束の人にも出会った(抜かれた)。地下足袋で、かつその足袋が全然汚れていない。きっと歩き方が上手なのだろう。筆者の登山靴はまだそんなに古くないのに傷だらけである。きっとつま先が上がらなくなっているのだろう。ああ、もうすぐ転ぶな。この歳で転んで大けがしたらもう登山は出来ないかもしれん。いやそんな訳にはいかない。まだ登りたい山はたくさんある。と、妄想に入りかけたところで8合目の休憩が終わった。
8合目を過ぎると、森林限界を超え視界が広がる。下にはロープウェイ駐車場や木曽川も見えてくる。この辺が苦しいところである。脚の疲労の蓄積を感じる頃、9合目の石室山荘に到着した。ここは登山道がそのまま山荘の中に通じている面白い構造で、そのまま休憩できるようになっている。ここで行動食などをとり、新規購入したヘルメットをかぶることにした。あとから写真を見るとひ弱な地球防衛軍のようだ。いやマスクもしているので60〜70年代の過激派のほうが似ているかもしれない。いずれにしても出来る限りの安全対策をして登山再開。
そしてここからがまた長くてきつい。黒沢十字路の辺りでは雨もパラついてきた。これは急にザーッとくるかもしれない、ということで雨具を着込み再出発。ようやく剣が峰山頂手前までたどり着き、14年の噴火災害の慰霊碑とその隣のシェルターを見た。あの衝撃的な災害からもう7年近くも経つ。山に登る者として、様々な教訓をしっかり胸に刻むとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
剣が峰の山頂に行くには慰霊碑の隣のちょっと長めの石段を登らねばならない。これが相当きつい。新型コロナワクチンの2度目接種の副反応並みにキツイ。が、なんとか脚がつる前に山頂に着いた。山頂にはこれがまたしても神社があるんですね。誰が運んだのですかね。でも山頂直下には小型であるもののショベルカーもあったのです。誰が運んだのですかね。いやそんなこと考えていると地下鉄漫才並みに夜も眠れなくなるので止めておき、山頂からの景色を写真に収めることにした。直下に望める一の池も二ノ池もグレーに濁った色で、これは噴火の影響なのだろう。すでに空には全面雲が掛かっており、眺望も望めないので、少々休憩したら下山することにした。
下山を始めるとすぐに山頂で見かけたがっちりした男性と俊敏そうな女性のトレラン・ペアが軽やかに我々を追い越していった。少し下りるとリーダーが二の池小屋に降りる近道を発見! いや、筆者が不注意なだけで近道というより普通のコースのようだったのだが、この道を通り、二の池の砂浜のような通り、二の池本館に到達し、でも、もうちょっと先の二ノ池ヒュッテまで行くことにした。ところがその数分後に急に大粒の雨が落ちて来て、フードをかぶる間もなく(ヘルメットつけているとかぶりにくい)、慌てて二ノ池ヒュッテに駆け込むことになった。相当降ってきたので、ここでトイレを借りて、ちょっと休憩させてもらった。トイレを借りただけにも関わらずとても親切に対応いただいた。ありがとうございました。
しばらくすると雨が上がったようだった。これは結構ツイているぞ、と思いつつ登山再開。ここから三ノ池方面に少し下るとサイの河原と呼ばれる場所を通る。まさに河原のようになっていて、いくつものケルンが積まれ、その上にお地蔵さまが鎮座している。あとから聞いたのだが、この場所は早く通り過ぎた方がいいらしい。賽の河原は、親に先立って死んだ子供が行く場所で、親の供養のために石を積んでも鬼が出て来て崩され、それが延々と続くという辛苦を負わされるらしい。そういえば、人は皿洗いの果てに死んでいく、と書いたのは朝吹真理子氏だったか。死んでからの石積み。生きているうちの皿洗い。どちらも延々と続くのは辛そうだ。雷鳴も聞こえており、今にも降り出しそうだ。先を急ぐことにした。
白竜教会到着。字面からキリスト教会が建っていることを想像してしまったが、そうではなく、その団体が所有する非難小屋がそこにあるということのようだ。ここを過ぎたところから大粒の雨が降ってきた。すでに剣が峰山頂手前から雨具は着込んでいたが、今度は土砂降りに近い。雷も近くで鳴っている。これは尾根筋を通っていくのは危険だと判断し、三ノ池側を行こうとしたが、雨がひどい。で、白竜教会の避難小屋まで引き返し、そこで雨宿りすることにした。ものの5分雨に降られただけだが、ザックはびっしょりである。五ノ池小屋に着くのが遅れそうなので電話しようとしたが電波が届かない。かれこれ30分ぐらい待機することになってしまった。
さて、雨も上がってきたので、出発することにした。この避難小屋があって本当に助かった。いつ再び雷が鳴るか分からないので、三ノ池側の道を行く。三ノ池は青くきれいである。岩場を下り、ちょっと緊張するトラバースをして、ひと尾根超えると、五ノ池小屋が見えた。
五ノ池小屋到着。一度は来てみたかった、TVや雑誌でよく取り上げられている山小屋である。到着するとすぐ乾燥室に案内してくれ、濡れた雨具を干させてもらった。ザックがびっしょりだったので、筆者などは結局中身を全部出してザックも干させてもらった。一息ついてから小屋の周りを散策した。三ノ池はとても美しい。小屋の前から見る摩利支天も素晴らしい。裏の「飛騨山頂」という小ピークの途中にコマクサが一株だけ咲いていた。小屋の方によれば少し前に雹が降ってだいぶやられてしまったらしい。雷鳥も小屋の前の五ノ池のあたりに出没するとのことで、夕方なので出てこないかと期待したが、またしてもこの希少な鳥との対面は出来なかった。残念。
五ノ池小屋の魅力は周辺景観だけではない。夕食も手の込んだ美味しい料理だったが、薪ストーブで焼くピザは夕食後の楽しみとして名物になっているらしい。しかし、夕食後にリーダーと2人でピザ1枚食えるのか?と思っていたら、夕食で一緒の席になった方がピザをシェアしないかと誘ってくれた。その方は五ノ池小屋の常連で、小屋のことも御嶽のこともいろいろ教えていただいた。ありがとうございました。 で、ピザは絶品であった。何がって、焼き立てのクリスピーさがたまらん!やっぱり焼き物は遠火の強火である。しかも焼き立て。この味を求めて小屋に通うのもわかる。筆者は怖い目に変わりつつあるリーダーを横目に、食事前のビールに続いてピザのお供にワインも頼み、充足したディナータイムを過ごしたのだった。
翌朝、筆者はもたもたしていて日の出を見逃した。ちょっと遅れて出てみると東側も西側も雲海である。久々に見る雲海。そこに浮かぶ中央アルプス。その下に藍色の三ノ池。いやあ、素晴らしい。昨日雨に降られたことなどすっかり忘れさせる眺望。しかし、今日も雷予報は出ている。早く出発したいところだが、例の薪ストーブではアップルパイを焼き始めているではないか。くうーっ、食べるべきか、食べざるべきか、しかし、ハムレットのように迷う訳はない。食べないわけにはいかんでしょう。ということで、アップルパイが焼きあがるのを待ち、トイレが近くなるのを承知でコーヒーを頼み、雲海を見ながら小屋前テラスでの至福の数十分を過ごしたのだった。
それでも予定時間よりは少し早めに出発することが出来た。帰りは摩利支天経由で下山する。なので、まずは摩利支天に登る。登り始めると背後に乗鞍岳と北アルプスが見えてきた。徐々にせり上がってくる雲との競走である。振り返りつつ摩利支天乗越まで登った時にちょうど雲が押し寄せてきた。ギリギリ北アルプスの全景を望めた感じだった。そこから摩利支天山頂までは30分程度、山頂は狭く、高所恐怖症の筆者は箱に入っているマジシャンのアシスタントみたいな格好になりながら山頂証拠写真を撮った。でも何のことはない、怖がらずにちょっと態勢を変えれば普通に撮れるのだった。
山頂からの道には、たくさん花が咲いていた。筆者は、シナノキンバイとミヤマキンバイとミヤマキンポウゲの区別がつかない。しかしである。このほかにミヤマダイコンソウというのもあることを知った。くそお、フランス語の基本動詞の活用も覚えられんのに、黄色い花の活用(じゃないだろ)まで覚えられるか。でもたくさん咲いているのはミヤマダイコンソウのようだった。葉が丸い。花はミヤマキンバイによく似ているけれど、ちょっと小さいのかな。根が大根に似ているからその名がついているらしいが、抜いて確認するのは犯罪である。
摩利支天乗越に戻り、昨日雨宿りした白竜避難小屋を経由して賽の河原を通り、二ノ池小屋に向かう。ここの登りもじわっと脚にくる。さすがのリーダーもちょっと疲労が出てきているようである。ではあったが二ノ池本館到着。建屋の外のベンチで一休みしていたら、五ノ池小屋でお世話になった常連さんが追い付いてきた。常連さんは剣が峰に行ってから降りるという。我々は直に下山である。昨日のお礼をもう一度行って別れた。
ここからはずっと下りである。黒沢口登山道に入り、昨日来た道を戻る。9合目の石室山荘でヘルメットを外し、8合目の女人堂でイワギキョウの写真を撮ったりしながら降りたのだが、途中、慰霊登山と思われる方も登ってこられた。登山には最大限の準備と最大限の注意を持って臨まなければならないことを改めて思った。8合目を過ぎると、急にリーダーのペースが速くなった。二ノ池小屋まででは疲れていたようだったのに。え、早いんじゃない?というと、雨が降り出しそうだから、との答え。そうかやはり筆者よりははるかに体力が残っているようだった。まあ、ちょっとペースを遅くしてもらって(助かった)、下っていくと、何組もの行者さんたちとすれ違った。一組の行者さんたちは「ろっこんしょうじょう」と唱和しながら登っておられた。その最後尾のリーダー格(or指導者)の方とは、いかにもコロナ下なのだが、グータッチまでしてしまった。しかし、「ろっこんしょうじょう」とは何ぞや?後から調べるとどうやら「六根清浄」という漢字になるらしい。つまり人間の5感および想念から不浄を断つ、ということで。志賀直哉の暗夜行路にも出てくるらしい。加えて「六根清浄」→「六根浄」→「どっこいしょ」に変化したともいう。ほんまかいな?筆者もいつも間にか立ったり座ったりするときに「どっこいしょ」と言ってしまう年代なのだが、不浄を断っている意識は・・・まったくない。
そんなことで、リーダーの心配していた雷雨に遭遇する前にロープウェイ駅に到着した。駅のカフェテラスで昼食をとることにしたが、筆者はいつものようにリーダーの目を見ないようにしてビールを注文して満足していると、遠雷が聞こえるような気がした。さすが霊山、リーダーの想念が山に届いたりして、とか思っていたら、本当に雲行きが怪しくなってきたのでロープウェイが止まる前に降りることにした。ベルリオーズなら3楽章のティンパニの遠雷が聞こえたら次は4楽章の「断頭台への行進」である。これはただでは済まない。果たしてロープウェイに乗り込むと雨が降ってきた。山麓駅からバスが発車するころにはロープウェイが止まっていた。いいタイミングで降りてこられたようだ。でも、こういうケースでは九死に一生を得たとは言わない。雷が怖いのは山だけではない。家庭でも職場でも一撃で再起不能となる可能性もあるので読者諸氏には改めてご注意を願う次第である。そしてやはり普段より重いザックは確実に脚にきていた。アフターコロナでは寝袋持参は常態化するかもしれないので老骨鞭打って鍛錬せねばなるまい。雷とザックの重さを改めて認識し、でも五ノ池小屋にはまた行きたいと思うのであった。
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