徳舜瞥山
- GPS
- 08:31
- 距離
- 7.0km
- 登り
- 727m
- 下り
- 723m
コースタイム
天候 | 吹雪 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
西尾根は1050m地点から徐々に傾斜がきつくなる。吹雪でホワイトアウトとなると、下山は厳しい。 北湯沢温泉の日帰り入浴は大人700円とリーズナブル。 |
写真
感想
南岸低気圧と日本海からの低気圧がぶつかり、台風並みに発達した低気圧の影響を受け、道内は北部と日本海側に暴風雪警報が出ていました。こんな日は、登山すべきではありません。だけど、9日はファミリーでスキーを予定しており、「少し歩いて帰れば良いか」と山へ向かいました。日高が続いて、別の山系に行きたい。ドライブも趣味なので、太平洋側に近い徳舜瞥山を目指しました。西へ、つまり日本海側に近付く危険性は分かっていましたが(言い訳に過ぎない)。
毎回リュックの食料や飲料が凍結して、難行苦行、精進行を強いられるので、USB保温ランチボックスを導入してみました。車のUSBに接続し、登山時は充電済みの電池を使います。効果は、凍結は防止できましたが、温かくはない。風雪が強い悪条件では、食べられれば御の字でした。
支笏湖から美笛峠を越えます。胆振側で、すでに圧雪アイスバーン。トンネルを越えて後志側は雪国の世界です。大滝の道の駅の駐車場で、朝食を食べ、昨日のモノを排泄しました。いつもお世話になっております。清潔なトイレ、ウオッシュレットが嬉しい。もう既に、車が走れる限界の積雪でした。
除雪終点の駐車スペースを、持参したスコップで雪かきして駐車し、USB保温ランチボックスの電源を電池につなぎ替えリュックに入れます。粉雪が舞い、風の強い中、出発です。私は、雪かきで既に汗をかいていました。
牧野のラッセルは膝上です。トレースも当然なく、視界も効かない中、経験に基づく「感」で道を切り開きます。風雪でトレースが消える事を想定して、ポイントごとに写真を撮りました。1時間のラッセル修行の末に赤いテープを発見しました。無くても辿り着きますが、安心感は絶大です。まだ、標高差100mしか登っていません。休憩して先へ進みました。
牧野の上部は時に腰まではまります。Hiroのため、ラッセル苦行に汗をかきました。視界が効かないなだらかな斜面では、赤いテープに助けられます。牧野を抜け、森林帯は雪が浅いかクラストしている事を願いましたが、雪は深くなる一方です(当然です)。林道らしき雪原を横切り、T字路から林道に入ります。相変わらず、太腿まではまるラッセルを続けると、現れるはずのない、こんな日に山を登る非常識な夫婦がトレースを辿って追いつきました。人の事は言えません。子供を連れて登るのは、もっと非常識ですから。肩で息をしていた私に、トレースのお礼を言ってくれ、ラッセルを代わってくれました。
この「助け」が無ければ、1050mの台地で引き返したでしょう。その方が良かった事を、後で痛いほど思い知る事になるとは、この時は気付きませんでした。トレースを辿るのは、楽です。すぐ追いついてラッセルを交替します。休憩で、ラッセル交替を繰り返しました。時に日差しがあり、スノーモンスターを楽しみました。将来、Hiroが「親父、ラッセルを替わるよ」なんて言ってくれる日を夢見ながら。
1050m地点で夫婦が進退に迷っています。ラッセル苦行に疲れ、11時。吹雪で視界無し。Hiroの存在が無ければ、引き返していたでしょう。もう、札幌の夫婦の援助は期待できません。ラッセルをやり抜く覚悟で、Hiroとパンを食べ西尾根へ向かいました。
山頂へ続く台地のラッセルは腰を超えました。帰りのために、写真を撮り、地形を頭に刻み込みます。もう一つの最大の非常識は、地図と雪山ガイドのコピーを家に忘れた事です。何度も読み、地形図は頭に刻み込んでいましたが。実際、この吹雪では、地図を読む事は出来ません。東側の断崖を避ける様に、風上(西)へジグを切ります。ちなみにGPSは持っていません。春とは言え、気候は厳冬期と同じでかつ山頂は見えない視界の悪さ。遭難すれば「無謀な登山」で片付けられるでしょう。言い訳の言葉もありません。けなげに着いてくるHiroも、さすがに疲労の色は隠せません。この烈風の風雪の中、休憩をねだられました。振り返っても視界は無く、尾根線は見えません。
山頂は見えないけど、足下の氷結した斜面の傾斜がきつく、山頂が近い事が分かります。風であおられ、倒れそうになるHiroに歩き方を教えました。Hiroに履かしている、私の6本爪アイゼン(夏用)では、Hiroの体重が軽すぎて歯が立ちません。ジグを切りながら、Hiroを確保して13時2分山頂に立ちました。Hiroの健闘を称え、風上に立って、愛しさにHiroを抱きしめ、手を私のダウンの中に入れさせました。長居は低体温で行動不能になります。下山開始して、夫婦とすれ違いました。長年の経験で、彼らの実力では下山が心配です。それ以上に、Hiroをちゃんと下山させなければ、遭難死間違いありません。
無邪気に着いてくるHiro。許してくれ!トレースを見失い(風雪で消えた)視界無し。スントの磁石で方位を定めます。烈風のため、心理的に風下に下ってしまったのでは。それなら、西を回れば台地に降りられる。高度計は台地より100m高い位置を示している。台地に近付き、視界が開ける一瞬で正規のルートを見定めました。天の助けか、Hiroの幸運か。何も言わない父だけど、Hiroを守りたい一心だった。動悸もやみ、Hiroの日焼けた顔(凍傷だった!)を確認して、胸まではまって、台地のトレースに合流し休憩しました。道を見失った事など話さず、いつもの冷静な父親を演じています。
下りはトレースを辿って、先を急ぎます。日没を避けるため。でも、予測通り牧野ではトレースは消えていました。そこはかとなく、トレースの瘢痕が所々に見え、膝上ラッセルを最後まで続け、日没には余裕で下山しました。Hiroの頑張りを褒め抱きしめました。あの夫婦はまだ下山してきません。ちょっと心配でした。
北湯沢温泉の駐車場は混んでいて、停めるのに苦労しました。Hiroと温泉を楽しもうとした時、Hiroの顔が腫れ上がっているではありませんか!右頬は水疱ができ、両頬とも皮下硬結しています。2度の凍傷です。露天風呂には入らず、冷気をさけました。帰りの車中は涙が溢れました。無謀な登山で、我が宝物を傷つけてしまった。痛いとも寒いとも疲れたとも言わずに、じっと耐え抜いた我が子のいじらしさ。後席で眠ろうとしても、痛みのためか眠れないHiro。家に電話して、ヒルドイドゲルとリンデロンの皮膚処置を、家についたらすぐ行う様に指示した。
Hiroとの登山は暫くはありません。馬鹿な父を許してくれ!そして、もし良かったら、夏山に行こう。むしが良すぎますかね。8日のファミリーでのスキーもキャンセルに。娘達に謝り、何より母親に、無事に下山できなかった事を詫びた。
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