高烏屋山〜駒ヶ根からの里歩き〜


- GPS
- --:--
- 距離
- 24.0km
- 登り
- 955m
- 下り
- 945m
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
[復路]駒ヶ根スーパー駐車場 |
コース状況/ 危険箇所等 |
■コース:駒ヶ根ドラッグストア駐車場―駒ヶ根駅―ドラッグストア駐車場―天竜大橋― 伊那耕地―栗林―火山―板取―高烏屋神社―高烏屋山(たかずやさん)―新山 峠(にいやまとうげ)―大曽倉―中原―二越峠(ふたごえとうげ)―玉溝―中 曽倉・扇場―中割=天竜大橋=駒ヶ根・ドラッグストア駐車場 |
感想
山に行った翌日の朝の目覚めはすこぶる良い。朝の光が明るい。その光はまだ残る心地よい疲れと充実感とで満たされている。ちょうど先週の日曜日の朝がそんな感覚で満たされていた。不思議に思った。いつもと違うことといえば、H2Oさんがいないこと、久しぶりに登山靴を履いたこと、久々の雪山だったこと、久々に道のない山を歩いたこと、そして目的の本州縦断の一部を完遂できたことなどだ。内容はさほどのものではないにせよ、ひとりで行くことはいろいろと考え、悩み、ときには右往左往し、ということがあるからそれだけ充実感が高まるということであって、目的地の山がどうのこうのということではないのだ、ということに改めて気づかされた。先週の日曜日の朝の目覚めは久々の恍惚感だったのである。それを感じたくて、そして日本縦断の旅を前に進めるのだという意思を持って出かけた。
妻は結婚相談所の勤務があるということで、そしてH2O氏は父上の調子が悪く、この週末は遠慮するということでjunjapa単独となった。朝3時に目覚ましをかけたが寝てしまい、4時半ころ目覚めた。ここのところ山を継続しているせいかモノがどこにあるのかわかっており、またまとめて置いてあるので準備が早い。おまけに手際も良くなって右往左往することがない。先週より少し早く、5時過ぎには東伏見の家を後にした。
いつもの通り出かけるときは暗いが、調布で乗るまでにコンビニで買出しをして、途中でどこにもよらずに直接駒ヶ根の駅に向かうこととした。先週はスタートが10時と遅すぎたので本日はなるべく早くスタートしたかった。中央高速に乗って走っているうちに背後がアカネ色にそまってくる。左の富士山が赤く朝日に染まっている。いつものとおり滝子山や岩殿山を見ながら車を進める。甲府盆地に入ると、相変わらずの南アルプスの景色が素晴らしい。右から甲斐駒から鳳凰三山、辻山、背後には北岳〜間ノ岳〜農鳥岳。左には悪沢・赤石が見え、もっとも左には笊が岳が見える。右に目を転じれば、深田久弥終焉の地、茅が岳連山。八が岳もその主峰赤岳の真っ白な峰頭を屹立させている。スケールはアルプスと比べると小さいが素晴らしい景観である。車を運転しながら、あれは何の山?などと思いを巡らせながら走る。短時間でも山の角度は変わり、驚くほどにその表情を変える。遠く北アルプスも見え始める。
駒ヶ根まで行こうと思ったが、突然、火山峠から高烏屋山に登れないか?と思い立ち、駒ヶ根駅まで火山峠経由で行くことにした。単独だとこういう変更が簡単にできるのがいい。複数のパーティーではこうは行かない。伊那ICで下りて、先週の同じGSでガスを入れて火山峠へと向かう。GSで火山峠はどうですかね?と聞くと、問題ないと思いますが知りませんとそっけない。途中、道が凍っているところもあったが、問題なく火山峠へ。
火山峠は853m。到着して目を凝らしてみると登れそうな疎林ではある。駒ヶ根駅に向かいながらどうするか考えた。今日、しかしうまく駒ヶ根まで戻ってこれないことを考えるとまたここを再訪しなければならない、仮に火山峠〜高烏屋山に行ったからといって何が価値があろう、と思うと今日はとにかくプランの完遂を狙った方がいいという結論に達した。天竜川を渡り、河岸段丘を越えると駒ヶ根駅のある街並みになり、踏み切りを過ぎると駅だった。駅に車を停めるところはなさそうなので、もういちど天竜川側すなわち東側のバイパスに戻りドラッグストアの駐車場のしかも店から見えない側面に駐車した。
9:15スタート。ここからも南アルプスの仙丈岳が素晴らしい景色だ。いったん、歩いて駒が根駅まで行って縦断ルートをつなげる。駒ヶ根駅は以前、H2Oさんと空木岳から下山して、光前寺を経由して駅まで歩いてきたことがある。(そう、あの「信州信濃の光前寺早太郎を忘れるな」のお話の光前寺である)あのとき駒ヶ根の駅から電車に乗ったのだろうけれどまったく覚えていない。記憶はとうにかなたに消えていっている。だからこうして記録を残すのだ。
駒ヶ根の駅は女の子とおじさんが佇む閑散とした駅。時刻表をみると飯田線は一時間に一本しかない単線なのだ。この伊那谷の主要な鉄道である飯田線がこの程度の頻度しかないことに驚く。ま、ほとんどの交通はクルマということなのだろうけど、東京と地方都市の密度の違いは相当なものであろう。
9:20駒ヶ根の駅から戻る。さきほどのParkingを経て天竜川に向かう。しばらく行くと三角点の脇を通り、すぐに傾斜のある河岸段丘のくだりにかかる。横道にそれると、集落の傍らで畑作業をしている人がいる。その人に挨拶がてら向こうに見えている山の名前を聞くと、左のでっかいのが仙丈岳。その右の奥まっているのが北岳。伊那富士はどれか?と聞くと仙丈の左の頂上が少し雪で白くなっているのがそうだけど、伊那富士というのは箕輪の方の呼び名だという。たぶん戸倉山と呼んでいるのだろう。すばらしい景色ですね〜と言うと、そうですねと答えてくれた。写真を撮りながら行く。
そこから河岸段丘を下る。一段下の平地は川沿いの耕地は何もない農村風景が広がりを見せている。牧歌的な風景である。天竜川と並行していくつかの用水路が流れており、先人たちの水を確保する戦いに思いが重なる。欄干に龍の彫り物をしつらえた天竜大橋にかかる。ここまでで約55分。天竜川の水量はそれほど多くないが、雄大に滔々と流れている。渡りきると左に曲がり伊那耕地へと上がっていく。朝のマラソンランナーが二人。上がりきるとまたゆったりとした農村風景が広がっている。鼻唄でも出そうな雰囲気だ。目の前のゆったりとした山が高烏屋山だろう。里山であり簡単に登れそうな気配である。アウディのある米屋で道を聞くと道なりでいいとのこと。しかし本当の道は道なりではなく米屋の先で右に曲がるのだった。いい加減なことを言うな!といいたかったが。生協の先で耕地開拓碑があり、その先で栗林の交差点。ここで再びクルマのおじさんに道を聞くと右折だという。そこから少しずつ登りながら火山の集落に近づいていく。
この伊那地方やたらに「庚申」の石碑が多い。「水神」もある。昔の信仰の名残りが随所に残っている。やがて右側に第一の鳥居が見えてくる。その脇に道があり、登っていくのか、いちごの販売店で聞くと、ここじゃないんです、この先のポンプ小屋を右に曲がって登っていくとまた鳥居がありますからその辺でまた聞いてください、という。ガイドにもわかりずらいとあったが、その通りで、かなりわかりずらい。鳥居から300m〜350mほど行くと確かに曲がり角に消防団のポンプ車の小屋があり、そこに「高烏屋神社」の指導標と火山のバス停がある。これが目印である。ちなみにこのバス一日4本しかない。これでは使いようがない。せかせか登る。だいぶ山もちかづいてきた。ところどころに石碑があり、庚申だったりする。家屋の日蔭は、その形のままうっすらと雪が残っている。
このあたりで2万5000分の一の地図に切り替える。抜群に細かくていい。というか、5万図では使い物にならない。2.5万でも細かい道は省略されておりときどき迷う。とにかく上へ上へと登り、沢を渡ると板取集落。神社への指導標が思い出したように出てくる。おばあさんが途中向こうから下ってきて、声をかける。おはようございます。神社はこちらでいいんですか。あの鳥居のところをあがっていくじゃよ。あの見えるのが高烏屋山ですが、いやその見えているのの向こうがそう、あの見えているのは大峰というじゃよ。ま、がんばっていってらっしゃい、と送り出してくれた。ずっと車道が続いており、迷うことはない。第二の鳥居は車道のわきにあるが、鳥居の下をくぐる。鳥居からは、集落やその田畑とお別れし、そこからは樹林帯となる。樹林帯の道をぐいぐい登る。やがて、10台ほど停まれる駐車場。そこで左に道をわけており、第3の鳥居がある。そこからは階段状になった参道となる。霜がたっていてときどきばきっと沈み込む。この神社の森は赤松の森となっていて県の天然記念物となっている。参道を登りきると階段がありその傍らには神楽殿がある。なかなか立派なお社である。神社には2拝2拍手1拝と作法が書いてあり、鈴をならしたあと、その作法に従い、今年の幸せを願い、10円を奉納した。奉納した10円玉はにぶい音を立てて賽銭箱の中に落ちていった。
さて登山道は?と思い左を探すとなく、右側に行くと指導標があった。神社の背後はすぐに尾根であり、尾根道を行く。右側はきのこの採取地となっているようで、ずっと柵がしつらえてある。急登しばしで林道。林道を横切り、途中岩塊があり石碑があるが、よく読めない。急登は継続し、やがて左側から尾根を合わせるとすぐにしたに林道が見える。このあたりから霜が厚くなりついには真っ白になった。ところどころ下が凍りとなっていて滑る。急登を登りきると頂上。誰もいない。静かな頂上である。12時15分着。中央アルプスの絶景である。経ヶ岳はその姿を現しているが、駒から左は頂上部が雲にかかて残念ながら見えない。それでも谷が全部俯瞰できて満足である。振り返れば、仙丈や北岳が見える。遠く、悪沢岳も見える。避難小屋があり、その中で久々にコンロを使ってラーメンを作る。至福のひとときである。頂上で食うラーメンは、パイタンスープよりも鶏ガラスープがいい。
12:50発。35分も休んでしまったが、これもたまにはいいだろう。朝から一度も休まずに歩いているのだから。頂上から尾根伝いにもうひとつの頂上に行きそこには三角点があるのを確認。三等であり、しかも頂上の脇にあるので一瞬探してしまった。頂上のわきにはトイレがあり、そこまで林道があがってきている。林道にはお構いなく尾根上をどんどん行くが刈り払いされている。やがて左からの林道と右からの林道が合わさりその合流点に降り立ったあとは、林道を行く。・1317のピークは行かずにそのまま林道を行くが、雪がたまっているところでは表面が凍っており、滑りそうになってあせる。左側の景色はいい。一台クルマが向こうからやってきた。本日最初に山であった人である。2つ瘤を林道経由でまくと、林道が稜線から離れて大巻きになったので、そこで踏み跡に従い、また山に入る。きちんと踏み跡があり、問題はない。よく刈払いがされている。最後の・1365には龍東歩道の看板と林班を示す看板。そこから稜線は東に屈曲し、また南東に屈曲して新山峠(にいやま峠と呼ぶとあとで部落の人に聞いた)。これで先週の山と続いて駒が根の駅からこの稜線を通じ戸台までつながった。
ほっとして、林道を下る。雪道は凍っていて滑るので慎重に行く。動物たちの足跡がそこかしこにある。大きなものはなんだろう。女沢峠からの林道合流点から林道が大きく南東に屈曲するのでそこから、やぶを漕いで尾根上を下に下ることにした。約標高差150mほどのくだりである。ふみ跡があり、また地形もはっきりしているので不安はない。くだりきると予定どおり林道の合流点に出た。針金の柵をくぐってあとは里山歩きである。
大曽倉の集落をずんずん下っていく。天気もよく気持ちがいい。駒ヶ根ゴルフ場の分岐をわけ、地図読みをしながらどうやって駒ヶ根駅へ戻るのか思いをめぐらす。大曽倉のバス停でみるとやはり一日4本ばかりで、時間があわないのでまた歩くこととする。ここは本州横断とは関係がないのでバスやクルマに乗ってもいいのだが、ないのだから仕方がない。中原までくだり、そこで道のわきで薪を割っているおじさんに声をかけた。このまま二越峠を越えて駒ヶ根に行った方がいいかそれとも林道沿いに落合経由でいいのか。自分に興味があったそうで、ろくに質問には答えないで、いろいろと聞いてくる。東京はどこだね。どこから登っただね。どこをどう歩いただね。結論は二越峠(ふたごえと読むのだと教えてくれた)経由だったが、いろいろと話をした。いろいろと歩いているのかね。こちらもいろいろと質問する。きのこが取れるんですか?結構、柵があったから、そうだね。鹿は結構いますかね。いるね、食べるんですか?いやそれほど。でも鹿は増えているみたいですね。うさぎは。それほどいないね。いのししは?いのししもいるね。戸倉山から分杭峠までは歩けるんですか。いや歩くだけなら歩けるね。きりがないので適当なところでおしまいにして舗装道路の二越峠を越える。こちらからは大した峠ではなくちょっと登ると峠だが、そこからは蜿蜒と下っていく。峠で一台クルマが行きかったあとは誰も通らない。そうだ、そういえば高烏屋山からは、稜線で一台、大曽倉で一台、二越峠で一台、まだ三台しかクルマにあっていない。
地方は疲弊しているのだろう。高齢化が進み、若者は都会に出て、地方独特の文化は育まれない。地方が地方らしさを残すことは歓迎で、その都会性は排除してほしいが、疲弊して誰もいなくなるのもこれはこれで望むことではない。しかしこれは都会生活者の勝手なものいいということなのかも知れない。大曽倉の親父もこのあたりは自然があっていい・・・と言っていた。いや早く退職してそういう生活に・・・。あと10年くらいかね。そう、そうそんなもんですねなんて会話も交わした。八ヶ岳あたりがいいよ。どこにでもいけてとも言っていた。しかし、実際にはどうだろうか。自分が退職して本当に地方に住むのかというと、自然は好きだが、住むのはやはり医療のことを考えると都会なのではないだろうか・・・などと考えた。玉溝から扇場とどんどん高度を下げ、新宮川を渡ると登り返す。そこに神社があり、三叉路となっている。ちょうど向こうから来た夫婦ものと話をしていた角の家のおばさんに駒ヶ根の駅はどちらですか。と聞くとここを右折してまっすぐだけど6kmくらいあるよ。一時間くらいかね。と言ったあと送って行きましょうか?といってくれた。いやいいです。歩きに来ているものですからと断って歩きはじめて、すぐに先ほどの夫婦ものがクルマに乗って出かけるところに出くわして「乗っていくかね?」つい30秒ほど前には断ったが、ま、ついでというのならお言葉に甘えようかという気になり乗ることにした。その夫婦もよく山には行っているようで2000mの山を目安にして郷土の山を登りつぶしているらしい。高烏屋神社はいい神社でしょう。あんな神社は、伊那でもどこでもないんだ、と誇らしげである。高烏屋山はたかずやさんとこの辺では言ってね。とよく知っている。俺らはおまっとうさんというところがこの辺では一番高くていい山だから登山道を整備しているんだ、祠峠、ほら示す偏につかさって書いて祠っていう字があるだろ・・・と結構、教養のありそうなおじいさんである。いやわかりますよー、そうですかところでおまっとうさんってどういう字を書くんですか。あ、大きいに松に尾っぽと書くんだ、そうおおまつおと書くんだが、おまっとうってこの辺では読んでいてね。1737mあるっていうからこの辺では一番高い山でね。この辺に住んでいるから仙丈なんていうのは日帰りでいけちゃうんだな、いいよ。入笠山は行ったかね。いやムカシ行きました。マナスル山荘なんかに泊まって。いろいろ行ってるんだね。そうすると奥さんが、雨でも雨具つけて出かけちゃうんだからねー。いや、もう好きになるとビョー気ですから山屋なんてのは。うちもそうですよ。なんて話をしているとドラッグの駐車場が近づいてきた。いや駒ヶ根の駅って先ほどいったんですけど、駐車場がないんで実はドラッグの駐車場に停めているんです。あれやー、それじゃお客さんということで・・・と奥さんに呆れられたが、そうなんです、実は。この辺で温泉ありますか?ありますよー。こぶしの湯っていうのが、ロープウェイにあがっていく途中の左にありますから。露天で。そうですか、じゃそこに寄っていくことにしますぅ。あ、そこのクルマです。あほんとだ、練馬ってあるな。それじゃ、お世話になりましたというとその小型のバンはさっさと行ってしまった。
帰りはそのこぶしの湯に入り(600円)、ゆっくり温まったあとガラすきの中央高速で帰ったのだった。
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