記録ID: 394743
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無雪期ピークハント/縦走
伊豆・愛鷹
毛無山塊縦走(毛無山〜雨ヶ岳)
1987年11月01日(日) [日帰り]
- GPS
- --:--
- 距離
- 17.9km
- 登り
- 1,321m
- 下り
- 1,318m
天候 | 晴れ |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
毎度毎度のことながら、単独で行くとき、直前には迷いや躊躇というものが必ずある。いつもそれを振り切るようにして出発する。当然のことながら出発するまでは、さながらコンピューターのようにその難度、コースタイム、天候を考える。そしてそれらの判定が終わったときに行くことが決まる。でも迷いや躊躇はまだある。今の自分にはどの山であってもそれが残る。それが無視できる、あるいはなくなるときというのはあるのだろうか。 そんなことを思いつつもいつものように準備を進めて地図にごそごそ書き込みなどをして出発する。松田ICから東名高速に乗る。富士ICからは、快適に朝霧高原を目指す。途中のローソンで行動食の買い物をして、その北のラーメン屋で夜食をとる。富士宮市に入ると雨が降ってきた。やる気をなくさせるのに十分な恨めしい雨だ。ついでにガスも出てきてイヤな気分にさせてくれる。峠の茶屋の先の道があっていることを確認した上で、そこを今夜のネグラとする。4:00就寝。やはりひとりは気味が悪い。 8:15起床。明るくなっている。すでに国道139号はクルマがぶんぶん走っている。雨は降っていないようだが、曇天であまり行く気はしない。雨ならあっさり止めようと思っていたところだが、とりあえず、グリーンパークの分岐より入ってみる。高デッキ(1922m)のピーク付近から流下する沢を渡ると東京農大の広大な農場が広がっていて心が洗われるような気がする。犬を連れたハンターたちが車道の脇に何人もいる。やがて東海自然歩道を合わせると麓(ふもと)集落だ。このあたりは、富士山熔岩流が毛無山塊にぶつかった地点だ。熔岩が流れくだる前にはもっと深い谷を形成していたのだろうか。「登ろうかどうしようか」と迷い迷いクルマを運転しているうちに集落の端の登山口まで来てしまう。登ろう、そう思った。 8:45発。クサリで道を通せんぼしてあるところを過ぎ、湿った朝の空気に包まれながら林の中を行く。すぐ右に建築中の神社を見送る。こんな日に登ってくる人などいないのだろうなと思う。朝の山は気持ちがよい。次第に心が洗われていく。やがて急な登りになる。無心に登る。やげて9:10不動ノ滝の展望台。そこからは、北側の沢を流下する不動の滝が清冽な水を落としている。どんよりと垂れこめている雲はいかにも暗鬱といった表情だが、雨は止んだようだ。カメラマンがひとりいて無表情に写真を撮っている。このあたりまで来ると紅葉が下りてきていて、まさに日本的風景だ。9:20発。忠実に尾根上を行く。無心に登っているとはいってもいつの間にか、会社のことなどをいろいろと思い巡らしている。ハタと気が付くと足が斜面の上を動いていたことに気が付く瞬間があったりする。現実からは離れられないけれど、ふと少しは非日常である山に身を置いている自分をみると来てよかった!と思ったりする。 10:10小平地で休憩。約1時間歩いたところで地形図を引っ張り出すと、なんと今日は1000mも登るんだった!と気が付く。地図読みをしたのに標高差までは気にしていなかった。周囲を見渡すと、紅葉が美しく、遠く沢の音が聞こえるほかは、まさに静寂そのもので、ときおり飛行機の飛行音が聞こえるくらいだ。こんな急な登りも今週のトレーニングのお蔭で非常に楽だ。10:20発。仕事のこと、自分の仕事の進め方がどう良くて、どう悪いのかが考えている。しらない間に自分もしっかり仕事中毒人間になっている。 11:10急にゆるやかになったかと思うと、下部分岐。やっと着いた。指導標に「天子ヶ岳へ」とあるから稜線上に道はあるようだ。時おり、陽光が降り注ぐようになり晴れてくる気配に内心喜ぶ。 11:15わずかな登り下りを繰り返すとポコッと毛無山頂。ゴミが散らかっていたり、たき火跡があってキレイではない。ガスで何も見えない。晴れていたら富士山が姿をあらわすはずなのだが。頂上には二人の人がくつろいでいる。ひとりは、ゴアを着て風防の中で、ラムレーズンなどを食べている。自分も弁当を食すことにする。そのうちにガヤガヤと大騒ぎしながら中高年の一団が青年に誘導されて登ってきた。毎日旅行のグループのようだった。最初はお仲間かと思っていたがめいめいメシを喰っているような状況から分かったのだ。そのリーダー役の青年は物知り顔(笑)に「ここには昔小屋があったんです」とか、「この先に実は本当の毛無山の頂上がある」とかしゃべっている。そんなことより「ゴミのひとつでも持ち帰りましょう」くらいなことを言えばいいのに・・・・と思った。みなさんは聞いてか聞かずかモクモクとメシを喰っていてあまり反応がない。なんだかひとこと「がんばってください!」と声をかけたくなるような寂しさも感じた。先のラムレーズン氏に写真を撮ってもらいそろそろ出発の意思を固めるが、ここから先はヤブコースなので、ホントウはひとりでは行きたくない。ガイドブックにはフミアトがあると書いてあっても不安だ。そんなことからうだうだしているとラム氏が「どちらへ?」という。本当は不安なくせに胸を張って「雨が岳ですけど」とそっけなく応える。そうすると氏は「道あるんですかね?」という。「いや、あるでしょう!」知ったかぶりのボク。すると彼も雨ヶ岳の方へ行くつもりという。「それならまぁご一緒にどうですか」。本音は「一緒に来てほしい」だったが、「ガイド役くらいしますよ」みたいな応え方だったんだろうと思う。自分でも呆れる。ん毎日旅行氏もわれわれの会話を聞いて「ホントウのピークに行かれるんですか?」。それに答え「いや、それを超えて雨ヶ岳の方へ」と誇らしげに。即席パートナーサマサマである。 11:35発。ふみあとはしっかり続いている。11:55毛無山ホントウのピーク(今は大見岳?という無粋な名前が付いているが当時はそんな名前はなかった)。樹林に覆われたナニも見えないピーク。急な下りになると”やけに刈り払いがされているな”と感心しつつ高デッキとのコルに向けて下る。そのうちに、行く手の方で”ぱちぱち”と音がしてくる。人の声もする。その場所についてみると富士宮西高校の山岳部の子たちが、男子部隊はこちら側から、女子部隊は雨ヶ岳の方から刈り払いをしているという。そうだったのか。とにかく楽をさせてもらったので感謝である。しかしここからヤブになると思うとそれはそれでイヤな気持ちになる。ヤブ入りする。コルのあたりは、背丈より少し低い笹原だ。よく探せばフミアトはしっかりついているが、すぐには見分けにくい。そのうちにフミアトを見失い雨も降ってくる。雨にフラれながら雨ヶ岳を目指すという洒落じゃない状況。稜線に忠実に自分をトップに進む。コルから100mくらいで高デッキの頂上。12:30着 12:40高デッキ発。雨がぽたぽた降っている。ラム氏に写真を撮ってもらう。笹原の海の中ガスをバックにした写真だがあとで見てみたら味があってよかった(笑)。高デッキの下りから灌木が現れる。尾根も痩せてくるが危険はない。大きく標高差150mは下る。雨ヶ岳とのコルに下りきる前に女子隊に出会う。男子隊の位置を教えてあげると、とあるひとりの女子は絶望の表情をしてかわいそうなぐらいだった。思った以上に大変な作業なんだろうと思う。われわれはそのお蔭さまをもって楽な道を辿れることになる。女子隊の話では、本日、この尾根をたどっているのはわれわれだけだという。ある人は雨ヶ岳側から通過しようとしたが戻って行ったという。コルを通過し笹が足首を洗うようになると、やがて雨ヶ岳頂上。 13:30雨が岳頂上着。雨は止んだが霧で何も見えない。三角点を探したり(見つからず)写真をとったりして過ごす。仏峠へはうっすらとしたふみあとはあるようだ。頂上にはプレートもない。13:50発。端足峠へと急降下だ。ハッキリしたふみあとだが非常に滑りやすい。足元が笹に覆われて見えないため、何度も転ぶ。こんなところをヤマケイに載せれば笹原を行く登山者の写真になるのだろうが、実際には結構大変だ。一回も休まずに14:50端足峠着。 15:00端足峠発。樹林中のジグザグを下ると東海自然歩道とぶつかり広いみちとなる。あとは指導標に従い、A沢貯水池の脇を通って、直進するとクルマがひんぴんと通る国道139号線である。近くのバス停ではしばらくバスがない。近くのGSで聞いてみるとクルマと人はいるのだが運転できないという。結局ラム氏は標高978mの県境にいってバスを待つという。私はみじめにも本日の麓集落まで歩くことにした。「なに、一時間もあれば着くさ」というGSのおじさんの言葉をひたすら信じながら、歩き始めたが歩道もないクルマがびゅんびゅん通るみちを路肩ギリギリにゆくのは気持ちのよいものではない。朝霧高原の看板を見て、建設大学校をすぎて横道にそれる。カウボーイ養成の牧場なども過ぎるうちに薄暮になってくる。クルマに着いたときにはもう真っ暗になっていた。充実した一日だった。ラム氏には感謝である。 |
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